大気が震える。
電光が迸り、風が震え上がる。
森丘に広がる閃光は、瞬時に収束し、凄まじい衝撃へと変貌した。
「らァッ!!」
それを、正面から迎え撃つ大男。
掲げた盾で、緑色の電光を、それを纏う剛翼を受け止める。
衝撃を殺し、受け止める――なんてことはなく。
「ぐあっ!!」
飛ばされた。
大男、アルフレッドは、ライゼクスの猛攻を前に、宙を舞う。
「正面から受け止めるなんて、無茶だよ!」
追撃を防ぐべく、彼の相棒、セレスは射撃を挟み込んだ。
ゲェレーラ•エスピノ。
先日狩猟したベリオロスの素材で、妃竜砲を強化したもの。
今回の狩猟に向けてチューンナップを重ねたもの。
何と言っても、今回のメインターゲットである飛竜ライゼクスは、氷に弱いのである。
その銃身から撃ち放たれた氷結弾は、ライゼクスのこめかみを確実に射抜いた。
宙を舞う大男へ追撃するべく、もう片方の翼を構えていた電竜は、それを叩きつけるのをやめた。
その代わりのように、鼻息を荒げ、セレスの方へと走り出す。虫の翅がしなるように、その黒緑色の巨体が迫る。
「ぬん!」
それを食い止める、別の影。
初老でありながら鎧を着こなし、走る飛竜の動きを止める男。
うねるような螺旋を撃ち放ち、ライゼクスの脇腹を確実に削った。鱗が割れ、肉を裂き、鮮血を吹き出させる。
ランスの奥義、スクリュースラスト。
彼が放ったのは、それである。
「お二人とも、引き付けいただき感謝申し上げる!」
腕を冷ますように槍を引き、ふうっと息を吐いたその男。
セバスチャンと呼ばれる、新たな仲間である。
「アルフレッド様! 大丈夫ですの?」
「あ、ああ……。何とかな……」
その隙に、生命の粉塵を撒き散らす少女。
セバスチャンに続く、新たな仲間。桃色の髪の片手剣使い、ウルティナである。
彼女の撒いた粉塵を吸いながら、アルフレッドは起き上がった。
「セレス様の言う通りですわ! あれを盾受けするのは無茶ですわ!」
「いやでも……お前さんの家来はやってのけてるしな」
「セ、セバスは別ですわ!」
アルフレッドの視線の先で、ライゼクスと正面からぶつかるセバスチャン。
迫る牙を、振り払った盾で受け流す。
噛むはずだった相手を見失い、宙を噛む飛竜のその顔に、鋭い刺突を放つ。
しかしライゼクスもまた、止まらない。身を翻し、空中から尾を振るう。
「なんの!」
セバスチャンもまた、譲らない。
尾の切先が触れる直前に、また盾を振るった。
触れればひとたまりもない、高電圧のその尾の先だが、盾の振り払いの前では無意味。
ただ意味のない放電をし、その尾に鋭い傷をもらうだけだった。
「すげぇな……。あれは一体?」
「わたくしが前聞いたのでは、何でも盾受けの直前に受け流すのだとか」
「受け流す?」
「ええ。モンスターの膂力の前では、人間の盾などまるで意味ないでしょう? でもセバスは、正面で受け止めるのではなく、斜め前で受け流すのですって」
「斜め前……」
「盾の角度が重要だとか、何とか。切先を横からぶつけて逸らすイメージと言ってましたわ」
「難しそうだ」
ウルティナの辿々しい説明に首を傾げながら、アルフレッドは武器を構える。
「ま、何にせよアドバイスを聞いといて良かった。衝撃は凄かったが、感電はしなかったし」
「翼の叩きつけを喰らって平然と立ちあがる方が、わたくしは驚きですわ」
「見ての通り、体だけが取り柄なんで……ね!」
そう言いながら、砲口を吹かす。
彼の持つガンランスは高圧を掛けられ、青白い炎が漏れ出した。
それを背後に回し、彼は飛ぶ。
文字通り、砲撃の反動を速度に変えて、彼は飛んだ。
ブラストダッシュと呼ばれる大技である。
「食らいやがれ!」
その勢いを叩きつけに変え、ライゼクスを叩き伏せた。
悲鳴と共に体制を崩す。その背に、彼は乗る。
「もらった!」
「アルフレッド殿! 盾を!」
