ようこそ姉弟至上主義の教室へ   作:ピト

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第5話 けいやくってなぁーにー?

 ──────5月1日

 

 月日は流れて、5月に入った。教師の意味深な発言と共に行われる小テストを乗り切り、新生活も一ヶ月を過ぎようとしている。一年生の間では、喧騒の中に動揺がはびこっていた。Bクラスでも、それは同様だった。しかし、他クラスよりかはマシなようだ。おそらく、支給されたポイント差の情報が出回っているからまだ気を保てているのだろう。

 星之宮先生が教室に入って来たことで騒めきは治まった。

 

「はーい。みんな、おはよう。今日は大事なお話しがあるから、ちゃんと聞いてね~」

 

 入学当初からの変わらぬ陽気さでしゃべる星之宮先生。ニッコニッコしたその面の下では、いったい何を思っていやがるんでしょうかね。神崎が、星乃宮先生が話し始める前に手を挙げた。

 

「神崎くん、どうしたの?」

「初めに確認させてください。支給されたポイントが10万ポイントより少なかったのですが、何かの手違いでしょうか?」

「ううん。手違いはないよー。ちゃんとした額が学校から支給されてるはず。その辺もちゃんと説明するからね」

 

 星之宮先生は黒板に大きな紙を一枚貼った。

 

 Aクラス 930cp

 Bクラス 810cp

 Cクラス 430cp

 Dクラス   0cp

 

「はい。これは一年生の各クラスのポイントです。これに100倍した数字のプライベートポイントが今日、君たちには振り込まれているはずだよ。不具合があったら申し出てね」

 

 真剣な表情で星之宮先生の話を聞くBクラス。ザワザワすることなく、ありのままの現実を直視している。

 

「………うん。皆の顔色を見ると大丈夫そうだね。それじゃあ、次は卒業特典についてなんだけど、希望進路を学校側が融通するのはAクラスのみです」

 

 卒業特典の説明を受けると、クラス内に動揺が走った。

 

「はぁ~い、ザワザワしない。今私たちはBクラスだから、卒業特典にありつくためにはAクラスを倒して自分たちがAクラスにならないといけません。力を合わせて頑張ろうね!」

 

 むんっ!っと両手を握って気合を入れる星之宮先生。

 

「星乃宮先生」

「一之瀬さん、何かな?」

 

 一之瀬が手を挙げて、発言許可を求めていた。

 

「どうすれば、その表にあるクラスポイントが上がりますか?」

「ごめんね。それは規則で教えることができないの。ただ一つアドバイスをするなら、みんなは入学して数日、気が緩んでた時期があったと思うの。でもこのクラスの誰かが動いたかは分からないけど授業態度が良くなったでしょ?そうしてなかったらもっとクラスポイントは低かったと思うよ。それでも、良くなったからと言ってクラスポイントが上がるわけじゃないけどね」

「………それが当たり前のことだからですか?」

「そうだよ、一之瀬さん」

 

 ニッコリと満足そうに頷く星之宮先生。

 

「じゃあ、もう一枚見てもらうね」

 

 クラスポイントが書かれていた紙の上に、もう一枚の紙が貼られた。

 

「今貼ったのは、少し前にやった小テストの結果だよ。このクラスは平均を大きく下回る子はいなかったから嬉しいな。このままの状態を維持してね。もし赤点を一回でも取っちゃうと、即退学になるから気を付けてね」

 

 星之宮先生の赤点退学発言に、何人かの生徒が顔を青ざめた。どの子も黒板に貼られた順位の下位に位置する人だった。大丈夫!一之瀬は絶対、君たちを見捨てないよ!

 

「君たちなら絶対に大丈夫って思ってるからね。絶対に赤点は回避できるよ」

 

 絶対ね、と絶対を強調する星之宮先生。先生は黒板に貼った紙を回収した。

 

「それじゃあ、お話は終わり。今日も一日頑張ってねっ!」

 

 そして、クラスに激励の言葉を残して教室を去って行った。あの先生、出ていく際に俺にウインクしやがった。

 

 

 

 

 

 

 

 ──────同日、22時

 

 ピーンポーン。来客を知らせる合図があった。ピンポンダッシュ?まあっ!いたずらな子もいるのねっ!?ってことにはならず、正体は分かっているんだ。もとより指示したのが俺だからな。玄関に歩き、扉を開けると、私服姿の一之瀬がいた。

