ガンダムビルドダイバーズ リレーションシップ   作:二葉ベス

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AGEといえば、この男~~~~~!!
後半、掲示板ネタが出るのでその点は注意です


第7話:AGE狂いとバロノークの男

 何事においても初めてというものは存在する。

 GBNを始めるも然り、ガンプラを始めるも然り。

 そしてその始まりは大抵上手くいくことは少ない。

 

「なんでぇ?!」

 

 射撃訓練でドッズライフルの精度を確認してみたものの、どうやら少しだけ砲身ハマりきっていなかったらしく、本来なら命中していたドローンをカスリ、ビームの粒子は宙へと消えていってしまった。

 ダイバーギアに備わっているメモ機能を取り出して、修正すべきリストに新しい一文が刻まれる。

 そう。ガンプラが完成したとしても、その完成度が100%想像した通りのものかと言えば、嘘である。

 どんなダイバーも最初のオリジナル機体は、どこかしら調整をミスってしまうものなのだから。

 ゲームを作る時に必ずバグが発生するように、機体にだって不具合は生じる。

 そのためのテストパイロットだって存在するんだ。ジラード・スプリガンのように。

 

「こうして改めて確認してみると、やっぱどこかしら調整できてないんだなぁ」

 

 基本的な性能は素組みのAGE-1よりも遥かに高い。

 これが新しくなったガンダムの力か。などとゼハートのように口にしてみせるが、反応してくれるような人がいないので、一人ぼっちは寂しく格闘の訓練を始めることにする。

 パイロットはMSを手足のように動かせることも仕事の1つだ。

 戦いだけではなく、荷物運びに人運び。そして工事作業。上げればキリがない程の用途を操縦桿を握って遊ぶのだ。これほど豪快で精密な機械は他にはないだろう。

 格闘戦の訓練をしてみるも。やはり腕の駆動系が少し弱い。また1つメモに一文が追加される。

 

「なんかもどかしいな。身体が思った通り動くけど、少し軋む感覚が」

 

 腕を上げ下げして、油をなじませるように動かす。

 この辺はプラグインではどうしようもできないところなのだろうか。

 ノイヤーさんから貰った電磁シールドのプラグインを導入してみても、まだフレーバーテキストの枠に余りがあるため、何かを導入することはできるのだけども……。

 そもそも手持ちのプラグインが少ない。バッドガールを完璧にするためにはまだまだパーツが少ないのだ。

 始めたて、というのは試行錯誤しながら考えているから楽しいのであって、いきなりドロップ運を気にするのはお門違いもいいところ。

 この後来るであろうノイヤーさんとエンリさんを待つのもいい。このままログアウトして……。

 

「いいガンプラだ」

「へ?!」

 

 考え事をしている最中に声をかけるなと誰かが言っていたはずだ。飛び上がるほどびっくりした私は声のする方向へと振り向く。そこには黒いAGE-2、あるいはダークハウンドと呼ばれるガンプラが立っていた。

 

「AGE-1かい? それにしてはビシディアン仕様に見えるけれど」

「あ、もしかして分かりますか?」

「あぁ。僕もAGEが大好きだからね」

 

 なんという奇跡。こんなところにもAGE好きがいるとは思いもよらず、テンションが上がる。お話しましょうと上がったテンションのノリで話しかけると、好印象だったらしく、許可してくれた。

 どこからか用意してくれたアンティークチックな椅子と机を囲んで、その場でティータイムが始まる。

 目の前には白い仮面を身につけた、金髪の男性。表情は見えないものの、エンリさんとは違って口元が柔らかいのか、常に口角が上を向いていた。

 これまたいつの間にか用意していた紅茶とお茶菓子が机に並べられ、誘導されるがまま座る。

 

「嬉しいよ。こんなところでAGE好きと出会えるとは」

「私もです。あ、お名前は? 私はユーカリって言います」

「僕はキョウヤだ、よろしくね」

 

 目元は見えなくても、仮面が笑っているように見えるので安心した。

 キョウヤさんか。少し前にエンリさんから聞いたチャンプと同じ名前だとは。キョウヤなんて名前はいくらでもいるし、似ている名前の人がいてもおかしくはないか。

 それにしても海賊仕様のAGE-1とAGE-2が並び立つ姿はAGEファンとしてはなかなかにクールな絵面だ。

 

「ダークハウンド、かっこいいですよね」

「分かるかい! アセムは僕の憧れみたいなものでね。キミのガンプラの名前は?」

「バッドガールです! 一応こっちもアセムが乗ってる、って設定で」

「ほう。聞かせてくれないか、機体の設定まで気にしているダイバーは気になっていてね」

 

