Assault Lily〜御使いの妹   作:ラッファ

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第44話

再び拠点に戻って来た海漓達

そこで防衛軍の隊員から現状が知らされる

一柳隊の敗北と同時にヒュージの攻撃が激化しているという事と都庁に大量のケイブが出現、今は真夜中であるが、これの対処を夜通で行わなければならないという

そして、この時に初めてイルマだけでなく御台場のトップレギオンも外征で不在という事も告げられる

 

「(会議と外征が被るのはまぁ、有り得なくは無いけど…何でこのタイミング?)」

 

そう、実は今回のようなケースは初めてではない

御台場もイルマも強豪ガーデン

東京だけでなく激戦区の地域に外征する事もよくある

会議と被ってしまえば代理を立ててそつなくこなせるような体制も整備されている

が、気になるのは何故このタイミングなのかということ

御台場とイルマが不在の時など今回に限った事ではない

にも、関わらず何故このタイミングで起きたかと言う事

 

「("誰がやったか"なんて正直どうでもいい…肝心なのは"どうしてやったか"だったっけ)」

 

古巣時代にこんな事を言っていた人物がいた

所詮自分達など下のガーデン、確信の情報などまともに与えられるわけがない

ならば自分達で推理する必要がある

その時に大事な事として言っていた言葉だ

ミステリー小説などでよく用いられる手法だと言っていた

 

「(東京を叩き潰すだけなら今日である必要は無い

何故、今日発生させる必要があったのか…か)」

 

こんな事をする犯人など分かりきっているが、理由が分からない

東京の壊滅を目的とするなら今日である必要がない

それこそ会議が無く、戦力が手薄な日に起こせばそれで終わりだ。

今日、起こした。その理由が分からない

そして海漓にはそれを知るすべもない

ならばこれは一度忘れるのが最適だろう

 

今大事なのはこの状況を乗り切る事

その為にも戦えるリリィが必要なのだが…

 

「たった5人…」

 

「少ないッスね」

 

そう海漓や舞弓、葵を含めて5人

これが現在の戦力である

負傷して戦えない者、惨状を見て心が折れた者、やる気はあるが、夜戦に慣れておらず到底戦場に立たせるわけには行かない者

そうなった結果、この後戦えるのは5名のみ。

つまり新しい戦力はたった2名だけという事

御三家以外のガーデンのレギオンは5人編成だろと言われるかもしれないが、普段から訓練を積み重ねてきた5人と即席の5人では訳が違う

 

 

それでも戦うしか無いのも事実

ヒュージの討伐と臨時のエリアディフェンスの設置。そして、この後来るであろう他校からの増援や3レギオンが戦線に戻って来るまでの間、時間稼ぎをしなければならない

 

「一ついいか?」

 

どうしたものかと考えていると一人のリリィが海漓に疑問をぶつける

 

「その、君は随分と相模女子のリリィと友好的に話しているが…相模は神庭とも提携しているのか?

相模の提携先は確か…エレンスゲだろう?」

 

舞弓や葵の制服を知っているのだろう

だからこその疑問だ

彼女達の通う相模女子高等学館は校風が似ているという理由だけで一葉達の所属するエレンスゲ女学園と提携を結んでいる

が、神庭とは結んでいるという話は無い

にも関わらずなぜ親しげな仲で会話しているのか気になったのだろう

校風やリリィの性格を考えても共通する所など無いはず…なのだが

 

「あ、私相模の中等部卒です

神庭には今年から

そこの曾根さんとは中等部時代のルームメイトです」

 

海漓は何事もなく告げる

そう、相模女子は彼女の古巣なのである

だからこそ舞弓や遊糸と気軽に話せるのだ

特に舞弓とはルームメイト

苦楽をともにしてきた悪友である

遊糸はある日しょーもない理由で知り合い、その後に実力を見込まれ特戦の予備メンバーとして活動していた

 

「何と!…あぁ、済まない

変な意味ではないのだ、その、随分と良識的だから、な

その、かなり荒くれていると評判だろう?」

 

「あー、いや、確かに荒れてるのいますけど本当にそういう意味で不味いリリィは転校させたり外征させません。

外征したり転校してくるリリィは比較的まともですよ、素行は、ですけど」

 

それに驚く

そう、相模女子、鎌倉どころか全国的に見ても素行的な意味で荒れているとして有名なガーデン

そんなリリィが目の前にいるが比較的にまともそうで驚いたのだろう

 

だが、そんなに不思議な事だろうか?

