「――はぁ、はぁ」
頭を焼かれ、土手っ腹を撃ち抜かれた飛竜。
しかしその息は未だ残り、忌々しげに二人のハンターを睨んでいた。
「タフな奴だな……」
銃身を折って、新たな弾を装填するアルフレッド。
倒れても、未だ息のある飛竜に対し、彼は感嘆の念すら覚えるのだった。
「アルフ……」
「セレス、大丈夫か?」
覚束ない足取りで、セレスは彼の元に近づく。直撃は免れたとはいえ、あの衝撃は彼女の心身を大きく削ったようだ。
表情に覇気はなく、これ以上の戦闘は難しいと彼は思った。
「無事で良かった。もう少し、スマートに助けられたら良かったんだが」
「ううん。アルフが逸らしてなかったら、どうなってたか……考えたくないよ。助けてくれて、ありがとう」
「気を抜くのはまだ早い。もうちょっとだ」
ただ小さく、仕留めるぞ、と告げて。
アルフレッドは武器を構える。盾を失った銃槍だが、その砲身はまだ燻っていない。雷を反射して光る穂先は、より深く、澄んだ青色に染まっていた。
ゆっくりと、大男が歩み寄る。
未だ息のある、しかし動くこともできない飛竜へと。
「……捕獲、できないかな?」
「未知のモンスターだ。捕獲はできても、持ち返るリスクがでかい。麻酔薬がどれほど効くのか、前例がないしな。船の乗組員を、いたずらに危険に晒すことになりかねない」
「そっか……」
「遺骸とはいえ、そこから得られる情報はたくさんある。今回は、仕留めるぞ」
飛ぶことも、翼を振るうことも叶わない。
飛竜は静かに、アルフレッドが迫るのを待った。潔く負けを認めるような、そんな雰囲気すら感じられる。
さながら、王者の風格だと、セレスは改めて思うのだった。
「――悪いな、お前さん」
地に伏せる飛竜の、その頭蓋に向けて。
アルフレッドは槍を構えた。
「恨みはないが、狩らせてもらう」
振りかぶり、槍をくるりと回して。
切先が、真下を指す。
「強かったよ。文句なしに、な」
脚、腰、背、腕。
全身に力を込め、その槍を振り下ろす。
「――楽しかったぜ」
心からの一言と共に、引導を渡す。
――その、つもりだった。
「……ッッ!?」
突如、舞い降りる影。
荒れ果てた砂漠と、吹き荒ぶ風の中、白い影が現れる。
それが、どこからか鎖を放ち、アルフレッドを弾き飛ばすのだった。
「アルフ!」
突然の不意打ちに、しかし銃槍を盾にして対応する大男。
宙を舞うも、足腰をバネのように曲げて着地する。そして、自身に襲い掛かった乱入者を見るのだった。
「――何だ、お前さん……」
鎖を弾いたような感覚に、人間の犯行、密猟者とすら考えた彼だったが――視界の先にある犯人の姿は、想像を遥かに超えていた。
顔を覆うように発達した外殻と、大きく湾曲した角。
一対の翼、一対の後ろ脚。飛竜の骨格だ。
そして、その翼から伸びる、異質な骨。先程アルフレッドを狙った凶器は、鎖のように発達した、悍ましい翼骨だった。
乱入者、吠える。
その咆哮は獣竜種のように深く、低く響き――しかし飛竜らしく、大気を激しく振るわせる。
思わず二人は、武器を構えた。
「おいおい! 何だこいつ!」
「アルフ……これって、やばい!?」
「ああ! かなりやべーな!」
跳躍し、襲い掛かる影。
しかし、翼爪を振るうのではない。薙ぐようにして、翼から伸びた鎖を振るった。
曲線を描くようなその猛撃を、二人は躱す。躱すが、読めない挙動を前にして、躱し切ることができない。肩や胴を掠り、砂地を転がった。
「この状況は、まずいな!」
「アルフ! あ、あたし……」
「セレス、もう体が限界に近いだろ! 下がってろ!」
「アルフ、これを……!」
何とか立ち上がるアルフレッド。
そんな彼に向け、セレスは何かを投げた。
それは、ヘビィボウガンに備え付けられたシールド。ゲリョスの皮で覆われた、小ぶりな盾である。
「あたしは、後ろから狙撃するから……! 役に立たないかもしれないけど、それ使って!」
「いや、十分だ! 助かる!」
