夕食を終え、後片付けや入浴を終えた者から自由時間になる
明日の作戦に向け準備をする者、折角の合宿なのだから、と雑談を行うもの様々だ
そんな中、海漓は一葉とロッジの外で話をしていた
「で、どう?上手くやれてんの?」
「少しづつ理解してくれてるけど…まだまだ、だね
もっと頑張らないと」
海漓の問に一葉は答える
一葉の目標は簡単に言ってしまえばヘルヴォルの隊長となりエレンスゲのやり方を変える事
ガーデンのやり方を変えるなど生半可な事ではないし無謀な事だ。
海漓も当初は止めていた
そもそも海漓の古巣と一葉の通うエレンスゲはゲヘナへの立ち位置こそ違っているが似たような校風であり、その教育方針を否定できるわけが無い
海漓はそんな校風のガーデンだからこそリリィになる事が出来たし力を付けることが出来たのだ
自身を周りは哀れみの目で見ていたがそんなのは大きなお世話
確かに何度も死にかけたし、名門と比べれば良い環境とは言えないかもしれないがそれでもその分の見返りはあった
背後にゲヘナがいる分エレンスゲの方が危険ではあるし最悪、命を狙われる可能性があることを一葉に当時から告げてきた
それでも一葉の意思は変わらない
ならばやってみろ、と海漓は一葉に伝えていた
詳しくは把握していないがここまで活動していた事を考えるとそれなりにやれてるのであろう
「(成果を出してるならガーデンも強くは言えない、もしくはあえて泳がせている…のどっちかかな)」
だが海漓としてはヘルヴォルの現状に不安を覚える
確かに成果を出しているのは喜ばしい事だがガーデンのやり方を否定するレギオンをエレンスゲ上層部やゲヘナ関係者は放っておくだろうか?
トップレギオンとしての有効性を考慮し、あえて好きにさせている可能性もある
だがそれが今後も続くとも限らない、エレンスゲは年々危険な思想に取り憑かれている…というのは海漓の古巣の間では有名な話になっていたし付き合い方を見直すべきか否かと言う話題も出る程だ
そんなエレンスゲのトップレスであるヘルヴォルがガーデンのやり方を否定しているのだ、近いうちに何らかの形で妨害や干渉が入る事は明白、その時にヘルヴォルはどうなるのか
そして、その時に自分達はどう動くべきなのか、考えておく必要があると海漓思う
「レギオンとして一つの目的の為に行動出来てるなら…良いのかな…多分」
とは言えヘルヴォルの面々は一葉のやり方に共感し、今までついてきている
ヘルヴォルのメンバーの大半は上級生が占めている事を考えると一葉は上手くやれているのだろう
そして、皆が同じ方向を向いているのならば簡単に崩壊はしない筈だ
「多分って…そこは言い切ってほしかったな
海漓こそ、どうなの?トラブル、起してない?」
海漓が言い切らなかったことに若干の不満は残るが、この当たりの考えが合わないのは今日に始まったことではない
だからこそ一葉は海漓を心配する
神庭と彼女の過ごした古巣は校風が真逆のガーデン
性格面では対応出来ても彼女の思考と相容れない部分も多々ある筈だ
そうなった時に海漓はトラブルを起こしていないか、一葉は気になっていた
特に対ヒュージに関して海漓は時折過激思考になる、そうなった時トラブルになるのは目に見えている
「大丈夫だよ、一葉が心配するようなボロを出すほど私は馬鹿じゃない
出しかけた事はあるけど、堪えてる」
「あ、有るんだ…」
「まぁね。」
一葉は頭を抱えたくなるが海漓は堪えたと言うのだから、トラブルには至っていないのだろう
過激思考になった背景も知っているため彼女は海漓にだけは強く言えない
その後は二人で他愛もない雑談を行い、適度な所で話を切り上げロッジの中へと入り、その後就寝するのである
「さて、これで申請は終わりっと、後は…」
ここは鎌倉のとある地域に存在するガーデンの控室
ここで一人の少女はとある書類を用意していた
「私と葵、後は…」
「先輩、どうしたんですか?」
そんな中、入ってきた葵と呼ばれた人物に対し
「葵、この日開けておきなさい
…後は曾根にも開けておけって伝えておいて」
開けておけと指示、そして曾根という人物名
呼び捨てをしているということは葵と呼ばれる人物と同学年なのだろう
「この日って会議の日じゃないですか…私達まで留守にしていいんです?」
「変わってもらったのよ
東京には近いうち行って会わなきゃいけない奴がいるし丁度良かったのよ」
だが指定された日は何か会議があり、自分達まで留守には出来ないのではないか、というがそれも心配はない
本来向かうべき人物と交代してもらったのだ
この当たりは抜け目が無い
万全の策を取る
「会わなきゃいけないって…まさか!?」
そしてそこまでして会いたい人物に心当たりが有るのだろう
「そう、そのまさかよ
あって確かめたい事もあるし…そういう訳だから、準備だけはしておきなさいよ」
会って確かめたい事…というのは分からないが、葵自身その人物には会いたいと思っていたのだ
「(天野海漓さん…どんなリリィなんだろう…楓には私が聞いた事を話したけど)」
彼女はそう思いながら控室を出る
合宿の裏でこのような動きがあった事を知るのはもう少し先の話