・本編完結(鏖魔討伐)から数年後
・禁足地調査団の編成の少し前
・ワイルズ要素を書きたいだけ
・アルセレがしっかり付き合ってるのでイチャつく描写がある
このあたりを許せる人向けなので、苦手な人はただちにリバースブラストしてください。
先約
「ふぁ……」
朝日が差し込む。
ここはロックラックのゲストハウス。
大砂漠に佇む一枚岩に築かれたこの拠点は、今日も
多数のハンターが寄り合って、一時的な宿とするこの建物で、遅めの起床を
肩まで伸ばした血塗れのような髪を、乱雑に描きながら起き上がる。大きく体を伸ばして欠伸をするだけでも、それはそれは迫力があった。
名を、アルフレッド。各地を放浪するハンターである。
「……お、来たか。おはようさん」
そんな彼の足元に擦り寄るは、つぶらな瞳をもった小さな生き物。
このゲストハウスの看板的存在――プーギーである。
桃色の毛並みに、丸々とした体。その身を包む、青縞模様の布。何より、「プゴプゴ」と忙しなく鳴らす鼻が可愛らしい。
ハンターたちに愛される、マスコット的存在だ。
「お前さんが俺のとこに来るってことは、もうみんな出張ったのかな。残ってるのは俺だけか」
プーギーを撫で回しながら、アルフレッドはぼやく。
彼の独り言に、反応する者はいない。
この建物に残っている人間は彼だけ。その、何よりの証明である。
「ま、いいや。今日は休みのつもりだったし。加工屋に、新しい防具を貰いに行くくらいか」
独白のように語りながら、プーギーを撫でる手を止めない。
頬を撫で回される感覚に、その小動物は心地よさそうな声を漏らした。
「まずは二度寝でもさせてもらおうかな。そんで、ゆっくり
そう言いかけたところで、プーギーのお召物に何かが挟まっていることに気づく。
アルフレッドが抜き取ったそれは、小さく折り畳まれた手紙だった。宛名は勿論、彼宛てである。
「……げ」
『おはよう、お寝坊さん。今日は新しい防具の納品日でしょ? 正午に加工屋で集合ね! 新しい防具、早く見たいな。楽しみだね!』
そんな軽い文章は、差出人の名前で締めくくられている。
セレス。
アルフレッドと、もう数年の付き合いとなる女性の名で。
「正午……二度寝できないじゃん」
壁掛け時計を見れば、そこまでの余裕はないことを二本の針が示している。
その事実にアルフレッドは頭を掻きつつ、再びプーギーを撫で回した。
⚪︎◎⚫︎
同時刻、ロックラックの酒場にて。
今日も街は大きく賑わっていた。商人、ハンター、ギルドの職員、そしてここの住民たち。
多くの人々でごった返しする街は、大きな活気に包まれている。そんな一画で営まれる酒場もまた、午前中だというのに活気に満ちていた。
「アルフ、手紙読んだかな」
その角席で、愛銃を寝かせながら弾薬の準備に勤しむハンターが一人。
砂漠育ちを思わせる褐色肌に、翡翠色に染まった大きな瞳。金とも銀とも見てとれる、月色の髪をショートカットにした少女。
プーギーに手紙を忍ばせた張本人。アルフレッドの相棒、セレスである。
「昨日まで狩りに行ってたから、疲れてるんだろうけど……待ち合わせ、もう少し遅い時間の方が良かったかな」
そう言いながら、マスターベーグルを齧る。
咀嚼と共に、空薬莢に火薬粉を注ぎ込んだ。
「ま、いいや。あたしはあたしで、次の仕事の準備をしなきゃね」
テーブルに並べられた弾薬は、貫通弾特有の鋭い弾頭を備えられている。
丁度そこへ、調合し終えた新たな弾が加えられた。
十個ずつの二列、それが出来上がり計二十発となる。それでもセレスは手を止めず、新たな調合へと着手した。無造作に置かれた木箱には、まだまだ空薬莢が多数押し込められている。しかし彼女は、慣れた手つきで調合を進めた。
