海漓と高嶺によるスキルを用いた高機動戦、速度を活かした激しい衝突になるかと思われたが少々異なる展開になる
「(やっぱり速い‥!!)」
刃を交え交差したかと思えば打ち合うこと無くすぐに離脱。2人は訓練場の中を縦横無尽に駆け巡り衝突をくり返す
その中で高嶺は彼女の動きは全て読んでいると言わんばかり立ち回り
「(ゼノンパラドキサ…!)」
高嶺の持つレアスキル、ゼノンパラドキサ。高速移動とベクトル察知による回避だ
それは海漓も十分承知、それでも慌てずに冷静に対処する
「(確かに強力だけど‥ファンタズムみたいな未来予知をしてる訳じゃない)」
ゼノンパラドキサの能力は厄介極まりなく彼女の技量も相まり突破するのは容易ではないと考えていた
先程までの行動と数度撃ち合った時の感想、ゼノンパラドキサの欠点と藤乃によるすり潰し、全てが噛み合ったこの瞬間だからこそ高嶺とのマッチアップを選択したのだ
一つでも欠けていればまだ探る段階だった
彼女達が高速移動で室内を駆けめぐり衝突している最中でも藤乃は叶星を攻め続ける。当然高嶺としては相棒を助けに行く為の立ち回りに切り替えようとする、が
「何処行くんです?」
「(読まれた!?‥いや、虹の軌跡なら可能ね)」
逆に海漓が許さないと言わんばかりに彼女の前に立ち塞がる。
自身の動きが読まれた事に驚くが、それは海漓のサブスキルによる未来予知だと即座に理解する‥だが
「(動きは分かるけれど‥サブスキルでそこまで高精度な読みが可能なのかしら?)」
そう。動きを読む事に関しては十分に説明がつくが、助けに行くタイミングまで可能なのか。可能だとすればそれはサブスキルでは無くレアスキルの領域
途中で打ち合いを放棄し叶星へ加勢を試みてもまるで分かっていたかのような口ぶり、対応をされた事で疑念が深まる
その後も何度か叶星への加勢を試みるもその全てが防がれる
タイミング、経路を変えても全て分かっているかのような対応となる
「海漓さん‥貴方‥まさか強化リリィなのかしら?」
「‥へっ!?」
真正面から対峙、CHARM同士が拮抗する中で問いかけられる。
彼女の言うように強化リリィと呼ばれる者達が扱うスキルの中にはサブスキルをレアスキルに昇華する物も存在し、使用している。
そして、今までの撃ち合いから海漓もそうなのかと判断し問いを投げる
「いや、違いますけど?何言ってるんですか急に?」
余りにも検討違いな質問に理解が追いつかない。急にどうしたのか、相手を油断させる手段だとしてももう少しマトモな事を聞けと思ってしまう
「貴方のその読みは虹の軌跡じゃない‥その先の領域
持っているのなら説明がつくわ」
「いや‥自分の胸に手を当てて今までの行いを振り返って下さいよ‥」
特別な事は何もしていない
2人の行動を踏まえた上で対策を練り、勝つ為に立ち回っているだけ。
戦いの最中、敵にヒントを与えるなど愚の骨頂だが、はぐらかす事で要らぬ疑いをもたれる事を考えればこの程度は必要経費とも言える
「(これは守るでしょう?)」
拮抗しているさなかで刃をうけながし後退、藤乃を援護する為に叶星に対し接近戦を試みる
「行かせない‥!!」
「(ほらやっぱり)」
叶星の元に向かわせない。海漓が動くと同時に今度は高嶺が彼女の前に立ち塞がる。
叶星を守る、叶星を助ける。叶星と共に戦う。戦闘に限らず自身の行動、その全ては彼女の為に。それが宮川高嶺の行動原理
そんな彼女の行動原理を頭に入れて置けば大体の動きは想像可能で虹の軌跡の補助があれば動きにも対応できる。
「(連携してなきゃ、ね)」
だがあくまでも彼女を視界に入れ、正面から向き合う時限定の話。叶星との連携や叶星への対応最中では、叶星に集中し、考えを読む事も求められる為、難易度は一気に跳ね上がる
「(一撃の軽さ‥高嶺さん、こんな戦い方だしパワー寄りのアベレージタイプだと思ってたけど実はスピードタイプ?)」
そして幾度刃を交える中で感じる違和感。高嶺の一撃が見かけによらず軽い。彼女はリサナウト程の巨大な機体を力強く振り回しているため一見すると総合力を重視しつつもパワーを活かした戦い方を好みゼノンパラドキサはあくまでもオマケ。
