時間稼ぎの為に行う深夜の戦い
即席レギオンの5名はヒュージを撃破していく…のだが
「分かってはいたけど凄い数だなこれ…
」
「都庁のケイブを潰さないと厳しいッスかね?」
海漓、舞弓の二名はヒュージを倒しながらそう話す
全員戦えるという事や相手がスモール級主体と言う事もあり今の所はこちらが有利…なのだが何分数が多い
リリィが一度撤退し、体制を整えている間にも都庁ではケイブから大量にヒュージが出現し今もなお続いているのだから無理はない
ちなみに陣形としては海漓、舞弓、葵の三名は前衛を努めとにかく削る
後衛の二名は打ち漏らしたヒュージの処理と万が一に備え退路の確保を努めている
敵陣に突撃し被弾に気をつけ、一体、一体、確実に倒す
トリグラフでは無い為いつもの早撃ちとは行かないがその分高速移動で素早く懐に踏み込み斬り伏せる、倒したらすぐに離れ次のターゲットを仕留める
これの繰り返し…なのだが
海漓は少し違っていた
「(初めて使うのに手に馴染むし、いつもより集中出来てる…深夜テンションってやつか?)」
普段と違うCHARMを使って夜戦を行っているのだ
昼間からの戦闘による体力の消耗を考えればスモール相手とはいえかなり苦戦すると海漓は考えていた
が、今は違う
スモールとはいえヒュージを決して侮っていない
敵の数と自身のマギ、体力を考えれば数秒の判断の遅れが死につながる。
そんな中で現在の海漓は恐ろしい程に冴えていた
サブスキルによる簡易的な未来予知と高速移動
レアスキルでの撹乱、それらが全て噛み合っているのだ
攻撃のタイミング、相手の攻撃に対する反応、全てが上手くハマっている
戦闘とは関係ないが夜遅くに活動する時は変なテンションになる…というのはよく言われているが、その類なのだろうか
決して危ない薬に手を出しているとかそういう事は無い
「(油断せず確実に潰していくか…)」
海漓は油断だけはしないように、と心に誓い戦闘を行う
そうしていると、今度は上空に飛行型のヒュージが現れる
地上との連携攻撃…かに思えたのだが
「私達を素通り…?」
そう飛行型は海漓達に目もくれずひたすら前へ
「あれは私達が!!」
後衛の二名がそう告げる
確かにこの状況で飛行型を同時に相手にするのは少しばかり厳しい
すると飛行型のヒュージは後衛のリリィに攻撃されているにも関わらず反撃を行わない
無理矢理にでも先に進んでいこうとする
中には攻撃を掻い潜るヒュージも出る始末
そして、その直後だった
「…この声…例の特型の?…まさか!?」
都庁の方向から聞こえる咆哮
例の特型ヒュージだろうか
ならばこの後には来るのは砲撃
「同じ手はくらわねーよ!!」
海漓すぐに付近のスモール級を斬り伏せ回避の姿勢をとる…が一向に攻撃が来ない
それもそのはず、今度はマギスフィアのような球体が数発放たれる…が
それは自分達の頭上を通過し先程通り過ぎた飛行型のヒュージに向かって飛んでいく
「いや、おかしいっすよ。なんでマギスフィアが飛行型の通った軌道通りに動いて行くッスか!?」
舞弓はそう叫ぶ
そう、放たれたマギスフィアはリリィではなくヒュージを追尾している
その直後、ヒュージの降下と共にマギスフィアが急激に落下、爆発音が響く
同じ光景が数箇所で発生
舞弓の言葉が本当ならば先のマギスフィアは飛行型を完璧に追尾したと言う事になる
そして、気になるのは爆発地点に何があったか…だ
防衛軍の拠点は爆発した近辺にはなかった
もう少し離れた所に存在する。
「(私達が通ってきた道を…道…まさか!?)」
そして、暫くした後、防衛軍より先の攻撃で人的な被害はなかったものの道路が破壊され増援や補給が不可能になってしまったと告げられる
勿論、生き残っている道を探すことも継げられた上で、だ。
当たり前の事だが海漓…いやリリィは空を飛んで移動は出来ない
高く跳ぶ事は出来てもテレビに出てくる魔法少女のように空を自由に飛んで移動することは不可能
移動は徒歩や車両、もしくは航空機からの降下だ
道が無くなれば海漓達は移動する事が出来ないし増援との合流も厳しくなる
「今の攻撃は…私達をここに留めておく事と補給、増援の妨害か?」
実際に攻撃箇所を見てはいないがヒュージからの攻撃だ。
無傷とはいかないだろう
多少なら問題ないがそれこそ、車両の通行や徒歩で移動する事が出来ないほど破壊されてしまえば今後の作戦に支障がでる。
それこそ、リリィならば穴など簡単に飛び越えられるので問題は無い…が、ヒュージだってその隙を逃す筈がない
飛び越えてる途中に狙い撃たれるのが見えている
「皆、一度下がろう
状況を整理しようか!!」
葵の声を受け海漓達は一度戦線から離脱
可能な所まで退却する事を決める
ヒュージからの追撃があると思ったが不自然な程にない
道を潰したのだから逃げたとしても範囲は限られる、焦る必要がないとでも思ったのだろう