「おう!」
セバスチャンのその短い合図に、アルフレッドは頷く。
頷いて、その盾を下にする。
ライゼクスと自身の間に滑り込ませるように敷いた盾。
その盾には、不気味な皮が貼り付けられている――。
「ゲリョスの皮を貼る、なんて。すごいアイデアだねほんと!」
感嘆の声を漏らしながら、セレスはマガジンを付け替えた。
貫通弾が込められたそのマガジンを嵌め込み、前転と共に構え直す。それはヘビィボウガンの狩猟技術の一つ、しゃがみ撃ち。
文字通り、しゃがむことで反動を押し殺し、高反動弾の連射を可能とする技である。
「アルフ! 援護するよ!」
その弾幕に気を逸らされて、ライゼクスは背中の男を退かすのも、銃撃を避けるのにも注力し切れなかった。
アルフレッドは、そんな隙を逃さない。
ゲリョスの皮を盾に貼り付け、その絶縁能力によって雷電を防ぐ。安定しない重心は、盾のベルトに足を差し入れることでなんとか賄った。
そして、銃槍を逆手に持ち直し――。
「腹一杯食いな」
その切先に灯る、青白い炎。
大量の空気が送られて、内蔵された火竜の骨髄が燃え上がる。
それは、火竜の吐息にも例えられる狩りの技。
ガンランスの真骨頂――。
「竜撃砲をな!!」
背中から浴びる超高温に、ライゼクスは悲鳴を上げて倒れ込んだ。
巨大が落ちる。
森丘に、轟音と地響きが駆け抜ける。
「今だよ!」
「今ですわ!」
「好機!」
緑に光る鶏冠のような頭に向けて、セバスチャンは突きを放つ。
あの鋭い尻尾には、呼吸を整えるように舞い斬るウルティナの姿が。
広がった翅には、セレスの貫通弾の雨が降り注ぐ。ステンドグラスのように美しい翼膜が、ひび割れていく。
「……楽しいな」
砲撃の反動で、余分に宙を舞っていたアルフレッドが、着地した。
硝煙を吹き消して、そんな一言を溢すのだった。
「狩りはやっぱり、楽しいぜ」
そこに、仲間が集まるのならば、なおさら。
そんな言葉をさらに付け足して。
彼もまた、走り出す。
「立ち上がります! お嬢様方、ご注意を!」
「は、はい!」
「がってんですわ!」
囲うように武器を振るう人間に、苛立った様子のライゼクス。
その尾を振り回し、周囲を薙ぐ。
ウルティナはすぐに後ろに跳び、その尾を躱した。
セバスチャンは、尾が自身を打ち付けるその直前まで引き付け、その瞬間に盾を振って受け流した。
そして、アルフレッドは――。
「あぶっ……ねぇ!!」
スライディングし、身を折り曲げるように避けながらその切先を薙いだ。
尾の付け根を切られ、ライゼクスは悲鳴を上げる。
「避けながら斬るとは、器用ですな」
「たっ、たまたまだ! たまたま!」
走る勢いが余って止まりきれず、このような避け方になってしまったのはアルフレッドのみが知る。
運良く躱すことができたことに、胸を撫で下ろすのも束の間。
ライゼクスが、後ろに飛ぶ。
二人の槍使いから距離を置き、再びその翅を大きく振り上げた。
「来る! 受け流せるか!?」
「これは流石に……っ!」
セバスチャンは早々と槍を背にしまった。
アルフレッドも、慌てて引き金に指を伸ばす。
「何でも受け流せるんじゃねぇのかよ!」
「老体に手厳しいですなぁ」
走って避ける老人に、砲撃の反動で横に飛ぶ大男。
虚空が叩きつけられ、緑色の電光が草原を駆け抜けた。
しかしそれも束の間、第二波が迫る。
もう片方の、翼膜が。
「セバス!」
走る老人を、後ろから叩き潰そうとする電竜。
ウルティナが、悲鳴に似た声で彼を呼ぶ。
「おっさん!」
アルフレッドも、思わず声を上げた。
セバスチャンは、走る。
草花が蹴られ、泥が舞う。
老体に鞭を打ち、前へ、前へと走り続ける。
しかしライゼクスも、それを逃すことはない。その巨体を生かし、翅を高く高く振りかぶる。
追い迫るように走り、その翼を激しく振るわせた。
