ラストリロード   作:しばじゃが

26 / 60
湯煙と盾と少女たち

 湯煙が、彼らの頬を撫でる。

 ユクモ村の門戸を叩く、四人の狩人たちの。

 

「わあぁぁ……ここがユクモ村ですの? すばらしいですわ! 素朴で味わい深い、秘境の香りがしますわ!」

「すごい良い香り。アルフ、これって?」

「ああ、温泉の香りだな。相変わらず良いもんだ。おっさんも経験あるだろ?」

「ええ、まぁ。今回は私めの都合に合わせてもらい、申し訳ありませんな」

 

 一人、湯煙と風情ある建物に囲まれた村の光景に目を輝かせる少女。ウェーブの掛かった桃色の髪が美しい、ウルティナ。

 一人、湯煙が溶けるような銀の髪を棚引かせる少女、セレス。隣の大男に、親しげに話し掛ける。

 一人、その言葉に優しく応えつつ、もう一人の初老の紳士に話を振る赤髪の男。アルフレッド。

 そして最後、今回の旅の要因ともなったウルティナ御付きの騎士、セバスチャンである。

 

「何でも緊急会議なんだって? ギルドからの推薦で」

「そうですな。このような引退した身を呼び寄せるなど、人使いの荒いことです」

「それだけの非常事態ってことなのかな……。あたしたち、こんな風に楽しんでていいのかな?」

「何を仰いますの。折角の遠出ですわ! 楽しまなくては! あら、何かしらあれ! 卵がたくさん温泉に使ってますわ!」

「……お嬢さんは相変わらず平常運転だな」

「うん、なんか安心しちゃう」

 

 何事にも興味が尽きないようで、温泉卵に飛びついたと思いきや、足湯の方へと駆け出すウルティナ。

 その姿に、三人は表情を緩めるのだった。

 

「んで、その案件はやっぱり口外できないのか?」

「緘口令がありますな。民衆を混乱させたくない、ギルドの計らいでありますゆえ。申し訳ありません」

「いや、良いんだ。すぐにギルドの方に行かなきゃいけないのか?」

「幸い航海も滞りなく、遅れなく来れましたからな。数日は余裕があります。お嬢様の観光にお付き合いしようかと」

「真面目だなー」

「アルフ、あたしも観光したい!」

 

 セレスの言葉に、アルフレッドは頷いた。

 ユクモ村は、観光地としても有名だ。

 渓流を見下ろす山岳地帯に根差したこの温泉街は、林業と温泉、そしてそれに合う美食で観光客の絶えない名村である。

 アルフレッドは流浪のハンターとして、ここに訪れたことがある。経験豊富なセバスチャンも同様だ。一方で世間知らずなウルティナと、故郷への仕送りに専念していたセレスは、初めての来訪となる。

 その見慣れない光景に、ひたすらに目を輝かせるのだった。

 

「セバス! おすすめのドリンクを教えなさい!」

「そうですな……ミラクルミルクやセレブリティーでしょうか。ラッキーラッシーもいいですな。お嬢様の好みの味だと思います」

「ではそれを全部!」

 

 以前は集会浴場で販売していたドリンクを、一部出店として足湯付近で販売しているらしい。

 それを聞きつけては、即座に豪快に購入するウルティナ。その姿に、アルフレッドは苦笑する。

 

「とんでもないな、お嬢様。セレスもなんか食うか?」

「……じゃ、じゃああの卵食べてみたい」

 

 セレスが指すのは、卵形の容器が蒸気を浴びてカタカタと震えているもの。

 そこから漂う香りは、まさに卵のそれである。不思議なことに、温泉の香りは卵の香りに似ているのだ。

 

「温泉卵か、いいね。アイルーの旦那、二個欲しい」

「ニャ! 毎度!」

 

 店番をするアイルーが二個、器代わりの貝殻に入れて二人に渡す。

 白い膜に包まれた卵は、中身の黄金を仄かに映している。太陽光を浴びてさらにきらめくその卵を前に、セレスは目を輝かせた。

 

「貝殻を器にするとは、風情があるな。ほら、これ掛けると美味いぞ」

「わっ、これって?」

「魚や海藻を煮出して作ったタレだ。この辺り特有の味だから、慣れないかもしれないが……」

「う、うん……いただきます!」

 

 受け取ったタレを一振り、貝殻を傾け、中身の卵をつるんと呑み込むアルフレッド。

 その姿を見て、セレスも見よう見まねでタレを掛ける。両手で持った貝殻を傾け、こくりと呑み込んだ。

 瞬間、目を見開く。

 口に卵を含んだまま、少女が大男に瞳で訴えかける。

 

