「貴方、自分が何をしたのか分かっているの!?」
ここは生徒会室、部外者としてこの場に居るのは海漓のみ。
周囲にはグランエプレの上級生。怒声を浴びせているのは海漓達と向かい合うように椅子に腰掛けている生徒会長の秋日
グランエプレが青ケ島より帰還したのは明朝
上空を移動するガンシップの窓越しからでも分かる都内の状況に目撃した全てのリリィが愕然とし各々が慌てて帰路に。
その中でも荻窪の状態が酷くガンシップで移動している最中に何が起きたのかを知らされたらしく、到着した足で上級生は校長室に向かい、報告を受け、夕方に秋日からの呼び出しだ
現時点でガーデン側から海漓達に対してのアクションは何もない。
「私の力不足です。申し訳有りません」
逆ギレや反論する事なく素直に頭を下げる海漓。理由はともあれあの惨状を引き起こした原因は指揮官の海漓にある。咎も罵声も受け止めなければならない
「そんな事で許されるとおもってるの‥!!
貴方の行いのせいで神庭の評判や信頼に傷が付いたのよ!!」
「おっしゃる通りです」
力不足の言葉で許されるとも思ってはいない。海漓達の放った一撃は街の一区画が実質的に消滅させたと表していいほどの被害だ。そういう行いをするリリィやレギオンが存在する
ましてや今までそのような行為を行わなかった神庭のリリィが行なったのだ、エレンスゲに続いての行為。
海漓達に限らず神庭に対しても悪評であったり信用を損なったと言われても仕方が無い。
藤乃は不安げにやり取りを見つめ、叶星と高嶺も神妙な顔つきで海漓達をみる。怒りや軽蔑か、はたまた別な感情なのか。何を思っているのか分からない
「荻窪の被害だけじゃない貴方達の討伐の遅れで他の地域にだって被害が出て大勢のリリィや市民が傷ついてる!大勢を指揮するなんて出来もしないことをやった結果よ!!」
「おっしゃる通りです。(それも私のせいなの?マジ?いや、討伐遅れが原因なのは分かるけど)」
秋日の言う他の地域とは従来の守備範囲である荻窪や神庭が新たに担う事になった地域ではなく、文字通り神庭とは無関係のエリアの事だ。
文字通り海漓達にはどうする事も出来なかった範囲の被害まで責めるのは勘弁して欲しいのが本音。
勿論、討伐の遅れが原因なのは明白ではあるがそこは各校がなんとかして欲しい。そこまで攻められるのは流石に納得がいかない。口にはださないが。
「(中はともかく外は無理。
私にそんな力ないし‥同盟レギオンも無いし)」
出来もしないと言うか文字どおり指揮の範囲外を何とかしろはそもそも無理である。逆を言うと指揮の範囲内ならなんとでも出来るのだ
範囲外に同盟を組んでいるレギオンがいたなら何とか出来たかもしれないが、そんな相手もいない。
「本当に分かってる!?貴方のせいで既に神庭は調査隊への選出見送りっていうペナルティを受けているの!!」
「秋日さん、それ確定なんですか?いくら何でも昨日の今日で決めるには余りにも早急ですよ?」
「午前中に槿から連絡があったのよ
今回の件を受けて選出ゼロの体で話を進める事になるって
手の空いた風紀委員で当事者には尋問する事も検討しなきゃいけないこともね」
「(調査隊?何の話?)」
唐突に出た2つの単語。先ずは調査隊
コレについては全くと言っていいほど心当たりがない。文字から察するに何かを調査する為の部隊だが基本的には管轄するガーデンやその協力校が行うもの。神庭が該当するとなると守備範囲だがそちらはすでに済んでいる。外征後を考えると派遣先は大島を中心とする地域だろうか?
「(選出、見送り。都内の有力校で何かをするつもり??)」
秋日が言った『選出』を『見送る』
つまり何らかの基準をもってして選ぶ規模‥対象は都内の有力校‥大規模な隊を結成する予定で本来は神庭も入っていたが、見送られた、そういうことなのだろうか?
