Assault Lily〜御使いの妹   作:ラッファ

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第105話

 

叶星へと向かっていく海漓。今まで通りならば打ち合いの末、叶星が攻め、海漓が守りの形になるが今回は今までと大きく異なる

 

「今までと違う!?」

 

叶星が驚くのも無理は無い。一撃を当て直ぐに離脱。叶星が追いつき一撃を当てようとしても防御ではない回避、そこから流れるようなカウンターへと攻め方、立ち回りを変えて来たのだ

 

「時間がないですからね。決めさせて貰いますよ」

 

彼女に残された時間はあと僅か

マギの保有量を考えるならばここで決めなければ尽きてしまう。

守りに徹しては時間切れ、残りのマギを使い果たしてでも叶星を倒さなければならない

 

高速移動を活かし、一箇所にとどまらず多方面から攻め込み叶星を崩しにかかるが彼女はその全てに反応し、対処これが本気だと言わんばかりにカウンターを繰り出す

 

「(まさか、最初からこうなる事を見越して‥!?)」

 

立ち周りの変化。そして狙いに気が付かない程叶星は愚かではない。

 

「(守りに徹したのは私や私達の手の内を引き出す為!)」

 

戦いが始まってからずっと海漓は守りを意識した立ち回りを行い、自分達も守らせる体制を取らせてきた

守りを崩すために多様な攻撃を加え続けてきたが、全て凌がれた

海漓からすれば自分達の攻撃パターンを使い切らせた後に攻勢に転じるだけ

そう言う事なのだろう

 

「守ってばかりじゃ勝てないけど‥負ける事は無い。そういう事かしら?」

 

守ってばかりでは戦いに勝てないが守り続ければ少なくとも負ける事は無い。攻撃を防ぎ続け相手の太刀筋、攻撃のリズムを掴み、身体に染み込ませ終盤に攻勢を仕掛ける

相手の攻撃に耐え続ける自信があるのであれば実に有効な策だ

そして、其の為の訓練をこれまでも、そしてこの一週間海漓は常に行い続けてきた

 

「貴方よりも相模の荒くれ共や藤乃さん、祥枝さんの一撃の方がよっぽど怖くて恐ろしいです‥よ!!」

 

相模の同期や上級生、それに教導官やヒヒイロカネの私設レギオンの面々や藤乃、祥枝に比べたら叶星や高嶺の一撃など大した事は無い。守るだけなら十分に出来た

後は攻め落とすだけ、未来予知で動きを読み、高速移動と幻覚による撹乱で多方面から攻め続ける。

大切なのは真っ向勝負を行わない事。正面から打ち合ってしまえば勝てない事は分かっていた

 

 

「(これが‥海漓ちゃん‥!!)」

 

追い詰められた叶星は焦り始め、負けを覚悟する。油断していた訳では無い。

だが自身と比べるた場合何処を比較しても劣る所など無い。それは皆が分かっている事

才能も実績も、そしてペアの経験も全てに置いて自分達が上

1対1では危なかったのも事実だが最後はスペックで押し切れる自信もあった。それだけの力を叶星は持っている

 

だが勝てない。個人でも、連携でも彼女の守りを崩せず、気がつけば高嶺は倒され自身も追い詰められていく

 

「これで、終わりです‥!!」

 

「(正面‥から、でも)」

 

正面の攻撃が本物とは限らない。囮にし死角からの不意打ちにも警戒しなければならない

 

「(真っ向勝負を避けてる海漓ちゃんが正面からは決めに来ない)」

 

今に至るまでに正面から挑みに来る事はあっても決定打になる事は無かった。囮にし第2、第3の攻撃への布石

叶星も学習する。この正面は囮、つまりは幻覚で生み出した分身。

 

「この後に‥えっ!?」

 

この後に控えている攻撃こそ本命。

現に正面から向かってきた海漓の体は砂のように崩れながら消えていくならばと注意をそらしたのと同時であった

 

「痛っ‥!!な、何!?」

 

体が崩れ去ると同時、何らかの物体が叶星の顔面めがけ放たれており、それが彼女の右目に直撃

何らかの鈍器、もしくは隠し持っていた武装、だが飛んできた物体の正体はそんな物騒な物ではなかった

 

「う、上履き!?えっ!?!?」

 

