ラストリロード   作:しばじゃが

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十二発の暴君

 ドンドルマの路地で、豪快な笑い声が響く。

 

「がッはッは! なんじゃお主、有名人になっとるじゃないか!」

「……うるせ。俺はちょっと不服なんだよ」

 

 喧騒と、煤と、硝煙の香りに包まれる加工屋――『火薬庫』で、号外を読む老人と、椅子に座って頭を掻く男。

 あの腕自慢祭りの開催から時が経ち、その内容は号外として、バルバレのみならずここ、ドンドルマでも話題を呼んでいた。

 

「バルバレ市場に、大量の豪龍岩が立ち並ぶ…ふむふむ。そりゃ大儲けじゃろうなぁ。市場が潤い、街が輝く。羨ましいのう」

 

 号外に書かれている内容は、主に二点。

 豪山龍の希少な鉱石が多く採れたこと。

 また、そのために四人組のハンターが奮戦したこと。

 何と、号外には、彼らの偉業を讃えられるために、一人ひとり似顔絵付きで特集が組まれていた。それには、火薬庫の老人も感慨深そうに目を細めるのだった。

 

「四人組のハンターたち、豪山龍を撃退す……か。勇ましいのう。古龍と渡り合って生還できるハンターは多くない。お主がここまで成長していて、わしも鼻が高いわい」

「まぁ、爺さんのガンランスのおかげなのは間違いないな……にしても、見ろよその似顔絵」

「おお、よく描けとるわい」

「いや、その誇張されたまつ毛を見ろっての……」

 

 バルバレの腕自慢祭りは、かつて我らの団専属ハンターが単身ダレン•モーランを撃退したことが話題を呼んだ。その際、似顔絵を担当した受付嬢が件のハンターの顔を、まつ毛を濃く描いてしまったという――。

 結果、この『まつ毛のハンター』というジンクスが腕自慢祭りに定着してしまった。

 それゆえに、アルフレッドやセバスチャン、ウルティナ、セレスの似顔絵は、まつ毛を盛りに盛られた、原型とはかけ離れた姿をしていたのだった。

 

「……いや、まぁセレスは……こんな感じかもだけど」

「おお、この前連れてきためんこい子か! 確かにあの子は、まつ毛が長かったのう!」

「砂漠育ちだから、砂から目を守るために長いんだろうな」

「まつ毛がビシビシで可愛い子じゃったな。付き合ってどれくらいじゃ?」

「付き合ってねぇよ。ただ組んでるだけだ」

「何!? 付き合っておらんのか! 一体何をしとるんじゃお主は……」

「色恋目的でハンターしてるんじゃねぇし」

「全く、つまらん奴じゃのう」

 

 アルフレッドの答えに、火薬庫の老人は呆れたようにため息をつくものの――「そうそう」と、何かを思い出したかのように話題を切り出した。

 

「あの子、ヘビィ使いじゃったよな?」

「ん? ああ。それが何だ?」

「今度都合が合ったら、是非わしの店を尋ねるように言ってくれんかの」

「別にいいけど……ん……? まさか爺さん、年甲斐もなくセレスを……?」

「馬鹿もん! わしは職人じゃ! 仕事の話じゃ! 大体わしからすればお主もあの子もみんなガキ! 何の対象にもならんわ!」

「じゃあ何でだよ?」

「ふふん、聞いて驚け! ヘビィボウガンに、ちょっと良い仕込みを思いついてな。火力のさらなる増強を狙えるぞ」

「へぇ……すげぇな。爺さん、火薬なら何でもできるんだな」

「何てったって、わしは火薬庫じゃからのう!」

 

 自慢げに鼻下を人差し指で擦りながら、老人は胸を張る。

 いつだって変わらぬこの自信家に、アルフレッドは頬を綻ばせた。

 

「まぁ、また今度声かけとくよ。それよりも爺さん、このガンランスについて教えてくれよ」

「おお! わしの可愛い新作ちゃん!」

 

 本題を切り出す。

 まさにそんな表情で、アルフレッドは立て掛けておいたガンランスを手に取った。

 闇のように黒い砲身に、妖しげに輝く刀身。

 太いシリンダーに、独特の意匠が施された盾。

 随分前に討伐した黒蝕竜。その素材を火薬庫に持ち込んで作成した、彼の新たな相棒だった。

 

