ラストリロード   作:しばじゃが

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背負うもの

 黒鱗。

 鞭のようにしなる。

 それが水没林を裂く旋風となり、アルフレッドへと襲い掛かった。

 

「うおっ……!」

 

 それを、しゃがんで躱す。

 回転の勢いに飲まれる、黒鱗の主――ナルガクルガ。

 その頭へと、アルフレッドは肉薄(にくはく)する。

 

「せい!」

 

 鋭く突いた切先が、ナルガクルガの右目を穿った。

 柔らかい感触と共に、水袋が弾けるような音が響く。

 そして、その虚淵(うろ)を抉るように、竜杭砲を放つのだった。

 迅竜、悲鳴を上げて首を振る。

 自身の頭に食い込む杭を、何とか取り外そうと首を振るのだが――それは抜けるどころか、さらに深く食い込んでいく。そして、最後には激しい炎を解き放つのだった。

 

「今のは食らったろ!」

 

 さらに攻め込もうと、前へ踏み込み槍を押し出す。

 しかし、ナルガクルガも黙ってはいない。迫る大男を、右目の仇を叩き潰さんと、その尾を振るうのだった。

 まさに兜割。

 しなった尾が空を裂き、一直線に叩きつけられる。

 ぬかるんだ地面は勢いよく弾け、泥が散弾のように広がっていく。

 アルフレッドは、その泥を浴びながらも、避けた。

 即座に放った砲撃の反動で、体を横に逸らし、紙一重で尾を躱す。

 

「……あっぶね。って、もう一撃かよ!」

 

 ナルガクルガ、再び跳躍。

 あの兜割を、もう一度繰り出した。

 

「よっと!」

 

 それを、さらに砲撃を重ねて横へ跳ぶ。

 頰や髪に泥が染み込むが、尾の直撃でさえなければどうでもよい。そう言わんばかりに、彼は気にすることなく銃槍を振りかぶった。

 右肩の、その奥へ。大きく引いたその槍を、勢いよく薙ぎ払う。

 その薙ぎ払いに合わせ、引き金を引いた。

 

「うおぉぉッ!」

 

 雄叫びと共に振り切ったそれは、斬撃と爆炎を合わせたもの。それが黒い体毛を、さらに黒く焼いていく。

 が、それも束の間。体を燃やす火を振り払うように、迅竜はその身を回転させる。回転の副産物として、尾が鞭のように薙ぐのだった。

 

「せい!」

 

 突き出した盾で、黒い斬撃を防ぐ。

 どころか、その反動を利用するように、リロード。撃ちきった砲弾と、放たれた竜杭弾を手早く装填する。

 そして、掲げた銃槍を、袈裟斬り。

 右上から左下へ、振り下ろす。

 さらに、その斬撃に合わせて砲口に火を蒸すのだった。

 

「そこっ!」

 

 回転の反動と、爆炎による痛み。

 大きく隙を晒すナルガクルガの、その右目の虚へ。

 再び、竜杭弾が放たれる。

 回転しながら肉へ埋まるそれは、頭蓋を容易く貫き、その内側で破裂した。

 迅竜の巨体が、大きく倒れ込む。

 

「――ふう」

 

 硝煙をふっと息で吹き消して、アルフレッドは狩りの余韻に酔いしれるのだった。

 

 

 

 ⚪︎◎⚫︎

 

 

 

「……賑わってんな」

 

 ドンドルマ市街を歩く、アルフレッド。

 ナルガクルガの狩猟を終え、街に帰還した。そんな彼を迎えるは、市街地の雑踏。

 いつも以上の多くの人がごった返ししている状況に、彼は辟易とする。

 露店市か、辻商いか。色鮮やかな旗を棚引かせる街並みは、何か祭りのような雰囲気だった。

 

「繁盛してるな」

 

 半額という旗を掲げる雑貨屋や、新たな防具の試着会を始める加工屋。

 多くのハンターが、この市街に集まっている。

 アルフレッドはそれらに目は向けるものの、足を運ぶことはなかった。

 まっすぐ、火薬庫へと向かう。

 大股で、街を抜けていく――。

 

「……あ、あの!」

 

 そんな彼に、声を掛ける者が一人。

 まだ年若い、少年の声だった。

 

「あん?」

 

 振り返れば、二人の少年と少女がいる。

 黒髪をウルクススの防具で纏めた少年は、腰に片手剣をぶら下げている。

 同じ防具に身を包む少女は、茶色の長い髪と、大きなホルン型の狩猟笛を背負っているのが特徴的だ。

 