床に落下する音を元に視線を下げれば底にあったのはガーデン指定の上履き

形からするに左足に履いていた物。

叶星は知らないかもしれないが海漓が行ったのは一般的に【靴飛ばし】と呼ばれる者。幼い子供が友達同士でふざけて遊ぶ行為の一瞬

脱ぎ捨てたり、公園の遊具にのり反動を利用して飛ばしたり様々なやり方がある

 

「よそ見してる暇が有りますか!!」

 

「‥!」

 

余談はさておき、上履きに意識を向けた隙を付く形で海漓が距離を詰る。無論相手も気を取り直し受け止める準備をする‥が

 

「‥右から‥!」

 

位置は痛みの残る右目の死角を突く場所を陣取るように海漓が移動し攻撃を仕掛ける

 

「責めはしないけれど、その位は読んで‥」

 

死角を突き仕掛けて来る事は叶星も想定済み、故に攻撃が来るであろう方向に細心の注意を払っていた‥が

 

「来ない‥まさか!?」

 

「これで、終わりです!(ってかこれで決めないと私のマギがヤバイ)」

 

右側に意識を向けた事で疎かになった逆側から海漓は攻撃を仕掛ける。右目を突く形の移動は全て囮なのだ

これが止め、いや止めにしなければならない。文字通り海漓のマギも限界、防がれようものならばマギが尽きてしまいレアスキルの発動以前にCHARMを満足に振れなくなってしまう

 

不意を突かれた形となった 叶星は僅かに反応が遅れている。故に海漓の攻撃が通れば叶星の負け

しかし海漓は分かっていなかった。

今叶星を舐めてない。だからこそ策を練り挑んだ

実績、経験、才能全てにおいて格上の叶星を舐める理由など一つもない。だからこそ対応が間に合わない瞬間を作り出し決めにいった

 

分かって居なかったのは力では無く人の心。

特にリリィ同士の愛情、心に関しては分かっていない。

相模時代の海漓ちは舞弓や魅夢に限らず多くの友人がいるし遊糸のようにリリィとしては尊敬する多く先輩もいるし教導官にも敬意を払っている

しかし、それらはあくまでも親友や悪友、上級生、大人に対しての感情であり、俗に言う姉妹関係やパートナーではない。

愛する人が傷つけられ、危機に陥った時に抱く感情には相当疎いし、紅巴のように人間関係に深入りする事もない

そしてこれは模擬戦。命の奪い合いではないし怪我の防止の為に刀身には安全カバーも装着している。

それに勝敗条件も定められ、ルールは守ると言う海漓からしたら当たり前の考え

だからこそ、全く意識していなかった

 

「‥殺気!?」

 

突如として自身に突き刺さる強烈な殺気。脅しではなく明らかな敵意、それこそ無視して叶星への攻撃を行えば自身の身が危ないと本当的に理解してしまうほど

察知と同時に彼女は殺気が飛んできた方向へと視線を向ける

 

「‥は?」

 

視線を向けて尚、腑抜けた声を出してしまう

 

「高嶺さん‥!?マジで!?」

 

殺気の主は先程たしかに倒した筈の高嶺が再度リサナウトを手に海漓に向かい接近、意識を向けた際には攻撃を仕掛ける寸前である

 

「(間に合う‥か!?)」

 

普通のリリィならば敵への攻撃を優先。高嶺の技よりも先に叶星を仕留める事に意識を向け、そのように動くだろう。

だが海漓は違う。只では済まない事に加えて生きる事、死なない事を重視し其の為の術を相模女子時代に仕込まれてきた彼女は本当的に攻撃を諦め防御の姿勢を取る

 

コンマ数秒、僅かな時間しか猶予がない

 

「(最悪、骨の数本は覚悟しよう)」

 

残り僅かなマギを全て防御に回したとしてとCHARAMに込められる前に高嶺の一撃は放たれる。

幾ら防御が得意な海漓であったとしてもマギが限界な事に加え何もかもが中途半端な状態では本気の一撃を止めきれない事は分かりきっている

打撲で済めば上出来、最悪は骨の数本は持っていかれる事を覚悟する

 

正面で刃を構え、僅かなマギをCHARM

込め終わるよりも早く高嶺の横薙ぎが放たれる。一撃は今までのよりも早く、そして鋭い。重さもある、体重、マギ全てをつぎ込んだ一撃。それは彼女の守りなどまるで硝子だと言わんばかりに簡単に砕き、同時に後ろへと大きく吹き飛ばされた事で先程の姫歌と同様に壁に叩きつけられてしまう

 

「(イッ‥)」

 