「うへへ、可愛いのう。この光を映すような暗い闇色に、触角や爪を練り溶かした、優美な刀身……。古龍になりきれない、それ故にある儚さと美しさ。これはまさに、今季一の逸品じゃ! 使用感はどうじゃ!? どうじゃ!?」

「それが、まだ大型モンスターとしっかり戦ってなくて。何とも」

「何!? こんな素敵な子を持ちながら、戦わせてないじゃと!? 何たる不躾な輩じゃお主は! 信じられんぞ! ぬがあぁぁぁッ!」

 

 顔を真っ赤にして怒る老人に呆れながらも、アルフレッドは弁明する。

 しばらくは、狂竜ウイルスの後遺症に悩まされていたこと。

 リハビリとしての狩りも、セレスの付き添いの元、比較的安全な採集や小型モンスターの駆除などをしていたこと。

 そして、先日の豪山龍戦では、基本的には表皮の鉱石を採取することに従事しており、直接戦うことはなかったこと。

 ――その際、ブラストダッシュからのフルバーストをしたくらい。

 そう言い終えたところで、「でもな」と彼は切り出すのだった。

 

「フルバーストをしてみて、思ったんだよ」

「何じゃ」

「それまで三発、すでに空を飛ぶために使ったんだよな。でもな、フルバーストするとな、弾が多いんだよ。明らかに、装弾数より多く炸裂してるんだ。これどうなってんだ?」

 

 アルフレッドの問いに、火薬庫は間の抜けた顔をする。

 それでも構わず、彼は問いを重ねた。

 

「あと砲身、何だこれ? 両サイドにあるよな? これも分かんなくてさ」

「何じゃあ〜!? お主、これ送った時、事細かに説明文書つけたぞ! 読んどらんのか!?」

「いやぁ……説明書って、読むの苦手でさ。読もうとしても、頭が痛くなってな」

 

 怒り心頭の老人を前に、アルフレッドはそう振り返る。「これもウイルスの後遺症かな……」とも付け加えた。

 そう、このガンランスはバルバレの腕自慢祭りの前に完成したものの、祭りの開催時期との関係で、直接店舗に取りに行くことができなかったのだった。

 そのため説明書付きの郵送という形になり、このような結果となっていた。

 

「しかも装填しようとしても、装填の仕方が分からねぇ。折り畳もうにも、刃は折り畳めるけど、シリンダーは出せないし」

 

 ダレン•モーラン戦には意気揚々と担いだものの――あの船首の岩を砕いた後、再装填を試みた彼は、新たな難題に直面することとなった。

 これまでのガンランスとは、全く仕様が異なるのだ。装填すらままならない。

 そんな報告を前に、火薬庫は肩をわなわなと震わせる。明らかな怒気が、漏れ出していた。

 

「全く……このガンランスは、これまでの物とは違う、まさにチャレンジャーな代物じゃ! 新たな機構について、噛み砕いて文章化したんじゃがな……」

「何だっけ、『新しいけど、使用感はそのまま』って書いてあったっけ。確かに、普通に使う分には違和感もなく使いやすかったぜ」

「そうじゃろうそうじゃろう! やはり話が分かるの〜お主は!」

 

 突然の笑顔。嬉しそうにアルフレッドの方を叩く。

 相変わらず感情の起伏が激しいこの老人に、アルフレッドは思わず呆れるのだった。

 一方、そんなことも露知らず、途端に機嫌を直した火薬庫は、天井からぶら下がるロープを引いた。

 

「仕方ないのう……今回はまぁ、学のないお主に手紙で説明した気になってたわしにも、非があるかもしれんな。実際に使用しながら説明しよう。どれ、久々にどうじゃ。試射室に」

「え……いいのか?」

 

 ロープによって、作動したからくり。

 音を立てて、カウンター奥の扉が開く。

 鉄の扉の向こうには、アルフレッドも滅多に足を踏み入れない空間があった。

 試射室。

 火薬庫は、そう呼んでいる。

 

 鉄で防護されたその空間は、側から見れば溶鉱炉のようでもあった。

 修練場と同程度に広く、その周囲を鉄壁で覆われている。天井はなく、青い空が広がっていた。

 一方の床はというと、そんなものはなく、焼き焦げた土や爆風で吹き飛んだであろう陥没があるなど、異様な状態である。

 要は、鉄で囲われた中庭だ。ここを、火薬庫は試射室と呼んでいた。

 