 学校の規則では、夜8時以降に男子が女子の階に行くことは禁止されている。しかし、同性間や女子が男子の部屋に行くことには特に言及はない。それでも人に見られれば噂は立つし、防犯カメラには写るので褒められたことではない。然れども、逆に考えれば8時以降は人の来訪が激減するため、見られることがなければ絶好の密談時間だ。確かに見られる危険性を考えれば、深夜の方が良いだろう。だが今日は平日。周りの目もそうだが、俺と一之瀬はまだ正式な関係性を持っている訳ではないので、今の時間帯がギリギリの妥協点だ。

 

「夜分にすまないな」

「ううん。私も二人っきりで話したかったから大丈夫だよ」

 

 一之瀬と軽く挨拶を交わしつつ、自室へと誘う。部屋に入ると、一之瀬は感心したように息をついた。

 

「へぇ~、綺麗な部屋だね」

「ありがとう。緑茶かココアかコーヒー、紅茶、牛乳、レモンティーならあるが何が良い?」

「プッ、選択肢が多いね」

「ああ。姉様の気分でいろいろな」

「お姉さん思いだね。じゃあ、ココアをもらおうかな」

「分かった。どこにでも腰かけて楽にしてくれ。遠慮は要らない」

「うん。そうさせてもらうよ」

 

 俺はココアを入れにキッチンへ向かった。準備が終わって一之瀬の元へ戻ると、彼女はベッドに腰を下ろして自分の足先を見つめながら鼻歌を奏でていた。俺が近付いて行くと、一之瀬は顔を上げて笑みを見せた。

 

「ほら、熱いから気を付けてな」

「ありがと」

 

 一之瀬は両手でコップを受け取り、フーフーと息を吹きかけて、ココアの温度を調節してから一口含んだ。ホッと息を吐いていた。俺は一之瀬から少し距離を取って同じくベッドに座った。

 

「俺との契約に興味はないか?」

 

 俺は座るや否や本題を切り出した。

 

「………内容次第、かな………」

 

 ほう?二つ返事で了承してくると思ってたけど、そうはいかなかったみたいだ。やっぱり考える時間が十分にあったのも一因かな?今の状況は完全に五分だ。一之瀬は対等の立場で俺と取引を試みている。流石はクラスを引っ張るだけはある。過小評価し過ぎたな。まあ、俺からすれば五分の関係じゃ物足りないんだけどな。

 

「なら先に内容を言おうか。一つ、俺は自分の思う最適なタイミングで一之瀬に助言しよう。一之瀬はそれを頭に置きながら行動してもらいたい。もちろん、それに従う必要は無い。どう活用するかは一之瀬次第だ。二つ、この関係性の秘密。いかなる場合でも、俺が矢面に立たないようにしてもらう。二人っきりの時じゃないと、俺は基本日和見になる。三つ、俺が行動しようとする時に、さりげなく許可を出して欲しい。あたかも一之瀬が指示を出しているように見えるのが理想だ。この三つを受け入れて欲しい」

 

 俺は人差し指、中指、薬指を立てながら契約内容を話した。さて、一之瀬、お前はどうでる?

 

「ふ~ん。助言は気分でする。俺の行動に口出しするなってこと?」

 

 おう………。随分と冷たい声音で返って来た。なんか、俺の言葉が刺々に意訳されてません?俺、めっちゃオブラートに包んだつもりなのに………。

 

「他言無用でな」

 

 とりあえず、ここは強気。

 

「私、ううん、私たちのメリットは?」

「それは俺ではなく、一之瀬が推し量るべきことだ。既にメリットの一端は垣間見えてると思うがな」

「………うん、まあ、そうだね」

 

 Bクラスが原作よりも多くクラスポイントを残せたのは、一之瀬が俺の助言から意図を汲み取ってクラス内にクラスポイントの可能性(明言はしてなかった)をいち早く提示したからだ。助言を与えてから三日。これが一之瀬が行動を起こすまでに要した時間。俺の助言込みで一之瀬がこの学校をなんとなく理解するのに約一週間と少しかかった。Aクラスは、俺たちBクラスの上にいる。俺の有用性は、示されたも同然だろう。

 

「………分かった。飲むよ。鬼龍院くんとの契約」

 

 一之瀬はココアの入ったコップを机の上に置いて、俺の方に体の正面を向けた。

 

「でも教えて?どうして鬼龍院くんは、この契約を私とするの?君が私たちを引っ張ってくれたらいいのに」

 

 真剣な表情で俺の様子を窺う一之瀬。いや、大半の理由は一之瀬教なるものが既に信仰されているからなんだけどな。と言っても意味は分かるまい。

 