姫歌との違いがあるとすれば、機体が砕け散った事に加え、マギがほぼ尽きた中での一撃と壁に叩きつけられた事によるダメージの差

 

「クソ‥‥やり‥やがった‥な‥!」

 

それでもそこは経験者

壁に叩きつけられる本当に直前、最後のマギを振り絞るかのように全身を薄い膜で覆うような形でマギを纏わせ壁に叩きつけられた事によるダメージを減らしたのだ。それが無ければ文字通り気を失っていたし骨も折れていただろう

 

床に片ひざを突きながらも視線は真っ直ぐに2人を捉えるが、彼女にはもう戦う術がない。機体も使えずマギも失った

 

「(あっ、力入らん)」

 

立ち上がろうにも上手く力が入らない。ダメージの余波が残っているのだろうか、そんな事を考えてしまう

そして、決着が付いた事で会場は一瞬の静粛の後、数秒後には騒然となる

 

「海ちゃん、大丈夫ッスか!?」

 

「マギない中でモロやろアレ!?」

 

直ぐに観覧席から飛び降り、駆け付けてくる友人2人、そして一歩遅れて藤乃と教導官が彼女の元へと向かう

 

「海漓ちゃん!!」

 

「すんません‥負けちゃいました‥」

 

模擬戦が終わった事で気が抜けたのか全身に強い痛みが襲い始める中で出た言葉は藤乃への謝罪。

力も貸し、お膳立てもしてくれた中で最後の最後に勝ちを放棄し敗れたのだ

 

「そんな事はどうでも良いです!

頭を打ったんじゃないですか!?」

 

「防御膜は張りましたからそんなヤバイ事には‥なって無いですって‥(多分)

私が‥不意打ちで負けるとか‥情けない‥」

 

そう言い再度自分で立ち上がろうとするが上手く力が入らずその場に崩れ落ちそうになってしまい、藤乃に支えられる形となる

 

「あ?これヤバイやつ‥?」

 

「立ったら駄目です!」

 

教導官達により担架に乗せられ訓練場から運び出される海漓。残ったのは相模の2人に加え観客席に残っているリリィと後は当事者であるグランエプレと防衛隊の面々

 

「いや、先に向こうの副隊長を壁に叩きつけたのは私だし?

お門違いなのは分かるけど、流石に今のは無いわ」

 

「真っ向からとほぼ無防備な状態からの一撃を比較する事はできませんわ

警告もしてたでしょう?」

 

何やってるんだと非難しようにも先に対戦相手を壁に叩きつけた手前、強い言葉で非難する事は出来ないが祥枝の場合は真っ向勝負で警告も行い加減もした

それと高嶺の行為を同一視は出来ないというのが林乎の考えだ

 

「船田予備隊いや、御台場の契りを甘く見てたわ 。こうなるんだ‥」

 

「別に御台場に限った話じゃないしその手の契りが制度としてあるガーデンはどこも同じなのかも?

だとしても盲点だったね」

 

「盲点も何も、敗北手前追い詰めたリリィなんて今日まで居なかったからね」

 

結弦、穂、八千代の3名は海漓の不注意以上に自分達の見落としに気付く。

契りを結んだ者、結んでいるであろう者達の絆の深さとそんな間柄の人物に危害を加えに行った者への対応の仕方

今回のようにその段階まで追い詰めた人物がこの瞬間まで現れなかったからこその認識の甘さを痛感してしまう。

 

「えーっとどういう事ですか?」

 

「叶星様を追い詰めたから怒ったって事です?」

 

上級生の話を聞いている1年生。特に高等部からリリィとなった寧々と紗鳥は話している意味が分からない

何故怒ったのか?追い詰められたから怒った何ていう情けない事を上級生がするのか、だとしたら意味が分からない

 

「まぁ‥そう言う‥事

特に契りを交わすような‥間柄なら尚更

制度が‥ある所なら‥何処でも同じ‥」

 

簡単に言うならばその通り、大切な者。それも俗に言う契りを交わしている間柄であるならばそれは近著。学年や方法は問わずリリィ同士の契りが制度として確立しているガーデンならば何処でも同じであると薫は話す

 

「元隊員と言えど一線越えるなら容赦しないっていう意思表示?」

 

「うん。高嶺様からすれば叶星様相手に何回もふざけた事するなら容赦せずに倒すって事だよね‥怖っ」

 

楊美、絵麗奈だけで無く多くの者が同じ考えに辿り着く

大切な者を傷つけるならば容赦しない。仲間だろうが例外ではない

そういう事なのだと

 

 

「な、成る程」

 

「あれ?でも御台場って訓練キッツイし武道とかもやるんでしょ?