そのおかげで自分たちは後退出来たのだから文句は無いが
付近にヒュージがいない事を確認したうえで、一度作戦会議を開くことにする
ちなみに遊糸も一度後退すると通信が入った
「まさか道をぶっ壊して孤立させてくるとは…やられたッスね」
舞弓は呆れながらそう呟く
知能のあるヒュージの中でも今回のは特別だ
常識外の行動やこちらの嫌がる事を的確に行ってくる
妨害や攻撃ではなく補給手段を的確に潰すヒュージなど今回が初めてだ
「それにしても頭良過ぎだ…いくら知能があるとはいえ、こっちがやられたら嫌がる事を確実にやってきやがる
ヒュージを的にしての砲撃と追尾するマギスフィア…固定砲台って考えたら厄介だぞ」
「追尾…か」
「どうかしましたか?」
「あぁ、いや、私の家族に通常兵器の知識が豊富な者がいてな
戦闘機のミサイルが敵を追尾する方法などを話していたんだ…
視覚に応じて使い分けるとかなんとか…なんだったかな…間違ってるかもしれん。生憎と話半分にしか聞いていなかったからな」
「視覚に応じて…」
後衛を努めたリリィの言葉に皆が考える
軍隊の兵器の知識は乏しくこの場で答えられる者はいないが、視覚に応じて使い分けると言う単語を考察
状況に応じて使い分けると言う事だろう
そして先程と今回のはそれの実験と言う事になる
「つまり都庁のケイブから発生してるヒュージは地上と空中で別々の能力…というか的としての役割が備えられてる
追尾の必要が無い範囲なら地上型、追尾して確実にダメージを与えたいなら空中型目掛けて放てばいいって事になるね…ヒュージの攻撃を通常兵器と同じ能力って仮定した上での話…だけど」
葵はそのように話を纏める
だが、これも仮定の話、今後の戦闘で新たな発見があるかもしれないがそうなった時はまた対処すればいい
後手に回ってしまっているが自分達に特型を討てという命令が来ない以上、向こうから仕掛けてくる以外に知る方法が無いのだ
そもそも自分達の目的は時間稼ぎ
その過程で得た情報は全て3レギオンにもたらされ、万全な状態で倒しに来るだろう
その為にこの戦闘もどこかでデータを取っているだろう
そう、時間稼ぎなど建前
本音は3レギオンに勝たせる為、特型のデータ取りを目的とした偵察部隊
この場にいるリリィも、防衛軍も、その為の人員だ
下手をすれば今新宿にいるリリィ全員がその為の人員の可能性もある
「(まぁ私達にしてみたらいつもの事なんだけど…)」
別におかしな事ではない
力のあるガーデンと無いガーデン
どちらのリリィの生存を第一に考えるかと問われたら前者を選ぶのは当たり前の事
死にたく無いならヒュージを倒し生き残ればいい
今までだってそうだった。
神庭に来てからはそういう事がたまたま無かっただけ。
「(こういうの自殺覚悟とか言うけど違うんだよな…誰かがやらなきゃ行けない事をただやるだけ。)」
上層部だって何も嫌がらせやリリィ憎しでこういう事をやらせてる訳ではない…と信じたい
敵の手の内が分からないまま戦いに行くなど愚者のやる事
初見ならばともかく、姿を表し幸運にもその場に留まっている以上、能力を探る必要がある
敵が多いならばこれ以上の被害を出さない為に数だって削らなくてはいけない
遠くから機器で状況の観測はできるが奥の手を使わせる為にはやはり攻撃を仕掛けるのが一番だ。
誰かがやらなくてはわからない事
だから海漓は参加した。
それだけである
やってられないなら自分もグランエプレの一員なのだから理由をつけて離脱すればいいだけ
それをしないのは単にこれが自分の仕事だと思っているから
それに
「(流石に特型とはいえはあれはアルトラ未満。
データさえわかれば余裕で勝てる…いや、勝てなきゃおかしい
私が抜けても19人、しかも全員が強力なレアスキル持ちだし
ぶっちゃけ要らないよね、私。)」
都庁の個体が強力な特型ではあるが、最も強力な個体と言われるアルトラ級ではない
特型とはいえあれはラージもしくはギガント級だ。
マギリフレクター搭載を考慮しても3レギオン合わせ、海漓を除いても後19人
全員が強力なレアスキルを保有し、使うかどうかは向こうの判断だが、この後自分達が集めたデータも渡される
実力者だって揃っているし、回復する時間も作戦を建てる時間も与えられるのだ。
とにかく、それだけの事をやるのだ。ヒュージを甘く見る以前に、勝て無ければおかしい
海漓一人抜けても痛くも痒くもない同盟レギオンと一人でも多くの人員が必要なこの役割
どちらを優先させるか、など聞くまでもない
自分達は特型のデータ集めと復帰するまでの時間稼ぎ
同盟レギオンは特型の撃破
与えられた仕事がちがうだけだ。
現状の纏めと簡単な休憩が終わり戦闘再開
応急的ではあるがマギも回復できた
体もまだ動く、ならば戦える
「さて、第二ラウンドと行くかぁ!!」
そう言い海漓達は再び戦場へと向かうのであった。