Assault Lily〜御使いの妹   作:ラッファ

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第107話

 

新たな任務の受領に加え、昨晩の戦闘において特型ギガント級が逃走したという状況の中で迎えた翌日。

早朝にグランエプレは逃走した特型ヒュージの追跡という名目で逃走先である青ヶ島へと出発しており校内に姿はない

 

「(流石に詳細は教えてはもらえないよね)」

 

グランエプレの行動に関して海漓達が知る事が出来たのは外征先だけ。

戦場の規模や不在にする期間など一切知らされていない‥いや知る事が出来なかった。

今回は秘匿性の高い任務の為、作戦に参加しない部外者には詳細な情報は一切公表してはならない旨の回答を校長から受けた為だ。

提示された情報が保管されているであろう生徒会室も施錠され鍵も厳重に保管されている徹底ぶり。

防衛隊も教導官と上級性が主体となりグランエプレが外征へと発った少し後に守備範囲の候補となる地域の偵察へと向かっている

目的は現地の視察及び管轄するガーデンへの挨拶回りが中心と聞かされている。

 

「(向こうの状況が分からないってのもまずいんだよな‥)」

 

慌ただしかった午前とは真逆、正午を過ぎたあたりだが神庭は平穏そのもの。

そんな中で会議室の椅子に座り冷静に現状を分析する海漓。

隊の残った面々も会議室に集まっている。

今に至るまで青ヶ島の詳細な情報は入って来ない。作戦の進捗状況に被害の状況、場合によっては増援や補給物資の必要性‥何も分からない。青ヶ島とは距離は離れているといえど油断は禁物

 

「(御三家も軒並み投入。本当に学習しない)」

 

そして外征に向かったのはグランエプレだけではない。判明しただけでも御三家の主要なレギオンは全て、そこにヘルヴォルとクエレブレも加算され、都内の主力はほぼ全て投入した形だ。

秘匿性が高いと言っても人の流れや物の流れまでは上手く隠せない。青ヶ島へは空路を使っての移動が主であり移動手段となるガンシップが都内上空を飛んでいる姿やガーデンから出発する姿の目撃情報は多数上がっており神庭にも入って来る。海漓はそこから推理した形だ。

青ヶ島を筆頭とした地域であれば鎌倉も管轄していた筈だ。恐らくメルクリウスや百合ヶ丘も出撃しているはず。ならば上手く割り振れと思ってしまう

 

「(何も無ければそれで良し。小競り合い程度なら何とでもなる‥問題は大規模襲撃‥)」

 

有事の際に主力となるリリィが居ない現状だ。何も起きないならばそれに越した事はない。

襲撃でも平時と変わらなければ何とでもなる。警戒しなければならないのは昨年のようなギガント級やそれ以上の個体を伴う大規模な襲撃。無策で戦えば痛い目を見るのは明らか。ネスト戦と違いグランエプレは不在、御台場を筆頭とした御三家も駆けつけては来ない

襲撃だって荻窪なのか、偵察先なのか全く読めない。勿論、有事の対応については教導官を交え念入りに打ち合わせをした。しかし現実として何が起こるかは全く分からない

 

そんな中で神庭はもう一つの不安要素を抱えている

 

「ゴメン隊長、やっぱし私達じゃこれが限界だわ」

 

「‥仕方ないですね。手を貸してくれる人達で何とかしましょう」

 

開口一番、祥枝が申し訳なさそうに海漓に告げる。彼女や残った仲間達に頼んだのは在校生に対して前回のネスト戦同様に防衛隊への協力の要請。ちなみに2年である祥枝だけが偵察に使わず残ったのは襲撃を想定した時に火力が心許なかった為

 

要請に関してはガーデン側から行っても構わないが出撃を強制するような行為や来ない者に対して圧力をかけないという条件で許可を貰い事前に声をかけた。

結果は散々とまではいかないが彼女達の呼びかけに応えてくれたのは全校生徒の2割前後。前回の戦いで応えてくれた者達に加え、怪我や回復の関係で出られなかった者達が加わった形だ