訓練の度に乱入してたの?」

 

「さぁ?‥‥身内と‥他人じゃ違うよ

御台場でどういう待遇だったのか‥知らないし‥」

 

御台場で何が行われているのか、知る術を持たない。あくまでも臆測になる

勿論、身内と他人は違う。御台場同士ならセーフ、他校はアウト。そんな線引があったとしても不思議ではない

 

「相模は?」

 

「何がッスか?契り?それとも別な事?」

 

「制度が無いってのは知ってる

その、間柄に対する対応とか」

 

「んー、せやねぇ‥

結構割り切るリリィが多いからソレはソレ、コレはコレがおおいのぉ」

 

「訓練や模擬戦でやる分にはセーフって事?」

 

「ちと乱暴だけどそう言う事や

状況次第で変わるけどな‥今回みたいなケースで乱入は相模だとあの金髪のクソボケの行為は余裕でアウトや」

 

その時の状況次第で物事は変化する。一概に言い切ることは出来ないが、今回の行為レベルに対し乱入は普通にアウト。

これが刃物での殺傷や既に勝負がついているのにも関わらず過剰に攻撃したとなれば話は代わるが海漓の行為はどれにも該当しない。相模女子ならば非難されるのは高嶺の方だ

 

「でも、グランエプレは誰もあの子を心配しに来なかったね

先にやった事を差し引いたとしても生徒会組はともかく他の子は一緒に戦ってたのに」

 

「あまり上手く行っていなかったのだろうな。詳しい内情は私も知らないがね」

 

下級生や相模組のやり取りを傍目に最上級生である春音と玲奈は違う見方

たしかに、祥枝の行為や海漓がやり過ぎと見なされたとしても誰も海漓を心配せず叶星の元へと向かったのは如何なものかと、

隊内の人間関係が上手く行っていなかった事が想像出来てしまうのは悲しいが

 

「さて、私は慣れないお仕事しないと

お見舞いに賞品位は持っていってあげないと、ね」

 

「祥枝?」

 

騒がしい中で黙っている訳には行かない。この手の仕事は祥枝の専門外だが、彼女は副隊長。慣れないながらも仕事をしなければならない。

決意を込め、叶星の元に集まっているグランエプレのへと歩みを進める

そして、開口一番、目的を話す

 

「ねぇ、秋日。これ運用権限は当然私達のモノになるんだよね?」

 

「何を言ってるの?」

 

「え?何かおかしな事言ってる?

2連敗したんだし素直に渡せつってんの、お分かり?」

 

誰が何と言おうが今回の戦い、個人とタッグバトルで自分達の勝利だ。少なくとも祥枝はそのように感じている

ならば当初の要求通り権限の一部を渡せと言うのは勝った側の理論からすれば当たり前。

 

「祥枝さん、今は‥そんな

落ち着いてからで良いじゃない」

 

「今だから、でしょ

ズルズル引き伸ばされても隊長はきっと困るだろうし、今決めてよ」

 

ここでようやく叶星が口を開く。頭に血が昇った者、起きた状況を飲み込めない者もいる中で慌てて決めることではない。日を置き改めて話し合うべきだと告げるが、冗談ではない。大人しく結果を受け入れ素直に渡せと強めに告げる

 

「あのやり方を見て尚、味方するのね?」

 

「味方も何も副隊長だし

この1週間頑張ってたのは私だけじゃなくて皆知ってるから、望みの一つ位は叶える為に動いてあげないと」

 

秋日はあれでもまだ海漓の味方をするのかと尋ねるが、祥枝は防衛隊の副隊長だ。

海漓の考えている事の全てを理解していないし、盲信している事もない

ただこの1週間、2人に勝つ為に努力していたのは皆が知っている

ならばその望みを叶える為に動こうとしてるだけ。

 

「渡すわけ無いでしょう!

力や命令が全てなんて事を認めたら神庭が神庭で無くなってしまう!!

それならエレンスゲに行くか相模に帰れば良いだけじゃない!」

 

それを聞くとふざけるなと言い放つ

神庭はリリィの自主制を尊重するガーデンであり力や権力で縛るような事はあってはならないし、認めるはずもない。力が全てならばエレンスゲへの転校、もしくは母校に帰れば良いと言い放つ

 

「それ失言じゃない?

