敵を倒しながら進軍するグランエプレの一年生
道中に現れるヒュージを撃退しながら進んでいくのだが、ヒュージの数が予想していたよりも多い
それは一年生全員が感じていた
「ねぇ、ヒュージ多くない?
大量発生って言われてたっけ??」
「いえ、そのような報告は…」
大量発生ならば事前にそういう状況だと説明されるし、神庭の現在の状態を考えるなら他所のガーデンに応援を頼むはずだ
と、なるとこの状況は想定外
イレギュラーが発生した事だと言うのは想像がつく
ヒュージが出現した座標まで到着するとそこには異様な光景が広がっていた
「いや、向かってるときから薄々分かってたとはいえ多すぎるでしょ
こんなに居るなら居るって言ってよね」
海漓は思わず悪態をつく
大量発生してるならそう言ってくれれば良いし、何より上級生が居ない今日に限って言えば出てくるなとも言いたくなる
「私達が向かい始めた直後にケイブが発生したようですね…
足並みも揃って無い事がヒュージの増援を防げなかった原因かと」
そう言いながらも今度は後方にケイブの反応が
「とにかくこれ以上好きにさせるわけには行かないわ
後方に待機させてるレギオンに声をかけて!」
「そんな事言おうにもここからじゃ声が届かないよ〜
通信入れようにも繋がらないし」
姫歌はすぐさま案を出すがそれを伝える事ができないと灯莉は言う
紅巴も持ち場を維持しつつ後方のレギオンに通信を入れようとするが一向に反応がない
戦闘音は継続して聞こえてくることから後方に待機させたリリィはヒュージに倒された…というより通信機の破損、もしくは通信機能が使えない状態になっておりそれに誰も気がついて居ないと予想できる
「えっと、こういう時どうすれば良いんだっけ…誰かを向かわせる?いや、でも…」
姫歌も叶星から教わった事をどうにか活かそうと考えるが、相次ぐイレギュラーと不足する自軍の戦力、増え続けるヒュージと彼女へ膨大なプレッシャーがかかる
「灯莉ちゃん、左から来てる!!」
「オッケー!」
そして彼女、いや一年生全員がこの状況を打破するための経験が不足している
全員持ち場を維持するので精一杯
ガーデン側からの増援が来てくれれば御の字
かなり厳しい状況であるのに、さらに追い打ちがかけられる
「あれは…この間出現した高機動タイプのヒュージ!?」
紅巴が発見したのは彼女達が取り逃がしたタイプ…もしくは全くの別個体なのかそれは分からないが、とにかくこの状況で間違いなく現れてほしくなかった個体がこの場に現れる
「紅巴ちゃん、テスタメント!」
「はっ、はい!」
海漓は紅巴にレアスキルを発動するように促すが、レアスキルの発動よりも先に個体は混乱している姫歌へと狙いを定める
「…っ!」
「定盛…!」
姫歌の対応が遅くなったことに灯莉は気がついたのか自身を盾にしようと彼女の前に立ち攻撃を受けようとするが
受けたのは攻撃の衝撃ではなく自身の横を通り過ぎた際に感じる風
そして聞こえるなにかにぶつかる音
「…ユーバーザイン。結構便利よね、コ
レ」
聞こえるのは海漓の声
その声はこの状況にも関わらず不気味な程に落ち着いていた
「私のテスタメントと海漓ちゃんのユーバーザインを組み合わさて二人の気配を?」
「そっ
ネタバラシするなら二人の気配をそこの崖にズラしただけ
勿論ヒュージからは二人を見えないようにして、ね?」
ユーバーザインとは本来自己の気配を操作するレアスキルなのだが紅巴のテスタメントで範囲を広げればユーバーザインの適応範囲も広がる
それで二人の気配を操作したというカラクリだ
ユーバーザインとテスタメント持ちがいれば誰でも簡単に出来るというのが彼女の考えなのだがこれは海漓にしか出来ていない
鎌倉時代にこれをやっている、もしくは成功したリリィを少なくとも彼女は知らない
彼女にしか出来ないからなのか、それとも他に試すリリィがいないからなのかは不明
そして激突されられたヒュージはというとすぐに復活しこちらの様子を伺う
心なしか殺気も2割増位で増えているかもしれない
「崖に突っ込ませて倒れるほど雑魚じゃないか、まぁ、そりゃそうよね?