「おおぉっ……!」
セバスチャンが駆け抜ける先。
森丘らしい、草花の広がるその大地。
砲撃の反動によって宙を舞っていたアルフレッドには、見えていた。
その大地が、六角形の紋様を描いていたことに。
直後、悲鳴。
老人のものではない。
少女のものでもない。
飛竜の、甲高い悲鳴だった。
ライゼクスが、落ちている。
地面の底へ、落ちている。
「あっ……落とし穴……ですわ。忘れてましたわ!」
事前に仕込んでいた落とし穴。
ライゼクスの巣を下調べし、草原に残っていた骨や血痕を手掛かりに狩場を見定め、そこに落とし穴を仕掛けた。
セバスチャンは、そこに向けて走っていたのだった。
「みんな、今のうちに体勢を整えて!」
セレスが叫び、ヘビィボウガンを折り畳む。
そのまま、特殊弾を装填して、再び展開。今度はその場に伏せ、スコープに右目を押し当てた。
「合図だ! 狙撃竜弾がくる!」
「わ、分かりましたわ!」
体勢を整える。
それは、狩りの前に決めておいた合図。
セレスが狙撃をする、その合図である。
アルフレッドは回復薬を飲み、セバスチャンは武器を研いだ。
ウルティナは、胸の高鳴りを抑えながら、セレスの方を見る。
直後、耳を劈くような音が響いた。
まさに、一瞬の出来事である。
超速度の弾道が、直後に炸裂する。
落とし穴で避けることも叶わないライゼクスは、首筋を射抜かれ、さらにそれが焼かれるという重傷を負った。
甲高い悲鳴が、狩人たちの耳にへばりつく。
「弱ってきましたな」
「だな」
「え、どうやって見分けるんですの?」
「翅だ。震えが
「はぁ〜……た、確かに」
規則性のある翅の震えが、失われつつある。
震えたと思えば止まり、止まったと思えばニ、三回震えてまた止まる。
アルフレッドの見解に、セバスチャンも頷いた。
「それにしてもおっさんよ、あの叩きつけは受け流せないのか?」
「無理ですな。この老体にあれは……枯れ枝を折るようなものでしょう」
「そうか……。受け流すといえど、攻撃は選ばなきゃなんねぇんだな」
「アルフレッド殿の体格であれば、できなくはないかもしれませんが。まぁ、回避するのが一番でしょうなぁ」
盾使いとしての二人の会話に、ウルティナは何とか入り込む余地を探す。
「盾弾き……憧れますわよね〜。わたくしもやってみようかしら」
「絶対やめとけ」
「許可致しません」
「猛反対!?」
そう言っている間に、ライゼクスは何とか落とし穴から抜け出した。
しかしその足取りは不安定。
アルフレッドの言う通り、弱りが見えていた。
「あ、逃げる」
これ以上の交戦の意思は無く、覚束ない足取りで歩き出す。
その方向は、森と丘の奥にある小高い山の洞穴。
飛竜が寝ぐらとすることで有名なそこに向けて、ライゼクスは飛び上がるのだった。
「ふう! 何とかなりそうだね」
木々の奥から現れたセレス。
銃を折りたたみながら、仲間の元へ合流する。
「お疲れ。いい狙撃だった」
「流石でございます」
「おかえりですわ!」
「みんなもお疲れ様! あとちょっとだね」
気流に負けるように体勢を崩しながらも、飛び続ける飛竜の背中を見ながら、セレスはマガジンを交換する。
その言葉に男性陣は頷くものの、ウルティナは少し複雑そうに表情を曇らすのだった。
「どうした?」
「……その、四人で一匹の獲物を追い込むのも、何だかなと思いまして」
「お嬢様……」
哀れみや同情の色だった。
その思いを汲み取り、セバスチャンもまた顔をこわばらせた。掛ける言葉を探すために。
「……ま、これが俺たちの仕事だしな」
アルフレッドは、平静を保ったまま言う。
「それに、忘れんなよ。あの飛竜は村を一つ潰してる。人の味を覚えた危険な奴だ。だから狩猟依頼が出てる」
その言葉に、ウルティナははっと顔を上げた。
「危険な飛竜を討伐して、名を上げるんでしょ? お姉さんを見つけるために」