いくら荒れているとはいえ転校や外征でガーデンの外に問題児を出せばガーデンの名前に傷が付き次年度以降の入学者に直結する

だから転校や外征の際には外にだしても問題ないのか、と言う事も判断される。

海漓もその一人、今神庭に所属できているのも様々な理由があるにせよ、一番は他所に出しても問題なく対応出来ると判断されたからだ

 

ちなみに海漓は知る由もないが、彼女の出身が相模だと言う事はこの後知らぬ間に3レギオン全員に共有される

 

さて、そんな話はどうでも良く、今はヒュージの対処である

 

「私達はともかく貴方はCHARMどうするの?

また非常用を使うつもり?」

 

そう、海漓の一番の不安な点は実力ではなくCHARM、

代わりの機体が無く、非常用のCHARMを確保し使うしかないのだ

先程までは上手く行ったが今回もうまく行くとは限らない

 

すると舞弓が

 

「あー、それなら心配要らないッス

この後の補給で何とかなるんで」

 

「補給?確かに補給部隊が来るらしいけど…」

 

「まぁ見てのお楽しみッス」

 

そんなやり取りを行っていると防衛軍の隊員から補給物資の到着が告げられる

そして、この場は一度解散

補給終了後に再度集まりそこから作戦開始となる

 

そして三人は歩きながら話す

 

「とりあえず今知りたいのは何で一柳隊が無警戒でノインヴェルト撃ったって事ッス

 

一柳梨璃が味方の警告を無視して指示を出すド無能なのかグランエプレが報告すっ飛ばしたのかの二択しかないッスよ」

 

「でもあの時、高嶺様と叶星様が夢結様と話してたし報告してるんじゃ…

一年生だって会話はしてたよ」

 

話題はやはり先程の戦闘での敗因

海漓がCHARMを全損させながらもフィニッシュショットを何とか叩き込んだ光景を見ておきながら、次発までの時間内に止めを刺すこともせず、その後、平然とノインヴェルト戦術を使い敗北したという事実が引っかかる

こんなの無茶した海漓が馬鹿なだけではないか

 

「んー、ねぇ、叶星さんと高嶺さんどうだった?落ち着いてた?」

 

「え?まぁ落ち着いてた…とは思うよ

私もファンタズムを使って支援してたし

まぁ叶星様が落ち着きがないな…とは思ったかな

心ここにあらずっていうか、ずっと高嶺様の事をチラチラ見てた

高嶺様は高嶺様で随分と慌ててるし

余にも酷いから聞こうとしたタイミングで一柳隊とヘルヴォル、増援のリリィが来たから聞きそびれちゃって」

 

海漓は冷静にそう尋ねると葵は当時を思い出し、伝える

なるほど、状況は理解できた

戦闘を行うにつれ慌てる高嶺と落ち着きのない叶星、もう答えが出る

ある意味想定していたがそれを相変わらずやると言う、もう救いようのない結果だ

 

 

「(クッソ、完璧にやらかしてんじゃねーか)あー…うん。

叶星様、100%報告忘れてるし高嶺様も自分の事で精一杯

一年生?マギリフレクターなんて忘れてるでしょ」

 

理由は直ぐに思いつく

マギリフレクターを完全に伝え忘れた

それしかないのである

 

「いやいや、

まぁ一年生の子達はちょっと…いや、かなり怪しいけど叶星様と高嶺様はあの船田予備隊出身だよ?

そんなイージーミスをやるなんて事は」

 

「流石にそれは有り得ないッスよ

素人じゃなくてエリートッスからね?