「とろっとした食感が美味いだろ。まろやかで、タレの旨みが良い後味でさ」

 

 その言葉に、返事よりも咀嚼を優先するセレスは何度も頷いた。

 

「あー、タレじゃなくて、この辺りじゃダシっていうんだっけ。まぁ何にせよ、たまんねぇよな」

 

 首を痛めそうなくらい頷き、呑み込むのも惜しそうに噛み続ける。

 そんな相棒の姿に、アルフレッドは微笑む。

 狩りでは見せない、穏やかな笑みだった。

 その顔に、セレスは一瞬、咀嚼することを忘れる。

 

「なんですのそれー!! わたくしも食べたいですわ! セバス!」

「はっ、只今」

 

 束の間の静寂を破るように、入り込むウルティナ。

 彼女の一言に、セバスチャンは即座に財布を出すのだった。

 

「うっひょおぉぉ! 美味ですわー!」

 

 育ちの良さを感じさせない、たるみきった笑顔で卵を啜るウルティナを前に、アルフレッドの笑みは消えた。

 

 

 

 ⚪︎◎⚫︎

 

 

 

「さて、頼むぜおっさん」

「アルフレッド殿は勉強熱心ですな……。こんな老体で宜しければ、お付き合い致しましょう」

 

 ユクモ村に滞在して二日目。

 アルフレッドとセバスチャンは、村の修練場にいた。

 そこは、近隣のカムラの里より輸入した木製のからくり人形が設置されている。

 ハンターが武器の試運転をしたり、防御の練習をしたりできるようにと、特殊な仕掛けが施されたそのからくりは、ガタガタと、歯車の軋む音を立てていた。

 

「ヨツミワドウ、だっけ。見たことはないが」

「両生種の新種だそうですね。なかなか愛らしい」

 

 そのからくりは、亀のような甲羅と、独特のくちばしの付いた顔が特徴的だ。

 顔には何やら仕掛けが仕込まれている他、大地に触れる後ろ足が回転するように稼働している。

 

「まだまだ観光してもよいでしょうに。修行したいとは……お若いのに、見どころの尽きぬ御仁だ」

「体が鈍っちまうからな。それよりも、あれ教えてくれ。ジャストガード!」

 

 セバスチャンの会合まで、まだ日数の余裕がある。

 観光もそこそこに、アルフレッドは稽古を彼に申し出た。この歴戦の騎士が得意とする、ジャストガードと呼ばれる高等技術。その修得のために。

 

「良いでしょう……。しかしこれは、生半可では習得できません。適性もあります。効果のほどは保証致しかねませんので、ご了承を」

「ああ。前ダイミョウザザミに試してみたが、まるでできなかった。あっけなく吹っ飛ばされたよ」

「いきなり実戦で試すとは……無謀でございますな。まずはこのような訓練器で、修練あるのみです」

「分かった。よろしく頼む」

 

 セバスチャンが、木製のレバーを振り下ろす。

 それと同時に、からくりが音を立てて動き出した。忙しなく左右に回転し、軋む音を立てながら後ろ足で地面を蹴る。

 一定のリズムで繰り返されてはいるものの、それは確かに、モンスターの挙動を再現していた。

 

「……その前に、一つよろしいですか」

「なんだ?」

「アルフレッド殿は、何故そのように強さを望まれる?」

 

 射抜くような視線。

 それを受け、アルフレッドはたじろぐこともなく。

 ただ快活に、歯を見せて笑うように答えるのだった。

 

「ガンランスをより使いこなしたい。それだけだ」

 

 あっけらかんとしたその答えに、老年の紳士は呆気に取られるものの――耐えきれなくなったように、笑う。

 

「貴方という人は……裏表のないお方だ」

「そうか?」

「私めもこの老体。いつ果てるやも分からぬとあれば、騎士は多い方が良い。よろしい、伝授致しましょう」

「ちょっと待て。俺はあの嬢ちゃんの護衛なんてお断りだからな」

 

 不穏な言葉を前にアルフレッドはそう抗議するが、セバスチャンは無言を返す。

 ただ、右手の大盾を構えるのみ。

 

「いいですか――チャンスは一瞬です」

 

 からくりが軋み、足を振り上げる。

 

「相手の攻撃を、ギリギリまで引き付ける。そしてそれが自分に当たる。その直前を待つ」

 

 限界まで糸が引き絞られ、木製の足が上がり切る。

 その瞬間に、滑車が解放された。

 勢いよく糸が解け、からくりの足が落ちてくる。

 初老の紳士目掛けて、落ちてくる。

 