他の者は拒否の姿勢を見せるという防衛隊としてはある程度予想はしていても実際に目の当たりにすると辛い所がある。

理由も自主制だからや叶星や秋日を支持。負けた海漓や叩きのめすような事をした祥枝への忌避感。後は新たなリーダーとしての地位を確立しつつある姫歌を支持だったりと様々

 

「100人は超えたし。何とか出来ると思うけど?」

 

「普段位なら、ですけどね。範囲も広いですし、これでもギリギリだと思いますよ」

 

平常の任務ならばこなせる事は可能かもしれないが、それは過去となる。今は荻窪だけでなく新たな範囲も担当し、必要に応じて増援を行わなければならない。

都内に主力がいないとなれば神庭への依頼も増える。出ないでくれと思うのは当然の事

 

そのような中で時間は淡々と過ぎていく。大人しすぎるほど

その間に偵察組も帰還し、太外を見れば空は夕焼けで赤く染まり始める。

 

 

「ここにいましたか」

 

「あ、先生。」

 

すると海漓の様子を見に来るたのだろうか。一乙が室内へと入って来る。現在、他の面々は休憩を取ってもらっているため室内には海漓と一乙の2人だけ。

 

「少しお話ししてもいいですか?」

 

「はい」

 

そう言うと彼女は椅子1つ分空け彼女の隣に座る

そして手際よく何枚かの封筒を机の上に用意する。

 

「本日の活動内容です。」

 

「ありがとうございます。」

 

封筒の封を開け中身を確認。複雑な事は記されておらず担当地域の現状やガーデンの規模等が記されている

規模としては神庭と同等か小規模。都内の例に漏れず他校との共闘を前提としたガーデンである

 

 

「他の子達にはお伝えしたのですが‥視察を踏まえての今後については一度グランエプレを交えて話をしましょう」

 

「そりゃトップレギオンですからね。生徒会も抱えてますし」

 

彼女の様子を見に来た事に加え、本日の視察を終えた上での今後の方針についての説明を行う

ガーデンとしても様々な情報を整理した結果、ガーデンとしてグランエプレを交えて話をするべきという方向で一致。海漓が言うように今のグランエプレには生徒会役員が所属している事もあるが、理由はそれだけではない

 

「それもあるんですが‥想定した以上に認識に差があったんです

その事に関してトップレギオンである彼女達も知らなければなりません」

 

「そんなにヤバかったんです?」

 

認識の差による誤解。これに関しては海漓もある程度は覚悟していた。だが一乙の話しぶりから察するに悪い意味で想像を超えてしまっていたのだと理解してしまう

 

「えぇ。私を含め他の先生や同行してくれた子達もみんな驚いてました」

 

「うへぇ、マジか‥私達の活動に影響有ります…よね?」

 

「間違い無く有ります。派遣される本命はグランエプレだという認識を持たれていましたからね」

 

「そうですか。確かに気持ちはめっちゃ分かりますけど」

 

相手方の気持ちも十分に分かる。結成して日が浅く個と隊。両方で実績を持たないレギオンと双方で実績十分のレギオンならば後者に来て欲しいと思うのは当たり前の感情だ。

海漓だって相模女子のリリィが増援に来た時はとても心強かったのだ。神庭だってそれは同じ、御三家の増援は心強いはずだ。

 

「教導官には私達から事情を説明しましたが‥浸透するには時間がかかるでしょうね」

 

その事は大人達もよく分かっている。だからこそ一乙を筆頭とした引率の教導官が誤解を与えぬように説明を行なったのだ。ここまでの案件はリリィだけではどうにもならない。教導官の力も必要になってくる

 

「増援の基準やリリィの質とかって何か言われました?」

 

「数と質。ルド女と同程度は求めたいという回答が多かったですね。」

 

「あー…御三家と‥」

 

図々しいとは言えない。御三家から引き継ぐのだ。同等の対応は求められるに決まっている。

駆けつける人数が少なかったり、質の悪いリリィが来ては意味がない

 

「下ったら意味ないですからね。ルドビコ、どのレベルの人が来てたのかな…私も確認したいけど無理ですかね?」

 

「秋日さんを通しての話になると思いますよ。私達は許可をしても生徒会が駄目となれば話は複雑になりますが」

 