セレスはヘビィボウガンを構えながら、少しずつ下がる。
アルフレッドは、彼女から託された盾を右腕に括り付け、改めて乱入者に相対するのだった。
「……その鎖……」
鎖のような部位。
翼から伸びた、骨。
ノコギリのような甲殻であしらわれた、細長い突起。
薙ぐようにして砂を散らすそれを前に、アルフレッドは何となく事態を察するのだった。
「あの雷野郎を襲ったのは、お前さんか。だからあれはあんなに傷だらけで、気が立ってたわけか」
金の飛竜を襲った存在。
夥しい傷をつけた主。
――目の前で吠える、白い影。
「こんな、生息域の外へ流れる嵐に乗ったのは、お前さんから逃げるためだったってことか? 冗談じゃねぇ……」
それはつまり、目の前のモンスターが、先程やっとの思いで下した飛竜より格上だということ。
応援のハンターが来ることもない僻地で、装備も人員も潤沢ではないこの状況で、相手にしたくない存在だ。アルフレッドは、嫌な汗を吹き出させるのだった。
「だが、やるっきゃねぇよな!」
迫り来る鎖。
それを、右手の盾で弾き返す。
小ぶりだから、十分な厚みがある。盾として、文句のない性能だ。
大男は勢いに乗り、前に出た。
「オオオォォォ!!」
突き出した槍が、白き影の胸を突く。
厚い毛並みに阻まれ、思うように刺さらない。
「ちっ……!」
鋭い牙が迫る。
背後に跳んで躱し、兜のような頭に向けて槍を振り下ろした。
硬い角とぶつかり合い、鈍い感触が大男の両手を襲う。
「ぐっ、かてぇ!」
続け様に、頭を振る白き飛竜。
湾曲した角は重く、しかし鋭い。さながら鎌のような動きで、対峙する人間の命を刈り取ろうとする。
アルフレッドは、柄を両手で握り直し、その脳天に向けて槍を刺した。
「ウラァッ!!」
刺突を起点にして、跳躍。
飛竜の真上を取り、全力の兜割へと繋げる。
硬い甲殻はさながら、本物の兜のよう。太く重い銃身と擦れ、火花が散る。
――いや、火花ではない。猛烈な火炎だ。
「吹っ飛べ!」
太刀の兜割ならば、鋭利な切り口により血飛沫が舞うだろう。
しかしアルフレッドが振るうのは、銃槍だ。銃槍が舞わせるのは、フルバーストによる火炎。頭に直接ぶつけるような、爆炎の渦だ。
白き影、悲鳴を上げる。取るに足らないはずの小さな存在が、火を吹いたのだ。その事実を前に、驚愕と警戒で全身を染め、それは強い怒りへと変貌した。大地を踏み締める前足に、力がこもる。
「……な……」
アルフレッドから、間の抜けた声が漏れた。
それほど、目の前の光景は異様だった。
「鎖が、増えた……!?」
遠方からスコープを覗いていたセレスも、様相の変わる飛竜を前に驚きを禁じ得ない。
うねる鎖が、音を立てて割れる。
無理矢理引き裂いたように、二又に割れたそれは、さながら命が分裂するかのようだ。全く別の生き物のように、それぞれ蠢く鎖。脈動し、光を生み出すもの。
白い影が、走り出す。
「うおっ!!」
その動きは、さながら逆手に持った剣を振るうかのようだ。薙いだ二本の鎖は、荒々しい動きで砂を削り取る。
アルフレッドは跳んで躱し、側面へと避ける。しかし飛竜もまた、全身を旋回させて大男に喰らいつく。
「危ねえ!」
押し出すような動きで盾を構え、牙を弾く。
右手に、痺れるような痛みが走った。
だが、彼はそれを堪え、むしろ鋭い刺突に変える。甲殻に覆われた頭部だが、目元や口元は黒い鱗が剥き出しだ。その目元に向けて、ブルーチャリオットの先端を打ち付けたのだ。
貫くようなその一撃に、飛竜は怯む。
「ここだ!」
切先が捲り上げた、鱗。
剥き出しになった、肉。
――それは、鮮血に彩られた"傷口"だ。
狙ってくれと言わんばかりに、赤く染まるその部位へ。
アルフレッドは銃槍を折り畳み、傷を抉るための牙を用意する。
「食らいやがれ!」
ブルーチャリオットの、回転機構。
空冷式として複数の銃身を備えたこの武器は、それらを回転させて連射性能を高めている。