 予想以上に食いつきがいい。話していて気分もいい。どれどれ、私の設定ヂカラ、というやつも存外馬鹿にならないという事か、ふふふ……。

 もしもアセムがAGE-2ではなく、AGE-1を乗り続けていたなら。そんな馬鹿げたイフコンセプトだったとしても、キョウヤさんは笑わずに一言一句聞き逃すまいと真剣に話を聞いてくれた。

 

「面白い発想だね。なるほど、AGE-1を乗り続けていたら、というコンセプトは僕にはない発想だよ」

「そうですか?! なら嬉しいです!」

「ということは、シド戦の時に左腕を?」

「ですです! 破壊された左腕を治すためにあえてアンカーフックを装備させて……」

 

 AGEシステムがないのは当然だ。何故ならAGE-2に引き継がれているのだから。

 アセムなら、あのスーパーパイロットならばAGE-1でだって無双したことだろう。

 ふつふつと湧き上がる創作意欲がやはりもっと強化してあげたいという気持ちへと繋がっていく。

 とは言っても、修正箇所はあっても、大まかな強化案というのはあまり考えていなかった。

 そもそも今の状態で1つの完成点だ。ならそこからさらに、となると知識がいくらあっても足りない。

 

「機体としては汎用型の回避タンク、と言ったところか」

「だと思います。まだ動かして間もないので」

「ということは調整中かい?」

「はい。修正点はざっとこんな感じです」

 

 偶然にも話題に出たため、私はメモを表示させて、彼に渡す。

 メモをスクロールさせながら、物思いに耽る彼。真剣な眼差しはガンプラへの愛の賜物、ということだろうか。

 しばらくバッドガールとメモを見比べていってから、キョウヤさんは一言つぶやいた。

 

「間違いないだろうね。このメモの通り修正すれば、もっと強いガンプラになるよ」

「分かるんですか?」

「長い間ガンプラを作っていると自然にね」

 

 か、かっこいい! 大人の男性みたいだ!

 アウトローでもよかったけれど、こういうクールな相手に憧れの概念のようなものを抱いてしまうのは、私の性癖から来ているのだろうか。分からない。分からないけど、かっこいいものに憧れてしまうのはしょうがないことだ。

 キラキラ目の私を置いておきつつ、彼の目線の先はもう1つ。それはドッズライフルだった。

 

「あれでは精密射撃モードには移行できないかな」

「……はっ! そ、そうですね。元々狙撃は苦手なので」

 

 FPS時代から私は大の狙撃嫌いだ。もちろん撃つ方も撃たれる方も。

 大まかな狙いをつけるには近づいて撃つ、というのがモットーな私に高度な計算を加えて、弾速や斜角を寸分の狂い違わず当ててくるスナイパーは化け物だと常々考えている。

 撃たれる方も同じく、あの速度の弾を避けれる気がしないからだ。やろうと思えばできるのだろうけど、このガンプラでできるかは置いておくものとする。

 という、以上の理由から、私は狙撃が苦手だった。

 

「いっそのことハイパードッズライフルでもいいかもしれないな」

「ハイパードッズライフル、ですか」

「あるいはその系列のクランシェのドッズライフルなども」

 

 威力を上げるならハイパードッズライフル。安定性を含めるならクランシェのドッズライフルなど。

 私では思いもよらなかった改造案がポツポツと浮かび上がってくる。

 すごいなぁ、この人。AGEの知識をそのままガンプラにも転用できているだなんて流石だ。

 

「とまぁ、決めるのはユーカリくんだったね。1人で語ってしまってすまない」

「いえ、ただすごい知識だなーと思って」

「そうかな。そう言われると少し照れるな」

 

 誇る点でありながらも、そこを謙虚に、それでいてしっかり受け取る辺り、キョウヤさんはなかなか人間ができているように見える。こんなにも親切な人がいるんだ、GBNは。

 

「ありがとうございます! こんなにアドバイスを頂いて」

「これも縁だ。AGE好きとしてのね」

 

 仮面越しに微笑んでくれる彼の姿は、新たなる憧れの1つでもあり。

 感謝の念を込めて、私はフレンドの申請を行う。

 

「フレンドって、空いてますか?」

「あー。あぁ……そうだね。大丈夫だよ」

「ありがとうございます!」

 

 エンリさんに教えてもらった通りの操作方法から相手のプロフィールへと申請を飛ばす。ん? クジョウ・キョウヤ……?

 

「名前までチャンプと同じなんですねぇ」

「あ、あはは。よく言われるよ」

 

 ネットゲームなのだ。同じ名前の1つや2つきっとあるだろう。彼もチャンプにご執心ということにしておく。

 私たちは無事にフレンド登録を済ませると、キョウヤさんが立ち上がる。

 

「さて、僕はそろそろお暇させてもらうよ。今度会う時はバトルしてくれると嬉しいな」

「あ、はい! 何から何までありがとうございました!」

 

 キョウヤさんは右手を上げて別れの挨拶をすると、ダークハウンドに乗って飛び去っていってしまった。

 はぁ……最後までクールな人だったな。よし。一回ログアウトして、メモった調整部分をしっかり治そう。そしたら完成品をいの一番にエンリさんに見せて褒めてもらうんだ!

