カラン、と、氷が音を立てる。
それが穏やかな店内に響き、演奏ボックスの柔らかな音色も相まって、心地よい空気を作り出すのだった。
バー•ラージャンハート。
キャラバンの竜車に造られたその小さなバーは、酒の香りと花の香りを薄暗い店内にまとめ、大人の魅力を十分に湛えた、心落ち着ける世界を形成していた。
そのカウンターの端を陣取り、爽やかな一杯に口をつけるアルフレッド。その頬はアルコールによるものか、若干赤らんでいた。表情も穏やかで、上機嫌であることが一目瞭然だ。
「嬉しそうね、アルフ」
「ん……まぁな」
「美味しい? バフ•ハイボール」
「うん、美味い」
バフ•ハイボールと呼ばれたそれは、新大陸のセリエナ蒸留所が丹精込めて、現地の植物を用い、数年掛けて熟成させたウイスキー、『バフバロー•トレース』を、まるで雪山の如き大きな氷で冷やし、炭酸水で割ったもの。
バフ•ハイボールの『バフ』は、バフバロの名を冠すると共に、まるで鬼人の粉塵の如く、飲む者を高揚させる。そんな、ダブルミーニングなネーミングなのである。
「……まぁ、諸説はあるけどね」
「名付けた調査員が、洒落好きだったんだな」
「そうかもね」
分厚い化粧に大柄な体躯が眩しい、バーのマスター。彼女のうんちくを聞きながら、アルフレッドは穏やかに笑う。
まるで少年のように快活な笑顔だった。荒んだ――いや、やさぐれた彼の姿を見てきたマスターは、少し驚いたように目を開き、しかしすぐに、優しく微笑むのだった。
「本当に嬉しそうね。その笑顔は、お酒だけじゃなさそうだわ」
「そうか? いやほんとに、このハイボール美味いよ。普段はストレート派なんだが……これは、炭酸の気泡が心地いい。ほどよい甘さが、氷で引き立ってて最高だ」
「バフバロー•トレースが、甘くて飲みやすい酒なのも大きいわね。ウイスキーらしい香りと品の良さ。新大陸でも、ファンは多かったわ」
「へぇ……マスター、おかわり」
アルフレッドは迷いなく、酒を追加で注文する。
いつも以上にご機嫌な彼の様子に、マスターは「はぁい」と嬉しそうに酒を注ぐのだった。
その間に、赤髪の大男は店内を見渡す。
狭い店内に、客は二人のみ。アルフレッドと、落ち着いた印象の男。機嫌の良い彼とは対照的に、まさに落ち込んだような、意気消沈した様子で酒を啜っていた。
その姿を例えるならば、仕事がうまくいかずにヤケ酒に浸るギルドや組合の職員といったところか。
バルバレの夜は冷える。しかしこの店は、まるでキャンプの焚き火のように、旅人の心を温かく癒すのだ。
アルフレッドも、もう一人の客も、そうした温もりを求めて、この店に足を運んだのだろう。
「はい、お待たせ。気に入ったのね」
「まぁな。いただきます」
マスターから受け取った酒を前に、大男は口角を大きく上げた。まずは溢れる香りを嗅ぎ、一口分を舌に乗せるように飲む。ごくりと喉を震わせ、その深い味わいに身を震わせるのだ。
バフバロー•トレースは、様々な穀物を用いたグレーンウイスキーと呼ばれるもの。連続式蒸留機で作られたそれは、高濃度のアルコールで満たされているが、クセや匂いは驚くほど優しく、酒好きの間では『
その静かに燃える味わいに、アルフレッドはうっとりと目を細めるのだった。
「うん……やっぱり美味いね。バフバロの描かれたラベルからは、想像できないほど上品な味だ。豪快と思いきや、柔らかで繊細な味。すごい酒だよ、マスター」
「良かったわ。それにしても、本当にご機嫌そうね。何かいいことあった?」
愛おしそうに、ボトルを眺めるアルフレッド。
そんな彼に向けて、カウンターから身を乗り出すように、マスターはそう問い掛ける。
心なしか、その瞳が好奇心で輝いていた。
「そんなにご機嫌そうか? 俺」
「ええ、とっても。いつもはもっとひねた顔してるのに、今日はずっとご満悦な感じよ。どうしたの、ほんとに」
「んー、仕事の羽振りがいいってのも、あるけど――」
「けど?」
「……いや、たぶん、あれだな。あれが嬉しいんだ」
「あれ? あれって何よ。もったいぶらず教えなさいよ」
うりうり、と言いながら肘をアルフレッドに押し付ける。
そんなマスターの仕草を、いつもの彼なら露骨に不機嫌になって振り払っていたことだろう。
しかし今日の彼は違った。振り払いつつも、口角は上がったままだった。