セレスもまた、優しい声色でそう語り掛けた。
揺らぎそうな思いを繋ぎ止めるために。
二人の言葉を前に、ウルティナは両手で自分の両頬を叩く。
「……ごめんなさい! 余計なことを言って! さぁ、最後の仕上げですわ! キャンプのあれを持って!」
⚪︎◎⚫︎
「くっそ重ぇですわ〜!!」
ウルティナの声が響く。
丘に向けて歩き続けて、幾分かの時を経ていた。
それぞれ、大きなタルを持って歩き続けている。
大量の火薬を仕込んだタル――大タル爆弾Gを持って。
「これが作戦のうちだろ? とどめは寝込みを爆破するって」
「そうですけど……疲れましたわ〜!」
「よくこれでここまでハンターできたなお前さん」
「お嬢様は、抜群のセンスの持ち主ですが……やはり世間知らずでしてな。ご容赦いただきたい」
「セレス様は、辛くないのですか? 重いですわこれ!」
「ま、まぁ……いつもヘビィ持ってるし。慣れっこかな」
「わたくしよりちっこくて可愛いのに! 納得がいきませんわ!」
片手剣を使う彼女にとっては重い物は慣れてないのだろう。
アルフレッドはそう考え、彼女のタルを持ち上げるのだった。
「んじゃ、貰うわ。貰うから、武器の準備しといてくれ」
「アルフレッド殿。お嬢様をあまり甘やかしては……」
「まぁ、適材適所と思ってくれ。タルを運んでちゃあ、俺たちは戦えない。だから道中、頼むぜ」
両肩にそれぞれ大タルを担ぐ大男。
彼の体躯があってこそ為せる技である。
その姿に、セレスは目をまんまるとさせている。
「ま……任せてくださいまし! さぁ、行きますわよ! 家来たち!」
「誰が家来だ、誰が!」
「アルフ、そろそろ巣だよ。声落として」
「え? 俺が悪いのこれ?」
剣を掲げて走り出すウルティナ。見えてきた洞窟に向けて走り出す。
暗闇の奥のその空間には、傷ついて眠るライゼクスが荒々しい寝息を立てていた。
「衝撃を効率よく与えるには、やはり頭でしょうか。頭部付近に設置しましょう」
「了解」
「分かりました!」
三人が爆弾を抱えながら歩く。
しかし、そこに近づく新たな影。
食い残しを求めて、無謀にも飛竜の巣に入り込むランポスたち。
青い鳥竜が三匹、威嚇しながら近寄ってきた。
「げっ! こんな時に!」
「持ってるのは卵じゃないよ! あっち行って!」
人間が卵を運ぶことを学習したのか。
それとも、単純に人の味を学習したのか。
セレスの声も虚しく、ランポスたちは止まろうとしない。
しかし、その牙は、旋風のような刺突によって砕かれる。
ウルティナのレイピア捌きに、彼らは簡単に頭部を打ち抜かれたのだった。
「彼らはわたくしに任せて! 今のうちに!」
「お嬢様、無理なさらず!」
「大丈夫ですわ。これくらい!」
迫る爪を避け、その側頭部を突く。
背後から牙を振るう個体に、振り返って盾をぶつけ、怯んだ顎を貫いた。
上から跳び掛かる三匹目には、転がって躱し、隙だらけの頭を柄で殴る。そして怯んだ頭を反対の盾で殴り、無力化した。
最後に、未だ息がありこちらを狙っている個体の左目を、鋭い刺突で抉るのだった。
「すげぇなお嬢さん。囲まれても動じることなく……」
「ええ、センスは随一です。大型モンスターとの戦闘経験はまだまだですが、下位からしっかりと鍛えてきましたので」
「おかげで、爆弾設置に専念できるよ!」
「よし。置くぞ……」
大タル爆弾は、少しの衝撃でも爆発してしまう。
そのため、普段は矮小であるランポスでさえ脅威になりうる。
そして、設置にも最大の繊細さが必要となるが――三人は経験豊富なハンターである。
何事もなく、四つ。セレスの分、セバスチャンの分、そしてアルフレッドが二人分。
計四つの火薬庫が、ライゼクスの頭を取り囲んだ。
「さあ、いくか」
アルフレッドは、背中のガンランスに手を掛ける。
