その後も激戦となる
現れたヒュージをひたすらに倒し続ける
ヒュージの勢いは全く衰えない
相手がスモール、途中からはミドル級がメインな為無駄な被弾とマギの無駄遣いさえ避ければなんて言う事はない
とはいえ時間の経過と共にマギではなく体力面の不安は出てくる
鍛えているとはいえ不眠不休で戦うのは少しばかり厳しい
増援が来る気配もない
「御三家どころか都内のリリィはまだ来ないのかよぉ!!」
海漓は怒りながらもヒュージを切り伏せる
確かに戦っているのは自分達だけではない
都内各地にもケイブやヒュージが出現している可能性は十分にあるし、そちらへの対処だってしなければいけない事も分かっている
それでも遅すぎるのだ
都内のガーデンというのは御三家や神庭、エレンスゲだけでない
ガーデンの数だけで言うなら鎌倉よりも多い
どこの地区からも増援が来ないというのは流石におかしな話
対処に追われているのか、そもそも夜戦が出来ないから増援がむりなのか、弱すぎて増援に送れる程の力のあるリリィがいないのか
どちらにせよ最悪だ
勿論、すぐに増援が来るとは思っていなかったが、ここまで来ないのは想定外
もしかしなくても後衛を努めてくれている二名は東京ではレアケースなのではないかと思うぐらいだ
「でも撃破数稼げるからいいじゃないッスかー」
「いや、それはそうなんだけどさ…」
舞弓もモンドラゴンを起用に扱いながらそんな事を告げ、海漓は反論
リリィのヒュージの撃破数はマギクリスタルコアを通じ記録されており、撃破数や様々な情報をを基にリリィとしての評価をされる
ヒュージを多く倒すから偉い…という訳ではないが0よりはマシ
そもそも、この非常時にヒュージの撃破数が限りなく低いと
『貴方達はこの非常時に外征先の新宿でヒュージと戦わずに何してたの?』
とやんわりと教導官や生徒会長の秋日に尋ねられかねない
神庭はエレンスゲや古巣の相模のような環境ではない…が、何もしなくてもいいという事ではない
よく神庭は校風が緩い等と言われるが校風や規則を考えれば何重にもオブラートに包みガーデン側から出撃を強制しないが、言ってる事はエレンスゲや相模と同じなのだ
いや、求められる覚悟の度合いで言うならばエレンスゲよりも格段に上だ。
それにグランエプレは神庭のトップレギオンで彼女はそこに所属するリリィ
戦闘でのヒュージの撃破数は多いほうが良いに決まってる
合同レギオンでもそれは変わらない
撃破数を稼いでおかないと、遊んでたのか?と言われかねない
ただでさえグランエプレは少々危うい立ち位置
真面目に戦い撃破数を稼ぎました、と内外にアピールする事も必要なのだ
…それをやるのが海漓だけなのが非常に問題ではあるし、秋日や同じく生徒会の藤乃や大人しい鈴夢からも心配されているのだが、それは別な話
「大物、来たッスよ」
「は?」
舞弓がそう言い指を指す
そこにはスモール、ミドル級の群れ…なのだが奥に数体明らかに大きさの違うヒュージが数体
「ラージ級…!!」
5人制レギオンならばボスクラス扱いのラージ級、それが複数体
本来ならば逃走も視野に入れなければならないが、ここで引いてもヒュージが都内に入り込んでくるだけ
それに先の砲撃もある
的になりうる個体を引き入れるなどできるはずもない
「ラージ級、私が相手するよ
流石に周りのスモール、ミドルは誰かに処理してもらわないと困るけど」
海漓はそう言う
ラージ級複数体が相手だ。
策は有るし、複数相手の立ち回りも問題はない…が、流石にラージを相手しながら同時にスモール、ミドルの相手は無理、出来なくもないが万全を期すならばスモール、ミドルの対処は任せたい
そのため付近の相手を頼む
「雑魚狩りはこっちでやるッス