「……どこかで会ったか?」

 

 心当たりがないと言わんばかりに、首を傾げるアルフレッド。

 それとは対照的に、少年は目を輝かせるのだった。

 

「あの! 昔氷海でお会いしたんですが……覚えてませんか? 一緒に、ガララアジャラ亜種を狩らせてもらって!」

 

 その言葉に、大男は目を見開く。

 いつかの、新米ハンターを救出に行った日を。

 怪我を負った少女を庇い、共に狩りに挑んだ年若い少年がいたことを。

 ――彼は思い出すのだった。

 

「……ああ! あの時の! 武器が変わってるから、気付かなかったぜ」

「えへへ、実はあれから、剣士を目指して弓を辞めまして。いやほんとに、お久しぶりです。ほら、ミュアン。僕たちを助けてくれた、ガンランス使いの人」

「アズールから、話を聞きました。その節は、助けていただいてありがとうございました」

 

 アズールという少年に紹介され、深々と頭を下げる少女。

 あの時気を失っていた少女、ミュアンである。

 

「今日はどうしたんだ? ドンドルマで活動するようになったのか?」

「いえ、拠点はトタン村――あの氷海近くの村です。今回は、ちょっと都会を見てみたくて」

「ハンター向けの割引露店が行われると聞いて、見てみたくなったんです。ね、アズール」

 

 ミュアンの言葉の通り、市場を回るのは防具を着込んだ者ばかり。

 ハンター向けの市場であるのは、明らかだった。

 

「アズール……といったか。弓、いい腕だったのに。心境の変化があったのか?」

「ふふ、アズールったらね。貴方に憧れて、ガンランスを使いたいって言ってね。それで剣士の修練を始めたんです」

「そうなのか」

「ちょ、ちょっと! 本人に言わないでよ!」

 

 思わぬ答えに、間の抜けた声を上げるアルフレッド。

 一方のアズールは、恥ずかしそうにミュアンの肩を揺すった。

 

「照れちゃって。いいじゃん。好意は積極的に伝えてかなきゃ」

「う、うう……そ、そうです! 僕、銃槍使いになりたいんです!」

「そいつはまた、酔狂な……。が、嬉しいよ。何だか、照れるな」

 

 開き直って全てを曝け出す少年を前に、大男は少し照れながら、頰を指で掻く。

 

「まだ慣れなくて、筋肉も足りないので今は片手剣なんです。お恥ずかしい……」

「いや、良いじゃないか、片手剣。俺も駆け出しの頃は、片手剣を使ってたんだぜ」

「そ、そうなんですか!?」

 

 思わぬ答えに、アズールは目を輝かせた。

 

「下積み時代は、片手剣でコツコツ金を貯めて、それで性能がそれなりに良いガンランスを買ったんだ。だから、恥ずかしいことはないと思うぜ」

「そうか……それじゃあ僕も、僕も……!」

 

 憧れの人が、今の自分と同じようなことをしていた。

 その事実を前に、少年は喜びを抑えきれない様子だった。

 

「まぁ、まずは片手剣で立ち回りの基本を学んで、ゆっくり体を鍛えることだな。あー、そうだ。今から、ガンランス専門の加工屋に行こうと思うんだが、来るか?」

「え! い、いいんですか!?」

「アズールが行きたいって、言ってたところかな。もしかして」

「僕、村の加工屋に話したんです、ガンランスを使いたいって。それで、専門の加工屋があるって聞いてて……もしかして、そこがそうなんでしょうか?」

「だろうな。ガンランス専門店なんざ、俺は一軒しか知らないからな。じゃ、行くか。こっちだ」

 

 雑踏をくぐるように歩き出す、アルフレッド。

 その後ろを、二人は嬉しそうに笑ってついてくる。

 

 一体何ヶ月ぶり――もしくは、年単位かもしれない。

 そんな、久しぶりの出会いに、アルフレッドは少し嬉しさを覚えていた。

 いつか助けた若手のハンターが、自分に憧れてガンランスを目指している。

 むず痒い感覚を、彼は覚えるのだった。

 

「お名前、聞いてもいいですか?」

「アルフレッドだ」

「ハンター歴は、どれくらいなんですか?」

「大体十年くらいかな」

「すごいですね。ずっとガンランスを使ってきたんです?」

「まぁな」

 

 雑踏を歩きながら、質問攻めにあう。

 先日セレスの弟たちの相手をした彼にとっては、慣れたものだった。

 