ヒュージだし」
そう言いながら海漓は両手に持つCHARMを合体させ長刀へと変形させる
トリグラフの機能の一つであるパルチザンモードの姿だ
「いくら最期かもしれずとはいえこんな所で死にたく無いし、本気で行くかー」
そう言いながら彼女は高機動型から目をそらさない
崖に突っ込ませただけではダメージを与えたと言えずすぐさま体制を立て直す
その様子を見た紅巴は
「どうするんですか?」
「どうするって、そりゃ仕留めに行くに決まってるでしょ。アレ、多分あの時仕留めそこねた個体よ
仕留めそこねた個体は自分達で倒す…その位の責任感は持ってるわよ、私」
以前の撤退を間違いとは言わない
あの時はアレが最善策だという判断を下したし、取り逃した個体が短期間で再び自分達の前に現れるなど予想は出来ない。
同じ個体なのか、はたまた別個体なのかは分からないがこうして目の前に現れたのだ
今度こそ仕留めると考えるのは彼女の中では当然である
「…リリィは結果が全て…あながち間違いじゃないのよね。こんな状況だと特に」
「海漓ちゃん?」
「何でもない、とにかくあの特型はここで仕留める!!紅巴ちゃん、小型任せた!」
「はっ、はい!」
海漓の普段とは違う気迫に押されたのか紅巴はすぐさま姫歌達のいるところまで交代する
彼女がこうするのには理由がある
少なくともこの状況でグランエプレが目立った戦果を残せなかった場合に起こりかねないある可能性を考慮したのだ
勿論、神庭の校風を考えたら起こる確率は限りなく0に近いが、その可能性を少しでも少なくしておきたい
それにこの場で体制を立て直せば増援は必ず来るという確信も彼女にはある為、時間稼ぎという目的もある
ヒュージからすれば動きを止めたリリィを仕留めるチャンス
まっすぐこちらに向かって突進してくる
このタイプの対処としては以前叶星達がやったように自身も高速で移動し先手を取る、もしくはフォーメーションを組み動きを封じた所を近接戦で仕留めるのがセオリーである
が、あの時とは状況が違い今は小型のヒュージも大量にいる以上、特型一体に意識を向けるわけにも行かない
と、ここで海漓はパルチザンモードを一旦解除
左右にCHARMを構えると右手にあるCHARMから二本のワイヤーを射出する
「使える物は使わせてもらう!」
近くに居た小型ヒュージに先端が突き刺さるのを確認するとそのまま突進してくる特型ヒュージに叩きつける
衝撃は凄まじく小型のヒュージは絶命
特型には致命打にならないが左側にへこみが見られる
小型に突き刺したワイヤーを戻しつつ左手に持ったCHARMで特型に追撃を叩き込む
ヒュージが体制を立て直す前に今度はレアスキルユーバーザインを発動し姿と自身の気配を消す
気配が消えた事でヒュージは姫歌達に攻撃を仕掛けようとするが、そうはならない
「こっちよこっち!」
姿も気配も感じられないのに攻撃が当たる
攻撃が来た方に体の向きを変えるがそこには誰もいない
向きを変えた反対方向から攻撃が飛んでくる
「こっちだって、こっち」
再度声が聞こえ今度は姿も見える
ヒュージはすぐさま反転し高速移動で突進する
そんな中でも彼女は微動だにしない
ヒュージの体当たりが直撃する寸前で彼女の姿が消える
ヒュージはかなりの速度が出ており急に止まったり軌道を変えることができず先程と同様に崖に突撃してしまう
流石にこれには堪えたのかヒュージは一回り大きな姿になる
それを確認した海漓は正面からヒュージに向かって突撃
小型ヒュージも付近から現れ特型ヒュージもタイミングを合わせるように突進
「まーずは、っと!」
本来ならば射撃で小型を倒すのがセオリーであるが彼女は倒すのではなくヒュージに突撃
そのまま攻撃を当てるのでなく横に回り込むと反撃される前にヒュージに足を乗せ、マギを足元に集中
タイミングを測り力強く跳躍すると突進してきたヒュージの金属部分に飛び乗る
飛び乗ったと同時にCHARMをパルチザンモードに変形
「捕まえた!!」
ブレードを頭部の付け根部分に狙いを定め何度も突き刺す
胴体には黒い触手のようなものもあるのだが長さに限度があるのか海漓に向かって攻撃を仕掛けてこない
ならばとヒュージも高速で移動し振り落としにかかる
「私、バランス感覚は良い方でね…根比べと行きましょうか!」
足元でバランスを取りつつ何度も何度も執拗に突き刺す
その際、ヒュージの悲鳴と返り血が自身に飛ぶがそんなものはお構いなし
先程より強固に振り落としにかかっていることからダメージが入っているのは確実
あとはこのまま装甲を貫き止めを差すだけ
とはいえその止めに中々持っていけない
「硬い…!これじゃCHARMが持たないかも…」
そう思いながらも突き刺し続けると突き刺していた子機側の剣が砕け散る
その際一瞬だが海漓は体制を崩してしまう
そうなってしまえばヒュージが有利になるのは当然である
高速で移動しながら体を揺らせば海漓は簡単に転落
後はそこに追撃として突進をお見舞いすればいいだけの事
そうしてヒュージは海漓に突進をしかけるが海漓がCHARMでは無くマギで生み出したバリアを展開し攻撃を受け止めるが直ぐに砕け散り、池の水面へと叩きつけられる
攻撃によるダメージはうち消せたおかげか直ぐに体制を立て直すことが出来たが子機側のCHARMをよくよく見ると剣だけでは無くCHARM全体がひび割れておりこれ以上の使用は不可となってしまう
付近に小型のヒュージも集まっており状況は不利なのだが海漓は動揺しない
むしろ悔しがっているようにすら見える
「タイムアップ…か。仕留めたかったけど仕方ない
まぁ最低限の事は出来た…かな?」
そう呟いた直後、大きな爆発音が響くのであった。
途中、海漓と紅巴がやったのはアニメでもやってたレアスキルの合成的なやつだと思ってもらえれば