「ですよね(ここで響くか…いや、知らずにヤッた私が悪いんだけどさ)」

 

ルドビコ女学院は御三家だ。当然の事だが所属するリリィの質は高い。その中でもどのレベル。極端な話、トップレギオンのリリィが高頻度で来ていたのか、そんな事は無く所属する誰もが来ていたのか。人員に際して何らかの要望を事前に出していたのか。分からない事は多い。だから聞かなければならない。

ガーデンとしては動いてくれる。ガーデンとしての見解ならば得ることは可能だ。しかし怖いのはガーデンの見知らぬ所。叶星達のようにガーデンの知らない所でリリィ同士の繋がりやそこを軸とした約束があったのか。

言い方、聞き方に気を配り、答えてくれるのかは分からないが海漓が直接確認しなければならない事もある。

一乙、いや教導官も分かっている。しかしこれには生徒会長である秋日の許可が求められる。ガーデンは許可をしても生徒会が許可を出さなければ事態は複雑。勝手な行動や暴走と言われ新たな火種になりかねない

秋日との関係が良好ならばともかく鈴夢の一件を発端に関係も悪化。海漓の自業自得、悪く言えば安易な行動の代償を払う事になっている

 

「ガーデンは大半がルドビコ派って事で合ってます?」

 

「少しだけ不適切かもしれませんが‥殆どが親と呼ばれる側ですね。特段ルド女に近いか‥と言われるとそんな事はないですよ」

 

大半が俗に言う親GEHENAと呼ばれる側。一乙の言い方を見るに思考には差があるようだ。

御三家のうち2校が親GEHENA。そして崩壊前は大半の守備範囲をルドビコ女学院が担っていた事を考えれば当然都内のガーデンは親が主となる

今後のやり取りについて話を行っている。まさにその時であった

 

「警報‥!!」

 

「このタイミングで、ですか」

 

校内にヒュージ出現を知らせる警報が鳴りひびく。そしてその音は校内に限らず荻窪全体に対してもだ

警報を受け2人は真っ先に会議室を飛び出し海漓は出撃の準備。一乙も教導官として動くべく行動を開始する

 

「祥枝さん!!先輩達も!!」

 

「聞こえてるよ、やっぱし何も無しとはならなかったね」

 

「一発目の戦闘が夕方からなんてね」

 

廊下を駆け足気味に移動していると真っ先に合流出来たのは祥枝達を筆頭とした上級生。その中には昼間偵察に向かっていた者達もいる

 

「どうする?偵察組は休ませる?戦ってないけど、色々と大変だったみたいだし」

 

「そうですね‥ヒュージ規模次第ではその方が‥」

 

戦闘を行っては居なくても移動や現地のリリィとの対応による目に見えない疲労は当然ある。

協力者だっている。相手の規模によっては偵察に出た者は休ませる事も考えなければいけない。

 

編成をどうするか考え始める、まさにその時だった

 

「海漓さん、祥枝さん!

防衛隊全員に出撃の指示ををお願いします!!」

自分達を見つけるや否や走りながら近寄ってくる1人の教導官。ずっと走っていたのか呼吸も荒い。

 

「それと協力してくれる子達はどの位ですか!?」

 

そして自分達の反応を待つよりも先に矢継ぎ早に言葉を紡ぐ。

 

「えっと‥前と同じに加えて数十人が新しく増えて‥まぁ全学年、学科合わせて1割後半から2割前半ですね」

 

勢いに押されるがまま。協力の意思を示してくれたリリィの人数を報告する。前回の呼びかけに応えてくれた者達に加え、以前の戦いで呼びかけに応えたくとも怪我や回復などの理由で応えられなかった者達が加わった数。そのうちの30人強は海漓のクラスメイト。ガーデン全体の2割を満たすか満たさないか。これが現状、防衛隊と共に前線で戦ってくれる者達だ。

 

「その子達にも声を掛けて今すぐに出るように伝えてください」

 

「ちょ、ちょっと何事ですか!?」

 

「すっごい沢山ヒュージが出てきたとか?」

 

全員への強制出撃。出撃選択制を導入する神庭では異例中の異例。

防衛隊はともかく協力者にまでそれを強制するなど只事ではない。それはこの場にいる誰もが抱く

 