「組んでんだ」
「え? 何?」
「人と組んでんだ、それも四人パーティで」
戦闘街のティガレックス防衛戦から、森丘でのライゼクスの狩猟、そしてユクモ村への遠征。
どれも、セレスとウルティナ、セバスチャンと組んでの仕事だった。一人ではなく、四人で組んで行ったのだ。
その事実を、順を追って話すと、マスターは何度も「え?」「どういうこと?」と返す。話の展開に、思考が追いつかないようだった。
「アルフが組んでるの?」
「ああ」
「ガンランス使いなのに?」
「そうだ」
「人付き合い下手なのに?」
「失礼だな」
「いっつも周囲のハンターを見下してるのに?」
「それは悪意ある偏見じゃないか?」
「……単独専門なのに?」
「……大型専門、だよ」
何度も質問を重ねるマスターと、その度に否定するアルフレッド。
その応酬を終えたマスターは、数秒の静寂の後、張り裂けんばかりの大声で驚くのだった。
「ええぇぇー!! あのアルフが、人と一緒に狩りやってるなんて! ペアならまだしも、四人で!? これはお赤飯ものよー!」
「やめろよ恥ずかしい……あ、マスター。ハイボールおかわり」
「ほんっっっとに、信じられないわ。世の中、何がどう転がるか分かんないものね」
動悸が収まらない様子で、酒を注ぐマスター。
いつもなら流れるような所作で注ぎ込むそれが、今では小刻みに震えている。
人付き合いの点で、そんなに心配されていたのかと、アルフレッドは静かに察し、心の中で少し反省するのだった。
「あー、でも、そのティガレックスの話は聞いたことあるわよ。ドンドルマの防壁を破ったんですって? それを討伐したハンターがいたって号外読んだけど、まさかアルフだったなんてね」
「銃槍使いって書いてたか?」
「いいえ、片手剣使いと、ヘビィガンナーと、槍使いってだけ。もう一人が巨龍砲を使ったって書いてあったわ。それがアルフね」
「そうか……。流石の巨龍砲の前じゃ、ガンランスも霞んじまうわな。しかしまぁ、露骨に避けやがって。嫌われてんなー、ガンランス」
「まぁまぁ。でもそのティガレックス、ウイルス感染個体だったんでしょ? 今思えば、あれが先駆けだったのね。それも極限状態なんて、事態はよっぽと深刻なのね」
「……? 何の話だ?」
「あら、知らないの? 今バルバレやドンドルマは、ウイルス蔓延の話で持ちきりよ。依頼も殺到中。主に遺跡平原で、ウイルス感染モンスターがたくさん暴れていて……問題だらけだわ」
「そうなのか? 何でまた」
「いつも、大物を求めてクエストボードを欠かさずチェックしてたのにねぇ。人は変わるものね」
感慨深そうに、マスターは目を伏せた。
アルフレッドは文句を重ねようとしたが、何と言えばいいか分からず、ただ酒を喉に流すのだった。
「ドンドルマに来たティガレックスも、元々は遺跡平原にいた個体って話だわ。蔓延の大元は、おそらく遺跡平原ね。商隊もそこを避けてるっていうし、お酒の入荷にも支障あるし。困っちゃうわ」
「そうなのか」
「しばらくは仕事に困らないと思うわよ。感染個体は危険だから、狩猟許可されるハンターも限られると思うし」
「……心躍るな」
静かにハイボールを飲みきり、ふうっと大きく息を吐く。
そうして、空になったグラスをカウンターに置いたところで――真横に立つ男に姿に、アルフレッドは気づく。
先程まで、気落ちした様子で静かに酒を啜っていた男が、立っていた。
着崩した服に、ずり落ちた眼鏡と共に。
縋るような表情で。
「……すか」
「あ? 何だ?」
「……使いなんですか」
「何? 何なんだお前さん……」
「――あなた、銃槍使いなんですか!?」
大声を出すことに慣れていない、裏返った声でそう問い掛けるその男。
痩せた体躯に細腕は、明らかにハンターの類ではない。着崩れてはいるが、ある程度の清潔感があるその姿は、文化人かギルド職員か。
事務仕事か、それに類するような仕事をしているような、そんな大人しそうな男だった。
「あ、申し遅れました。わたし、こういう者で――」
「――え……お前さん、これ」
渡された名刺に書かれた素性。
アルフレッドは、予想だにしない正体に、浮き足だった心を思わず鎮めてしまう。
「何? どうしたのアルフ?」
「……編集者だ」
「え?」
「『月刊・狩りに生きる』の、編集者だ!」