そして今、その回転機構は、ドリルのように傷口を掘削する刃と化した。機構に直接植え付けられた牙――竜杭弾によって。
頭を削り取るような乱撃に、飛竜は呻く。
後退して逃げようとするも、アルフレッドは追随する。前に体を押しやり、ついには杭を射出した。突き出された杭は回転しながら頭部を抉り続け、ついには炸裂する。
巨体が転げ、大きな隙を晒した。
そしてアルフレッドは、その隙を見逃さない。
「いいぜ。出し惜しみはなしだ! ブレイヴ弾、装填!」
火薬庫が用意した、改良型ラストリロード弾。
出力と費用を抑えて、大量に生産されたそれは、通常の砲弾より高い威力をもつ。そして何より、碧く煌めくような砲炎が特徴的だ。
前に出て、銃槍を薙ぐ。
十字を刻むような斬撃と共に、砲撃。碧い炎が舞う。
セレスが放つ遠撃弾も、うねる鎖を射抜いた。白い光が漏れ、割れ目に大きな亀裂が入る。
「……こんなもんじゃ、ないはずだ。お前さんはきっと――」
あまりにも拍子抜けするような、手応えの無さ。
金の飛竜を下したであろう、この白き影は、鎖こそ厄介ではあるものの、これといって大きな脅威は感じない。
何かからくりがある。
アルフレッドがそう考えたのも束の間――。
どくんと、心臓が跳ねた。
嫌な気配を、白い影から感じたからだ。
「この感じ……」
いつかの原生林で対峙した、あの恐ろしいモンスターの姿が脳裏をよぎる。
触れる全てを爛れさしてしまう、黒い瘴気。
赤と黒を混ぜ合わしたような液状の光。
白い影が、赤黒く染まる。あの時感じた恐怖が、蘇る。
「おいおい! 嘘だろ!!」
咆哮と共に溢れ出したそれは、イビルジョーのものと同等か、もしくはそれ以上に高純度な光だった。
それが鎖に纏わり付き、大地を激しく穿つ。赤黒い閃光が、この砂嵐を瞬いた。
「ぐあ!」
叩き付けられた鎖が、砂地を焼いた。
その砂が赤いエネルギーによって凝縮、そして膨張を起こす。
ガンランスの砲炎を塗り替えるような、濃密な爆発だった。アルフレッドは吹き飛ばされ、背中で砂煙を上げる。
「やべ……!」
そこを狙うように、迫る鎖。
白い飛竜は跳躍と同時に身を翻し、振り上げた鎖で砂ごと大男を巻き上げる。
一方の彼は、慌てて横に転がってそれを紙一重で躱した。その勢いのまま走り出し、飛竜の着地する隙を狙う。突き出すような突進は、虚空を穿った。
「速いな!」
サイドステップで躱した飛竜。
再び、薙ぐようにして鎖を振るう。二又に裂けたことにより、リーチも攻撃範囲も伸びている。
アルフレッドは盾と武器でそれをいなし、再び懐に潜り込んだ。
「オオオォォォ!!」
渾身の力で斬り上げる。
腹下からの斬撃。しかし、分厚い毛並みがそれを押し殺す。
「腹下も駄目か……!」
全身を覆う甲殻は剣を弾き、腹下の剛毛は槍を止める。
そして並外れた運動性能で動きが速く、鎖のような部位で広範囲を薙ぐ。さらに、未知の赤黒いエネルギーのおまけ付き。
「あの飛竜がやられるわけだ!」
かなりの実力を誇ることを、ひしひしと感じ取る。
アルフレッドの頬に、冷や汗が線を為すのだが――。
その後方からスコープを構える相棒を感じ、アルフレッドはニヤリと笑う。
「だが、狙撃はどうだ……!」
一筋の光。
それが瞬いたと同時に、毛並みの鎧を貫通する。
そして放たれるは、爆薬を湛えた細長いワイヤー。それが弾道を描き、軌跡を炸裂させる。セレスの放つ、狙撃竜弾だ。
流石の白き影も、痛みのあまり転倒した。
アルフレッドは、その隙を見逃さない。
「オオォラァッ!!」
斬り込むような薙ぎ払い。
そして、それを回転斬りへと変貌させる。腰を使った、叩き付けるようなその一撃は、分厚い甲殻を物ともしなかった。
彼が振るうは、槍ではあるが、ただの槍ではない。
蒼火竜の如き息吹を、斬撃に上乗せする。薙ぎ払いの軌跡を彩る、爆炎の花。碧い光が、砂嵐を照らす。
「斬撃や刺突には強くとも、爆破は効くらしいな!」
セレスの放った狙撃竜弾。