「‥大ケイブです」

 

「‥は?」

 

「大ケイブが出現したんです」

 

只の襲撃程度で慌てなどしないし、強制出撃を命じたりなどしない。ネスト戦を経て慌てる理由、経たからこそ命じる確かな理由が存在するのだ

 

「だ、大ケイブって‥場所は!?」

 

「以前にネストが発生したあの場所です」

 

以前ネストが発表した場所と同じところに大ケイブの発生。

直近では新潟が同じような状況だと報じられていた。

それが荻窪でも起こったことになる

 

「んなっ!?同じ所に‥?」

 

「はい。詳しい説明は移動をしながら

皆さんすみやかに出撃して下さい」

 

「わ、分かりました

手分けして協力者にも要請をお願いします!!」

 

 

教導官に煽られる形で防衛隊、及び協力者は速やかに準備

終えたものから出撃し現場へと急行する。その間にも時間は過ぎ赤く染まっていた空も徐々に暗く鳴り始める

今回は夜の街並みが戦いの舞台になる

 

 

「まさか先生達も出撃するなんて」

 

「はい。相手が相手です。私含め数名の教導官も引率兼増援として参戦しますよ」

 

本来ならば対応するのはリリィだけ。

そんな風に誰もが思っていたが今回は違う。一乙を筆頭に数名の教導官も出撃してくれることになった

 

「ヒヒイロカネの私設レギオンみたいな働きが出来るかは分かりませんが、皆さんの足を引っ張るつもりはありませんよ?」

 

出たからには力を尽くすし、現役の脚を引っ張るつもりもない

一乙達には一乙達のプライド、信念がある

 

「後少しお時間を頂いても?」

 

「え?あ、はい」

 

まずは一乙が通信機を操作し出撃する全てのリリィに言葉を紡ぐ

それも慣れた手つきで、だ

 

『現在出撃する方達はそのまま現場に急行します。今回に限っては市民の避難誘導は考えなくて結構。

ヒュージの殲滅に集中して下さい』

 

「えっ!?いや、それは」

 

「私達が頼みの綱です。

これ以上の負担を増やすわけには行きません。神庭は貴方達だけでは有りませんから」

 

あたり前だが市民の避難とヒュージの撃破では前者が優先。それは常識。海漓に限らず大半の者、多くの生徒が信じられないという思いだ、にも関わらずそれのは真逆の事を教導官が躊躇いも無く言う

 

「残った連中と教導官で市民の避難誘導は行うと?」

 

「はい。それに秘密兵器も有りますから」

 

市民を守らない訳では無い。単純な数の話。海漓達に応えなかった者は多くいる。せめて市民は守れと、そういう事だ

そして理由がもう一つ

 

「秘密兵器?」

 

彼女のいう秘密兵器とは何か。その答えはすぐにわかる

暗くなりつつある住宅街をロボットが駆け巡る

 

「あれって‥確か‥」

 

「ヒヒイロカネが使ってた警備ロボット?」

 

「正解です。神庭でも導入する事にしました」

 

そう。以前のネスト戦で紗凪が使用していたグランギニョル社が開発した警備ロボット。あれを神庭でも導入する事が決まっていたのだ。デザインも通常の神庭のイメージカラーである赤を基調としたロボットが大半。そして時折紛れる忍者のようなデザイン

 

「(何で忍者?)」

 

疑問に思う海漓

 

「「(あれ私物じゃん!?)」」

 

忍者デザインのロボット。その持ち主に心当たりがありすぎる生徒達。神庭として導入しつつ、忍者デザインは個人的に購入したのだ

 

人の捜索と誘導に優れているロボットの特性を生かし市民の捜索及び安全なルートを使い避難先への案内を行なってくれる優れものだ

 

『市民の避難誘導はロボットと残った生徒、そして教導官に託します』

 

神庭にいるのは自分達だけではない。応じなかった者や教導官が多く残っている。戦わないのならば、戦う以外の事をやってもらう。ただそれだけ

 

「(それだけの相手だからな‥それにしたって‥)」

 