「ここなら試し撃ちにもってこいじゃ。確かに、脳まで筋肉のお主には、口頭で話しても理解しにくい内容じゃったからな。折角じゃ、実戦で伝えるとするか」

「ここ、街ん中だろ。こんなとこで撃っていいのか?」

「何、ギルドには申請を出しとるわい」

「でも、住人トラブルとかさ。騒音で文句言われたり」

「大体この路地は廃店舗ばかりで、人が住んどるところが少なくてな。楽なもんじゃ」

「そうなのか……」

「ま、流石のここでも、覇山竜撃砲の試射は危険すぎてできんがの。ゴア•マガラ戦のデータ、大変助かっとるぞ! ……と、話が逸れたな。早速、こいつのレクチャーを始めるとするかの」

「頼むぜ」

「さて、まずは装填についてじゃな……どこにあったかの」

 

 彼の口ぶりを証明するように佇む、試射室に刻まれた数多の焼け跡。彼がここで日夜実験を繰り返しているのは明らかだ。

 驚くアルフレッドを他所(よそ)に、老人は隅にあるボックスを漁り始めた。

 取り出すは、黒い円柱状の物体。

 その表面には、計十二個の穴が光を暗く閉じ込めている。穴の数こそ違えど、その形状には、アルフレッドは見覚えがあった。

 

「シリンダー、か?」

「そうじゃ。これはシリンダー。十二発の砲弾を詰めることができる、特殊なシリンダーじゃ。そしてこれと同じものが、そのガンランスにも装着されている」

「十二発!?」

「そうじゃ。今までにない特殊構造じゃ。まぁ、まずはそのシリンダーを、お主も出してみい」

 

 そう言われて、彼は背中のそれに手を伸ばした。

 いつもの通り、銃槍を二つに折って、シリンダーを確認しようとする――のだが。

 折り畳むための接合部が、ない。

 折り畳む機能そのものが、ない。

 

「やっぱこれ、折り畳めねぇよな?」

「ああ。こいつは中折れ式(トップブレイク)ではない。スイングアウト式じゃ!」

「スイングアウト?」

 

 スイングアウト。

 聞き慣れない言葉に首を傾げるアルフレッドを傍目に、火薬庫は黒いガンランスへと手を伸ばした。

 その後方部――シリンダーの尻の部分。そこには、湯呑みを縦に割ったような形の装飾が施されている。

 いや、装飾ではない。ストッパーだ。これはシリンダーの、ストッパーなのだ。

 留め具を外すことで、シリンダーは解放される。

 ガシャン、と音を立てて、右側に十二連装のそれが現れる。

 

「おお! 何だこれ!」

「中折れ式は、どうしても耐久性に難があるからな。覚えがあるじゃろ?」

「ああ……俺がロドレギオンを叩きつけて折った」

「折角のゴア•マガラの素材じゃ。思う存分戦えるように、機構も一新してみたのじゃ。まぁ、まずは撃ってみろ。とりあえず一発、水平砲撃じゃ」

 

 手早く砲弾を詰める火薬庫。

 彼に言われるがまま、アルフレッドはシリンダーに砲身に押し込んで、砲を構える。

 試射室の壁の方――虚空に向けて、引き金を引いた。

 強烈な反動。同時に放たれる、二つの劫火。

 続け様に響く轟音も、二つあった。

 

「……何だこれ。二発同時発射……?」

「そうじゃ! 何と本作は、ダブルバレル型ガンランスじゃ!」

 

 ダブルバレル。

 その名の通り、砲身が二つ、並行して接合されていること。

 見れば、この黒いガンランスも、二つの砲身が勇ましく(そび)えていた。刃を展開すれば、その間に滑り込むように、刀身が装着される。

 

「着想は、とあるガンランスなんじゃが……はて、どこにあったかのう」

 

 そう言いながら、再びボックスを漁り出す老人。

 アルフレッドは、構うことなく砲撃を繰り返した。

 二つの砲撃音。

 砲炎も二つ。

 通常型砲弾といえど、二つ横に並んで放たれれば、威力も範囲も単純計算で二倍となる。

 驚きの手応えに、アルフレッドは高揚を覚えていた。

 

「――あったあった! おう、見ろこのガンランスを!」

「何だそれ。砲口が、二門ある……?」

 