そう思っていたのだがパワー型を謳う割には一撃が余りにも軽い
これでパワー型を謳うならば舐めていると言われるレベル
実はパワーでなくゼノンパラドキサの高機動による撹乱を活かし、ヒュージに対しては基本的に一撃離脱をくり返すのが高嶺の得意とする戦法ではないのかというのが打ち合った中で感じた彼女の予想
「(そして拮抗状態の時には…間違いなく‥)」
何度目かの衝突。互いの機体がぶつかり拮抗状態へと持ち込む。
本来の彼女はパワーでは無くスピードにも関わらず正面から撃ち合った時には拮抗する。理由、それは
「(リサナウトの出力を上げる…!)」
衝突の最中にマギを集中しリサナウトの出力を上げる
「…っ!?(これも読まれた!?)」
「重っ!!」
高嶺が振り下ろす機体を自身は両手に持つ2機で挟み込む形で受け止める。高嶺もここからリサナウトの出力を上げ、押し込んで来ると思いきや、挟み込まれた機体を強引に引抜くと直ぐ様後退する
先程食らった蹴りが再び飛んでくることを警戒し、彼女の脚がとどかない場所まで下がったのだ
「もう1回叩き込んでやろうかと思ったんですけどね、残念」
「2度目は無いわ」
「そうですか」
高嶺は一度下がり、仕切り直す。
だが天野海漓と言う人物相手に後退し間合いと考えるを時間を与える事は大きな過ちである
「入るまでやり続けるだけです!!」
もう何度目か、海漓はインビジブルワンを発動し高嶺へと突撃、再度高機動戦闘に入る…誰もがそう思っていた
「‥っと見せかけて」
しかし、彼女は高嶺へ向かう最中、急な方向転換。近接戦を行なっている藤乃達の方へと向かう
「させない!!」
無論、それを藤乃の加勢であることは明らかで高嶺は直ぐ様海漓を追う。海漓が先に動こうと速さならば高嶺の方が上。海漓がどう動くのかも分かる
合流など許す筈が無い。
高嶺が海漓を追い抜き立ち塞がるように前に出る…まさにその時だった
「…消えた!?」
寸前の所で海漓の姿が消える。更に
「あら?」
「えっ!?」
叶星と打ち合っていた藤乃の背後、正確には彼女の足元から影が伸びたかと思えば頭から飲み込み、影が消えると同時に藤乃の姿も消える
だが姿を消しただけで何も起こらず、物音一つしない静粛が室内を支配する
その間に叶星と高嶺は合流、いつでも連携で対処出来る形を取る
「(回収、完了。)」
肝心の
「(二刀流が仇になったかな‥)」
現在の海漓は藤乃と体を密着させた状態。肩を寄せ合う状態でもいいが、より精度を高めるため海漓が藤乃の背後から密着する形となっている。
本来ならば手を繋ぐか藤乃が手で自身の体を掴めばいいだけの話しだが双方共に二刀流。両手が塞がっているためこれしか選択肢が無かった。肩を寄せ合ってもいいが、少しでも離れればアウト、発見されるリスクを考えれば密着するのが最善だ
「(これアウトだよね‥しかも余計なトラブルに‥)」
幾ら身を隠すためとは言え背後から抱きつかれたら不快になるものだっている。ましてや特別な関係でも無い後輩だ
そして彼女も日頃の素行はともかく人気者、鈴夢のように慕う後輩や思いを寄せる人物がいたのならば嫉妬諸々で余計なトラブル必須
「藤乃さん、準備良いですか?‥あのー、藤乃さん?」
ここからは詰めだ。背後から藤乃に声をかけるが反応が無い。呼吸を整えているのだろうか?不安に感じ再度声を掛ける
「えっ、は、はいっ!」
「すいません。こんな形で
このほうが効率良くてマギの節約にもなるんで」
珍しい反応。集中して居たのに声をかけたのが不味かったのか
それとも抱きつかれるのが嫌だったのか。どちらにせよいきなり抱きつかれていい反応をする方が少ない。親しき仲にも礼儀あり
仲が悪い事は無いがここまでの特別な関係ではない
藤乃にだって想い人はきっといる。誤解を招かれるような行動は慎んでほしかったのかもしれない
「お、お気になさらず。
それで、高嶺さんの方は分かりましたか?