その言葉に、礼儀正しくお辞儀する。
目の前の男は、ハンターの間で人気の月刊誌『狩りに生きる』の編集者だったのだ。
その事実に、アルフレッドは驚きを禁じ得ないようだった。
「申し遅れました。『月刊・狩りに生きる』武器ロマン紀行コーナー担当、ミスルと申します。どうぞよろしく」
「あ、ああ……アルフレッドだ。よろしく」
「失礼ですが、隣に座らせていただいても?」
「……構わないが」
許可をもらうや否や、着席。
それと同時に、懐のペンとメモ帳へと手を伸ばす。
流れるようなその所作に、大男二人組は、彼が本物であることを否が応でも感じとる。
「いやぁ、突然申し訳ありません。実はわたし、武器コラムを担当してまして。しかし取材が難航して、締切が危ういところだったんですよ」
「お、おう」
「そこに現れたのが、あなた! これはまさに、天啓だあぁぁ……! どうか、取材させていただきたい! この通り!」
カウンターに額を擦り付けるように頭を下げて、銃槍使いに頼み込む。
突然の事態に困惑しつつ、マスターと目を合わせる大男。興奮した様子で、うんうんと頷く彼女を前に、彼もまた静かに頷いた。
大人しそうな顔をしていながら、静かな闘志を感じられる。まさにサイレントスピリッツだ。
アルフレッドは、そう思った。
「とりあえず……どんな記事なんだ?」
「ずばり! 珍しい武器!」
「珍しい武器?」
「酒場に行くと、片手剣使いや大剣使い、そして各種ボウガンと……オーソドックスな武器を使うハンターの多いこと多いこと! わたしは、気になるのですよ。なぜみな、オーソドックスな武器ばかり手に取るのか……。奇抜な武器を持つ人は、どのような心で、それを手に取るのか。そんな人のことを是非記事にしてみたい! わたしはそう考えています!」
「なるほどね〜。それは確かに、気になるわね」
「しかしそんな人ほど、出会えない! 取材もままならない! 締切も危ない……ヤケ酒しかないとここに来たのが、まさに天啓でした。是非お話を、聞かせていただけませんか!」
「いいんじゃない。受けてあげたら? アルフ」
「……まぁ、いい、けど」
そっけなくそう言うものの、アルフレッドは若干の興奮を覚えていた。
ガンランスについて、語れる機会。
そう多くはないであろうその機会が、今目の前にあるのだ。銃槍使いとして、心を躍らせずにはいられなかった。
「ガンランスについて、語ればいいんだな?」
「ええ。では早速! まず、あなたについてお聞かせください」
「あ? 俺について?」
「はい、まずはあなたの人となりを知りたくて。お名前をお聞かせください!」
「……アルフレッド。アルフレッド=ジラウドだ」
「アルフレッド……さん。随分背が高いですね。何を食べたらそんな風に?」
「え? 肉かな。こんがり肉」
「ズバリそれは、あなたの大好物でしょうか?」
「一番好きなのは、シチューだ」
「え!? あたしの酒じゃないの?」
「なるほどなるほど……ありがとうございます。それでは、早速いきましょう。まずは、今回の根幹とも言える質問ですね。なぜあなたは、ガンランスを?」
「かっこいいからだな」
「なるほど! シンプルでいい! ではあなたとガンランスの出会いとは?」
もう少し語りたいところだったが、すかさず次の質問が重ねられる。
思うところもあれど、アルフレッドは素直に答えるのだった。
「……若い頃に、村に火薬職人の爺さんが来てな。その時見た試作品のガンランスを持たせてもらったのが、きっかけだ」
「ほう。その時はすでに、あなたはハンターでしたか?」
「いや。その時は家業の炭鉱を手伝ってた。十二、いや十三の時かな……」
「その時、あなたはどう感じたか覚えてますか?」
「退屈な毎日に、光が差した思いだったね。こんな面白いものがあるのかって。ガンランスを使いたくて、ハンターを志したんだ」
「なんと! つまりあなたのハンター道は、ガンランスそのものなのですね!」
簡単な身の上話を、ミスルと名乗る編集者は素早くメモに刻んでいく。
話しながら、聞きながら、それと同時に書きながら。テンポよく聞き取りを始めるその男に、大男二人は驚きながらも、その筆が止まるまで見守り続けた。
「……では次! あなたにとっての、ガンランスの魅力とは?」
「うーん、魅力は数えきれないほどあるが……やはり破壊力だな」