「一之瀬はAクラスで卒業したいか?」

「うん。………うん?」

 

 何当たり前のこと言ってるのって顔をする一之瀬。

 

「そうか。入学して二日目、俺はAクラスで卒業することにそこまで価値があると思ってないと言ったのを覚えてないか?」

「えっ!?………あっ、そう言われればそうだった気がする」

 

 一之瀬が驚愕した後、二日目を思い出していた。今日までのことが二日目の会話を記憶から薄めていたのかもしれない。

 

「Aクラスの卒業特典に与らなくても、俺は自力で希望進路を切り開ける。自惚れでもなく、過信でもなく、ただの事実だ。だから、俺はこのままクラスが上がらなくても別に構わない」

 

 これは本当。姉様がそうであるように、自力で何とかできるものならば卒業さえできれば、それでいい。俺はそれにちょっとプラスして、この学校を楽しみたいんだ。故に俺はやりたいようにやる。ほら、地固めってこともあるけど、なにより影からの暗躍ってカッコええやん?

 一之瀬は、俺の考えが盲点だったとばかりに険しい表情をした。さあさあ、楽しくなってきましたよーっ!

 

「人の価値観は十人十色。今後、クラス間の闘争が始まるのは一之瀬も予想できているだろうが、俺はクラスの先頭に立つ気分じゃない。それだけだ」

 

 さあ、これで一之瀬が納得するかどうか。Dクラスのツンデレブラコンクール系女子なら「戯言なんか言ってないで、私のために馬車馬のように働きなさい」とか言いそう。ふえっ、綾小路よ、ご愁傷さまです。

 

「………鬼龍院くんがそういう考えなら仕方ないね。なら、私は君を最大限利用するよ」

 

 ほら見ろっ!聞いたか堀北妹よ!これが仁徳者だよ!天使だよ!女神だよ!

 

「それは一之瀬が俺からどれだけ引き出せるか、だな」

「君が私を利用するように、私も君を利用する。私は、このクラスのみんなでAクラスになって卒業したいから」

 

 もう、アレだね。一之瀬は聖人と呼ばれてもいいんじゃないだろうか?これだけ徳が備わっている人が、世界にどれだけいることか………。

 

「契約成立だな」

 

 俺はその言葉と共に立ち上がって、棚からクリアファイルを取り出し、一之瀬に渡した。渡したブツは、姉様からもらった小テストと中間試験の過去問だ。Bクラスは無料でこれを手に入れられるのだから、姉様様様だよなぁ。

 

「なに?これ?………前年度の過去問?」

 

 一之瀬は、俺から受け取った過去問を不思議な感じで受け取った。

 

「条件がある。他クラスには回さないようにしてくれ。上手く使えば中間試験を乗り切るどころか、Aクラスとの距離を詰められる」

 

 Aクラスに詰め寄れる可能性は低いがな。坂柳派が葛城派を放置するだろうから、俺たちの付け入る隙はそこにある。Aクラスはほとんどが学力優秀者であろうし、過去問があってもなくても乗り切ることはできるだろう。Bクラスにおいても、乗り切ることに関しては問題無い。問題は、どう勝つかだ。

 

「どうして他クラスに回さないの?」

 

 菩薩並みの慈悲を持った一之瀬なら、こう言うだろうなとは思っていた。一之瀬は多分、中間試験の成績でポイント変動があることには気付いているはずだが、彼女の懸念している事項は赤点による退学だ。善人たる一之瀬は、たとえ他クラスの退学者でも心を痛める。ほんと、善人過ぎないか?心が綺麗過ぎないか?だがしかし、それは俺が拒否する。

 

「一之瀬が憂慮していることは分かっている。だが、それは悪手だ。むしろ必要の無いことだ。後は自分で考えてくれ。ヒントは、目をつける生徒の特定だ」

 

 ミスったな。あー、もうほとんど答え言っちゃってるじゃん。難しいな、この立ち回り。綾小路を少し尊敬するよ。本当にアイツは教師に向いてる。父親の遺伝(笑)だろうな。

 ふと視線を時計に向けると、長い針が半周を過ぎようとしていた。

 

「そろそろいい時間だ、一之瀬。今日は有意義な話し合いだった」

 

 俺は立ち上がって、一之瀬を促した。一之瀬はもう少し俺がいる状況で考えたかっただろうが、そうもいかない。まだ俺の今日の予定は終わっていない。玄関先まで一之瀬を見送る。

 

「一之瀬、くれぐれも内密にな」

「………うん。君との契約は、ちゃんと守るよ」

 

 最後にお互い「おやすみ」と挨拶をかけて扉を閉めようとした。

 

「あっ、待って!」

 

 もう少しで扉が閉まるところで、一之瀬に呼び止められた。なんだ?なんだ?