大ケイブが意味する所と敵の規模。そして現れるであろう親玉となる個体。その全てを考えるならば、戦いに専念させてもらえるのならば有り難い

エレンスゲのようなガーデンならばともかく神庭の校風で余計な事は考えず戦いに専念しろと言われるなど思ってもおらず、何より自主制を謳うガーデンの教導官が平然と命令する姿に驚いてしまう

渋々命令しているのではなく、まるで手慣れたように行うのだからその驚きは強くなる。

 

「私からは以上です」

 

「はい(元リリィなんだろうど…軍隊系上がり?)」

 

命令への手慣れた手つき、指示躊躇いなく行う。

元リリィなのは間違いないが指揮統率を行うとなると軍隊系、もしくは規律や統率を行い戦うレギオンの出身なのかと思う

 

「(お膳立てしてくれる以上は応えなきゃな‥)」

 

疑問に思う事は多いが、目の前のことに集中だ。

 

『先ずは戦線を押し上げてヒュージを食い止め距離と時間を稼ぎます』

 

前回とは違い自分達は攻め手に回らなければならない。迎え撃つ形を取ってしまえばヒュージの脅威に晒され続け安全を確保できない。

自分達が前に出てヒュージを押し留め市民を安全圏に退避させるために必要な距離と時間を作る必要がある

 

『9人一組をベースにチームを作成

各ポジション偏り無くお願いします

そうだっ、智英‥渋川さんは私の所に来て』

 

個人での対応は愚策、チームで戦う必要がある

即席となるのは心苦しいが9人編成で纏ってもらう。ある程度ポジションバランスは整えて貰う

それと、一人のリリィを自分達の元に呼び付ける

 

『編成後は大ケイブを取り囲む位置についてください。配置後は再度指示を出します』

 

チーム編成後は移動を行い取り囲む位置につくように指示

全員で正面からの突撃なんて事は行わない

 

『防衛隊は過酷になるであろう正面からを担当します‥各班は正面以外を担当して下さい。(先生の力も借りよう)』

 

防衛隊は過酷になるであろう正面を担当。

そして、大ケイブを取り囲むリリィ達は教導官の力も借りようと考えた時だった

 

「海漓さん、海漓さん」

 

「はい。」

 

「いくつかの班は私が受け持ちます。他の先生達もそれぞれつけます」

 

自身の考えを見透かすかのように一乙側から声をかける

取り囲む者達の引率は教導官が引き受ける

 

「そうですね。お願いします、後退路の確保諸々は」

 

「軍と在校生に頼んでおきます」

 

教導官も散開しグループの元へと向かい引率する形でそれぞれ移動を開始する。戦いだけでなく退路、長期戦に備えて補給物資の準備。これは大人にお願いする

 

『AZを務める方は近接戦を主体として突撃

TZ.BZ組は射撃で後衛となり射撃で援護

鷹の目もちのリリィは市民とロボ、ヒュージの動きを監視してください』

 

『敵の数は多いです。

更なる増援、複数のラージやギガント級の出現等々予想外の展開はあるものとして頭の隅に入れてください』

 

『総員、私達の攻撃と同時に行動開始です』

 

「と、言う訳で皆さん準備出来てますね?智英ちゃんが来たら仕掛けますよ」

 

「指示出してたけど策があるの?」

 

「当然です。私仮にも隊長であり臨時の総司令です。

私は碌な作戦も立てないで皆を敵と戦わせるなんてイカれた事はしない主義です」

 

「おっと〜?」

 

「AZ‥特に祥枝さん、林乎さん、楊美ちゃんと助っ人に来る智英ちゃんが軸

TZ.BZ陣は全力で3人を援護です」

 

仲間に対しても的確に指示を出す。此方もやることは明確。近接と援護。ワンパターンかもしれないがこれが一番有効。

他の班、教導官も着々と準備を進めている。智英も後少しで此方に来るはずだ

距離も詰まり、CHARMからはヒュージの反応が多数。ヒュージの鳴き声や迫りくる足跡も聞こえてくる。ラージ級やギガント級の反応、姿が無いのは幸運か。

 

『配置終わったよ』

 

『こっちも!!』

 

『何時でもいけるよ!!』

 