そしてブルーチャリオットのフルバースト。
どちらも、目の前の竜に大きな傷を負わせていた。確かな手応えを、アルフレッドは感じる。
「ちっ、しまった。竜杭弾が……!」
全弾を撃ち切った後、竜杭弾を放つ姿勢に入ったものの、装填を怠っていた。
空撃ちされたそれは、生半可な刺突に終わる。
ならば、と。アルフレッドはすかさず銃槍を振り、再装填。手早い動きで砲弾、杭のどちらも弾倉に押し込んだ。そして、袈裟斬りのような動きとともにその全てを放出する。
装填と斬撃、そして砲撃と杭打ちを連続で行う大技。連装竜杭フルバーストである。
が、そのような大技が易々と決まる相手ではない。
白き影は起き上がり、その鎖を薙いだ。大業の締め、竜杭弾を放たんとするアルフレッドに向けて。
「ぬがっ……!」
放つ瞬間に、すかさず盾を構えた。
その衝撃に、空圧レバーを押す手が弱まる。竜杭弾を射出するまでには至らなかった。
それどころか、ニ撃目が迫る。
「連撃……ッ!」
防がれた鎖に、早々と見切りを付けた白き影は、反対の腕を振るったのだった。
二振りのそれは荒く空間を削りながら、アルフレッドに迫る。彼は軋む体に鞭を打ち、もう一度盾でそれを押し除けた。
「アルフ……!!」
両者、一歩も引かずぶつかり合う。まさに、人と竜の鍔迫り合いだ。
薙ぎ払わんとする鎖。それを止める小ぶりな盾。
大男の足が、砂に埋まる。白き影が、その全身に力を込める。目の前の人間を弾き飛ばすこと。ただそれだけに注力する――。
だから、彼の左手が、銃槍をくるりと回して構え直していることに、気付くのが遅れた。
その回転は、再装填の動作そのもの。
空になっていたシリンダーに、新たな息吹が注ぎ込まれれる。
「オラァッ!!」
放たれた、碧き砲弾。脳天を揺さぶる超振動。
ブルーチャリオットの回転機構は、弾倉に込められた全ての弾を、瞬く間に放つことができる。鍔迫り合いに終わりを告げる、強烈無比な砲弾を。
「やったか!」
決定的な一撃だと、思わず歓喜するアルフレッドだったが――。
その笑みが、一瞬で崩れ去る。
「……おいおい」
倒れんばかりに仰け反った体を、鎖で無理矢理繋ぎ止めた。
どころか、その鎖に凄まじいまでのエネルギーを纏わせる。白い光は赤黒い煙と化し、砂嵐を舞う雷すら吸収していく。
「コイツは……ッッ!!」
四本の鎖を振るい、それを前方に向ける。
集めたエネルギーを凝縮し、解き放つ。あの鏖魔ディアブロスの爆発を思わせるような、空気が静まり返る圧縮率。
想像を超える爆発がくる。アルフレッドはそう思った。
「間に合ってくれ!」
すかさず、一発だけクイックリロード。
そしてその砲弾を、前方に放つ。同時に盾で自分の身を守りながら、とにかく背後に跳ぶ。
それはつまり、ブラストダッシュを利用した後方離脱。俗に言う、リバースブラストだ。
が、彼を追うように大気は弾ける。圧縮された黒い光が、瞬時に膨張した。
「ぐあっ……!!」
「アルフ!」
直撃は避けた。
が、爆破の衝撃からは逃れられず、空中でさらに吹き飛ばされる。
大男が軽々と飛び、後方の狙撃手のところまで転がった。それはそれは、圧巻の光景だっただろう。
「アルフ! 大丈夫!?」
「いってぇ……な、何とか」
ゴロゴロと転がるものの、五体は無事だ。
ボロボロの婚約者の姿に、セレスは涙を浮かべてしまう。
「泣くなセレス。俺は無事……っ、いつつ……」
「許さないんだから! アルフの仇!」
「勝手に殺すな――ぐっ! ……いっでぇ〜……!」
迫り来る、白き影。
セレスはヘビィボウガンの側面に、特殊なパーツを押し付けては迎え撃つ。
強烈な熱と煙を放つそれは、竜熱機関と呼ばれている。破壊力抜群の特殊弾を放つ専用パーツ。その特殊弾とは、今回のように獲物に接近された時に使うもの。
「セレス!」
「アルフは体勢を立て直して! 相殺するから!」
相殺する。
その言葉を体現する、相殺弾。