「破壊力ですか? 具体的に詳しくお聞かせ願えます?」
「ガンランスは間違いなく、高威力武器だ。でも、同じ高威力武器でも、大剣やハンマーとは明らかに異なる点がある」
何を言っているのか、と言いたげに目を点にするミスル。
しかしアルフレッドは、構わず語り続ける。
「大剣やハンマー……重量武器は確かに強い。モンスターの素材を使えば、その強さはさらに伸びる。でも、それを振るうのが人間の力である以上、一定の限界があるんだ。所詮人間の力じゃ、モンスターの強さには及ばない。甲殻が硬い相手なんかは特にな。いくら武器を振るっても、そいつの命には届きやしない」
「ふむふむ」
「だが、ガンランスは別だ。火薬のもたらす圧倒的なエネルギーを解き放つことができる。どんな硬い相手も、どんな部位も、軽々と爆砕することができる。その光景は、いつだって惚れ惚れするね。他の武器にはない、絶対的な破壊力。それこそがガンランスの魅力だと、俺は思う」
「ロマンね。まさにこれは、ロマンだわ」
「……ま、中には火薬以上に武器の力を引き出す、達人級のハンターもいるから、ガンランスの方が強いとは一概に言えないんだけどな」
「それもまた、ロマンね」
アルフレッドの言葉に、マスターもうんうんと頷く。
ミスルは、思いがけない言葉を前に、筆をさらに加速させた。
「アルフレッドさんにとって、ガンランスはまさに破壊の象徴、と。ガンランス歴は、どれくらいなんですか?」
「うん? うーん……養成所時代は一通り武器を試してみて、大剣や太刀で修練したが……駆け出しの頃は片手剣を使ってたんだよな」
「あら、そうなの? 意外だわ」
「片手剣って、必要素材が少ないから安いだろ? とにかく安価な武器でちまちま金貯めて、ガンランスを買ったんだ。そこからはずっとガンランスだから……もう十年近くは使ってると思うぜ」
「ものすごい打算的な理由で片手剣使ってたのね。片手剣使いに殺されるわよ」
「でも、おかげで穂先外して片手剣みたいに使うこともできるようになったし、あの期間も無駄じゃなかったなと感じるよ」
「十年ですか。ベテランの領域ですね……素晴らしい。狩りは主にどんなことを?」
「大型モンスターを専門にしている。十年間、ほとんど一人で狩りをしていたな」
「大型モンスター! 一人となると、イャンクックですか? それとも、まさかリオレイアとか……?」
「ああ。飛竜の他にも、牙獣や海竜も狩るぞ。今までで一番強かったのは……ディアブロスかな。撃退止まりで、仕留めきれなかったけど」
「ディ……ディアブロス? 砂漠の暴君を? 一人で?」
信じられない。そんな様子で目を丸くさせるミスルだったが、あのドンドルマのティガレックスを仕留めたこともマスターから耳打ちされ、渋々納得するのだった。
ずり落ちた眼鏡を整えつつ、次の質問を重ねる。
「単独で狩りをするようになったのは、どのような事情があったのですか?」
「大体予測はできるだろ?」
「え、えぇ……まぁ……」
端的に言えば、ガンランス使いは嫌われている。
そもそも、彼の記事のコンセプトから、この話題になることは、アルフレッドも何となく察していた。
「他の剣士とはろくに組めたことなくてな。組めても、素材欲しさの連中とは反りが合わなくてよ。素材が痛むってさ。結局、シンプルな駆除依頼を単独で受けることが多かったな」
「アルフレッドのことは、よく話題になってたわよ。ガンランスを使って一人で狩りをする、おかしい奴がいるって」
「酒場で飲んでると、コソコソ話してるのはよく聞こえたぜ。まぁ、誰が何話そうと俺の仕事には何ら関係ないし、構わないが」
「……真に困難なのは、周囲と反りが合わないことなんですね」
「大方あれだろ? ガンランス使いが同行者を殺傷したって話。砲撃に巻き込まれたのか、わざと撃ったのか知らないけど、そんな噂があるから風当たりが余計きついんだよな」
ミスルは、筆を止めた。
筆を止め、アルフレッドの目を見る。
琥珀色の瞳に向けて、次の質問を投げかけるのだった。
「……それでも、あなたがガンランスを担ぐ理由とは」
「決まってるだろ。ガンランスが好きだから。ただそれだけだよ」
その言葉に、ミスルの中で何かが走った。
