Assault Lily〜御使いの妹   作:ラッファ

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第10話

フォーメーションを組んでから数日後、ついに訓練の成果を出す日が来た

出撃要請を受けたグランエプレが現場に到着すると、そこにはヒュージの群れが出現している

 

「あっ見て見て、あのヒュージ!見たことないやつがいるよ☆」

 

その中に一体だけ見慣れない形をしたヒュージがいる

体格は普段戦っているヒュージに比べ大きく実力も未知数

とはいえ姫歌は

 

「大丈夫ですよ。ヒュージとの距離と相手の編成はいつも訓練でやっています。

という訳で紅巴、いつも通りにアレ、お願い!」

 

「は、はい…テスタメントですね…」

 

彼女の呼びかけに応えるようにテスタメントを発動する

ヒュージというのは個体によって移動法や攻撃手段が異なっており、現状では睨み合い

先手をヒュージに打たれてしまってはこちらは後手にまわるしか無く不要な負傷者を出すリスクがある

 

 

ならば妙な事をされる前に先手必勝で強力な攻撃を行うべきだし、訓練でもそのような立ち回りを行ってきた

 

「待って!少し相手の出方を…」

 

「(定盛ちゃん、それは通常の対処の仕方!!…まぁ訓練でやらなかったし責めるのは酷か。)」

 

それを聞いた叶星は静止しようとし、海漓は内心ミスを指摘しようとするが今下手に指示を出して混乱を招く事を考えフォローの策を錬る

 

そう、姫歌の対処が有効なのはあくまでも今まで出現した場合の話

勿論、未知の個体でも行動パターンが従来出現しているヒュージと同じという事もあるがそれも戦って初めて分かる話

データも何もない中でこちらの手の内を晒すのはリスクが高い

とはいえコチラが先に動いた以上、ヒュージも動きを見せるのは当たり前

 

紅巴のテスタメント発動と同時に先のヒュージはその大きな体に見合わない速さで、レアスキルを発動した紅巴に狙いを定め突撃してくる

 

 

「(レアスキル…もしくは発動者のマギに反応するパターン?なら)」

 

発動者のマギに反応するのであれば自身のユーバーザインは通用しないどころか相性が悪い可能性すらある

とはいえ相手に先手を打たれてしまった現状でユーバーザインを使うのは悪手

 

そこで、自身のCHARMであるトリグラフをすぐに両手に構え即攻撃

高速で移動してくるとはいえ直線的な軌道なので相手の起動を予測する必要は無い

紅巴の正面に弾丸が向かえば自動的に弾は当たるのだ

とは言え万が一回避され、自分に向かってくる可能性も考慮に初手に放つのは右手側のCHARMのみ

左手はこちらに向かってきたとき用の保険として弾を温存

 

放たれた弾丸は予測どおりヒュージの側面に当たり動きが一瞬止まるが再び直進する

本来ならば攻撃してきた海漓を狙いに行くのが普通なのであろうが起動を変えない事からレアスキル発動時のマギに反応するか本能がテスタメント持ちの欠点を理解しているかの二択であろう

 

これだけならば大したダメージとは言えずただの時間稼ぎにしかならないが、その一瞬を逃すほどこちらも甘くはない

 

「海漓さん良くやったわ」

 

一部始終を見ていた高嶺もすぐに己の使用CHARMであるリサナウトを展開、ヒュージに鋭い斬撃をお見舞いし、弾き飛ばす

 

「たかにゃん先輩すごーい、アレを弾き飛ばしちゃった」

 

「海漓の射撃も流石ね、ヒュージの軌道を読んでなきゃあんなピンポイントで行かないわよ」

 

灯莉、姫歌が関心をしながらも紅巴をカバーするように配置につく

 

テスタメントを使用している紅巴は防御力が低下しておりそれを残りのメンバーでカバーする形だ

とはいえ大型のヒュージは叶星が対処しております1年生3人は付近の小型を対処している

 

とはいえ小型の対処とはいっても連携して紅巴を狙ってくるわけではないので対処は楽であり

上級生二人の戦いを見学する事に意識を割いている

 

叶星と高嶺の連携は見事という言葉で簡単に言い表せるものではないのかもしれない

 

「高嶺ちゃん、そっちに行ったわ」

 

「えぇ、任せて頂戴」

 

的確な攻撃でヒュージを追い込みルート上で高嶺が待ち構え斬撃を浴びせる

勿論ヒュージも馬鹿ではない

軌道や攻撃パターンを変え何度も紅巴への攻撃を試みるがその全てを叶星と高嶺の連携により防ぎカウンターを叩き込む

 

この光景に1年生3名はそれぞれ感激し、いつか自分達も、と意気込むが海漓だけは見方が違っていた

 