まぁ、良いけど。隊長に選んだのそっちなのに目の敵にするとかヤバイ事してるじゃん

あー藤乃が決めたから私関係有りませんって奴?

そこまで腐ってた?」

 

ガーデンから出ていけなど限度が過ぎる、前提として人員の選定や海漓の移籍を決めたのはガーデンであり生徒会だ。そして相模出身という事を把握した上で隊長を任せながら突然掌を返したかのように目の敵にするのは如何なものか。自分は関係無いとシラを切るような腐った真似をするつもりなのかと彼女は強めの口調で問いかける

 

「あの時に鈴夢ちゃんを傷つけた事が理由でしょう?

それに加えて今の模擬戦での戦い

秋日さんからすれば自他問わず大切な人を平気で傷つけたり人を駒のように扱う人物に自分の権力の一端を渡すのは嫌ですよね」

 

腐るも何も秋日が海漓を目の敵にしたきっかけは単に鈴夢を傷付けたから

模擬戦での戦い方や思考など後付け、結局は大切な人を傷つける事を平然と行う人間に何かを任せたくない、ただそれだけの事。秋日が鈴夢を大切に思っていることも分かっている藤乃は改めて問いかける

 

「藤乃はどう思ってるのよ?

今回に限らず海漓さんの暴走を止めるどころか逆に味方して

貴方だって生徒会でありグランエプレの一員でしょう?」

 

「選んだ者として責任を果たしてるだけです

それに、今回のお話だって私達からしても決して悪くない提案じゃないですか」

 

秋日と藤乃の動きも面白くない。問題行動も多く頭を悩ませる事も多いがそれと同じぐらい信用しているリリィだ。それにも関わらず後輩の暴走や強引な行動を止めず寧ろ加担し自身に敵対するとも取られる動きをするなど何のつもりか

生徒会、グランエプレの一員であることを忘れたのか?と暗に非難するが藤乃は気にもとめない

 

「どういう事よ?」

 

「海漓ちゃんが言ったように外征の機会は増えますし作戦の難易度だって当然上がります

面倒な仕事の一部を押し付けて私達は日頃の訓練時間を増やせるし、外征先では眼の前の戦いに集中出来る

良い事じゃありませんか」

 

グランエプレの今後を考えるならばこれまで以上に強くなる必要があり、自然と求める事も増える

そうなると訓練の時間だってこれまで以上に必要となってくる

面倒事を押し付け、戦いと訓練に集中出来る環境を作ることを考えるなら決して悪い事では無い。何を任せるのかはそれこそ話し合いで進めればいいが現状のままでは何方も中途半端になりかねないのだ

 

「でもそれは私達が決める事であって海漓ちゃんが決めることではないわ

権限の一部といえど渡したら絶対に暴走して独裁者の様な振る舞いをするわよ」

 

移行や可否を決めるのは自分達であり方針に対し口を出される筋合いはないと言わんばかりの言い方。

あったとしても渡せば独裁者のような振る舞いをするであろう事は叶星の目から見ても明らかなのだ

 

「これ私、残りを倒して強引にでも取らなきゃ駄目かい?(先に1年潰して最後に秋日‥少しダルいし林乎か結弦に頼もうかなそれとも相模?)」

 

しぶといとはこの事。海漓はどう言うか分からないが他も倒し強引にいくべきか、祥枝はまだまだ動けるが相手の数を考えれば複数で挑むのがセオリー

隊か友人あたりに頼む事を考える時だった

 

「なら海漓さん以外が決めるなら問題はありませんね?」

 

共に譲らず、平行線の中で一つの人声が響く。リリィと間違えられそうな小柄な体格、特徴的な眼鏡と白衣を羽織りながら現れた一人の女性

 

「一乙先生?」

 

「ガーデンとしても双方泥沼の争い、火種の拡大は望みません

権限の譲渡に関しては、要求を飲んで貰います」

 

その名は桑田 一乙(くわた いお)。造園科で教鞭を振るう教導官であり今回の戦いを最後まで見守っていた者の1人。

ここまでは傍観、リリィ同士に解決策を委ねていたがこれ以上は駄目と判断した。

意見の食い違い、考えの違いは大いに結構。だがこれは食い違いに留まらず一歩間違えば派閥争い、レギオン間や双方の支持者を巻き込んだ一大抗争からの崩壊に繋がりかねず黙認する訳には行かなくなった

 

「勿論暴走の危険性も踏まえてガーデンの監督付きという条件ですけど

まぁ、主に私や校長先生が担当する事になると思いますが」

 