「(尋問はいいや、対象は私だろうし)
そして持つ一つの単語である尋問
これはガーデンが行う者やそれに対する罰を指すのではなく秋日も務める風紀委員、その集まりの中の代表者が問題を起こしたリリィに対して行う行為だ。尋問の基準も明確には無く[問題児]に対する行為という認識。守ったはずが問題児の仲間入り。笑える話だ。
該当者は海漓のみで他の面々には飛び火しないだろう。
「海漓ちゃん。本当に分かってる?秋日だけじゃない私を含め皆が怒ってるのよ?」
「分かってますよ」
「戦果を優先して被害を無視するようなやり方はやめよう。私達も教えてきたし、やり方を嫌うリリィがいる。
それを分かっててやる、仮にこれが私達に大しての当てつけなら流石に悪質よ」
叶星と高値も海漓を庇うつもりはない‥否。庇えないのだ。皆が怒っているというのも嘘ではない
戦果至上主義の否定。叶星と高嶺もそう教えた他にも忌み嫌う者
これは秋日だけでない。一葉達のように戦果至上主義を変えようとしている者。全てに対する当てつけであり嫌がらせだ。
2人に対しての当てつけとしてやったのならば悪質だと言い切る高嶺の思いも理解できる
「仕返ししたつもりは無いですけど、他は全ておっしゃる通りです。私の配慮が足りませんでした(確かに一葉には悪い事したかもな‥)」
何を言われても仕方が無いが、反論するべき所はする
別に叶星や高嶺に対しての当つけではない。倒すために必要だから行なったのだ。
だが結果として彼女達が忌み嫌う行為となった事は事実。特に都内で無くそう、止めようとしている行為で戦果を上げれば責められて当然だ。否定した風潮が認められる事になりかねないのだから。
親友でもある一葉の信念を考えれば申し訳ないとは思う。
「海漓ちゃんは何か言いたいことは有りませんか?
ずーっと謝ってばかりで海漓ちゃんの言葉が無いじゃありませんか」
「起きた事は事実で、指示を出したのは私です。罵倒も咎も受け入れなければなりません」
言いたい事は山ほどあるがこの状況ではどんなに言葉も言い訳と受け取られてしまうのは目に見えている。
発言が火に油を注ぎさらなるヒートアップを招くぐらいならば事実は受け入れ、反する事には反論するしかないのだ
この場で外征やグランエプレ派の不参加を指摘した所で何の意味もない。
「そもそも相模女子やエレンスゲみたいな戦の作法を弁えないならず者ような行動が神庭で許されるとでも思ってたの?」
「(我慢、我慢。)」
ここまで言われると反撃の一つ、文句の一つも言いたいがここで下手を打てば火に油どころかガソリンを注ぐ事になり、泥沼状態まっしぐら反論など出来る状態ではない。あえてサンドバッグになり気が済むならばそういう扱いを受け入れるのもやむ無しだ。
許されるならば今すぐにでも怒りたいが、それも我慢。
「もう良いのでは有りませんか?」
そんな中で藤乃が秋日を制止する
彼女だって生徒会であり、生え抜きの一員だ。この場で擁護しては自身の立ち位置が危うくなることや秋日達との対立のリスクを背負ってでも止めることを選んだ
「藤乃?」
「風紀委員からの尋問だけでなく、校内からの風当たりの強さを考えれば罰は既に受けています
ガーデンがどのように動くのか分かりませんが‥生徒会としての罰はこの辺りでやめませんか?」
秋日達からの罵倒やこの後に控えているであろう尋問。校内からの風当たりの強さを考えれば罰は受けているのだ
もしかしたらガーデン側からの処分も受けるかもしれない。
ならば自分達はこの辺りで止めておいた方が良いという判断だ
「藤乃。海漓さんが大切なのは分かるけど今回ばかりは甘やすわけには行かない。貴方だって生徒会の一員よ。分かってるでしょう?」
「相手の言い分も聞かず、一方的に叩いてる現状を止める事の何が甘やかしなんです?」
藤乃が海漓を気に入っていたり、大切なのは秋日だって分かっているが今回ばかりは甘やかす訳にはいかない
悪ふざけの行動に頭を悩ませる秋日からすればこんな時にまでふざけた行動をするな、生徒会としての自覚と立ち回りを行えと言っているのだ
ここで海漓が逆ギレしたり、反抗ばかりしてるならば秋日の言い分も分かる。だが違う。非を認めているのだ。
「(海漓ちゃんの気持ちを聞きたいんですけどね)」
本心を言うならば逆ギレや言い訳でも良い。彼女自身が抱いている思いや言葉を聞いた上で擁護し、判断したいのに返ってくるのは予め用意していたとばかりの定型文ばかり。自分が何を言っても無駄と思われている現状、秋日達は気づいているのだろうか?