砲撃で起爆しようか、なんて考えていた彼に向けて、静止するように差し出される手。
「遠距離起爆、できるよ。任せて」
自信に満ちた表情で、セレスがそう言った。
あの怯えた表情とは随分違う。
頼もしくなった。そんな思いと共に、アルフレッドは頬を綻ばせるのだった。
「分かった。おっさん、離れるぞ」
「承知。頼みましたぞ、セレス嬢」
二人は後ろに下がり、それでも静かに、武器を構えた。
不測の事態に備えるために。
そしてその頃には、最後のランポスが断末魔を上げるのだった。
「終わりましたわ!」
「流石でございます、お嬢様」
ふうっと、額の汗を拭うウルティナ。
それでも、静かに銃を構えるセレスの姿を見て、はっと口を紡ぐのだった。
展開される銃身。
装填されるのは、貫通弾。
当てるのは、ライゼクスではない。彼の側にある大タルの爆弾だ。
スコープ越しに、瞳にタルを映す。
誤ってライゼクスに当てて起こしてしまえば意味がない。
眠って隙だらけのその頭に、一度に炸裂した爆風を当てなければならない。
安全に狩りを終えるのは、セレスの腕前に掛かっている。
汗が垂れ落ちる。
集中力が極限まで研ぎ澄まされる。
引き金に掛かる人差し指に、力を入れて――。
直後、音を置き去りにした。
「うおぁっ!」
洞窟を駆け巡る閃光と、ほぼ同時に届く爆風。
耳を響かせる爆音に、ハンターたちは前後の感覚を失う。
それなりに距離を空け、盾を構えていたものの、その衝撃はやはり、人間にはあまりにも大きかった。
四発の大タル爆弾Gを、一直線に射抜いて炸裂させる。
その衝撃たるや、想像を絶するだろう。
そんな衝撃を至近距離で、それも頭部に浴びたライゼクスはといえば。
小さな吐息と共に、仰け反らした体を、糸が切れたように倒れさせる――。
まるで枯葉のように、力尽きた羽虫のように、あまりにも軽い倒れ方で、静かに地に臥すのだった。
黒い甲殻がさらに黒く、硝煙の香りを漂わせていた。
焼け焦げた翅は、震えることはなかった。
「……やった」
動かなくなった巨体を前に、ウルティナがそう溢す。
「やりましたわー!!」
村を襲って人を食う、極めて危険なライゼクス。
それを狩猟せよという緊急のクエストを、達成することができた。
その喜びを前に、思わず駆け出してしまう。
まるで年端のいかない少女のようなその姿に、セレスは緊張の糸をほぐすのだった。
静かにスコープから目を離し、ほっと息を吐く。
――その束の間。
「……お嬢様ッ!!」
ライゼクスが、起き上がった。
怒り心頭。
怒りだけで全てを支配したその飛竜は、焼け焦げて落ちゆくその翼を高く高く掲げる。
目の前に躍り出た小さな人間を、叩き潰すために。
「くっ!」
セバスチャンが、前に出る。
急なことで動けないウルティナを庇うように、前に出る。
しかし、その翼膜の叩き付けは、とても防げる威力ではない。
とはいっても、彼女を連れて逃れる機敏性も、彼にはない。
セバスチャンに取れる手は、この盾で翼を受けること。主人を守るためには、ただそれしかなかった。
「セバスさん!!」
慌ててスコープに目を当てるセレス。
そのスコープに、滑り込む赤髪の大男が映った。
「おっさん!」
「……うむ、やるしかないですな!」
割り込んだアルフレッド。
彼の声に応えるように、盾を構える。
ランスとガンランス。
二つの盾が、ライゼクスの翼を迎え撃った。
振り下ろされる翼。
焦げて、黒くなってなお迸る緑の電光。
風を切るその超質量を前に、二人の槍使いが息を呑む。
極限まで引き付けて、触れる直前に盾を横に振り払った。
「ぐっ……!」
想像以上に重い衝撃だ。
正面から受けたアルフレッドは、確かに弾き飛ばされていた。
それでも、今は。
セバスチャンの技量と、アルフレッドの筋力。
二つが重なり、今確かに、確かに少しだけ、その翼膜を逸らしたのだ。
「ウルティナ!」
