グランエプレのメンバーが全員揃ってから数日後
この日の放課後もいつも通り雑談を行っていたのだが、不意に灯莉が
「あっ、そうそう☆
みんな揃ってるし見せたいものがあるんだ」
そう言いメンバーに見せたのはガーデンからのボランティア実施要項
神庭と言うガーデンはリリィとしての育成以外にもリリィと言えどまだ10代、戦うだけでは駄目と言う理由からボランティアなど地域貢献活動にも力を入れている
「ボランティアね…確かにガーデンとして力を入れてるけど姫歌達はトップレギオンなんだしそんな事にかまけている暇なんて…」
「まぁまぁ、こう言うのも必要だよ
戦うだけがリリィじゃないってのがウチの方針でしょ?」
海漓はそう言い返す
姫歌の言う事も間違ってはいないのであるが、神庭の方針、そして以前叶星が掲げたグランエプレのレギオンとしての方針
その方針を掲げた以上、それに沿うことをするのもまた必要なのだ
姫歌がこう言い出したのも恐らくこの間の反省を活かすためなのだろうが、それでガーデンやレギオンの方針に反してしまっては意味がない
「へぇ、ボランティア先は幼稚園なのね」
「よ、幼稚園!?」
高嶺はプリントを読み終えたのか行き先を見て一息つく
灯莉がよくボランティアで訪れる幼稚園で働く先生がこの間のヒュージの襲撃で避難する際足を痛めてしまったそうで、子供達の相手をするには少々大変であり神庭に改めて救援…というほどではないが子供達の面倒を見るのを手伝ってほしいという依頼が来たわけだ
最終的にはリーダーの叶星が了承し今回はグラン・エプレとして幼稚園でのボランティア活動を行う事になる
そして、ボランティア当日
グラン・エプレが幼稚園に到着し大人達に挨拶を行い、初日なので先ずは子供達とのコミュニケーションを兼ねて遊び相手を務めるのだが、早々に試練が訪れる
訪れてるのは主に姫歌なのだが
「さだもりー、ぴょんぴょん〜」
「ぴょんぴょんさだもりー」
「ああぁ〜これ無理〜誰かー!!
アイドルはお触り厳禁なのよ〜!!」
試練というか本人の性格もあり子供達に懐かれているだけなので問題はない。
ちなみに子供達はツインテールを執拗に触りに来ているが何も問題はない
問題はないのである。
で、海漓はというと
「お姉ちゃんは何作ってるの〜」
「見せて見せて〜」
「いいよー、丁度完成したところ。はいどうぞ」
そう言って手渡したのは紙で作った紙飛行機とブーメラン
「投げてみて、驚くわよ」
そう言い子供達がブーメランと紙飛行機を投げると
両方とも手元に戻ってきたのだ
「すっごーい!!戻って来た〜」
「私もやりたーい」
「楽しいけどそれ、蜂の巣の近くで投げたら駄目よー蜂さんが怒っちゃうからねー」
海漓が豆知識とばかりに子供達に注意する
ちなみにこの幼稚園の敷地内には蜂の巣が無いことを確認しているため、真似させる危険性が無いことは確認済みだ
「いや、いくら子供とはいえ蜂の巣の近くで紙飛行機投げてあそぶなんて事しないでしょ
刺されるの分かりきってるじゃない」
「でもあーちゃんの言葉やけに真剣だったよ?」
「両親から言われてたんでしょ」
彼女の言葉を遠くで聞いていた姫歌の灯莉はそんなふうにやり取りをする
そう、聞く人によっては只の注意にしか聞こえないのだが、海漓にとってみれば蜂絡みの件はある意味で笑い話に出来るという真相を知るか知らないかで意味が変わる話題であったりする
なんやかんやで子供達との顔合わせが終わった後、レギオンメンバーで集まり今後の打ち合わせへと移る
子供達と遊ぶのはあくまでもコミュニケーションの為、本題はこの幼稚園で行われるお遊戯会でやる演劇の手伝いである
先のヒュージの襲撃で先生が軽い怪我をしてしまい作業が大幅に遅れているのだという
「さっき確認したんだけれど配役と台本は決まっているけれど他は殆ど手がついていないらしいわ」
「となると残りは大通具小道具の作成と衣装作りがメインになるわね」
叶星、高嶺は状況の確認
配役はともかく台本が既に決まっているというのは不幸中の幸いだろう
「ぼく、衣装作りやるよ〜
後は背景と看板も」
「背景というか書き割ね。
私もそっち入ろうかな
美術科の腕の見せ所ってやつ」
「あーちゃん頑張ろう☆」
灯莉と海漓は美術関連
姫歌と紅巴は音楽関連を担当し叶星、高嶺は子供達の面倒と一年生のフォローを行う事になる
「で、灯莉ちゃん衣装はどうするの?
1から作るとなると流石に時間が足りないと思うけど」
「衣装は去年のをベースにしてリメイクをしていけば大丈夫かなーって」
「オッケー
後気になったんだけどね小道具と大道具は?そっちも何か再利用する感じ?」
「…あっ!」
「忘れてたわね…ならそっちは任せて」
そう言い二人は作業に入る
灯莉は衣装よりも先には背景などの下書きを始め海漓は小道具、大道具の作成を行う
「幼稚園児が使うなら木材よりも紙の方が安全だし…劇までの日数も限られるからクオリティに時間はかけられないか…とは言え最後はサプライズ仕掛けたいしそっちは時間かかるしなぁ…寮で作るか…?」
「うーんと、ここをこうして…こう☆」
二人はイメージを頭の中に浮かべながら作業を行っていく
とは言え流石に二人では人手が足りないのも事実
なので小道具や大道具に関しては簡単な物は園児達や先生達にも協力して貰う
ちなみに灯莉の方も複雑でない所は園児達に協力してもらっていた
すると途中、幼稚園の先生の一人が
「あの〜間違ってたらごめんなさい
さっき名前を聞いてもしかしてと思ったのだけれど貴方、もしかして…天野さんの娘さん?」
「えぇ、そうですよ
えっと…両親の作品か何かをご覧になった事が?それとも実家に?」
そう尋ねる
ちなみに彼女の実家は花屋をやっており
父は作庭、母はフラワーアレンジメントとして非常に有名であり海漓も娘なのだからまぁ尋ねられて当然だろう
とは言え今は両親以上に世界的に名のしれた姉よりも先に両親の名を出すのは職業柄なのであろう
「貴方のお母様の作品を何度か見に行く機会があったの
どれもこれも素晴らしい作品だったわ」
「そのように言っていただけてとても嬉しいですし、母もきっと喜ぶと思います」
そう言うと先生が子供達に呼ばれた為その場を後にする
本当に簡単な世間話をしに来ただけのようである
「(そう言えば最近連絡してないなー
これじゃ人の事言えないな、うん。)」
幼稚園の先生がきっかけ…になったのであろう
落ち着いたら両親に連絡を取ろうと心に決める
そうしてこの日は作業を終え解散となる
準備の出来は順調でありこれならお遊戯会に間に合いそうだと言う手応えも掴みながら一日を終えるのであった。