通信機越しに移動と準備を終えた旨が聞こえてくる

智英が遅れ気味だが一足先に始める判断をする

 

「総員、攻撃開始!」

 

「よし!!先陣は私ね!!」

 

号令と同時、防衛隊の先陣を切ったのは祥枝、後に続くように他の者も続く。

地面を駆け、屋上を伝い近接、射撃による火力を叩き込んでいく

海漓と玲奈は後方で待機、智英達の合流を待つ

 

「大ケイブ、初めて見たが種類は普段と変わらない‥なんて事はないのだろう?」

 

「えぇ、ラージは勿論、ギガント級も出てきますし‥最悪の場合は‥」

 

「アルトラ級か」

 

「えぇ」

 

何故大ケイブを恐れるのか。それは通常のケイブとは異なり別名擬似ネストと呼ばれており。ネストを冠するように通常のケイブ以上の脅威を誇る

現れるヒュージもスモール級からラージ級は当然。更にはギガント級、大ケイブの規模によっては最悪の場合アルトラ級が現れる可能性も秘めている

 

「それを見越しての9人と言う訳か

包囲したのは‥?」

 

「私達に釣られて手薄になったならケイブを破壊

どちらかと言うと雪崩込み防止の観点ですけど」

 

だからこそ海漓は協力者を9人編成の班へと分けた。ギガント級以上ならば9人でのノインヴェルト戦術による対応が必須

ケイブを包囲する形を選んだのは自分達が陽動となり主力の大半を引き付け守りが手薄になった所を他班が攻撃し大ケイブを撃破‥だがこれは理想の展開。上手く行かないことは想定済み

 

「雪崩込み…言われてみればそうだな。」

 

「被害出たら結構面倒ですよ」

 

どちらかと言うと現れたヒュージが近隣地区になだれ込むことの防止。当たり前だが地続きで繋がっている。そしてヒュージの動きは不規則。境界線や守備範囲という認識を持たない。

なだれ込んだ先で市民に被害が出た場合、ヒュージを食い止められなかった責任は神庭であり指揮を執っている海漓も責任を追求されるのは間違いない

分かっているからこそ、考えられる事、出来ることはやっておくのだ。教導官に頼んだのは近隣ガーデンに警戒体勢、及び市民の避難の指示。軍も行ってはくれるだろうがリリィの力も必要だ

 

「どうですか?皆は?」

 

「順調だな‥だが数が多いな‥動きも不規則だ‥包囲は正解だったかもしれないな」

 

玲奈は鷹の目を通し、戦う姿を確認する。今の所は順調そのもの。しかし数が多く動きも不規則、何処かを目指すような動きは見受けられず散らばった形

だが散らばった先には移動を終え展開していた協力者たち。彼女達が迎撃し食い止めている。包囲しなければそのままなだれ込んでいただろう

 

「ごめーん、遅れちゃった?」

 

そんな中で数人の気配を感じ、遅れて聞こえる数人の足音。そして聞き慣れた声。

智英と呼んだ人物。渋川 智英(しぶかわ ちえ)がやってきたのだ

 

「こっちこそ急にゴメン。結構離れてたんだね」

 

遅れたかもしれないが、位置を確認せずに呼びつけたのは海漓だ。

離れた所からすぐに来たとなれば時間もかかる。

後を追うように安孫子 比呂美(あびこ ひろみ)村元 庵珠(むらもと あんず)の2名もかけつける

ちなみに比呂美は玲奈と同じ3年、庵珠は海漓と同じ1年生。

そして、智英も1年生であり海漓のクラスメイトだ

 

「とりあえず突撃してもらっていい?

ちょーっと数が多くてさ、困ってるんだ」

 

「良いの!?」

 

「ちょっと!?」

 

到着早々だが、早速指示。複雑な事は求めず敵の数が多くて困ってるから突撃して欲しいと告げる

普通ならば戸惑うが彼女の場合は目を輝かせ嬉々として海漓を見つめる彼女の背後にいる2人は驚いているが一端無視し話を進める

 

「好きでしょう突撃、ヒュージとの真っ向勝負」

 

「勿論!!」

 

彼女の武器は積極的な姿勢。敵を恐れず正面突破、力と力の真っ向勝負だ

スモール、ミドルが主となる現時点では1人でも前に出て戦える人物が必要なのだ

 

「なら!思いっきりやっちゃって!