叩き付けが横に逸れ、その尖骨が地面に突き刺さる。
二人の槍使いは、右手の衝撃に痺れ、攻勢に移れないでいた。
しかしアルフレッドは、叫ぶ。
命を賭して主人を守った家来を、守り返せ。
そんな思いを込め、ただ彼女の名前を呼ぶ。
突然の出来事に理解が追いつかず、棒立ちだった彼女はその声に――。
「……はっ」
跳躍し、前に飛んだ。
引ききった弦のように、左手のレイピアを引く。
「やああぁぁぁっっ!!」
それは、全身全霊の突きの構え。
鋭い切先を、ただ一直線に前に打ち放つ。
体勢を崩すライゼクスの、その脳天に向けて。
爆風で鱗が剥がれ、肉――どころか頭蓋骨が剥き出しになったその頭へ。
鋭い刺突は、露わになった弱点を的確に貫いていた。
鮮血が舞う。
赤黒く、明らかに命の綱が切れた血潮が。
静かに彼女が着地すると、ライゼクスもまた、今度こそ力尽きて倒れ伏すのだった。
「……き、緊張しましたわ〜!!」
大きなため息。
それも束の間、どっと倒れ込む彼女の姿に、アルフレッドは苦笑する。
「リオレイアの亜種も倒したんだろ……。焦らせやがって」
「お嬢様は経験不足でございまして。ご容赦いただきたい」
「おっさんこそ、あの叩き付けは逸らせないって言ってたのによ。前に出ちまったな。大した忠誠心だ」
「お褒め預かりまして。アルフレッド殿が助太刀くださらなければ、どうなっていたか……。感謝申し上げます」
そう言って、二人は互いの盾を軽く打ち合った。
盾使い同士の健闘を讃え合う行為である。
「みんな! 大丈夫!?」
駆け寄るセレス。
三人の無事を確認して、糸が切れたように座り込む、
安堵に力が抜けたようだった。
「何とかなりましたな」
「危なかったよ……。ほんとにヒヤッとしたんだから!」
「勝てばいいんだよ勝てば。終わり良ければ全て良しだ」
「ですわね! わたくしたちの大勝利ですわー!」
嬉しそうに、レイピアを高く掲げるウルティナ。
その姿にセバスチャンとセレスは微笑む。
アルフレッドもまた、微笑んだ。
四人で狩りをすることができた。
しがらみのない、それぞれが手を取り合ってする狩りが。
ガンランス使いとして体験したことがなかったその彼に、内心心を躍らせずにはいられなかったのだった。
「アルフ、嬉しそう」
「え?」
セレスが、微笑んだ。
その優しい微笑みが、アルフレッドにはどこかくすぐったかったようだった。
モンスターハンターワイルズ!!
大変楽しみですね!
ガンランスの武器紹介動画見ました?あれ最高ですよね。
溜め砲撃の溜め段階増えてる?砲撃の反動でステップからの薙ぎ払い?盾の構えにジャストガード判定ある?しかもカウンターできる?地上で薙ぎ払いフルバーストできるし、なんかクイックリロードで竜杭砲装填されてるし、その瞬間盾光ってるからもしかしてブレイヴスタイルみたいにクイックリロードにガードポイントあるかもしれないし。そしてあの、竜杭剥き出して回転突進するやつ!あれリボルバーの回転利用してドリルしてるんかな。もうたまらん!Fの砲撃ブーストかブラストダッシュみたいな、前に出る技も入れてくれればもう何も思い残すことはありません。カプコンさんよろしくお願いします。
…というガンランス熱が高まって久々の更新してしまいました。創作意欲が爆上がりしている。お盆で時間に余裕があるのも相まって、書けちゃった!ほんとお待たせしてすみません。
この作品は不定期ではありますが、ガンランス熱を放熱するためにこれからも少しずつ書いていきたい所存です。
新たな仲間二人を含めた狩りの描写ですが、なかなか難しかったです!見せ場を全員分用意するのは大変ですね。でも楽しかった。
ウルティナは突き技を得意とした片手剣使い。セバスはジャスガ特化のランサーです。今後も活躍させてあげたい!
ということで、閲覧ありがとうございました!