Assault Lily〜御使いの妹   作:ラッファ

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第40話

さて、例の特型ヒュージとの交戦とケイブの破壊が終わった後、海漓達は新宿へと向かう

そこで楓達とも合流し、今は今後の話し合いをしている所だ

話を聞くと現在都内各地にケイブが発生しそれに伴いヒュージも出現

自分達は新宿に現れたケイブの破壊とヒュージの討伐が主な任務だという

 

エレンスゲや百合ヶ丘から詳細な情報が送られケイブの位置と付近には特型ヒュージが居ることが告げられる

 

その数は合計3体

一葉はガーデン単位で隊を分け各個撃破する事を提案する

時間もないし全員で順番に回っていっては効率が悪いとの判断だ

 

「(一番マズいのはウチらだな…。高嶺さんの消耗具合。それに加えて多分特型は二人でやるから私達は戦力外。

連携無しで倒しきれるとはとても…逃した個体をどのレギオンでやるのかも分からないし)」

 

海漓からしても一葉の案は最適だと思う…が不安なのは自分達

今までと違い戦力外扱いの自分達を他のレギオンに任せるという事は出来ない

その中で特型を倒すとなると厳しい

高嶺の件や逃した個体の行き先の事もある。

自分達には不安要素がありすぎる

 

叶星や姫歌も賛同するがどうしても海漓はその案に賛同する訳には行かない

とはいえ今の海漓はレギオン内でサブリーダーや司令塔の役割では無い為意見を言った所で話は通らないだろう

 

「(更に不味いのが定盛ちゃん達はこういう場面の経験が無い事。

一柳隊は生え抜き組を筆頭に万が一の時のブレーキ役はいそうだし、ヘルヴォルだって良識派と言いつつもエレンスゲのリリィ。

対処法は学んでるし連携も問題無い…危ないのは私達)」

 

そして最大の不安要素はこういう大事に対処したことが無いリリィがグランエプレには多い事

神庭だって学んでいるがそれを発揮する機会もないし発揮しようにも基本的に叶星と高嶺で全てやってしまうから経験値がほとんど入って来ない

そんな中での今回の事件

はっきり言ってこの先不安しかない

 

 

 

そんな事を感じつつグランエプレも移動し当初の目的地へと到着する

 

「うっわ、すごい数」

 

付近には大量にヒュージが出現し奥には無数のケイブ

先の話が本当なら奥には特型もいるはずだ

 

「(ヒュージの配置が妙だな…

これだけの数がいるなら私達がここにつくまでに何体かは遭遇してるはず)」

 

気になる事もある

ヒュージが出現しているが、こちらに攻めてくる事も無く、その場で待機しているだけ

今までも似たような事が無かった訳ではないが、ここまで統率された動きはしてこなかったはず

この場に出現しているのはいつも見かける個体な為、特型ではない

まるでリリィを待っていたかのような配置

似たような光景を知っている海漓は不安しかない

 

「(まさか、リリィを誘い込んでる…?)」

 

2年前とは場所と状況が違っているがリリィを誘い込んでいるようにも見える

さて、叶星はどう動くのか

 

「この初戦は貴方達一年生に任せるわ

合宿で得た物を私達に見せて欲しいの」

 

「(叶星さん、正気ですか!?)」

 

本来ならば警戒しなければ行けない状況で経験が足りない姫歌に場を任せる采配

確かに高嶺の事を考えると一度休ませる必要はあるが、それをここでやるなど正気の沙汰ではない

先の戦闘の影響をもろに受けた形だ

 

「わ、分かりました

行くわよ皆、叶星様達に私達が成長した所を見せるわよ!!」

 

そんな事に気づかず姫歌達は戦闘を開始する

こればかりは姫歌を責める事は出来ない

実力以前に海漓と姫歌達では乗り越えてきた戦場の数が違うし戦場での知識にも差がある

そう、姫歌達は責められない

問題は叶星達だ

この状況を軽く見ていることに違和感しかない

 

しかし、今は姫歌の指示を聞くのが先

 

「距離を取りつつ迎撃するわ

海漓も今回は前に出るの抑えて!」

 

「了解ー」

 