 老人が持ち出すは、黒いフレームが美しい、大型の銃槍。

 見た目はシンプルなガンランスではあるが、穂先には無骨な角がそのまま宛てがわれている。そして何より、銃身を二つ横に並べたようなデザインが特徴的だった。

 

「聞いて驚け! こいつはラージャン素材で作れるガンランス……雷鬼銃槍ドラガンじゃ!」

「ラージャン……だと!?」

「元々はこっちが先に開発されていての。何故だか知らんが、二門式として街の加工屋が作ったんじゃ。で、わしがカスタマイズしてみた。構造のシンプル化をテーマにな。ほれ、そこらのガンランスとどこが違うか、分かるか?」

「……シリンダーが、ない?」

「大当たりじゃ!」

 

 彼が出すは、拡散型の砲弾。

 アルフレッドが今扱う通常型砲弾――それも十二発連装ゆえに通常規格よりさらに小型――よりも遥かに大きいそれを、老人は二門の砲身へと詰めた。

 留め具を外して、砲身の根本から折れるように。

 そのガンランスは、浮いたその根本の中に、砲弾を詰め込む特殊な構造だった。言わば、砲身に直接弾を詰めるのだ。

 

「こうすれば、構造のシンプル化を図れると思っての。弾詰まりもしにくい、構造も安定化する! 開発費も削減できる! まさに良いことづくめじゃわい! ……まぁ、この構造のおかげで、装填拡張には未対応じゃが」

「……ってことは、これはどう足掻いても二発しか装填できないってことか?」

「まぁ、そうなるな。砲身が二丁、リボルバーはなく、直接弾を一発ずつ詰めるしかないからな」

 

 構造の単純化には、それなりのリスクがあった。

 しかし彼は二門式という情熱を忘れられず、開発を続けていた。

 そして出会った。黒蝕竜ゴア•マガラの、軽くも上質で、如何様(いかよう)にも変質するその甲殻に。

 その着想は、奇しくも彼を打ち倒した覇山竜撃砲の開発時に、浮かび上がってきたのだった。

 

「ダブルバレルの原型は、このドラガンじゃ。拡散型運用をするには問題ないが、他の砲撃タイプへの応用は効かん。それに、クイックリロードもできんしな。毎回手作業でリロードする手間がある」

「それを思うと、リボルバータイプは良い構造なんだな」

「そうじゃな。装弾数の増加はもちろん、弾詰まりも起きにくい。ボウガンの弾倉よりも扱いやすいのも高得点じゃ」

「で、今回のこのガンランスは、シリンダーにも改革のメスを入れた、と」

「そうじゃ! それにのう、何とも数奇でな……この小型通常砲弾の着想は、斬竜の尾から採れる粉塵なんじゃよ。覇山竜撃砲の開発――その副産物じゃ」

 

 アルフレッドは、黒い銃槍を持ち直し、シリンダー後方部の留め具を外す。

 音を立てて吐き出されるレンコン型のそれは、勢いよく空になった薬莢を吐き出した。

 どれも、ボウガンの弾並みにコンパクト。しかし、その砲炎は通常規格の砲弾と変わりない。

 

「あの爆発力は素晴らしくてな。通常の火薬を上回る! 規格を小型化したため、単発では若干劣るがの。じゃが、二門同時に撃てば、たちまち巻き返す! これはまさに、砲撃に優れたガンランスじゃ。そしてそれは、フルバースト――全弾斉射で、その性能を遺憾なく発揮するじゃろう」

 

 手首のスナップでシリンダーを戻すアルフレッド。

 シリンダー後方にある予備弾倉が、音を立てて再装填を開始する。

 クイックリロード。計十二発の砲弾が、再びシリンダーへと押し込まれた。

 二発ずつ、カチカチと音を立てながら装填されていく。

 

「凄いなこれ。でも、弾数が多い分、リロードも若干時間が掛かるんだな」

「こればっかりはな……クイックリロード対応にするのも、苦労したんじゃぞ」

「ありがたい。しかしこれ、不思議だな。十二発装填するも、二発同時発射が基本だから、弾持ちとしては六発装填の普通のシリンダーと同じってことか?」

「感覚はそれに近いように作ってある。砲身の画角、弾倉の比率……計算して作るのは、それはそれは大変だったわい!」

「そうだよな。二発ずつ、砲身へと接合するように、シリンダーを回転させなきゃいけないんだもんな」

 