特殊パーツによって展開された銃身から、白い煙が吹き上がる。
竜熱機関はさらなる熱を帯び、激しい炎を漏らし始める。そう、それはさながら、エネルギーを溜めるかのように。
迫る竜は、鎖を撒き散らしながらセレスを狙う。
あの狙撃の痛みを忘れやしない。そう言わんばかりに、怒りを込めた目で彼女を睨む。
しかしその反撃の一打は、彼女の放つ相殺弾に飲み込まれた。
「あう……!」
「ぐっ!」
超反動に、彼女は大きく吹き飛ぶ。
が、同時に白き影も大きく後ろに倒れ込んだ。
直撃を避け、反撃の一打を叩き込む。ヘビィボウガンらしい、豪快な一撃だった。
「今だよ! アルフ!」
「ありがとよセレス! 愛してるぜ!」
「えっ、あっ、……あ、あたしも!!」
新型竜撃砲。
火薬庫の知己、ヴェルナーが開発したそれは、火竜の骨髄を使わない。カクサンデメキンをはじめとした、入手のしやすい素材で作る。火薬の配合に秘密があり、既存の竜撃砲弾に劣らない威力を発揮する優れものだ。
その分、着火に時間が掛かる。すぐには放てない。だから、セレスは自らを盾に時間を稼いだのだった。
そして今、チャージが終わった。碧い煙が、ブルーチャリオットから溢れ出る。
「いっけぇッ!!」
放たれる炎。前方に伸びる爆炎が、衝撃と高熱を叩き付ける。その威力は、堅牢な獣をも怯ませる、地獄の業火そのものだ。
だが、獣もただでは終わらない。痛みに苦しみながらも、再び鎖を振るう。発射の反動でしゃがみ込む、大男を叩き潰さんと。
――だが。
「二発目が、あるんだぜ」
新型竜撃砲は、二連装式。
十分に加熱された砲身は、二発目を即座に解き放った。
先程のような、長時間のチャージはない。間髪入れず放たれたそれは、二本の鎖にぶつかり、そしてそれを焼き溶かす。根本から、内側の芯まで、全てを灼いて一つにした。否、飲み込んで、噛みちぎるのだ。
「……焼き切った」
呆然と、セレスが口にする。
その言葉を現実にするように、何かが砂に落ちた。虫のように這うそれは、あの鎖だったもの――。
「どんなもんだ」
撃ち切ったアルフレッドは、砲身を振っては熱を逃す。
未だ健在の大男を前に、白き影は驚くばかり。右翼の鎖は、その片割れが焼きちぎられてしまった。残った一本も頼りなく、これ以上の戦闘は望ましくない。白き影は、そう判断する。
ただ、確かな敵意を育むのだ。
二本足で立つ、奇妙な生き物。しかし、小さな体に反して、恐ろしい牙を持つ。自身の体に穴を開け、自慢の鎖を斬るほどの高熱を。
この生き物は、油断ならない。彼が知っていた二本足の生き物とは、明らかに違う存在。自らを脅かす何かである。そんな敵対心を抱きながら、その場を後にするのだった。
「あ、飛んだ! 逃げた!」
「……何とか、撃退成功か……」
鎖が斬られたというのに、簡単に空を舞う姿。
大した痛手ではないということを実感して、アルフレッドは辟易とする。
こんなモンスターがいるのか。
こんな、未知の脅威が砂漠の向こうに存在するのか。
そんな、途方のない思いに満たされ、それは重さとなり、彼の腰を大地に引き寄せた。
「あー、もう立てねぇや……」
どっしりと座り込む大男。
セレスが駆け寄り、お互いの無事に安堵する。
砂嵐は未だ砂漠に鎮座しており、青い光が空を走っている。白き影の乱入によって、事切れた金の飛竜が、静かに横たわるのだった。
放った回収信号が砂上船に届くまで、まだしばらく時間が掛かりそうだ。
アルシュベルドオンラインと揶揄されていた頃が懐かしいですね。一辺倒かと思いきや、アルシュベルドの完成度が高すぎて、どの武器で挑んでも楽しい素晴らしいモンスターだと思った記憶があります。飽きずに連戦してました。ワイルズは、私にしては珍しく、クリア後もしっかりハマるタイトルでした。おまもり2個ずつくれるようにしてあげてください。
後日談も次がいよいよ最後です。タイトルアップデート第四弾前には終わる予定です。ゴグマジオスに早く会いたいね。