まるでナルガクルガのように、さらに速度を上げてペンを走らせる。いや、その一心不乱な様子は、むしろティガレックスだろうか――。
彼の質問は止まらず、バルバレの夜は更けていく。
ただガンランスについて語らう声が、風を、月を、星空を、優しく撫でるのだった。
⚪︎◎⚫︎
「――で、それが記事になったんだ」
「ああ。早速買ってきたぜ」
ギルドストアから戻ってきたアルフレッドが、意気揚々と見せた『月刊・狩りに生きる』の最新号。
一連の出来事を聞いたセレスは、目を輝かせてそれを見た。
「なんて書かれてるのかな。たくさん話したんでしょ? ガンランスのいいところ」
「ああ。フルバーストの良さや竜撃砲の魅力など、話題が尽きなかったぜ。さて、どれどれ……」
封を開け、目次から武器特集のページを探す。
その見出しに書かれた、『特集! ガンランス使いというハンターの希少種!』という記事を、アルフレッドは開くのだった。
――読者の方々、ガンランスという武器を使うハンターを見たことはあるか。
それは希少であり、稀にしか見ることができない、まさにハンターの希少種と言っていい。だが、我々武器ロマン紀行編集部は、その幻の存在との接触に成功した。それは、モンスターの希少種と同じく過度に大型化した、恐ろしい存在だった。本記事は、その生態についての研究報告の場とさせていただきたい。
まず第一に、彼らの思考は常軌を逸している!!
砲撃という、モンスターはおろか自分の体も爆砕しかねない技に、もはや取り憑かれていると言っていい。何よりも、破壊力を求めるその姿は、暴君そのものだ。素材が痛むのも構わない。相手が打ち砕かれる瞬間を眺めるのを好む。一説には、その砕けた血肉をシチューにして啜るのを好むという……。
次に、彼らはロマンのみを追い求める!
体裁も、世間体も関係ない。ガンランスのみを求め、ガンランスのみを愛でる。仲間も友達も好まない一匹狼か、それとも、砲炎に脳を焼かれた憐れな宿主か。ガンランスを振るうことだけを考え、その圧倒的威力にロマンを見出す。ロマンという物差ししかもたぬのだ。
最後に、彼らは非常に希少であるため、極めてレアである!
生態から察する我々の考察だが、ガンランス使いはおそらく寿命が短い。世間体を気にしないゆえに社会的地位をもたず、また単独で活動するため命の危険に常に脅かされている。また、強烈な反動のそれはきっと、使用者のハンター生命を縮めるだろう。つまり、もし読者の皆様がガンランス使いを見つけた時、それはきっと希少な存在のため、温かい目でその動向を見守ってあげるのがおすすめだ。近づくのはおすすめしない。きっと、その炎で火傷してしまうから――。
今回の生態報告は以上だ。
彼らの思考は、極めて異常だ!
今後も、その生態を追い続けることとする。
月刊狩りに生きる 武器ロマン紀行編集部
「……アルフ、これ」
青い顔で、アルフレッドを見るセレス。
その大きな手は、わなわなと震えていた。
眉間に、深い深い溝が刻まれていく。
「……じゃねーか」
「え?」
すーっと息を吸うその所作を、セレスは「怒ったティガレックスみたいだった」と、後から語る。
「これじゃ完全に、珍獣扱いじゃねーかああぁぁぁーッ!!」
轟竜の如き怒りの咆哮が、バルバレにこだました。
あの、狩りに生きるの編集者は、
アルフレッドは、その事実を前に、静かに歯を食いしばるのだった。
バフバロー•トレースは、お酒好きな人ならピンとくるのではないでしょうか。ちなみにアルフレッドの名前の由来も、実はウイスキーからきています。フランスの高級ウイスキー、『アルフレッド•ジロー』。2024年現在、ボトル一本あたり五万は下らない高価なウイスキーです。彼の姓は、ジローのローマ字読みですね。
さて、『月刊誌狩りに生きる』の存在が懐かしく感じる今日この頃でございます。せっかくなのでそのあたりに着目する話を書きたく、今回はこのような話になりました。ガンランサーの生態…とても興味深いですね。
ガンランスの火薬を用いた戦法は、他の武器にはなかなか見られないもの。それについて語る会でした。
それではまた次回で!閲覧ありがとうございました。
ちなみにラウドスピリッツとは、個性の強いモルトウイスキーのことです。原酒らしい、飲みにくさと強さ、そして美味さを兼ね備えた酒ですね。私はスコッチの、特にアイラが大好きです。