どうやらヒュージを誘き出しながら戦う方針らしい

ヒュージを近づけさせないようにして戦う

力を温存しつつも数を減らす事を要求される

 

「まぁ突撃しなくても倒せるけどね、私」

 

そう言いながら彼女は自慢の早撃ちでヒュージを素早く撃ち抜く。

2丁拳銃型である事もあり、同じ射撃の灯莉が3体倒す間に海漓は10体撃ち抜いている。

 

「改めて見るとやっぱり同じ射撃でも灯莉と海漓ってスタイルが全然違うわよね

狙い撃つ灯莉と早撃ちを活かした乱れ撃ちする海漓っていうか」

 

「基本的に中、遠距離の灯莉ちゃんと中近距離の海漓ちゃんの違いもありますからね

ポジションも真逆ですし」

 

「戦闘スタイルだけなら住み分けが出来てるから指示は出しやすいわよ

まぁ、灯莉がもう少し大人しくしてくれるといいんだけれど」

 

戦闘しながら二人の差を改めて思う

同じ射撃でもここまで違うのかと

二人にとって射撃型のリリィといえば灯莉や一柳隊の雨嘉ようなイメージ

射撃型でありながら基本的に敵陣に飛び込み、近距離でもお構い無しの射撃をする海漓は変則タイプとも言える

 

そして灯莉と海漓が共に射撃を行うとこんな事も起きる

 

「あ、弱ったヒュージもーらい☆

逃げたヒュージももらうねー♪」

 

「ご自由に!!」

 

海漓は乱れ撃ちをするが時折仕留めそこねたり回避したヒュージというのも勿論出てくる

それを灯莉は容赦なく仕留めていく

 

そして

 

「ッ…近付かれすぎ!!」

 

「おおっ、ありがとー」

 

灯莉が狙いをつけるのに夢中になりヒュージに接近を許せば今度は海漓が素早く撃ち抜き灯莉に狙いをつけさせる時間を稼ぐ

 

弾を補給する時もタイミングをずらしながら互いに援護し合う

姫歌の指示を受け、この攻撃を行う際お互い事前に言葉を交わさずに灯莉は独自の感性、海漓は自身の経験と技術でこれを行っているのだから大したものである

同じクラスで過ごしているというのもあるだろう

 

「あの二人は大丈夫そうね

でも、のんびりしてたらあの二人に軒並み倒される

…いくわよ紅巴!!」

 

「は、はい!!」

 

姫歌と紅巴も負けてられないとヒュージを討伐する

しかし数は一向に減らないしむしろ増えてきている

 

すると灯莉が

 

「なんかヒュージ変じゃない?

僕達にやられに向かってきてるよー?

しかもどんどん増えてるし」

 

「(この動き、やっぱりそうだよな…)」

 

そんな事を口にする

彼女はお気楽な所があるが感覚がするどいのか違和感や異変には気づくタイプ

そして海漓も戦闘を行っている内に自身の違和感を確信に近づける決定打にもなる

マギを温存したことが生きている

 

ヒュージは変わらずこちらに向かって来るが、中には自分からやられに来るヒュージも現れている

勿論海漓のレアスキルならばそのような事も可能だが海漓はレアスキルやサブスキルは使っていない

まるでこちらを消耗させようとしているかのような動きだ

 

「変…ですか?特に気にはなりませんが…」

 

「ひめかもおかしいとは思わないわ

まぁ、ヒュージが増えて来てるのは同意するけど」

 

灯莉のような独特な感性も海漓のような経験も無い二人にはヒュージが増えているという事以外には気がつかない。

 

さて、どうしたものかと考えていると姫歌と叶星が話し合っている

すると姫歌がうなずく

 

「私達はフォーメーションを維持

風穴を開けて叶星様と高嶺様が前に出るための道を作るわ!!」

 

「(そう来るかぁ)」

 

「ん、んー??」

 

今の状況からするに叶星は姫歌に自分達も戦力として動かしてくれとでも頼んだのだろう

異変を察知したならば、危ないから司令塔を変わってと言うが、姫歌の指揮下に入るという事は叶星と高嶺すらこの状況を普通だと判断した事になる

しかし灯莉は何かを感じ取ったのか攻撃の手を少しだけ緩め付近を観察する

 