「要は、相手の爪に空を切らせること。そして隙を生み出し、露わになった頭に鋭き一閃を放つ。返し技の極意であります」

 

 その足が、セバスチャンに触れる直前。

 その足の側面を。

 彼は鬼の如き形相で、盾で弾き飛ばすのだった。

 

「正面から防ぐのではなく、横から叩き、軌道を逸らす。これによって、被害を最小限に抑えます」

 

 そして、空を切った足の横で、老騎士は静かに槍をもたげる。

 

「ひょおっ!!」

 

 続く一閃が、からくりの装甲に穴を開けた。

 まさに、見事な手腕と言わざるを得ない。そんな思いで、アルフレッドは拍手を送るのだった。

 

「技量の問われる技でありますが、真に必要なのは、心です」

 

 槍をひゅんと戻し、縦に構える。

 流れるようなその動作の中で、彼は語った。

 

「迫る脅威を受け止め続ける、強い心。怯まぬ意思が必要なのです」

「怯まぬ意思……」

 

 思い返せば、あの時は盾の振りが早かったのではないか。

 ダイミョウザザミの爪を思い、アルフレッドは一人笑う。

 

「なるほど。これは楽しくなりそうだ」

 

 大男、前に出る。

 

「横から盾をぶつける感じか?」

「ええ、軌道を逸らすイメージですな。例えば……そうだ。アルフレッド殿。私めの顔に一発、正拳突きをどうぞ」

「あ? なんだ急に」

「この技のイメージですよ、イメージ」

 

 盾を置きながら、にこやかに笑うその老人の真意が分からない。

 アルフレッドは困りながらも、同様に盾を置き、右肘を引くのだった。

 

「じゃあ遠慮なく!」

 

 引き絞ったそれを、解き放つ。

 腰の回転を合わせ、加速。セバスチャンの、その顔に。

 

「ふんっ……!」

 

 当たるはずだった。

 拳が痩せた頬を打ち付ける。

 まさにその瞬間に。

 ――老人の細腕が、若者の握り拳を、丁度手首のあたりを叩いた。

 叩いて、横に逸らす。拳は空を切り、大男は体勢を崩すのだった。

 

「おわっ……」

「まぁ、ざっとこんな感じですな。如何です?」

「如何ですって……まぁ、やられてみると、何されたかよく分かるかも」

「側面から叩いて、軌道を逸らす。それを盾の振り払いで行う。こんな感じですかな」

「なるほど……受け流すっていうよりは、弾くって感じなんだな。だから角度が大事ってことか」

「ほう。お嬢様からお聞きになりましたか」

「まぁな。でも、感覚は掴めた気がする」

 

 手応えを感じたように、拳を数回開閉させて。

 アルフレッドは、再び盾を握るのだった。

 

「よーし……来い!」

 

 からくりの前に立ち、振り下ろされる足を待つ。

 歯車が音を立てて、再びその木材の塊を持ち上げた。

 

 風を切って落ちる足。

 赤髪に届く、鈍重な木塊。

 迫りくるそれを、彼は見切った。

 

「ここだ!」

 

 弾く。

 側面から弾く。

 カァンと音を立てて、木の足が弾かれた。

 弾いた本人は、微動だにせずからくりの前に立ち続けている。

 もし目の前のからくりがモンスターだとしたら、きっと晒した隙を突かれ、手痛い反撃を受けていただろう。

 セバスチャンは、そう確信した。

 

「素晴らしい! それです。何と筋の良い……もうモノにするとは」

「……おっさんの教え方が良いんだよ」

 

 興奮を抑えきれない様子のアルフレッド。

 肩が少し震えている。

 自己研鑽を怠らない若者の姿に、老人は笑顔にならないではいられなかった。

 

「いやはや素晴らしい。お嬢様にも見習っていただきたいものですな」

 

 そう言いながら、再びからくりのレバーを倒す。

 すると今度は、その挙動が変わった。足の回転は鎮まり、頭が下に降り始めたのだ。

 

「なんだ?」

「ブレスの模倣です。中身は水鉄砲なので、危険はありません」

 

 射線上に立つ、セバスチャン。

 今度はその盾を、正面から構える。

 

「ジャストガードの本質は、相手の体勢を崩して弱点を打つもの。となれば、このようなブレスは弾いたところで意味がありません。相手との距離がありますゆえ。まぁ、リスクを負って弾くより、堅実に防ぐ方が賢明でしょうな」

 

 そう言って、素直に水の塊を盾で防ぐのだった。

 その様子に、アルフレッドはふむと考える。

 