「藤乃さん、あの、大丈夫ですから。やった事は分かってます」
「だから、この辺にしておきましょうと言っているんです」
分かってるならもう十分。同じ事の繰り返しならこの話はこれで終わりだ。
「ほら、海漓ちゃんはもう帰って良いですよ」
「えっ、」
「ほらほら、早く早く」
グイグイと背中を押し、強引に入り口まで押していくと、強制退場と言わんばかりに彼女を生徒会室から押し出す
「あっ、えっと、」
「何かあったらまた呼び出しますね」
半ば生徒会室からたたき出され一人廊下を歩く海漓。
日もすっかり落ち廊下も明かりがつかなければ真っ暗で何も見えないような状態。窓越しに空を見上げれば綺麗な星がチラホラと見受けられる
「(分かってはいたけどさぁ‥うーん)」
褒められる、賞賛されるなんて思っては居なかった。智英のようにやり過ぎだと言われる事も覚悟していた。だがあそこまで言われるのは心外であり、調査隊や文字どおり神庭の管轄外での出来事などどうする事も出来ない。
「海漓さん?秋日さん達とのお話は終わりましたか?」
「えぇ、まぁ。」
廊下を歩いていると正面から封筒をもった一乙が歩いてくる。
生徒会と話をする事はガーデンも把握していたようだ
「お疲れかもしれませんが、私からもお話が有るのでもう少しだけいいですか?」
「分かりました。」
簡単には帰れない。彼女の後についていくように歩いていく。
特に会話もなく淡々と歩みを進める
「さぁ、座ってください」
会議室のドアを開け、中に入ると明かりのスイッチは入っているおかげか部屋はあかるくカーテンも閉められている。予め机と椅子も設置されており校長が既に椅子に座っている
一乙から座るように促された所で校長とは机越しに向かい合う形に置かれた椅子に座る。校長の横に一乙は座る
「まず一つ。先日撃破した個体なのですが。」
校長が口を開くと同時、一乙は封筒の口を開くと複数枚の書類を取出し机に広げる。中には写真や様々な数値の記された物など多岐に渡る
「軍の偵察ドローンや衛星の映像、当時のデータを解析した所‥我々としてはあのギガント級はファーヴニルの幼体、もしくはそれに準ずる個体ではないか?と言う風に我々は考えています」
「あー、そうなんですね」
「驚か無いんですか?」
「数十年もいきてた訳ですし?日本でも新潟に一年位ですか?いましたので固定化というか下位互換の個体がいても良いのかなと‥別ケースですがグンタイアリも出ましたしね」
聞いた所でそうなのさと、そのぐらいの感想しか抱かない。元となった個体は数十年。国内でも一年間は存在していた。種の固定化や下位互換となる存在の出現はあっても不思議ではない
ここ東京でも御台場で猛威を振るったグンタイアリが荻窪に出撃したのだ。
条件や何故荻窪に?など分からない事も多いが、異例のことではない
「不安ではないのですか?」
「相手が何であれ倒すだけです。アルトラ級には来てほしくないですけどね」
自分達に与えられた任務はヒュージを倒し人々を守る事。相手がギガント級であれアルトラ級であれ、こなさなければならない。可能な範囲で情報を集め自分ならどのように指揮を取るか、今の自分達で何処まで出来るか、考えなければならない。
「ちなみに‥ガーデンにある物の他に欲しいと思った資料を取寄せる事は合法ですよね?」
ガーデンにも教材は揃っている。だがここから先はそれでも足りない部分が出てくる。そうなるとやはり海漓にはどうする事も出来ず、ガーデンの協力が必要になってくる。
「必要とあれば神庭が持っているルートを使って手配しますよ」
「訓練メニューやシュミレーションのデータ等も必要であれば用意できる範囲になりますが他校で使われいる物も手配しますからね」