後は後衛の二人でなんとかなる…かな あおいんはどうするッスか?」
「私は海漓さんと同じ様に前に出るよ
流石に一人だと危険すぎるから」
葵は海漓と共に行動する事を選択する
彼女のポジションは海漓と同じAZ
まぁ、レアスキルや技量を考えたら海漓など足元に及ばないレベルの強者なのだが
「よろしく
こうして誰かとペア組んで敵陣に突撃かますの久しぶりだなー」
「え?そうなの?」
「普段は私一人だから。
上級生はあの二人でペア固定してるからは私等となんて意地でも組もうとしないし
…まぁ、御台場の動きについてこれないっていう評価を覆せない私等が悪いんだけど」
「そ、そうなんだ…
(グランエプレ、何かおかしいような…)」
実力に差こそあれ誰かと肩を並べ敵陣に突撃するなどそれこそ中等部以来である
神庭に来てからは海漓が単体で突撃し後ろから灯莉達に支援してもらう形が基本
叶星や高嶺と肩を並べ前に出たことなど一度もない
高嶺が前に出るときは叶星も共に前に出る形を取る
それを聞いた葵は疑問に感じる
実力の差は抜きにしても突撃するリリィを同じ様に前に出して支援しないなど聞いたことがないからだ
「二人共、ヒュージ、来るッスよ!!」
「オッケー!」
舞弓の言葉に気を引き締め二人はラージ級へと向かう
スモールやミドルは全て舞弓達に任せ自分達はラージ級を仕留めるのだ
「葵さん、私レアスキル普通に使っていいよね!?」
「勿論!!」
走りながら海漓は葵に確認をする
今の言葉を聞くに彼女は海漓のレアスキルが何なのかを知っているようだ
まぁ、遊糸や舞弓、それに中等部から相模にいた生え抜き組に教えてもらったのだろう
「じゃ、遠慮なく
あ、分身は撃ち抜いても大丈夫だからね」
そう言い彼女はレアスキルであるユーバーザインを発動し姿を消す…のではなくの自分と葵の分身を作成し、四方に配置する
ヒュージはその光景に驚き視線をそらす
ヒュージでは分身と本物を見分けるのは厳しいだろう
その隙を逃す二人ではない
手始めに目の前の個体をそれぞれ一体撃破
ラージ級相手だ、正面から戦えばこうは行かないのだが
相手の不意をついたり、死角から急所に向けて強力な一撃を叩き込めれば簡単に倒せたりする
こう言うやり方は地味や卑怯、陰湿等と批判され、馬鹿にされるがこれが確実な方法
生憎と海漓にはラージ級を真正面から、正々堂々と戦って捻じ伏せるような実力は無い
自身のレアスキルやサブスキルで相手に隙を生じさせ、そこを確実に付く
海漓とて、スモールやミドルならば真正面からでも行けるが、ラージを複数相手するのに真正面からやるのは流石に無理
単純作業の繰り返しになるが、こうして倒していくのだ
当然、ラージ級からの反撃も複数方向からくる…のだが
「特型じゃなきゃ攻撃パターンは全部頭に入ってる!!」
それらを全て回避
ついでに回避先に運悪くいたスモールやミドルを回避した攻撃にを当てる事によって数を減らす
今この場にいるヒュージは全て普段から東京に現れてる個体
神庭に来てからの訓練や自主練で全ての攻撃方法は頭に叩き込んでいる
モーション一つたりとも見逃さない
目をつぶってでも出来…はしないが集中力を高めれば可能だ
一方の葵はレアスキルと自身の技量を使い、華麗に戦い敵を撃破していく
彼女のレアスキルはファンタズム
希少価値の高い、強力なスキルであり、海漓の持つサブスキル、虹の軌跡の上位互換だ
それ故にファンタズムが強力である事はサブスキルとはいえ所有している海漓が一番良くわかっている
幼少期からリリィとして育てられ、自分達の世代では最強格のリリィだ
文字通り住む世界、見えている世界が違うリリィだ
「(他所は他所、ウチはウチ)」
凄いと思えど嫉妬は無い
むしろここまでの差ならば葵を称賛するレベル