あっ、後衛の流れ弾には注意してね」

 

「まっかせて!!」

 

だからこそ、思う存分戦えと告げる。

この場には彼女以外のリリィがいる。積極的に前に出たとしても後衛からの援護射撃や戦闘による流れ弾などヒュージ以外の攻撃がある為それには気をつけろと伝え彼女を戦場に放つ

 

増援(智英ちゃん)を突っ込みました

直感と火力を武器にした超がつくほどの突撃型です。後ろから弾を当てないように気をつけてください』

 

『はいよー!おおっ!早速来た』

 

『よく突っ込めるね〜』

 

例え一人であろうとも前に出られるリリィが増えるのは有り難い。

上級生、下級生共に躊躇いなく突撃する知恵に感心する

 

「ちょっと!よかったの?」

 

「ん?何が?」

 

見送った直後、庵珠が海漓に対し慌てたように声をかける。

 

「智英よ智英!あんな指示出して‥」

 

「いや、突撃させるために呼んだし?逆に日和ったらこの後どうしようかなーって思ってたよ?」

 

その理由は彼女を焚き付けるような指示だ。この状況の中で何を考えているのかという思いがあるが指示を出した張本人は突撃させる事が目的、躊躇ったり拒否をした方が計算外だったと言わんばかりの口調だ

 

「智英が突撃を躊躇うわけないでしょう!?日和ったら智英の姿をしたナニカよ!!いや、そうじゃなくって」

 

智英が突撃を躊躇うなどあり得ない。少しでも彼女を知っている者がいるならば全員がそのように答える筈だ。突撃以外の手を知らないリリィだ。複雑な戦術を理解しようものなら別人を疑う程だ

だが庵珠が言いたいのはそんな事ではない

 

「私からも良いかしら?」

 

「比呂美さん?なんですか?」

 

「私は2人と違って前回を経験しているから言えるけれど

貴方は策を練り敵に挑むタイプ‥不規則な動きをする智英とは相性が悪いんじゃないかしら?」

 

彼女は前回のネスト戦において海漓の呼びかけに応じ協力者の一人として戦ってくれていた。 今回で2度目の参加

前回の戦いを通して感じたのは海漓は策を練り仲間を動かしてヒュージに挑むタイプの指揮官。

当然協力する側も出された指示を守り行動する事が求められる。しかし智英は突撃こそ全て、細かい作戦や複雑な戦術は無視して戦うスタンス。海漓とは相性が悪く寧ろ妨害する要因になるのではないか?と思っており、庵珠も同じ考え。先程から怒っていたのも突撃させた事では無く彼女の行為で策が壊される可能性を危惧したが故。海漓達を気遣っていたのだ。

邪魔をして作戦を破壊しようものならば全ての責任は海漓自身が背負うことになるのだから

 

「比呂美さんの言う事も一里ありますけど、人の指示を全く聞かないって子じゃないですよね?

自分が出来ないであろう難しい動きや考えが絡むような戦術はガン無視しますけど自分が出来る事に専念させたら相応の働きはしてくれますよ?」

 

確かに言いたいことは分かる。

だが彼女は人の話を全く聞かない訳では無い。自分に出来ること、こなせる事であれば普通に受け入れてくれる。

グランエプレ故に関わる機会は少ないが平時の授業や訓練でもその片鱗は見せる。理解出来ない複雑な事を要求すれば無視するし、何も言わなければ突撃を煽るが今の智英が出来る事、理解出来る事ならばちゃんとやってくれる。話だって全く聞かない訳じゃない。ちゃんと聞いているのだ。理解力が乏しいだけ、理解せずとも時折見せる余りにも鋭すぎる勘で何とかなっているから。灯莉の勘ともまた違う

話を聞かない問題児ならばそもそも事前の海漓の呼びかけに応えず、今の頼みだって無視して勝手な行動をする筈だ。

 

「本当に突撃させるつもりで?」

 

「えぇ。‥もしかして先約とかありました?もうメンバーが集まってたり?」

 