「達人ビールご注文の方ー!」
「ここだここ! ありがとよ姉ちゃん!」
ホールでビールを運ぶ店員の女性の声が、けたたましく響く。
それに負けじと、騒ぐ男たちの声も響く。
寡黙に作業に徹するセレスとは、真逆の様相だ。
「聞いたか、リオレウス亜種が狩られたんだとよ。それも単独で」
「マジかよ、そんな奴いるのかよ」
「大砂漠の動向は聞いたか? 何でも、西の果てから砂嵐が近付きつつあるらしいぜ」
「砂嵐? そんなの、勝手に消えるだろうよ」
「でも砂漠の果てか、ロマンあるよな」
「調査隊が組まれるって話もあるな。砂漠の向こうの、未開拓地を調べるとか何だとか」
「何だと! 俺様を差し置いてそんな計画があるのかよ!」
「お前の腕じゃ、どうせお呼びはかからないだろうさ」
大衆の声が雑音となり、セレスに届く。
しかし彼女は集中した様子で、手を止めなかった。
弾薬の調合は既に終え、マガジンに詰め終えたところだった。次の作業、銃身の掃除と油差しへと移行する。
「ありゃ、だいぶ煤が溜まってる」
布を取り付けた棒で内部の煤取りに勤しむ。
白い布がどんどん黒く染まるごとに、彼女の中で達成感が降り積もっていく。
「うん! 綺麗になった!」
すっかり色合いを変えた銃身に、満足そうに頷いて。
次の油差しに移ろうとしたところで、彼女の肩に手を置く男が、一人。
「ねえ君、一人?」
それは、軽やかな口調で話し掛けるガブルシリーズを身に纏った男だった。その後ろには、もう一人――ボルボロスの防具を着た男も控えている。
二人の男から声を掛けられるその状況に、セレスの瞳から色が消えた。
「良かったら一緒に組まない? 俺たちガンナーが足りてなくてさ」
「てか君、めっちゃ可愛いね? ギルドカード交換しようよ」
「……はぁ」
取り繕うこともないシンプルな誘い文句に、セレスはため息をつく。
しかし二人は、それに構わず勧誘を続けた。
「レイア装備なの? 俺たちの装備もこんな感じ! 実力は近そうだね。一緒に狩りに行こうよ」
「俺は大剣、こいつはハンマー! 腕力には自信あるよ!」
男の言う通り、レイアシリーズの鎧を着たセレスは、確かに同ランク帯のハンターのように見える。
しかし彼女の着込むそれは、"Sシリーズ"ではなく、"Xシリーズ"である。見た目は似ていても、その質には雲泥の差を生む、マスターランクのそれであった。
「てかお嬢ちゃん、名前なんていうの?」
「あ、ちなみに俺の名前は――」
「大丈夫です。"先約"がいるんで」
簡潔に、そう言って。
彼女は左手を二人に見せた。
その薬指は、シンプルながら優美な、銀の光を瞬かせていた。
「……あー……」
「なんか、すみません……」
指輪を前にしては、二人はそれ以上何も言えない様子だった。
律儀に会釈しては、その場を後にする。
断られればしっかり引き下がる二人を見て、セレスは悪い人ではなさそうだなと思うのだった。
思いつつも、彼女が
「……えへへ」
改めてその指輪を見ては、セレスはふにゃりと笑う。
最も大切な人との約束の証。
幸せそうに、彼女は銀の光に見惚れるのだった。
「って、だめだめ。このままじゃ、あたしの方が遅刻しちゃう」
慌てて現実に帰り、油差しの作業に戻るセレス。
愛銃である妃竜砲は、より輝きを増した。長い銃身が酒場の光を反射し、緑の甲殻があらゆる雑音を飲み込む。
満足のいく出来栄えに、彼女は頷いた。
「よし、そろそろ行こうかな」
月色の髪を包むように、ゴーグル付きの狩帽子をかぶる。
口元には、甲殻を加工したマスクを当て、折り畳んだ妃竜砲を背負って。