「奥に何かいる?付近のヒュージが邪魔でよく見えない…」

 

「奥?ケイブの?」

 

「うん。ずーっと奥

一際強そうなマギが奥に一つ、ヒュージのマギで隠れちゃってるけど…僕達を見てる??」

 

「…(やっぱり誘ってる!!奥に特型がいるのか…それでこの指示は…絶対に不味い)」

 

 

罠と分かっててあえて引っかかりに行く…という事も出来なくは無いし、時と場合によってはそう動く必要も有るがそれを行うならば叶星が指揮を取りグランエプレを適切に配置し動かす必要がある

罠と思われる状況にあえて引っ掛かりに行くというのはその位危険な事なのだから

 

適切な配置もせず経験の浅い姫歌に指示を任せその通りに動くなど海漓からしたらあり得ない行為

更に言うなら二人を突撃させるというが突撃させ、その後どのように立ち回ってほしいのか、自分達はどうするのかという指示が無い

これは姫歌のミス

 

「灯莉ちゃん、マギは大丈夫?」

 

「うん。ピンピンしてる」

 

「無駄遣いしたら駄目だよ。ここからが本番」

 

「んー?分かった☆」

 

近くにいる灯莉に少しだけ警告

姫歌にも話してしまっても良いかもしれないが彼女は司令塔

ここから作戦の変更となると流石に混乱する

ならば身近にいる味方に警戒させた方が万が一時に対応が可能であるため、良い。

不足の事態に備えさせる

 

上級生二人の投入と一年生の勢いもありヒュージとケイブを効率よく破壊していく

あまりにも上手く行き過ぎている状況

不安しかない

こう言う時は必ず何か起こる

 

すると突然

 

「高嶺ちゃん!!」

 

叶星の声が聞こえる

自分達も叶星の方に向かう

 

すると高嶺と対峙するような形で一体のヒュージが存在している

 

「ようやく姿を表したわね」

 

「高嶺ちゃん、大丈夫?」

 

叶星はすぐに彼女の心配をする

 

「私は大丈夫よ、それよりもあの特型ヒュージ…」

 

「さっき遭遇したのとは違う個体ね

体に傷が全くないわ」

 

彼女の言うとおり目の前の特型ヒュージには傷が一切ない

新しく現れた個体…と言う事になる

 

「無傷の相手と戦うということになるのね

こっちは連戦続きなのに」

 

「それが作戦だと思うよ

僕達がクタクタになるのを待ってたんだと思う」

 

高嶺は冷静に総つぶやき

灯莉は感じた事をそのまま言う

 

「ちょ、ちょっと待って下さい!

ヒュージにそんな知能があるなんて話…」

 

「…灯莉、あんたヒュージの事になると頭冴えるわね」

 

「ヒュージの事、よく観察してるからね♪」

 

ヒュージにそのような知能がある事に紅巴は驚き姫歌は灯莉に感心する

 

が、海漓だけは違った

 

「(叶星さんの引っかかり方といい高嶺さんのあの反応といい

まさか、御台場では知能のあるヒュージの存在を知らされていない?)」

 

叶星もヒュージが陽動を仕掛けてきた事に驚き違和感を感じた灯莉を褒める

態度を見るからに嘘偽りの無い言葉であろう

しかし、それもおかしな話

高等部からリリィになった姫歌達はともかく叶星と高嶺は御台場のエリート。

ならば普通の生徒よりも高い教育は受けているはずだし、より多くの情報も得ているはず

知能のあるヒュージの事など知っていなければならないのだ

 

ちなみに、紅巴も御台場出身だか中等部時代はリリィでは無かったと言っていた

ならばカリキュラムはリリィとは違うため紅巴に関しては仕方がない

 

そんな考えを他所に叶星は作戦を指示

いつものように上級生は接近、一年生は射撃で攻撃すると言う指揮になる

 

「(上手く行くかなぁ…)」

 

不安しかないが戦闘を行う

そして、その不安が最悪な形で的中してしまう事をこの時は気づかなかったのである

 

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