一柳隊に案内され百合ヶ丘女学院の校門へと再びやってくる
「久しぶりに訪れましたが、何度見ても趣のある素敵な校舎ですね」
「そう言えば千香瑠様は百合ヶ丘へといらっしゃった事が有るんですよね」
感想を言ったのは千香瑠、その理由を二水が話す
先程楓が言っていたように彼女は百合ヶ丘と縁が有るのだから当然かもしれない。
彼女からしたや久しぶりの来校
挨拶等もしたいという
「(ヘルヴォルを呼んだ理由は間違い無くソレ…さて、どう仕掛けてくる?)」
海漓は冷静に状況を見る
「では、皆さんをご案内しますね」
梨璃はなんの疑いも無くそう告げる
だが、一葉は
「その事なんですが…私達はこっから先に進むわけには行きません」
「えっ、どうして…ですか?」
エレンスゲと百合ヶ丘の関係を考えれば至極当然な事なのだがどうやら約一名はそれを全く知らないらしい
「…ッ(やっぱり、把握してないか…ここのゲヘナへの姿勢はガッチガチなのに)」
今までの対応からして、まさか…とは思っていたがその予想が当たってしまう
そもそもなぜ一葉がこの様な事を言い出したのか
それはガーデンへのとある企業に対する姿勢にある
多国籍企業G.E.H.E.N.A
ここはヒュージ研究で有名な機関であり元は民間企業の研究機関であったのだが次第に力をつけヒュージとの戦いを科学的な面で引っ張るまでになった
これだけを聞くと問題はない…のだが
そのやり方というのに手段を選ばなくなり特殊な手術でリリィを過剰なまでに強化する等々裏での悪名も非常に高い
勿論そのような過剰な強化をするべきでは無いというスタンスを取る派閥もあり、一筋縄で行かない組織なのだ
そしてそのゲヘナに対し様々な分野で協力的なガーデンを親GEHENA、逆に反対するガーデンを反GEHENAと表せる
ここではエレンスゲは親ゲヘナ派、百合ヶ丘は反ゲヘナ派であり、百合ヶ丘は特に厳しくゲヘナ関連への接触及び研究関連の資料の閲覧も厳しく規制するレベルなのだ
補足すると叶星達の出身である御台場女学校は反ゲヘナ
海漓の出身は中立派だ
中立派と言うのはどちらにも肩入れはせず、ゲヘナの研究でも行きずた物は使わないと言う信条である
ちなみに神庭も中立の姿勢だ
そのような対立構造にあるガーデン、トラブル等々を回避する為にもいくら合宿とはいえ安易にヘルヴォルの面々が入る訳にはいかないのだ
ゲヘナ関連は海漓の場合、中等部入学直後に説明されており、どこも同じだと思っていたのだが実は違うのだろうか?
「ご存知の通り私達はエレンスゲ女学園に通う身、百合ヶ丘とは政治的にも、校風的にも微妙…というより敵対関係にあります」
「敵対って…
私達は結束してヒュージと戦うって話をしたじゃありませんか」
一葉も分かりやすく説明する、が
梨璃はその発言にショックを受ける
結束するはずのガーデンから敵対と言われれば無理もないがそもそもそれを覚悟して呼んだのでは無いかと思う者もいたがあえて口は出さないようだ
「結束して戦う…嘘ではありません。
ですが…」
「確かに今回の話を持ちかけてきたのは百合ヶ丘側だよ…
でも、そこから先はヘルヴォルが強引に進めた事だからね
エレンスゲも許可は出したけど…良しとしない人は大勢いるの」
一葉の言葉に恋花が付け足す
この辺はヘルヴォル側の打ち合わせ通りかもしれない
恋花の最後の言葉は彼女なりの優しさで有ろう
百合ヶ丘のリリィがエレンスゲに肩入れする
そのリスクを暗に教えたのだ
一葉曰く、以前彼女と叶星は事前の挨拶の為に来校したがその際もかなりの配慮があったという
「今回も私と百由とで理事長代行には直接許可を取っているわよ」
夢結はそう伝える
この場に百由というリリィはいないが先程楓の話にも出てきたリリィ
生徒会かもしくはガーデンの運用に意見できる人物だろう
「許可が出てる事は聞いてるよ…
でもこの人数で百合ヶ丘の敷地に入るのは…ちょっとね」
「ですが、ヘルヴォルは一柳隊、グランエプレと共に戦う
この言葉に嘘偽りはごさいません!」
恋花は夢結の言葉にそう答える
許可が出てるから100%安心とは言えない
それを分かっているのだ
しかし共に戦う事自体は嘘ではない
余計な誤解を生まないためにも一葉は力強くそう答える
この状況、実はとあるリリィとしても予想は出来ていた、楓である
「つべこべ言わず大人しく同じ竈の飯を食べればいいんです!