権限の譲渡の許可。勿論持った事による隊長やレギオンが暴走する可能性を考慮しガーデンの管理下で行うという条件付き

一乙や校長が中心となる予定だ

 

「私達じゃ出来ないと言うんですか?」

 

「藤乃さんが言ったように外征レギオンに移行するグランエプレが持ってても意味が無い‥というより貴方達の足枷になりかねません

万全の状態で戦いに挑んで貰うために必要な措置ですよ」

 

ガーデン側が海漓の行為を擁護するなど思っても見なかったのか秋日は抗議をするが擁護以前に外征で留守にする者が持っていても意味が無いし下手をすれば足枷だ。

見切りをつけるよりも負担を軽くし戦いに集中させる措置なのだ

 

「か、海漓ちゃんの叶星様達に対しての行動も問題は無いって事ですか?

蹴ったり、目に物を当てることは悪い事では無いんですか!?」

 

「確かに人として、リリィとして見たらどうかな?と思う所は有ります」

 

紅巴が言った事は正しく模擬戦だとしても文字通りなりふり構わず、人を傷つける行為を平然と行う事に対しは一乙に限らず誰であれ思う所はあるし、海漓にも否はある。

しかし、だ

 

「ですが強敵を相手になりふり構わず勝ちに行くと言う考えも理解できます

船田予備隊‥海漓さんから見ればお姉さんやその仲間と同等を掲げる相手なら尚更です」

 

今回ばかりは相手が相手。海漓からすれば圧倒的に格上で、世代を代表するリリィ。ましてやあの姉や仲間と同等を掲げる者に情けなどかけられないし余裕もない事も理解出来る

姉の名やレギオンは世界に名を轟かせた強大な存在なのだから

 

「海漓ちゃん、訓練の時は常に言ってましたよ『あのレギオンと同等掲げる以上、生半可な事したら瞬殺される』と。それを言われたら止められません

だって、仮にあの方々と本気で模擬戦するなら私だって加減出来ませんから」

 

だから藤乃は止めなかった。訓練を重ねる中で大まかな作戦ややり方は伝えていた‥それてまも尚彼女は止めなかった。彼女だって仮に模擬戦をするのならば今回は使用しなかった奥の手を使い本気を出した上でようやく五分に持ち込めるかどうか、相手によっては奥の手を使ったとしても敗北する。

海漓につられ藤乃自身も頭の中で対戦するシュミレーションを何度も重ねた上で出した結論だ

 

「なりふり構わず本気で戦う事がある意味で強大な存在である貴方達へのリスペクトだったのかもしれませんね

こればかりは後で本人に聞かないとわかりませんが」

 

今の海漓が出来る最大限を叩きつけ本気で倒しに行く事が敬意だったのではないか?

あくまでも一乙の妄想、臆測。真相は海漓のみぞ知る

聞いたところで話すかどうかも分からない

 

「権限に関しては限定的ですが防衛隊への移行を許可します

ただ何を渡すかに関しては私達が判断し通達します」

 

両手を叩き改めて双方に告げる

流石に全てとは行かず決めるのもガーデン。

海漓達はあくまでもガーデンの管理下での活動になる

これも自主制を尊重する神庭では異端。彼女達はガーデンに手綱を握られた状態での活動となる

指示やサポートを受けられるのだから悪い話でもない。

 

いつまでも残っていないで訓練や自室、控室に戻るように他の教導官に急かされ残っていたリリィはそれぞれ移動を開始する

 

「(これでもギリギリ‥上手くいくでしょうか‥)」

 

慌ただしく移動する中で一乙は冷静に考えを巡らせる

彼女には彼女の繋がりがある。話をする中で言われるのは神庭の今後を案じる声

自分達に出来るのは時間を稼ぐ事だけ

それもいつまで持つか分からない

 

「(海漓さんが立ち上がらなくてもいずれ‥)」

 

先程はあぁ言ったがどの道秋日から権限を取り上げる案もあった。

海漓が真っ先に動き戦いで賭けたが神庭のリリィも間抜けではない。いずれ秋日達の行動を問題視するリリィは現れた。その時期が早かっただけである

 

起きるであろう事態を考えながら一乙は訓練場を後に

一応の決着を経て神庭の時計の針は進むのだ

 

 

 

 




防御隊(仮)
特務レギオンでは無くあくまでもガーデン直轄の防衛レギオンに(暫定)
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