当初の予定とは大分異なりますが」
「えぇ、ばっちりです」
藤乃はそんな海漓の思いを知っているのかは分からないが、気にするなと一言
それよりも肝心なのは高嶺。ゼノンパラドキサの配分が分かったのか否か
当初の予定では海漓がユーバーザインの出力を調整し妨害が通用するのか否かで探る予定だった高機動戦闘による激しい撃ち合いは予定外。
「さて、仕掛けますよ…打ち合わせ通りにお願いします」
「はい。」
その言葉と同時に、今度は海漓達が仕掛ける番となる
「来るわよ!」
「えぇ!」
姿を消していた2人が突如として現れ正面から突撃する。海漓は叶星、藤乃は高嶺を狙っているが肝心の2人は1対1で戦うつもりは無い。合流した時点で分かれて戦うなどあり得ない
「貴方達の狙いは分かっているわ!」
「もう通用しない!!」
これでは先程のくり返し。だが今回は異なる。叶星は海漓を迎え討つ体制を取り、高嶺は向かってくる藤乃を無視し海漓を狙う
「私のレアスキル、知らないなんて事は無いわよね?」
そして叶星はこの場面でレジスタを発動。機体の出力を上げ海漓を迎え撃つ体勢を取る。彼女の守りがどれだけ硬く、技術を誇っていようが攻めなければ叶星には勝てない。
更に海漓もマギ保有量に不安がある事だって把握している。時間がない以上は焦りも出る…そんな状態のリリィを崩せない叶星ではない
機体を構え、迎え討つ体制を取るが距離が詰まった所で海漓の姿に異変が起きる。
「えっ‥っ!?」
海漓の姿が徐々に薄くなり、風によって飛ばされる砂のようにゆっくりとに全身が崩れ始める、それと同時だった
「レジスタを使ったとは言えその程度で私の一撃、止められるといいですね〜」
「ふ、藤乃さん!?どうして!?」
海漓の姿が崩れると藤乃が姿を現し、攻撃体勢を取る。これには叶星も動揺する
今、迎え撃つために込めたマギ、体の体勢は海漓を迎え撃つ為。藤乃の一撃を止めるには到底足りない。構え直そうにも既に距離が詰まっており到底間に合わない
「っ、叶星!!」
あの藤乃が本物ならば自身が狙っている藤乃は海漓が化けた姿。
ここで彼女を仕留める事も可能だがそれは叶星を見捨てる形となるがそんな事をする高嶺ではない
「(海漓さんは後!今は叶星を!!)」
方向転換し、叶星のフォローへと回る。移動速度ならば自身の方が上、例え背を向ける事になろうとも海漓の速度では高嶺に追いつけない。
加速し叶星へのフォローへと向かうまさにその時だった
「そう。貴方は叶星さんが危機になれば必ず駆けつける」
「‥えっ」
何が起きたのか、高嶺が理解するよりも状況が動く。
進路上に唐突に海漓が現れ、CHARMを構え鋭く横薙ぎの一撃を放つ
咄嗟に現れた事で反応が遅れ、その一撃をモロに受けてしまう。しかし流石は高嶺と言うべきか、後に大きく飛ばされようと転倒する事なく体勢を維持している
「では暫くの間ご退場です‥倒れないでくださいね?」
「きやっ!?」
一方の叶星は藤乃の一撃を防ぎきれず後方に吹き飛ばされてしまう
姫歌と違いCHARMを手放すこともなければ倒れ込むことも無いがダメージは残る。追撃し止めをさせば藤乃の勝ちという状況にも関わらず追撃を行わない