…と、本当なら言い切りたい所ですが…」
「楓さん?」
楓にしては珍しく言葉を濁す
夢結もそれを不審に思う
「そちらにも譲れない事情があるのもまた事実。
さて、どうしましょう?」
困りましたわ、とわざとらしく告げる
手が無いわけではない
が、それを提案するのは楓の役目ではない
しかし楓には確信があった、隊長の梨璃の事を知り尽くしているからこそわざとらしく言ったのだ
ここで必要なのは時間稼ぎである
「だ、だったら
私達が一葉さん達の泊まる所にお邪魔しましょう!!」
そしてその状況を見かねた梨璃はそう提案する
「えっ?」
一葉もその提案には驚く
何ならグランエプレのメンバーも連れていけばいいとの事
が、これがトラブルにならない唯一の策だろう
考えて言ったのか、単なる思いつきなのかは分からないが最善の案に近い
すると一葉は海漓に唐突に話を降る
「この辺りにそんな大勢の泊まれるホテルある?
私達だけなら何とかなると思うけど」
「いきなり話を振って来たね…」
海漓は呆れる
色々と思う所も言いたい事もあるが今の海漓は神庭に所属する身
下手に首を突っ込む訳には行かないため静観していたのだ
「だって海漓は鎌倉府の出身だし、そう言う手続きに関しては私より詳しいでしょ?」
「中等部でやってきたからね…とりあえず、ヒュージぶっ倒すための外征って言えば空いてるところ紹介してくれると思うよ
外征の申請書とリリィって事を証明出来る物、ヘルヴォルなら隊長の一葉のサインで行ける」
そう教える
リリィの外征となると普通はガーデン内に宿泊するのだが、今回の様な場合や何らかの事情で急に街で宿を取らなくなった場合の非情手段と言うのもいくつか用意されており、海漓が言ったのもその一つ
かなり簡単に説明するとホテル側に外征である事と緊急である事を伝え、空き部屋があるならば宿泊させてもらえるシステム
なくても近隣のホテルを紹介してもらえる
まぁ大体の場合は宿を取っていたりガーデン側が抑えている事が大半なのでそのような事は起こらないのだが
勿論、リリィである以上ありとあらゆる状況に備えている為、屋外での宿泊という手もある事を追記しておく
ちなみに、ホテル等に宿泊する場合費用はガーデンが全額負担するのが基本
ただ、金額が余りにも不自然に高額であったりしたらリリィに一部負担させる場合もある
俗にいう常識的に判断しろと言うやつだ
すると海漓は携帯端末を操作しつつ
「合流した駅辺りに目ぼしいのが何件か…この辺とかどうさ?」
そう言い一葉に何件か提案していると姫歌が
「海漓、ホテルは可愛い部屋のある所で頼むわよ!
ビジネスとかカプセルは駄目だからね」
そう要求する
その後に楓が
「その、お金の方は問題ありませんの?
外征の為とはいえ何泊もするならかなりのお値段になりますわよ?
特に私はロイヤルスイートを希望いたしますので!
ですよね、梨璃さん!」
心配と同時に謎のアピール
楓クラスならばこっちに頼らずとも自腹で抑えられるだろと言いたくなるのをぐっと我慢
というかその手のホテルは泊まったら百合ヶ丘はともかく、ヘルヴォルとグランエプレは間違いなく費用の一部はこっち持ちだと言う事をわかっていないのだろうか?
流石に合宿相手に金を集るような事はしたくはない
まぁ海漓の中には金を集る先輩に一人だけ心あたりはあるが、流石にあぁはなりたくない
「申し訳無いです…
あくまでもヘルヴォルの都合にみなさんを巻き込んでしまい」
一葉はそう言い謝ると高嶺は
「あら、私達はこれから共に戦う身
巻き込む…なんて事は無いわ」
そのように伝える
先のトラブルでは口を挟まなかったが今回は違う
伝えるべき事はこちらも伝えたのだ
それを見ていた他のヘルヴォルはというと
「ここまで言われたら仕方ないよね
私達の負けだよ」
恋花は笑いながらそういう
そして
「後は…一葉の珍しい面も見れたしね」
「珍しい、ですか?」
「タメ口で話すなんて珍しいじゃん
タメ口で話すのは藍だけで基本敬語だし」
そう。
一葉は基本的に敬語で話す
それは同級生でも変わらない
タメ口なのはヘルヴォルの藍だけだと誰もが思っていた
すると一葉は懐かしむように
「あぁ…初めて会った時は敬語でしたよ
ただ直ぐに敬語止めろと言われたので」
「そうなの?」
「はい。
〈私等そんな普段から敬語必須のお上品なガーデンじゃないし同期なんだからタメで良い〉と言われたので」
実は一葉も始めは敬語だったのだ
しかし海漓の古巣もエレンスゲもそんな普段から敬語必須のガーデンでは無い
そんな所で同級生から敬語など海漓からしたら非常に嫌だったので即止めるように言ったのだ
一葉も同級生からの頼みならばと無下にせずそのまま今の流れへとなる
まぁタメ口で話せる分、気が楽になるというのもあるが
そうして宿泊場所を決めていると二水がふいに
「あ、あの…宿泊場所なんですけど
…私にいい考えがあります!!」
そのように告げついてくるように言う
はたして何があるのか…それを知るのはもう少し後の話
ゲヘナは端折りつつも大まかに
外征時のホテル宿泊
→基本は校舎、場所によっては野外キャンプ
ホテルが近くにあるならホテルかなーと勝手な想像
御台場は反ゲヘナ(なお