校長、一乙共に全面的な協力を約束する。別に海漓を特別扱いしているのではない。神庭はリリィの自主制を尊重するガーデン。リリィが望むのであれば全面的に協力する。勿論リリィの安全、負担を考えたうえで、だ。
「さて、一つ伝えます。貴方と防衛隊(仮)への処遇ですが」
余談はここまで。この場に校長がいる理由は他にある。校長は一呼吸おくと
「謹慎処分を下す予定です。正確には対外戦闘及び指揮権限の停止ですね」
「えっ?‥それだけ‥ですか?」
要は当面の期間、貴方達は戦うな。海漓は指揮をするな。である
文字だけ見ると重大な処分。
しかし、現実的な話をすると戦闘禁止と言っても隊員に限らず出撃したリリィは体力及びマギ回復が不完全で、CHARM も半壊や全壊が多数。
これでは現実的に戦うことなど不可能でありヒュージが出ても出撃拒否ではなく出撃不能状態。
指揮権限もそもそもが生徒会長である秋日が不在時に限定的に認められた事であり彼女がいるならば不必要。
海漓が行った事は本来ならば秋日の役割、言わば代役なのだから
「えぇ。十分であると我々は判断しました。」
「校長先生だけでなく私達の総意です。あ、訓練やお勉強はキチンとしてくださいね?お休みだからってサボったりだらしない生活したらダメですよ?提出物もありますからね?」
謹慎はあくまでもガーデンの敷地内。できる範囲での訓練やミーティングそれに戦闘の反省会とやる事は多い。さらには学生としての勉強だってある。定期試験や日頃の課題もある。海漓に至っては書類等の作成も控えている。
「そ、そうですね(別の意味でヤバイな‥)」
訓練は構わない。勉強も大丈夫。だが絵画科として求められる提出物は少々危ない。作品に納得出来ずに期限ギリギリをやらかす海漓からすれば一大事。しかも彼女には隊長としての書類等も控えている。割り振りを考えなければ大変な事になる。
「本当は注意位で済ませたいんですけど‥ここまで大事になってしまうとある程度の罰を与え無くてはいけないので」
実のところを言うとガーデン側は海漓達に対して表立った処分などせず穏便に済ませたかった。だがここまでの騒ぎとなった以上、何らかの処分をせざるを得なかったのだ
「許可を出したのは私です。それに貴方達だけじゃない。一乙先生達も戦いました。手加減が出来るような相手じゃ無いことは理解しています」
無許可ではない。通信越しに許可を求め、それに応えたのだ。戦場に立った者、ガーデンに残り対応した者様々な視点で見てもあれが最善だと理解している。様々な理由で叩かれ今後もつきまとう話だがそれらは全て生じた結果に対しての後出しだ。
「明日にでも正式に言い渡します。では、これで」
「あ、私はもう少し話が有りますので」
話はこれで終わりかと思いきや一乙との面談もあるようだ。
「(えぇ‥マジっ?‥まぁ良いけど)」
校長が先に退出し残るは二人。早く帰りたいと思うが、まぁやらかした以上は面談に次ぐ面談だ。その位は覚悟している
「海漓さん、秋日さんにキツめに言われたんじゃないですか?」
「え?」
「うまく取り繕っているかもしれませんが先生の目は誤魔化せませんよ?」
海漓に対して伝えるべき事は伝えた。
一乙としても本来ならば切り上げてもよかったが、見かけた時にどこか気落し不満を抱いている風にも見える為もう少しだけ彼女との対話を行うことにする。
「キツめ、まぁ。そうですね。怒るのも仕方ない事なんですけど‥」
「前もってガーデンが許可したんだからあまり言うなと伝えたんですけどね」
実を言うと呼び出されるより前にグランエプレの上級生には校長から何が起きたのかを伝えており、今回の一件には海漓の独断ではなくガーデンとしての判断も含まれる事や指揮を執った海漓に対して過度な非難を行わないようにと釘を刺していたのだ。