突撃してもらうために合流してもらったのだ。だがそれはあくまでも海漓の都合、先約があり固まっていたのならば話は変わってくるため確認をする

 

「それは‥ない‥わね。」

 

「そうですか‥」

 

しかし、彼女達は智英を含め3人のグループ。非常時でもそれは変わらず。

9人のグループを作るにしてもどうしようか悩んでいた所だったのだ

海漓達の元に2人が来たのも智英が引っ張ったから。

そして彼女達は3人以上のグループを作ろうにもとある事情が原因で厳しい状況となっており、その一端は海漓達にも原因がある事も分かっている。それを分かってて聞いたのだ。海漓が智英を誘わなければ、智英が2人を引っ張らなければ彼女達は3人での行動を余儀なくされただろう。

前回の比呂美は非常時かつ彼女と同学年で事情を知るものがフォローしていたと聞いている

 

「‥とりあえず、比呂美さんと庵珠ちゃんはここで待機。万が一に備えましょう」

 

2人はバックアップとして待機。そしてここで状況が変化する

 

『めっちゃヒュージ増えた!!

ごめん!これだと大ケイブいけないかも‥!!』

 

『うわっ!?凄い数‥倒し終わったら向かうけど‥マギ足りるかな‥!?』

 

『何処も無理なの!?

私達の所も強さ的には大した事ないけど代わりに数がヤバイ!!』

 

三方向に配置した戦力。それぞれのもとに大量のスモール級が出現し交戦状況へと突入する。

現れたヒュージの数が多く各々が迎え撃つので精一杯。突破し大ケイブへと向かえない、もしくは突破出来たとしても破壊に必要なマギを用意できるかという問題が生じる

 

『各隊、現れたヒュージに集中!!

下手に温存かけたらすり潰される!!』

 

ヒュージを無視する事は出来ない。突破され他地区になだれ込むような事だけは避けなければならない。荻窪と同様に市民の避難の最中。ヒュージの大群など押し付けられる訳がない。

ならば現れたヒュージに全力を注いでもらうしかない

 

『隊長、こっちはもうすぐ終わるよ!!増援の気配もなし、前に進もうか?』

 

『まず撃ち漏らしが無いかの確認は念入りに。警戒は怠らないように』

 

『はいよ!!』

 

祥枝達の活躍で第一波と言えるスモール級の群れはほぼほぼ殲滅し終えたとの通信。突撃か援護か。次の一手を求めてくるがひとまずは終えたかの確認、後は第2、第3の増援への警戒を指示

 

『怪我は大丈夫ですか?』

 

『突っ込んだ皆は大丈夫、途中から来て暴れてた増援の子も無傷だよ』

 

怪我と消耗を確認するが此方も問題無し

支援があったといえど目立った外傷も無いようだ。知恵の増援も役立ったらしい

 

『TZ.BZは?』

 

『大丈夫、大丈夫

弾がちょーっと不安かな』

 

『同じく‥派手に‥暴れるから‥疲れた‥』

 

そして彼女達を支えたTZ.BZ陣も怪我は無いが射撃による援護が中心だった事で弾薬、及びマギの消耗が激しい‥祥枝達が暴れた分のフォローは大変だったようだ

 

「どうだ‥?」

 

「ちょっと不味いですね‥私達で攻め込まなきゃだめかもです

隊の皆は平気みたいですが」

 

戦況は良くない。当初の作戦が上手く行かない事は想定していたが長期戦は圧倒的に不利。

大ケイブが成長しネスト化する前に仕留めるためにも攻め込まなければならない

 

『補給や整備が必要なリリィは下って

他は大ケイブに!!』

 

補給、整備が必要な者は行い無事な者は一足先に大ケイブの元へと向かう判断をする

 

 




ネスト戦の時

比呂美様→後衛で3年協力者と行動。
智英→本人はやる気満々でもマギの回復と機体の修理が間に合わず出撃禁止(ティルフィングだし多分悠夏が優先された)
庵珠→怪我により出撃禁止+智英の監視

1年2人は出たくても出られなかった組に分類


本編だと…姫歌に煽られるまで引きこもってたってタイプでもないし悠夏みたいに行こうって言ってたと思う
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