なぜなら叶星を吹き飛ばした後に海漓の元へ向かい、合流する形を選んだから
「(まさか…!)」
「(ここで連携…!!しかも狙いは私!?)」
ここに来て連携するかのような立ち廻りを行う。2人は連携せず各個撃破を狙うとばかり思い、実際にそのように立ち回っていた。
ここに来て連携、しかも狙いは叶星ではなく高嶺である事に2人だけで無く観戦している多くのの者が驚いている
「藤乃が吹き飛ばした事で叶星が追いつくまでに僅かな距離と時間が出来た」
「叶星、高速移動スキルもってないもんね」
場所は室内の為、僅かな時間ではあるが2人を完璧に分断し孤立させる事が出来た。直ぐに合流しようにも叶星は高速移動を行う為のサブスキルを持っていない。
その間に高嶺を沈める算弾なのだろう。後は高嶺を逃さなければ良い
「(律儀というか、段階を踏むというか…まぁ、らしいっちゃらしいッス)」
「(何事も順番が大事やからな
ルールとかセオリーとか守る奴やし) 」
海漓の悪友2名は隊長は叶星、高嶺は言い方を悪くすれば叶星と言う宝を守る門番、姫を護衛する騎士と認識
そんな中でならば宝を奪う、姫を攫う為に行う事は至極簡単
門番、護衛の騎士を倒した上で本命を手に入れる王道路線を進むつもりなのだ
高嶺を攻略し撃破する、叶星は後回しだ。これが海漓の予定である
「それっ!!」
海漓が正面から高嶺と激突し加速する隙を与えない。
従来ならば拮抗だが今は違う
「足止め、感謝です!!」
「(不味いっ!!)」
ほんの数秒、動きを止めることは藤乃に対して無防備な姿を晒す事と同義
鍔迫り合いを止め慌てて後に回避、間合いを取りゼノンパラドキサを発動し叶星の元へと向かおうとするが
「だから読まれてますって!!」
移動先には海漓が、だが同じ事をくり返す高嶺ではない
「分かってるわ!!」
読まれる事は高嶺も分かっていた、彼女の狙いはゼノンパラドキサを発動する事。ここで海漓が追跡し、高速での打ち合いに持ち込めば少なくとも藤乃が合流してくる事は無く、叶星に駆け寄るように立ち回れば良い
「ならこれはどうです?」
「幻覚で作った分身ね」
その言葉と同時、高嶺の周囲を海漓が取り囲む。正体はレアスキルにより生み出された分身。それが突如として現れ、彼女を包囲する形で現れたと同時、一斉に向かってくる。しかも、だ
「動きがバラバラ!?」
分身一つ一つがまるで別々の意思を持っているかのようにバラバラに動き高嶺に攻撃を仕掛ける‥しかも、だ
「(一つ一つに気配と力‥!?)」
現れた海漓、一つ一つから彼女の気配、動きの力が伝わってくる。どれか一つは本物で他は偽物だがそれが分からない。
故に高嶺は分身一つ一つへの対処を求められる
「(本物は‥どれ!?)」
安易にCHARMで反撃する訳には行かない。本物ならば良いが、万が一外れだった場合、僅かな隙を海漓本体が突き攻めてくる可能性は大いにある
しかも、だ
「隙ありですね〜」
「(ここでっ!?)」
時折、海漓の分身の陰に隠れるように藤乃が前進し攻撃を打ち込み、回避するが、直後に藤乃は姿を消す
「(藤乃さんがステルスを!?