「あーそうなんですね(釘刺されてあれか‥)」
「うーん‥少し正義感が暴走してるかもしれませんね‥
私も今後の言動や出撃したリリィへの動向を注意して見ておきますし教導官にも共有するので何かあれば言ってください」
「暴走‥ですか」
「はい。生徒会長としての責任感。や風紀委員としての正義感を持つことは良いことですが、少し暴走気味ですね
」
責任感の強さ、正義感を抱いている事は分かっている。だが今回の一件に限らずここ最近の立ち回り。
教導官からみれば暴走していると言う風に映っている。質が悪いのはそれを暴走だと理解していない事。本人も周囲もだ。
「暴走。でも悪いのは指示出した私ですし‥」
「荻窪を守る為に必要だから許可を求めたんですよね?違いますか?」
暴走なのか海漓が嫌いなのか、正直に言って判断がつかない。だが怒らせる原因を作ったのは彼女自身だ。仕方ないと言えば仕方無いが、好き好んで。破壊を楽しむ為に行った訳では無い。
一乙の言うように荻窪を守る為に必要だから、許可を求めたはずなのだ
「そうですね。被害を考える余裕と考慮できる相手ではなかったです」
「でしょう?校長先生もそのように判断したから許可をだしたんです。許可を求めておきながら止めました。は逆に問題ですよ」
少なくとも海漓からすれば被害を考える余裕など無い。
彼女に限らず少なくともあの場で戦った者全てが抱いている事であり、校長も分かっているからこそ許可したのだ。
逆に【やっぱりやめた】ではそれこそ問題だ。何のために許可を求めたのかわからないのだから
「謝ってやり過ごすのも一つの手では有りますが言うべきことは言わなきゃ駄目ですよ?‥なんて言っても難しいですよね。怒ってる相手への反論は火に油を注ぐだけですから」
言い訳や逆ギレは論外だが言わなければならない事はしっかりと言う‥言葉にするだけなら簡単だが実際は難しい事
聞く耳を持つ者ならばまだしも聞く耳を持たない相手、話した所で考えを曲げない相手には悪手。説明そのものが言い訳や逆ギレだと捉えられ、より事態を悪化させるだけ
「先生がこんな事を言うのは問題なのかもしれませんが
今回の戦果の中心にいるのは防衛隊であり指揮をとった貴方です。それは十分に誇っていいことなんですよ」
難癖などいくらでも言える。だが大ケイブ、特型ギガント級を討った戦果は誇れるものだ。被害を攻めているが、討伐してこの状況なのだ
失敗し荻窪に新たなネストが生まれたとなれば被害は今よりも甚大になっていた筈だ
目先の勝利で被害を無視という言われ方もするが、逆。この程度の被害に留める事で将来的な更なる被害と大勢の犠牲を防いだのだ
「私はただ皆に指示をだしただけ
後は展開先で戦った皆や先生達。ガーデンとは違うやり方で支援をしてくれた軍の方々。文字通り戦場に出た皆がいたからできた事です。」
「その起点を作ったのは貴方です
貴方の指示采配があったから私達は動けました。
過度な謙遜は卑屈です。自分を貶めるような行為は止めましょう」
海漓の指示通りに動く。防衛隊だけでなく協力するリリィに対して求めた事
編成や配置は彼女の指示だが戦ったのはリリィ一人一人。生き残れたとすればそれはリリィ一人一人の技量であり、日頃の訓練のおかげだ
リリィだけではない。一乙のように出撃した教導官、リリィとは別な方法で支援した軍。戦闘だけでも多くの人々の力があったから成し遂げられたことなのだ
大した事なんて無いと言うが、その作戦の起点を作ったのはほかでも無い、海漓だ。彼女の指示采配があったから出撃した者は自分のやるべき事に集中出来たし、考えられた