「もしかして、今も狩りの帰り……とか?」

「おお、よく分かったな」

「防具の汚れや痛みから、そうかな……って」

「そう感じ取れるなら、お前さんたちも立派なハンターだな」

「えへへ。ちなみに、何を狩りに行ってたんですか?」

「ナルガクルガだ」

「え、ナルガクルガ……って、あの、迅竜っていう?」

「そうだな。黒くて素早い奴だ」

「それを、一人で狩ったんですか?」

「ああ」

 

 平然と答えるその姿に、二人は少し呆然とするのだった。

 目の前の、大男の強さを感じ取る。

 とてもではないが、ギルドカードの交換を申し込めるような相手ではない。

 何も言わずとも、二人はそんな思いを込めて、頷き合うのだった。

 

 

 ⚪︎◎⚫︎

 

 

「ねぇ、火薬庫のおじさん」

「何じゃ?」

 

 愛用のヘビィボウガンを、火薬庫の老人に預けたセレス。

 暇を持て余し、作業中の彼に話し掛ける。

 

「アルフとの付き合いって、長いんですか?」

「まぁ、長いぞ。あやつが十二くらいの頃じゃから……かれこれ十年以上の付き合いになるのう」

「そんなに?」

 

 弾倉を開け、特殊な細工を施す火薬庫。

 銃弾を込める層に、隣り合うように、もう一つの層を作り出した。詰めるは、火山から採れる良質な火薬。

 射出される弾の威力を、文字通り爆発的に上昇させる細工である。ガンランスの砲弾を参考に考案された、彼特製のカスタマイズだ。

 

「アルフが小さい頃って、どんな感じだったんですか?」

「何じゃ、本人から聞いてないのか?」

「炭鉱で働いてたって、聞いたけど……詳しくは」

「そうか。まぁ、過去のことを自分で話すのは気恥ずかしいもんかもしれんがな! がッはッは!」

 

 細かな道具で火花を散らしつつ、彼は「男とはそういうもんじゃ」と付け加えるのだった。

 狭く埃っぽい店内で、椅子にこじんまりと座っていたセレスは、大きな鼻息と共に目を輝かせる。

 興味津々。まさにその体現のような顔だった。

 

「……ま、ええわい。話してやるわい。わざわざ一人で訪ねてくれたんだしの」

 

 かつて火薬庫が、セレスを呼べとアルフレッドに伝え――そして彼女は、その言葉の通りに、今ここに訪れていた。

 ヘビィボウガンのカスタマイズには、まだ時間が掛かる。作業の傍で、火薬庫は話し始めた。豊かな髭を揺らしながら。

 

「あの頃は、まだ大きな加工屋組合に属していてな、ガンランスを主に開発していたんじゃ。天才技師と呼ばれ、銃槍技師会の副会長を務めたこともあるんじゃぞ」

「へぇ……」

 

 今や、路地裏に押し込まれているこの老人の、輝かしき過去。

 そんな口ぶりで、幕は開ける。

 

「その頃の砲弾は、まぁ弱くての〜。今みたいな技術も確立する前で、主に火薬草を使った砲弾が主流じゃった。はっきり言って、大剣やヘビィボウガンに遠く及ばない、失敗武器じゃったんじゃ」

「失敗武器?」

「元々、高威力だが取り回しの悪い大砲をランスに付けて、手軽な破壊力を! ……というのがコンセプトじゃったがな。肝心な砲弾が弱くては、何にもなりゃしないわな」

「そうなんだ……」

「そしてわしは砲弾の改良のため、より良質な火薬を求め、火山近くの炭鉱街を巡った。そこで出会ったんじゃ。あの血濡れの頭の小僧にな」

 

 懐かしそうに、彼は目を細める。

 その視線の先で浮かぶ少年の姿は、今の大男の影もない。血塗れのような赤い髪だけが特徴的な、平凡な子どもだった。

 

「あやつの父親は火薬職人で、わしと同じように小柄でな。よく酒を飲んだもんだわい。んで、母親は対照的に大柄で、ピッケル片手に炭鉱に潜る逞しい女性じゃった。アルフレッドは、母親似じゃな」

「お母さんの方が大きいんだ。あの体格は、お母さん譲りなんだね」

「がッはッは! 顔は、父親の若い頃に最近似てきたの。んで、その父親と共同開発したのが、今の砲弾の原型じゃ。そうそう、街の空き地を使って試し撃ちしてな。アルフレッドは、それを見に来ていたんじゃ」