 

「どうした?」

「………私、鬼龍院くんと一緒にAクラスで卒業したいからよろしくね!」

 

 改まって一之瀬が言った言葉は、改まって言う程のことでもないと感じた。どういう意図なのか、図りかねる。俺が首を傾げていると、一之瀬が説明し始めた。

 

「あ、あのね。君はAクラスで卒業しなくてもいいって言ってたけど、それなら私とこんな契約を交わす必要は無いよね?でも、鬼龍院くんは私と契約した。つまり、私たちがAクラスに行くために協力してくれるってことでしょ?分かりにくかったけど、そういうことだよね?」

 

 一之瀬がイタズラな笑みを浮かべる。えっ!?ちょっと待った!この状況、どう考えても俺が捻くれたツンデレって勘違いされてない!?マジッ!?ちょっと待って!

 

「………深読みし過ぎだ。俺はプライベートポイントさえあれば構わない」

 

 ぬおー!?めっちゃツンデレっぽいこと言っちゃったよー!うわっ!一之瀬が益々笑顔になった。これは、………どう考えても詰んでない?

 

「ふふふっ、そういうことにしとくね♪」

 

 一之瀬はもう一度「おやすみ」と一方的に口にして、俺の返事を待つことなく、エレベーターにスキップしながら向かった。おそるべし、一之瀬。俺はカッコイイ闇の住人では居られなかったようだ。一之瀬が見えなくなってから、完全に扉を閉めた。部屋に戻って、ベッドに腰掛けた。胸ポケットからスマホを取り出す。画面を見ると通話中という文字が浮かんでいる。

 

「そういうことだから、いいな?」

 

 スマホに話しかけると、押し殺していたのだろう笑い声が聞こえてきた。少々不機嫌になりそう。思ってもみない方向に舵を持ってかれた俺には止めることはできないけれど………。仕方ないので、通話相手がひとしきり笑い終わるのを待った。

 

『ハーッ、ハーッ、もう、君、最っ高!』

 

 通話の相手は、俺たちの担任、星之宮先生。一之瀬がこの部屋に来る以前から、実は会話をしていた。俺と一之瀬の関係を知らせておいて損はないと思ったから繋いだままにした。一之瀬の裏に俺がいることを知っていたら、星之宮先生は色々と安心できるだろうし、これからのBクラスの問題点に気付くはずだ。それに、俺に便宜を図ってくれることも多くなるだろうしな。

 初日以来、頻繁に連絡を取り合っている俺たちは、二人っきりになると敬語を使わなくなった。仲良くなるのは良いんだけど、彼女でも姉様でもないのに深夜まで相手をさせないでほしい。

 

「………もう切るぞ」

 

 それにしても、スマホ越しになかなか笑いおさまらない星之宮先生。俺は流石にシビレを切らしかけた。すると、星之宮先生の慌てた様子が窺えた。

 

『ちょっ、ちょっと待って!もう笑わないから!』

 

 必死に我慢しようとする星之宮先生は、それからたっぷり20秒かけて笑い止んだ。

 

『……ふう。あー、ごめんごめん、鬼龍院くん。怒った?』

「………どうでもいいから、とっとと話を済ませるぞ」

『もうっ、可愛いなぁ!鬼龍院くんは!』

 

 とりあえず、話ができない子は嫌いなので、通話の終了ボタンをポチッとな。ふー、やっと静かになったな。ん?スマホが鳴ってる。誰だろう?『星乃宮先生』?知らない子ですね。と、そのまま2分間放置して、一応出る。

 

『鬼龍院くん、私相手に放置プレイとか高度過──』

 

 とりあえず、反省の色が見えなかったので、もう一度通話を切った。さて、風呂にでも入ろうかな。気持ちを切り替えてリフレッシュ!風呂は命の洗濯って、あのミサトさんが言ってたっ!日本人にとってチョー大事!スマホはいいのかって?なにそれおいしいの?星之宮先生?そんな変態なんぞしらへんがな。

 

 

 

 

 風呂から出て、その他の諸々を済ませた後、一時間が経ったくらいでスマホを開いた。うわっ!着信が100件超えてる!?未開封メールが50件も!?アプリにも通知がひっきりなしに来てる!?最新のメールを開けると、「ごめんなさい」で埋め尽くされていた。こぇーよ!なんかヤバそうなので、電話をかけたらワンコールもしない内に出た。早いな。

 

『ヒッグ……スンスンッ……ヒック、ズズッ……ヒック』

 

 相手がガチ泣き?してる。こはいかに?