「(いつか、か。それが来るとは思えないけど…特に上級生との連携は)」

 

一つ誤解を与えないように解釈するならば彼女が他のメンバーを見下してるという訳ではない

だが、ここ最近の訓練を行い感じた事

それは上級生が1年生を戦力としてそこまで計算していないのでは無いのかという事だ

訓練や指導、フォーメーションなど高いレベルで行うためこの事に関しては彼女は何も不満は持っていない

自分達に必要な事を教えてくれているのだ

だが、その内容というのはいつも上級生と下級生を分けて行っており、一度も上級生下級生を混ぜて一つの敵に対処するという連携を行っていない

 

特にこのレギオンは6人編成にも関わらず前衛を務めるのは常に上級生

大型も上級生が対処し自分たちは常に小型

勿論1年生だけで無茶な戦いを強要されても対処など出来る訳もないがこうも露骨に学年を分けて連携を行うのならばグランエプレは6人である必要がない

 

「(ガーデンの方針…もしくは二人に何か考えがあるのか…)」

 

とはいえ彼女は鎌倉から東京にやってきた身

地域やガーデンによってヒュージとの戦闘方法やリリィの育成方針に違いがあって当然であり、そのやり方を一方的に責めたり否定するのは間違っているというのが彼女の思想であり、今の彼女に出来るのは自身の実力を付けその時が来るまで信じて待つ事

 

そう考えているがまだ戦闘は終わっていない

叶星の指示でフォーメーションを組みなおし残りのヒュージを片付けようとした所に通信が入る

 

「たった今、通信が入りました…付近に要救助者有りとの事です」

 

「(戦闘があったのはここだけでは無いか…とはいえ、近くには出動してるレギオンもいるはずだしガーデンに待機してるリリィも居る。)」

 

表示された場所を確認するがここからは離れておりグランエプレが向かうよりも早くに到着するレギオンも想定される

到着する時間を考えたらグランエプレよりも適任なレギオンはあるだろう

しかし、上級生は

 

「…叶星!」

 

「…えぇ!グラン・エプレは戦闘地域から撤退、これより要救助者の元へと向かいます」

 

そう判断するが一年生達は

 

「ええっ!?いや、でも叶星様あのすばしっこい奴まだ動けますよね?このチャンスを逃したら…」

 

「動きは止めたしまだ動く気配は無いわ。

攻めてこない以上手出しは無用。要救助者の元へと向かうのが最優先よ」

 

「ですが、場所はここからかなり離れています。ガーデンで待機してる他のレギオンにも出動要請がかかっていますし付近に展開しているレギオンもあると思いますが…」

 

「でもそのレギオンが移動中や救助作業中に別なヒュージの群れに襲われたらどうするの?

それに要救助者の中に重症を負った人がいたら?」

 

姫歌と紅巴はその判断に疑問を持つが上級生は人命を重視する考えをしめし、その根拠を言う

 

「確かにヒュージを倒すことがリリィの使命である事に変わりは無いしそういう方針のガーデンもレギオンもあるわ。けれどそれが全てではないと私は考えるし、グラン・エプレはヒュージを倒すことだけを重視するレギオンでは無いわ」

 

叶星の言葉を聞き納得したのか姫歌は

 

「分かりました…海漓、灯莉、紅巴ヒュージを牽制しつつ撤退するわよ。」

 

姫歌は一年生3人に指示を出し自身も援護に回ろうとするがヒュージを観察していた灯莉と紅巴はすぐに異変に気がつく

 

「まってヒュージ達どっか行っちゃうよ?」

 

「向こうから撤退してくれるなんてラッキーですね。これで要救助者の元へ行けます!」

 

ヒュージが撤退したのを確認した彼女達は速やかに要救助者の元へと向かう

とはいえ万が一に備え叶星、高嶺は先頭を走り灯莉と紅巴を中央に、海漓と姫歌は後方につき背後からの襲撃に備えつつ移動する

 

すると姫歌は小声で彼女に

 

「さっきはありがと、今思えばあの判断は私のミスなのに咄嗟のフォローまでしてくれて」

 

「初見の対応なんてやってなかったし仕方ないでしょ。まぁ妙な事される前に仕掛けるっていう判断自体は間違ってないと私は思うし謝らなくていいよ」

 

「まぁ、いいわ。帰った時にまた話しましょ。色々と話したい事あるし」

 

「ん?まぁいいけれど…」

 

姫歌の雰囲気がいつもと違った為、海漓も少し心配するが今は救助活動に専念すべきだと彼女は考える

 

しばらく移動した後、付近にいたレギオンや神庭から応援に駆けつけたレギオンと協力し救助活動を行う

 

道中で襲撃されたり重症者がいなかった事は幸いであろう

 

 

こうしてこの日の任務は幕を終えるのである

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