そんな話、聞いたこと無いわ!)」
「高嶺ちゃん!!」
「(来たな‥!!)」
ここに来て叶星が合流、乱戦へと飛び込もうとするがそうはさせない
新たに現れた2人の海漓が叶星の迎撃に向かう
「こんな物に!!」
「って思うじゃないですか」
「‥えっ‥」
分身を無視、通り過ぎたと同時
左右から挟むように海漓が現れ同時に蹴りを叩き込む‥しかも右側の海漓の蹴りが鳩尾に入ると同時、強い衝撃が叶星を襲う
「これで高嶺さんとお揃いです。良かったですね」
何をするにも高嶺と一緒。同じ世界。ならば高嶺と同じように叶星の鳩尾にも蹴りを叩き込む。これでお揃い、二人一緒だ。
「叶星!!」
幻覚と藤乃の攻撃に気を取られ、更に幻覚に紛れ自身を狙うとばかり思っていた本物の海漓が叶星を攻撃したのだ
本物は叶星に危害を加えた海漓、他は全て偽物。
大切な人を傷つけた者を許す筈がない。
全力で海漓を叩き潰す為に狙いを定め、加速する、まさにその時だった
「隙あり、です!!」
自身を狙うのは海漓だけでない。藤乃も居るのだ。海漓を倒すことに意識を向け、姿を消した藤乃への警戒が疎かになった事により隙が生じる
「(どうして私が藤乃さんをノーマークに!?)」
高嶺だって超一流のリリィ。藤乃という強力なリリィを警戒しないなどあり得ない。注意を向けていたにも関わらず隙を見せてしまった自分が信じられない
「幻覚に対処できる才能は持ち合わせて無かったみたいですね
‥まぁ海漓ちゃんレベルを探す方が難しそうですけど」
藤乃も超一流のリリィ、生じた隙を逃す筈が無い。
才能に溢れていても幻覚に対処する才能も、知識も無かった故に生じた隙、それは叶星も同じであることは藤乃には分かっていた
「しまっ!?」
隙を逃さないと言わんばかりに、藤乃は高嶺にギリギリまで接近
両手に持つ機体を下から上へ、交差させる形で大きく切り上げる。
反応するも出力向上が間に合わず、その衝撃で彼女は機体を手放してしまう
リサナウトは空中で回転し、丁度対面している海漓と叶星の間に挟まる形で落下、床に突き刺さる
「(幻覚とは生成と干渉なんて言ってましたが‥ここまでとは
恐れ入りました)」
準備の最中に海漓が言っていた事を思い出す
あくまでも海漓がユーバーザインを使う際の解釈だ。
ものすごく大雑把に言うならば幻覚で様々な物を生み出し、相手に干渉すると。
気配を飛ばしたり姿を消すのもその一端なんだとか
振り返りは後、まだやる事がある
「これで高嶺さんは負け。そして」
この戦いの勝利条件はCHARMを手放す、もしくは膝をつく。
機体を手放した高嶺は敗北となる
これで2対1叶星は追い詰められた形に見える、が
「私もお役御免です。」
藤乃も機体を手放し床に降ろす。
彼女の場合は自分から負けに行った
この戦い、海漓は叶星との一騎打ちを望んでいたのだ。口を挟んだ高嶺は倒した
ならば最後は海漓が自分の手で叶星を倒すべき、そう判断した
「(後は海漓ちゃん次第です)」
残りは一人。それならば2人がかりで倒すという手もあるし、正直な話をするならば藤乃も迷った。海漓から連携による叶星の撃破を拒否された訳では無い。タッグバトルならば相方が沈められれば起こり得ること。
しかし、自分以外のグランエプレはそれで勝ったとしても負けを受け入れない、認めない可能性は非常に高い。
このまま勝てば【勝てたのは全て藤乃のお陰だからこの勝負は無効】なんて話になりかねないし
ならば負けを受け入れさせる為にも最後は海漓が自らの手でトップレギオンを率いる叶星を倒さなければならない。
用意した策で連携を崩したのだから次は自身の力で叶星を撃破するしかないのだ
「海漓ちゃん、後は貴方が自分自身の手で決めてくるのです」
だからこそ決めて来い、勝って掴み取れと背中を押す。
どの道、対決を言い出したのは海漓。口を挟まなければ1対1だったのだ
決着の落とし所としても申し分ない
「まぁ、どの道叶星さんにふっかけたのは私ですからね
自分の手で沈めるのが1番です」
言い出したのは自分。蒔いた種は自らの手で刈り取る。当たり前のことだ
あくまでも藤乃は助っ人。にも関わらずおんぶに抱っこでは余りにも情けない
最後は自分が決める。海漓は力強く床を蹴り、叶星に向かっていくのだ
次でタッグバトルは終わり