 

「………」

『ヒック……スンスンッ……』

「………」

『ズズッ……ヒック……』

 

 メールを古い順に開封していこう。

 

 一通目

 

 受信 鬼龍院圭介

 送信 星之宮知恵

 題名 無題

 

 本文 ごめーん!怒った?鬼龍院くんもお子ちゃまなんだね!カワイイなぁ。謝るから電話に出てね!

 

 

 五通目

 

 

 受信 鬼龍院圭介

 送信 星之宮知恵

 題名 無題

 

 本文 本当に怒っちゃった?ごめんね。先生、悪いことしちゃった。ちゃんと先生しなきゃいけないのにね。このままじゃ、先生失格だね。ごめんなさい。

 

 

 

 十二通目

 

 

 受信 鬼龍院圭介

 送信 星之宮知恵

 題名 無題

 

 

 本文 ごめんなさい。そろそろ電話出てほしいな。先生も笑い過ぎたと思うし、鬼龍院くんの気持ちを全然考えれてなかった。ちゃんとするから電話に出てください。

 

 

 二十五通目

 

 

 受信 鬼龍院圭介

 送信 星之宮知恵

 題名 無題

 

 

 本文 ごめんなさい。本当にごめんなさい。電話に出てください。もう限界なの。罪悪感で胸がはち切れそうなの。悪いことしたって自覚してる。だからちゃんと君に謝りたいの。機会をください。お願い。

 

 

 三十七通目

 

 

 受信 鬼龍院圭介

 送信 星之宮知恵

 題名 無題

 

 

 本文 どうして?どうして出てくれないの!?こんなに君のことを想ってるのに!出てよ!出てよぉ!お願いだから!!

 

 

 四十五通目

 

 

 受信 鬼龍院圭介

 送信 星之宮知恵

 題名 無題

 

 

 本文 私のこと、要らなくなっちゃったの?もう捨てるの?私がこんなにも君のことを求めているのに、君は応えてくれないんだね。そんなに他の娘が良かったの?私の何が不満だったの?

 

 

 

 四十九通目

 

 

 受信 鬼龍院圭介

 送信 星之宮知恵

 題名 無題

 

 

 本文 おねがいすてないで

 

 

 

 俺はソッとメールアプリを閉じた。30後半からの勢いが凄まじかった。取り敢えず、俺は何も見てない。いいね?俺は何も見なかった。

 

「………反省してるか?」

『………スンスンッ………うん……』

 

 まだ一ヶ月しか経ってないけど、聞いたことないか細い声音だった。まるで気の弱い幼児を相手しているように感じる。なんか、コッチが罪悪感を抱くな、これは。ちょっと空気を明るくしないと!

 

「お父さんはそんな風に育てた覚えはない。それは分かってるな?」

『……ズズッ…うん……ごめんなさい』

「ちゃんと謝れるなんて、知恵はいい子だな」

『ズズッ………えへへ、あたし、いいこー?』

 

 やばい、ちょっと楽しいぞ。もういっちょうっ!

 

「ああ、流石、俺の子だ」

『うん!パパのこどもだもんっ!』

「じゃあ、今日は遅いからもう寝ような」

『えー!まだパパとおはなししたいー!』

「早く寝たら、その分明日いっぱい話せる。知恵だったらどうすれば良いか分かるかな?」

『うんっ!はやくねて、パパとおはなしするのー!』

「流石は知恵だ。おやすみ、知恵」

『おやすみ、パパ』

 

 通話を切った。俺はスマホに充電器を差し込んで、部屋の電気を消した。布団に潜って素数を数えた。大義も名分もない。ムシャクシャしてやった。




 感想、評価、お気に入り登録、本当にありがとうございます。
 暖かいコメントに感無量です。

 一応、申し訳ないのですが、この投稿をもちまして一旦休止させていただきたいと思います。昨年と同じように、半年頑張ったで賞をするか、来年になるかはその時の作者次第です。気長にお待ちいただけると嬉しいです。

 ストックとしてはあと約3話ほど紙に手書きでは書けているのですが、パソコンに入力するのが間に合わずって感じです。
 作者のもう一つの作品、魔法科二次も興味がありましたらよろしくお願いします。

PS 誤字脱字報告もありがとうございます。めっちゃ助かってますm(_ _)m
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