それに海ちゃん以外素人だとしてもヒュージの特性の報告を忘れるってそれ一番ダメなやつッス」

 

だがそれを二人は否定する

考えてほしい、御台場のトップレギオンの前身ともなる予備隊に所属し活躍していたリリィが、駆けつけた味方にヒュージの特性の報告を忘れる…などありえなさすぎるのだ

仮に叶星や高嶺を貶めるにしてももう少しまともな嘘をつけ、と笑われるレベルの事である

 

「高嶺さんや皆の消耗が心配でマギリフレクターの報告とかそれ所じゃなかったんでしょ

多分早く終わらせてガーデンに帰りたいって事で一杯だったんじゃない?

叶星さん、優しいからさ

(嘘は言ってない。嘘は

多分高嶺さんの事でもう気が気じゃなかったのは事実だろうし。なら引けって思うけど…)」

 

「隊員が言うって事はそう言う事…ッスか?…いや、でも船田予備隊って相当なエリート予備隊で、そのメンバーが報告漏れ…いやいや…そんなアホな」

 

「確かに優しい人って言う印象はあるけど…そんな事…ある?

いや、うーん…」

 

確かに庇いきれないとはいえ所属するレギオンの先輩だ

友人とはいえ他校のリリィにこちらの真実を話す理由も無い

まぁ葵は感づくか楓に教えられるかの可能性はあるが、こちらから話す理由は無いだろう

 

それらしい理由を話す

叶星は心配性だと言う印象は持たれるかもしれないが、彼女の実績を考えれば曖昧な扱いになるだろう

まさに貯金である

 

そもそもこれの原因が叶星と高嶺のエゴにより引き起こされた最悪の事態だ

嘘に嘘を重ねた事で起きた失態

海漓は合宿前の面談で警告はしている

 

 

「マギリフレクターを見ても続行した判断は知らん

大方梨璃さんが続行するって言ったんでしょ

あの場で一番偉いのは百合ヶ丘の梨璃さんな訳だし

司令塔よりも隊長、副隊長の方が偉いからね…まぁ、典型的な百合ヶ丘のリリィでしょ。リリィなら何でもかんでも出来るって思い上がってさ

全能の神にでもなったつもりなんじゃねーの、馬鹿クセェ」

 

「楓・J・ヌーベルは一柳隊だとただの司令塔止まり

せめて副隊長だったら止めてたかもしれないッスね

グランエプレやヘルヴォルは口なんて出せるわけもない」

 

海漓と舞弓がそう話す

きっかけはグランエプレ

だが最後の止めとなったのは結局梨璃の判断だ

経験の浅さや今まで無理をしても他の隊員の実力で成功してきたのだから今回も上手く行くと思ったのだろう

姉となる夢結など論外

典型的な百合ヶ丘のリリィ、諦める、撤退するなど頭の中に無いだろう

 

「楓、自分の役割とか立ち位置に忠実で協調性もあるから…うん。多分梨璃さんの意思を尊重したんだと思う

ただ、レギオン全員の生還も頭に入れてたはずだし表情や態度には出さなくても止めるべきか続けるべきかずっと悩んでたと思う。

仮に撤退だったとしても成功する為の策は練ってたはずだよ」

 

 

葵は一柳隊で司令塔を務める楓をフォロー

確かにレギオンにおいては司令塔の役割が非常に大きい、要とも言える

たが彼女の性格を考えればレギオンの和を乱したりすることは無く、他人を思いやる事の出来る人格者

最後の最後まで梨璃の判断を尊重しその為の最善を尽くそうとしたと予想している

仮に梨璃が諦め、撤退を決めたならば速やかに撤退できる案も練っていたと言う

 

そうこうしているうちに自分達も補給を受ける番

予備の弾薬や夜戦用のバトルクロスなどが渡される

出所は恐らくヒヒイロカネ

詳しい場所は定かではないが東京にもCHARMや弾薬の保管庫があると聞いたことがある

この時間に来るという事は恐らく進路の確保が一先ず完了したと考えていいのかもしれない

勿論片道切符の可能性もあるが、とにかくこの戦場の中無事に届けてくれた運転手には感謝しかない

 

「これが私の分…えっ、これって…」

 

そう言い海漓は自身の機体を確認する

普通に考えてアステリオン、トリグラフは後日と考えていたのだが、それは裏切られる

 