それにラージを複数相手にしているこの状況でつまらない嫉妬などしている場合ではない
とはいえ彼女も自身と同じトリグラフ使い。今度は自分もトリグラフを使った上で共に戦いたいとは思ってしまう
そんな事を考え海漓はラージを対処する
分身を生み出し生じた隙でしとめたり、姿、気配を消した上で完璧な不意打ちを決めてみたりと倒し方は多種に渡る
…海漓も本当ならばこんなことせずにお得意の早撃ちで数を削りたいのだが、生憎と今使っているクルッジは射撃モードを早撃ち仕様に改造していない
あれはトリグラフだからこそ出来る芸当だ
中等部時代に使っていたアステリオンとも違うこのCHARMで戦果を出すとしたらこれしかないからやっている
クルッジに搭載されている高出力砲をお構いなく撃ちたい…が東京には現在百合ヶ丘がいるため、お構いなしに連打しようものならば面倒くさいことになるためそれも出来ない
なぜ、百合ヶ丘がいると面倒くさいか、というと簡単に言えばモラルや百合ヶ丘の常識、百合ヶ丘の正義を平然と振りかざすからだ
「(神庭に迷惑かけるわけにもいかないし)」
海漓一人だけならば別に百合ヶ丘と揉めようとどうでもいいのだが流石にガーデンや生徒会に迷惑をかけるわけには行かない
そうなると自然と地味な戦い方になってしまうのだ
「縛りプレイ出来る程強くないんだけどね、私」
そんな事を呟き同じ作業を繰り返す
二人がラージ級を対処している事や葵も海漓と同じ様にラージ級の攻撃をスモール級に当たるように誘導し援護しているため、舞弓達後衛組も楽に戦えているようだ
とはいえそう簡単に行かないのもまた事実
ラージ級は目処が立つがスモールやミドルは相変わらず都庁にあるケイブから出現しこちらへと向かってくる
「次から次へと…!!」
そんな時だった
「面白い状況になっていますわね
貴方達の夜遊び、わたくしも混ぜてもらっていいかしら?」
そういいながら目の前のスモールやミドル数体を全て一撃で粉砕し海漓の前に現れたのは神庭のリリィ。
その人物に海漓は心当たりがあった
「ふ、藤乃さん!?
どうしてここに?」
「石塚藤乃様?生徒会防衛隊の?」
その正体は神庭の生徒会防衛隊に所属する石塚藤乃
神庭からの増援もあり得る…とは考えていたがまさか藤乃が来るとは思わなかったのだ
彼女に気づき一度こちらに合流してきた葵もその存在に驚く
「後輩達が文字通り命を掛けて戦っているのを知っている中で黙って指をくわえて見てるリリィが神庭の何処にいるのですか?
わたくし達、そんな薄情者に見えていたのかしら?」
そう言い後ろ視線を向ける
その先には彼女以外にも神庭のリリィが数名来ており、後衛の支援を行っている
「あー、いえ、そんな事は…
それよりも生徒会の仕事は大丈夫なんです?
私そっちの方が心配ですよ」
海漓としたら薄情者とは思っていない為、そこは否定する
しかし、藤乃は生徒会の人間だ
神庭でやる事も沢山あるし貴重な戦力だ。
少なくとも簡単に寄越せる訳がない
「秋日さんからの指示でここに来ているから大丈夫。
さて、海漓ちゃん、もうひと頑張りできるかしら?
そこにいる葵ちゃんも大丈夫よね?」
「あ、はい。」
「私も大丈夫です」
「そう。なら良かった
萩窪の戦いは少々退屈でした
ここのヒュージ達は骨のある個体だと有り難いのですが」
秋日の指示でここにいるという事は少なくともなんの計算も無しに来ていると言う事では無いらしい
彼女は海漓と葵がまだ戦える事を確認すると、
ヒュージと対峙し突撃していく
先程、退屈などと言ったがそれは藤乃なりの嘘
状況に差こそあれ萩窪でも連戦だった
それでもそんな事を平然と言える事が彼女の実力の高さを物語っている
戦いは、まだおわりそうにない