「その頃から、そういうのが好きだったんだね」

「もう、目をキラキラさせとったのう。だからわしは言ったんじゃ。『これ、使ってみるか?』とな。……その時の感覚が忘れられんかったんじゃろうな。次に会った時には、あやつはハンターになっとった」

「急展開だね」

「砲弾の開発でしか、関わってなかったからの。じゃがあやつがハンターになってから、関わる機会が増えたな。そして今のように、良い客になってくれとるんじゃ」

「……ってことは、火薬庫のおじさんが、アルフレッドをガンランス好きにしたってこと?」

「そうなるのかもしれんな。がッはッは!」

 

 高らかに笑いながら、彼は火薬を次々と注ぎ込んでいく。

 火薬庫たる所以――長らく火薬技術に携わってきたその腕前を、遺憾なく発揮している。

 そのどこか狂気的な目に、セレスは少し納得する。

 ガンランスの話をするアルフレッドと、同じような目をしている。そう感じ、困ったように笑うのだった。

 

「――ここだ、ここ。邪魔するぜ、爺さん」

 

 ガラリと扉が開き、アルフレッドが現れる。

 噂の大男を前に、火薬庫は嬉しそうに笑った。

 

「おお、アルフレッド! ちょうど今お主の話をしとったんじゃ! さぁ座れ座れ! ……って、珍しく連れがおるんじゃな」

「は、初めまして……」

 

 埃っぽさのせいか、それともむせ返るような火薬の香りか。

 少し遠慮がちな様子で、少年と少女が現れる。

 

「こっちがアズール、んでこっちがミュアン。アズールは、ガンランスに興味があるらしくてな。折角なんで連れてきた」

「こ、この店の噂は聞いてきました。ガンランスの専門店だと! 店頭にあるのを、見てみたくて!」

「おお! おおおおぉぉぉ! 見どころのある若者じゃなぁ〜! 良いぞ良いぞ! ならまぁ、まずはこれじゃろ。精鋭討伐隊銃槍! 基本中の基本じゃ!」

 

 セレスのヘビィボウガンに、手早く弾倉を嵌め込んで。カスタマイズを早々と終えた彼は、壁に立て掛けられた銃槍を手に取るのだった。

 基本中の基本、という名の通り、最も基本的な構造であるそれを前にして、アズールは目を輝かせる。

 

「すごい……! すごい! 本物の銃槍が、目の前に!」

「良かったね〜。ずっと憧れてたもんね、アズール」

「大きいなぁ……格好良いなぁ……」

「大きすぎて、今はまだ持てなそうだけどね」

 

 ミュアンも、アズールの姿に、嬉しそうに微笑んでいた。

 火薬庫の男もまた、嬉しそうに頷く。そして、次から次へと自分の力作を少年へと見せびらかした。

 クイーンバースト、レッドルーク、ホワイトガンランス――。さまざまな銃槍が、カウンターに並んでいく。

 その度に、歓声が店内をこだまするのだった。

 

「……アルフ、どうしたの? あの二人」

「昔、助けたことあってな。さっき通りで、偶然会ったんだ。で、連れてきた」

「相変わらず、やることが破天荒というか何ていうか。アルフらしいけど」

「セレスこそ、どうしたんだ? 一人でここに来るなんて珍しいな」

「この前アルフから聞いた、ヘビィボウガンのカスタマイズ! それをお願いしに来たんだ」

「ああ……そうか、それだったのか。爺さんが言ってたのは。へぇ……すごいな」

 

 いつか橋渡ししたことを思い出すも、予想外の内容に彼は少し目を見開いた。

 ヘビィボウガンに、火薬庫特製の細工が施される。

 一体どんなものだろうか。興味が尽きない様子だった。

 彼がガンランス以外で興味を持っている様子に、セレスは内心驚いていた。

 

「今度の狩りで是非見せてくれよ。楽しみだ」

「うん! 任せて!」

 

 ヘビィボウガンに――ではあるものの、自分に興味を持ってくれているように感じ、セレスは嬉しそうに笑うのだった。

 

「……あ、もうこんな時間。アズール、そろそろ戻らなきゃ。待ち合わせの時間だよ」

「え、もう!?」

 

 シザーキャノンを両手で担ぐ少年に、少女がそう語り掛ける。

 窓から差し込む光は橙色を帯びており、その傾きを表していた。

 

「ああ……名残惜しいですけど、もう行かなくては……ありがとうございました」

「何じゃい、もう行くのかい? もっとゆっくりしてけば良いのに」

「是非、また訪ねさせてください。いつかガンランスを背負うこと、それが僕の夢ですから!」

「おう、待っとるぞ! いつでも来るんじゃよ」

 