「クルッジ!?」

 

そう、そこにあったのは最新式CHARMのクルッジ

アステリオンでも無ければトリグラフでもない

破格の性能を持っている機体をこのタイミングで渡してきたことに驚いたのだ。

中等部時代に試しに使ってみた事はあるからこの機体の凄さは分かっている

だが、この機体はトリグラフと違いまだ試験段階だったはず

 

すると隊員が

 

「その…量産型の機体は全て出払ってしまってまして…唯一残っていたのがクルッジだけとお聞きしました」

 

それを聞き納得

ヒヒイロカネ製のCHARMは様々なリリィが扱う

そして、この事態だ

量産型のCHARMの大半が様々なリリィに手渡され、残ったのが試験機だったというだけ

試験機を渡しても問題ないリリィという判断の為、海漓にクルッジを渡したのだろう

 

マギクリスタルコアをクルッジに装着

起動させる

実はマギクリスタルコアは破損したとばかり思っていたのだがどういう訳かポケットに入っていたのである

考えられるとすればフィニッシュショットを叩き込み遊糸に回収された時に彼女がコアを回収しその後に海漓を救助したという事になる

 

 

 

弾薬の補給を済ませた葵は海漓を見ながら

 

「マギクリスタルコアの装着と初期設定、自分で出来るんだ

…もしかして整備も出来たりする?」

 

「ヒヒイロカネ製なら。

自分の使う武器ぐらい最低限の事は自分でやれって言われてきたからさ」

 

その手際の良さに感心する

こう言うのはアーセナルの仕事なのだが海漓達…相模の中等部経験者は簡単な整備やコアの換装などは自分でやるように教えられてきたのだ

 

そうこうしているうちに準備完了

全員補給と整備を終わらせ集合する

 

この後に待っているのは地獄とも言える連戦

暫く補給も受けられないだろう

 

急造レギオンとなる5名は最後の確認を行う

隊長や司令塔、基本的なフォーメーションを決める余裕はない

敵を倒す、その目的の為に各々が最大限の力を発揮するだけ

リリィではなく防衛軍の合図で作戦開始だ

こことは別の場所で遊糸も攻撃開始の合図を待っているだろう

 

「君たちにはこの後ヒュージを討伐してもらう訳だが数が数だ

最悪通して構わん。スモール、ミドルまでは我々が何とかしよう…だが」

 

「ラージは無理だからもしもラージが出たらそいつらを集中的にぶっ潰せって事ですよね?

分かってます」

 

そう、実はヒュージはリリィでなくても戦える…が、出来る事が限られすぎている

軍の使うような兵器で倒せるのはスモール級、頑張ってもミドルまでが背一杯

ラージから上は不可能

更にマギも使えないため一撃受ければ致命傷になる

それでも最悪通していいと言ってくれる軍の隊員には感謝しかない

まぁ、海漓だけでなく全員それはわかっているし、いざとなればスモールやミドルは通すだろう

 

「攻撃作戦は各所に通達

増援が到着次第随時向かわせる

だが補給同様どの位の時間がかかるかわからないのも事実、それまでは…頼む」

 

「増援…私立ルドビコ女学院に要請は出していますか?」

 

「勿論だ。だが…どのぐらいで到着するのかは…」

 

葵の疑問に隊員は答える

今は真夜中で寝ている…と言うよりも今後の対策と人員の配置等々の打ち合わせがあるのだろう

本格的な増援は明け方から順次到着することを想定していいかもしれないが、ルドビコは来てくれれば御の字程度の認識だろう

その後もいくつか確認を行い自分達も配置につくために移動

 

海漓はクルッジを高出力砲モードへと変形させる

勿論ユーバーザインを発動し、姿を完璧に消した状態で、だ。

 

その後、防衛軍から攻撃開始の合図が行われる

 

それと同時に海漓は高出力砲でスモール級の群れに砲撃を御見舞する

 

不意をつかれた攻撃にヒュージが混乱

そこをリリィが突いていく形だ

 

 

 

深夜の戦いが幕を開けたのである

 

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