そこには、リオレイアを人間の女性に変えたような出立ちの女性がいた。セレスは満足そうに笑みを溢し、酒場を後にするのだった。
⚪︎◎⚫︎
ロックラックは、賑わっている。
アプトノスを引く商人は、その体に纏わせた革袋を見ては、取引先へと向かう。
砂上船の停泊場では、作業員たちが慌ただしく出港の準備をしている。
露店市では子どもたちがケタケタと笑いながら駆け回り、店主たちは人を呼び込むために響く声を奏でる。
そんな雑踏を、セレスは歩いた。
行き先は加工屋。
約束の時間は、迫りつつある。
「――いい仕上がりだ」
完成した防具を見ては、アルフレッドは満足そうに笑った。
「肩回りが良いな。マスターランク装備特有のぺらぺらした羽、あんまり好きじゃないんだよな。だからこれは良い」
「細かい注文しよって。ガンナータイプの肩回りに換えろなんていう奴、初めてじゃ」
「まぁそう言うなって。ガンランスの装填作業に、邪魔になるんだよ。その点はガンナータイプのを参考にした方が、取り回しがいい」
「そう言われれば、確かにと思うがな。しかし、こうもオーダーメイドすると値が嵩んだぞ。大丈夫か?」
「一括払いだ。ほらよ」
「む、確かに……。いやしかし、凄いな。大型専門を謳うだけある」
「まぁな」
「単独でリオレウス亜種を仕留めてくるとは、恐れ入ったわい」
感嘆する加工屋の老人。
目の前のハンターに、驚きを禁じ得ない様子だった。
一方の彼――アルフレッドは、籠手のベルトを強く締める。そして厳つい甲殻を並べたヘルメットをかぶり、身なりを整えた。
蒼火竜の素材をふんだんに使った新防具。
リオソウルZシリーズである。
「いい感じだ。ありがとな」
蒼い甲殻に黒い棘。
それらを
加工屋の出口には、一人の女性の姿があった。
「待たせたな、セレス」
「ん、出来たんだね。……うん、似合ってる。格好いいよ」
「そりゃどうも」
レイアXシリーズに身を包む女性、セレス。
彼女は嬉しそうに駆け寄って、アルフレッドの新しい防具に触れた。
「アルフがフルフェイスメットって、珍しいね」
「そう言うお前さんだって、マスクと帽子で顔が見えないんだが」
「見えた方がいい?」
「……まぁ、な」
少し照れくさそうに、アルフレッドが答えると。
セレスは嬉しそうに笑いながら、彼の大きな手を握るのだった。
「しょうがないな〜。ゲストハウスに戻ったらね!」
「じゃあ、露店で飯買ってから帰ろうぜ。何が食べたい?」
「え? うーん……お米が食べたい。アルフが握ったおにぎり」
「そんなんでいいのか?」
「あたし、あれ大好きなの。晩御飯は、あたしがシチュー作ってあげるからさ」
「マジ? やったね。それじゃ、ココットライスがあるか探してみるか。それに、シチュー用の肉や野菜も」
「うん!」
手を繋いで歩こうとする二人だったが、籠手が嵩張り上手く握れない。
アルフレッドは左手の籠手を外し、小脇に抱える。
それを見て、セレスは嬉しそうに、空いた左手を握るのだった。
彼女の手より、二回り以上大きなその手の薬指には――。
セレスと同様に、銀色の光が瞬いていた。
というわけで、ノリと勢いでモンハンワイルズ要素を載せた後日談。
後日談というより、ワイルズ要素を書きたいだけの章です。
いろんな意見が飛び交うモンハンワイルズですが、私はものすごーく楽しんでいます。ガンランスのクオリティが素晴らしい。他の武器もかなり楽しい。アプデ第二弾もきますね!ゆっくりまったり楽しんでいきましょう。この作品の後日談にもお付き合いいただけると嬉しいな。
あ、あとラストリロード本編完結後のあとがきみたいなものも、活動報告としてアップしてますので良かったら読んでね。
それでは、次回の更新で!