 並列に繋がる砲身と、そこに結合するシリンダー内の弾倉。

 それらが二発ずつ装填されるようにするには、綿密な、それでいて一寸の狂いも許されない計算が必要になる。

 まさに、特注のガンランスだ。

 価格が割高になるのも頷けるほどに。

 

「砲弾の小型化は、空気抵抗を減らすことにも買っていてな。射程距離も長い。そのためいつものガンランスより砲身は短めで、コンパクト。折り畳まずとも、スイングアウトで廃莢すればよいって寸法じゃ」

「射程は変わらず、当てやすいってことだな」

「その分ヘッドの部分の刃を大型化して、リーチは賄っている。取り外して使う分にはやや大きすぎるかもしれんが……まぁ、お主なら問題なかろう」

 

 穂先を外すと、さながらチャージアックスの剣の如き、広く厚い刃が右手に収まった。

 片手剣を悠に超える、紫色の妖刃を右手に。

 ニ連装の黒い砲身を左手に。

 その姿に、火薬庫は感慨深そうに頷くのだった。

 

「まるで、古狩人のようじゃの。絵になるわい」

「古狩人?」

「まだ、ハンター制度ができる前にアマチュアでモンスターと戦ってた奴らのことじゃ。ほれ、ココット村の村長など、有名じゃろ?」

 

 古狩人。

 聞き慣れない言葉にアルフレッドは首を傾げるものの、火薬庫の老人は嬉しそうに語るのだった。

 

「あの頃はまだギルドから正式登録された武器なんてものもなかったからのう。お主みたく、型に()まらない戦い方をする者も多かったんじゃ」

「爺さん、いくつなんだよ……」

 

 刃を砲身に戻し、折り畳む。

 砲身はそのまま、刃だけ畳まれるその姿。

 理由を知った今、アルフレッドは黒き刀身を前に惚れ惚れとするのだった。

 

「いやー、分かりやすかった。ありがとな、爺さん」

「何。この良さを分かる奴には、やはり話し甲斐があるわい」

 

 盾も槍も背負い、退室の準備を始めるアルフレッド。

 彼に向けて、火薬庫は静かに語るのだった。

 

「幼体とはいえ、古龍の素材でできた武器じゃ。これまで以上に強力な仕上がりになっとる。使い所を間違えんように、な」

「分かった。肝に銘じとくよ。……こいつの銘は?」

「むふふ、よくぞ聞いてくれた!」

 

 誇らしげに笑い、大きな息を吸う。

 嗄れた声が、高らかにその名を、口にした。

 

「その様相はまさに十二発の暴君――『アームオブティラン』じゃ!」

 

 ティラン――暴君の名を冠するそれは、夕闇を描く光を浴びて、一層妖しく輝いた。

 優美なそれに、アルフレッドは静かに微笑むのだった。

 

 ――その微笑みが、特殊な砲弾ゆえに弾薬費がかなり嵩張(かさば)ることに気付き、大きく乱れてしまうのは、また別の話。




今回は推し武器、アームofティランのお話でした。
作品上では、やはり浮いてしまうのでアームオブディランと表記しております。ゴア武器、シャガル武器、混沌ゴマ武器とガンランスはどれもかっこよくて素敵なのがたまらんですね。デザインは混沌なものが一番好きです。
マガラ系ガンランスはどれも砲身が二丁あるので、それをどう解釈しようか悩みました。着想は、やはり水平二連のショットガンです。そしてラージャンのガンランスも、砲身が二つある。それらの要素を交えながら書けたらいいなぁと思い、このようなお話となりました。
ダブルバレルのガンランスといえば、他にもジンオウガのガンランス、ブラキディオスのガンランスも候補に上がりました。しかし前者は通常型であり、後者は竜撃砲のみ二連という特殊デザイン。あの、竜撃砲の光が二連で出るのがたまらなくかっこいいですよね。あくまでも竜撃砲だけで、通常の砲撃は穂先から出ているみたいですが。
とまぁ、そんな理由でラージャンのものを採用しました。拡散型は通常二発装填ですし、ダブルバレルショットガンに最も近い気がしますね。サンブレイクで突然通常型になってる変な子もいますが、気にしない方向で。
とにかく、銃槍について語りたい回でした。分かりづらい内容だった心配です。読者の方々にイメージが伝わっていれば幸いでございます。
それでは、閲覧ありがとうございました。

…古狩人って響き、それだけでかっこいいですよね。
Monster Hunter World Blood Borne
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