 

 私は紅茶を飲み干した後に、その場でログアウトして、現実世界へと旅立っていった。

 

 ◇

 

【ランキング1位】クジョウ・キョウヤについて語るスレpart1142【チャンプはさぁ】

 

1:以下名無しのダイバーがお送りします。

ここはチャンプことクジョウ・キョウヤについて語るスレです。荒らし、対立煽り等々はスルー推奨につき。ルールを守って楽しくスレッド!

 

Q.クジョウ・キョウヤって誰?

A.ワールドランキング1位の絶対王者。普段の優男から漂うAGEオタクっぷりや他の追随を許さないほどのバトルセンスにファンは絶えない。

 

Q.どうやったら会えるの?

A.基本はアヴァロンのフォースネスト。たまにディメンション内を飛んでるところを見かける。 

 

Q.この前チャンプにアセムについて語られたんだけど

A.チャンプはさぁ……

 

チャンプの配信のアーカイブはこちら!→【URL】

チャンプのファンアートまとめはこちら!→【URL】

 

 ◇

 

530:以下名無しのダイバーがお送りします。

さりげにチャンプ見つけてストーキングしてたら、知らない女と逢引してた

 

531:以下名無しのダイバーがお送りします。

通報

 

532:以下名無しのダイバーがお送りします。

もしもしガーフレ?

 

533:以下名無しのダイバーがお送りします。

逢引よりもストーキングの方が問題

 

534:以下名無しのダイバーがお送りします。

チャンプがダイバー誘ってるのは今に始まったことでもないだろ

 

535:以下名無しのダイバーがお送りします。

割と見かける光景

 

536:以下名無しのダイバーがお送りします。

マギーさんほどじゃないけど、たまに初心者と絡んでるからな、あの人

 

537:以下名無しのダイバーがお送りします。

ビルドダイバーズのリクとの初めての馴れ初めもチャンプ側からだぞ

 

538:以下名無しのダイバーがお送りします。

それ端の方で見てたけど、相手がAGE-1の改造機だったからだわ

 

539:以下名無しのダイバーがお送りします。

あー……

 

540:以下名無しのダイバーがお送りします。

ならしゃーない

 

541:以下名無しのダイバーがお送りします。

チャンプだもんな

 

542:以下名無しのダイバーがお送りします。

チャンプだからな!

 

543:以下名無しのダイバーがお送りします。

あー俺、AGE好きになっちゃったよ……

 

544:以下名無しのダイバーがお送りします。

違うよ。人間の心を持つ、AGEマンだ

 

545:以下名無しのダイバーがお送りします。

AGEマン?

 

546:以下名無しのダイバーがお送りします。

身体はガンダムだけど、心は人間だ

 

547:以下名無しのダイバーがお送りします。

ハッピーバースデー、AGEマン!

 

548:以下名無しのダイバーがお送りします。

チャンプをAGEマン扱いするな

 

549:以下名無しのダイバーがお送りします。

デビルマン構文やめろ

 

550:以下名無しのダイバーがお送りします。

サタンだからな!

 

551:以下名無しのダイバーがお送りします。

絡んでたAGE-1の改造機も気になるけど、どんなの?

 

552:以下名無しのダイバーがお送りします。

>>551

AGE-1の海賊仕様。左腕がフックになってたから間違いない

 

553:以下名無しのダイバーがお送りします。

こっちもAGE好きの匂いがプンプンする

 

554:以下名無しのダイバーがお送りします。

普通改造するならAGE-2の方だからな。

1の方を改造する辺り、にわかではないと思う。

 

555:以下名無しのダイバーがお送りします。

世の中にはそんなバカが居るのか

 

556:以下名無しのダイバーがお送りします。

GBNはバカの巣窟だから仕方ないね

 

557:以下名無しのダイバーがお送りします。

伊達にヴェイガンギアをフルスクラッチしたバカはいない

 

558:以下名無しのダイバーがお送りします。

何だそのバカは

 

559:以下名無しのダイバーがお送りします。

スレチだから話題戻そうな

 

560:以下名無しのダイバーがお送りします。

ちなみにチャンプと別れてからすぐログアウトしたから、詳細は不明。

ま、その内分かるだろ

 

561:以下名無しのダイバーがお送りします。

せやな。チャンプと出会った新人は大抵めちゃくちゃ成長する

 

562:以下名無しのダイバーがお送りします。

リクくんしかり、リリカちゃんしかり

 

563:以下名無しのダイバーがお送りします。

どんな化け物に仕上がるか楽しみなところだぜ

 

 ◇




偶然って怖いね
ストックが無くなったので、本格的に明日から不定期になると思います

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