「志を高く持つ事、まだ至っていない事を自覚する事は大切です。
けれども至らないからと過度に卑屈になっては伸びるものも伸びませんよ」
謙虚すぎるのも問題だ、海漓にも高い目標、めざすべき司令塔としての姿は有るのかもしれないが、至らないからと自分を卑下しすぎても良くはない
だからといって傲慢になりすぎても良くはない。海漓は傲慢とはほど遠いからそこの不安は無いが、謙遜や卑屈すぎるのは考えものだ
「そう言ってもらえると‥嬉しいです
卑屈は‥うーん‥そうならないように頑張ってみます」
褒められれば嬉しい。卑屈になったつもりはなく、現実を受け入れているだけ。だが卑屈に見えているならば見えないように頑張らなければならない
「今日はもう帰っていいですよ。また何か有れば呼び出しますね」
「分かりました」
ドアが閉まり会議室には静粛が訪れる
一乙は力を抜き背もたれによりかかると大きく息を吐く
「(何処までの事を言ったのは分かりませんが‥これは難しいですね)」
残された彼女は先の会話を振り返る。
秋日達が海漓に対して具体的に何を言ったのかは分からないが相当な事を言ったという判断は出来る。
「(彼女を許す、認める事は自分を否定する事に他なりませんから)」
秋日が海漓を責める気持も分かる。だがそれは長としての責任感以上に彼女を認めたくない、許したくないという個人的な感情が含まれる。
特に秋日は過去の経験から被害を考慮しない戦闘、人を駒のように動かす戦術をとる海漓など嫌悪すべき存在であり、そんな彼女が嫌悪する行動で戦果を上げたなど意地でも認めたくはない。
認めてしまえば自分の努力や信念を否定する事と同義であるならば尚更だ
理想のリリィ、理想のレギオンはやはり百合ヶ丘や御台場と言った超がつく強豪ガーデン、トップレギオンに所属するリリィであり、グランエプレもそこを目指している
一乙から見てもそう遠くない内に彼女達と同じ土俵にグランエプレは立てるだろう。引きづられるように神庭の地位も上がる。
例えそれが残る者達を置いてきぼりにする形になってもだ
「(後は塩崎さんの一件でしょうね‥)」
全てを把握している訳では無いが始めの頃は秋日とも良好な関係を築いていた筈だ。明確に対立、敵意を持ったのは間違いなくネスト討伐戦前、突如として出回った謎の文書を巡る鈴夢との衝突と彼女を負傷させた事だ。
大切な人を傷つけられた怒りと憎しみ、敵意が今も尚燻っているのだろう。一乙はそう考える
「(叶星さんと高嶺さんも同じでしょうし)」
本来ならば叶星や高嶺が秋日を止めなければならないが彼女達と秋日は似ている。海漓の行動を擁護する筈がない。信念であり大切な者を傷付けた怒りを理解しているから
「(もう少し様子をみましょうか)」
今回の件の対応を行いつつ秋日達の動向も注視しなければならない。
文字通り海漓達を排除する動きや行き過ぎた誹謗中傷が目立つのならばガーデンとしても動く必要がある‥がグランエプレの立ち位置や今後を考えるとそれも難しい。
それでも、動くべき時には動かなければならないのだ。
更に言うなら海漓の口から直接告げられた訳では無い。今動いてはガーデンに報告したと捉えられ更なる火種になってしまう
今後自分達はどうするべきか、彼女達もまた自身の行動を考えるのだ
リリィにはリリィの、教導官には教導官としての仕事であり役割があるのだから
調査隊に神庭がいない理由
→海漓がやらかした事のペナルティとして締め出し食らった
戦技交流会の時に日の出町のペナルティでエレンスゲ締め出してるしその前例踏まえ云々で
海漓が守れたのは荻窪や追加された分で、要は神庭から出撃したリリィや教導官を出来た箇所
当たり前だけど無関係な地域や他校の範囲なんて守れる訳がない