 武器を返し、出口へと向かう二人。

 アルフレッドと目が合い、二人は丁寧に頭を下げた。

 

「頑張れよ。また会おうぜ」

「はい! アルフレッドさんも、お元気で!」

「急ぎの用事か? ドンドルマの道、分かるか?」

「何とか……なる、かな? 待ち合わせなんです」

「僕らの師匠のような人がいて、今日久しぶりに会う約束をしているんです」

 

 嬉しそうに、アズールがそう言って。

 その顔に、アルフレッドも静かに口角を上げるものの、次に聞いたその名を前に、彼の笑みは消えた。

 

「レクスっていう、各地で活動してる凄腕ハンターなんです。以前トタン村に常駐して、僕らを鍛えてくれて……」

「もしかして、アルフレッドさんもお会いしてるかもしれないね」

「だね。それでは、またいつか!」

 

 レクス。

 その名を、彼は忘れたことはない。

 意味深なことを言っていた、飄々とした男。

 半面を火傷で覆った顔が、鮮明に浮かび上がる。

 

「ま、待てよ……そのレクスって!」

 

 慌てて、追うように店を出るアルフレッド。

 その瞳に映る、太刀を背負ったその男。

 店の外に、彼はいた。

 

「……レクス」

「お? ……あの時の銃槍使い、か」

 

 二人の新米ハンターを迎えつつも、やや鋭さのある目でアルフレッドを見る。

 その黒髪は、無精髭は、間違いなく火山で遭遇したあのハンター。レクス、その人だ。

 

「オレの教え子たちが、けったいな店がある路地に入ったって噂を聞いて、来てみれば……アンタかよ」

「久しぶりだな。まさか、お前さんたちが、知り合いだったとはな」

 

 その言葉に、彼は小さく笑う。

 

「アズール、ミュアン。悪いことは言わねぇ。銃槍使いには近づかねぇ方がいいぜ」

「え? で、でも」

「アルフレッドさんは、僕らの命の恩人で――」

「はっきり言って、奴らはそこらのモンスターより危険だぜ。やめとけ」

 

 否定に次ぐ否定。

 それに二人は不安そうに顔を歪めるものの、レクスは口を緩めることはない。

 自身の焼け爛れた頬を指さしながら、こう伝えるのだった。

 

「――こうなりたくは、ないだろ?」

 

 その一言に、アルフレッドは察するのだった。

 彼の、含みのある発言が。

 初対面のはずが、妙に敵意を感じるその雰囲気が。

 彼は、被害者だったのだ。

 ガンランス、その砲炎の。

 

「……そうか。お前さん、銃槍使いに――」

「なぁ、アルフレッド」

 

 言い掛けた言葉を遮るように、レクスは口を開いた。

 ただまっすぐ、アルフレッドを見る。

 何かを問うような――その心に、手を触れるような目で。

 

「アンタは、何を背負ってハンターをやってるんだ?」

 

 ガンランスを使うに、相応(ふさわ)しい器であるかどうか。

 見極めるような目だった。

 それはどこか祈りのようで、そして全てを断罪する尋問官のようでもあった。

 気圧されそうな、強い瞳だったが――アルフレッドは動じない。

 ただ、ただ静かに、こう答えるのだった。

 

「俺は――俺は、ガンランスを背負う。この重みを、背負ってるんだよ」

 

 ブレも揺らぎもない、まっすぐな瞳。

 彼の魂のありようが分かるその瞳を前に、レクスはそれ以上何かを言うことはなかった。

 

 




ガンランス初登場作品、ドスの頃に触れつつのお話でした。
当時のガンランスは、本当にひどかったんですよ…!砲撃が搭載されたのに、砲術スキルは未対応。カスみたいな砲撃しかできず、さらに武器の数が圧倒的に少ない!属性武器も満足に揃っておらず、明らかに頭一つ二つ、他の武器より劣っている。オープニングも、この時抜刀するくらいの見せ場しかなく、以降の作品でも見せ場なんて皆無…!ぶっちぎりで公式からいじめられてる武器でした。その過去を思うと、今の躍進は涙ぐましいというか、感極まりますね。
アズールとミュアン、久々の二人の登場!第一章四話からの再登場なので、覚えてない方もいらっしゃるかもしれません。これを機に読み返していただけたら嬉しいな。そして二人との関係者である、レクス。これからどうなっていくのでしょうね。
それでは、閲覧ありがとうございました。
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