「こればっかりはどうしようもないのか」

「ええ、防ぐか避けるか。これらに尽きます」

「確かに堅実だが……受け身を取らされるんだよな。受けるのも体に響くし。何とかなればと思ってたんだが」

「む……申し訳ありませんが、私めの教えられることはここまでですな」

 

 弾ける水の塊が、荒々しく飛散する。

 頬についたそれを拭いながら、セバスチャンは深々とお辞儀する。

 講義終了、とでも言いたげな様子で。

 

「……受け流す、か」

 

 かつてのライゼクスの狩りで、ウルティナが言っていたこと。

 彼女は、付き人の技をそう解釈していた。

 アルフレッドは、それがどうにも気になっていたのだった。

 

「どうされました?」

「いや……」

 

 ただ防ぐだけでは、直撃ほどではないにせよ、痛みを免れない。

 避けるにしても、後手に回らざるを得なくなる。

 そんなことを、彼は考えていた。

 

「よし……」

 

 その姿は、まさに新しいおもちゃを試す子どものよう。

 何か思いついたように、彼は前に出た。

 赤髪を揺らしながら、水を吐き出すからくりの前に、仁王立ちする。

 

 受け流す。

 老騎士の技は、盾を振り払い弾くもの。

 だが、受け流すならば?

 そんな問いを自らの心に投げ掛けながら、アルフレッドは右手に力を込める。

 迫り来る水の塊を受け流す。

 そんな思いで、盾に力を込めるのだ。

 

「はぁ!!」

 

 直撃の瞬間、盾を振る。

 イメージは、迫り来る水を横に受け流し、即座に攻勢に転じる。

 盾に水が触れ、確かな感触が、彼に届いた。

 

「……あ」

 

 しかし、水は弾け散る。

 受け流すどころか、全身への直撃だ。

 アルフレッドは、たちまち水浸しになった。

 つまるところ、失敗である。

 

「こいつはなかなか難しいな……」

 

 滴る水も気にすることなく、アルフレッドは考えに耽る。

 盾使いたちの夜は、長かった。

 

 

 

 ⚪︎◎⚫︎

 

 

 

「ふぁ〜……極楽極楽、ですわ〜」

「あったかいね〜、幸せ〜」

 

 一方その頃、女性陣は温泉へ。

 集会浴場の、石に囲まれたような温泉に浸かる少女たち。

 それぞれ、湯浴みの心地よさに力を抜いて、石にその身を委ねていた。

 

「こんな時でもアルフは修練か……もったいないなぁ、こんな良い温泉があるのに」

「真面目ですわね〜庶民の方は。わたくしはやはり楽しみ尽くしたいですわ。温泉、最高ですわ〜」

 

 ただ水を温めただけでは到底届き得ないその泉質。

 透き通るようで、それでいて滑らかに纏うように。

 腕を撫でると、柔らかな感覚が手の平に満たされる。ウルティナは、満足そうに鼻を鳴らすのだった。

 

「これを我が家に導入したいですわ!」

「温泉は火山があるからこそできるみたいだから……王都の方は火山あるのかな?」

「……いくら金持ちでも、地形だけは動かせませんわね」

 

 なら今目一杯堪能しますわ、と。

 ウルティナは早々と切り替えて、肩まで湯の中に浸す。

 嬉しそうな鼻歌は、湯に包まれて小振りな気泡へと変わっていった。

 

「ユクモ村のハンターは、ここで英気を養ってから狩りに行くんだね。変わった人たちだなぁ」

「でもこんな温泉があれば、それも分かる気がしますわ〜。こんっなに極楽ですもの!」

 

 肩どころか首まで浸かるウルティナに対し、セレスは一度立ち上がり、足だけ浸すように石に腰掛ける。

 砂漠の暑さには慣れても、温泉の熱さには慣れないらしい。火照った体を冷ますように、体を縦に伸ばすのだった。

 

「……そういえば、気になっていたんですけれど」

 

 褐色肌を灯籠の灯りに照らしながら、手を扇代わりにして仰ぐセレスに向けて。

 ウルティナは、ふと思い出したように、話し掛けるのだった。

 

「お二人は、どういう関係ですの?」

「うぇっ?」

 

 突然の、それも単刀直入の問い掛け。

 『お二人』という言葉が、誰と誰を指すか。聞かずとも察しがつき、セレスは間の抜けた返事をする。

 

「セレス様とアルフレッド様、どういう関係で組んでらっしゃいますの?」

 

 そこには悪意も何もない、純粋な好奇心で輝く瞳があった。

 

「年頃の男女が何もないわけがなく――まさかお二人、俗に言う『お付き合い』というものをされてらっしゃいますの!? 気になりますわ〜!!」

「えっ……えぇ!? いや、そんな……!」

 

 その問いかけには、流石のセレスもたじろいだ。

 仰ぐことも忘れ、両手を慌てて左右に振る。

 頰の赤らみは、温泉の火照りのせいだけではなく――。

 

「お顔真っ赤ですわよ?」

「いや、その、これは!」

 

 慌てて両頬に手を当てる彼女の姿に、ウルティナは悪戯っぽく笑う。

 その視線に耐えきれなくなったように、セレスは口を開いた。

 

「えっとその、付き合ってる……わけじゃ、なくて」

 

 しどろもどろになりながら、言葉を繋げ続ける。

 

「あ、あたしがハンターができないって、悩んだ時に、一緒に狩りに行って、くれたの。あたしのリハビリに、付き合って、くれたの……」

 

 もはや懐かしささえ覚えるその記憶を、彼女は語った。

 故郷が砂漠にあること。

 その砂漠で猛威を振るう、ディアブロスがいたこと。

 アルフレッドがそれを撃退し、さらに自身の狩りに同行してくれるようになったことを。

 それを繰り返すうちに、いつしか一緒に狩りに行くことが、当たり前になっていたことを。

 

「狩りのパートナーっていうか、なんていうか。と、友達! そう、友達なの!」

「友達! 狩り友達! フレンドっていうやつですね!」

 

 側から見たら、随分まごついた説明だっただろう。

 だが、純真な貴族の娘は、その説明に納得するのだった。両手を合わせ、ぱっと花が咲くように笑う。

 

「友達……素敵な響きですわ。憧れます」

「え? それって、どういう……?」

「わたくし、このような身分ですし。友達らしい友達なんていないのですわ」

 

 セレスの問いに、ウルティナは語る。肩まで湯に浸しながら。

 

「昔から、側にいるのは使用人か家庭教師。同世代の庶民の方とはそう触れ合えません。かと言って、貴族同士の交流なんて、家財のお寒い自慢合戦ですし。姉が嫌気を差したのも納得ですわね」

「そ、そう……なんだ」

「ハンターになってからは、これまで会ったことないタイプの方々に出会えましたわ。でも、セバスがいますし、関係が続くことも珍しくて……」

 

 ウルティナの語りに、セレスは戸惑う。

 かける言葉が分からず、ただ彼女の隣を埋めるように、その身を湯に浸すのだった。

 

「今回が初ですわ。セバスの用事での遠征に、同行していただけるなんて」

「アルフが……何だっけ。あ、そうそう、こっちのモンスターの素材で欲しいものがあるって、珍しく同調したんだよね。あたしもつい、ついてきちゃったし」

 

 元々各地を転々としてたみたいだし、フットワークも軽いみたい。

 そう繋げようとしたセレスだったが、言い切る前に遮られる。

 突然握られた両手の平。

 驚きのあまり、言葉を失う。

 

「わたくし、嬉しいんですの! 肩を並べて狩りができた方々と、こうして一緒にまた旅ができることが! 舞い上がってしまってますの!」

「え、え?」

「アルフレッド様とセレス様! お二方と一緒にいると楽しいのです。初めての感覚ですわ、なんだかくすぐったくて、そわそわして……」

 

 手探りで言葉を探す。目を上下左右に動かしながら次の言葉を紡ぎ出そうとするウルティナ。

 そんな彼女の手の平に包まれながら、セレスは言葉を待った。

 

「……だから、その、もし、セレス様さえよかったら――」

 

 思い切って、声に出す。

 全力の、思いの丈を、ぶつけるのだった。

 

「わたくしと、お友達になってください!!」

 

 純粋なウルティナの、実直な言葉。

 その言葉に、セレスは嬉しそうに微笑む。

 花が咲くような笑顔だった。

 

「うん! よろこんで!」

 

 ユクモ村の夜は更けていく。

 湯煙が、柔らかく星空を彩るのだった。

 




ユクモ村っていいですよね。
やはり温泉や和風の建物など、馴染みのある要素が多くて、どこか故郷めいた感覚を覚えるんですよね。3rdといえば、MH3から無事ガンランスが復活し、ただ蘇っただけじゃなく、フルバーストという大技を引っ提げて帰ってきたんですよね。なんと素晴らしい。まさに、革命的作品です。
…まぁ、AGガンスという闇を産んだ作品でもあるんですけどね。
セバスチャンは、例えるならブシドーランサーです。その技を、今回アルフレッドは伝授されたわけですね。ブジドーガンスは、カッコいいですが…その操作難度に驚いた記憶があります。あれを使いこなせる人、素晴らしいです。
それでは、次回の更新で。
閲覧ありがとうございました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。