Assault Lily〜御使いの妹   作:ラッファ

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第53話

暫くの月日が流れた今日この日

グランエプレの全員が集まりミーティングをする

やれアイドルだ、何だと話が脱線する…が海漓はすべて無視し一人資料を読み込んでいる

 

「(新宿相当マズいよね…これ)」

 

そこにはあの騒動後の新宿の状況が記されていた

安定するのでなく悪化している事

そして、自分達が倒した特型の幼体…捕食して進化する前の姿をしたヒュージが大量に出現していると言うのだ

出現しているヒュージの能力については記されていない

幼体時でさえあれだけの知能を持ったヒュージが増え続けるとなると非常にまずい

 

この後開かれる防衛構想会議でどのような対策を行うのかにもよるが、その後の状況次第では新宿を閉鎖という案も出るのではないかと言われている

勿論その先に待っているのは東京都の陥落だ

そんな状況、普通に考えても黙ってられる訳がないし名門校は主力レギオンを総動員し都内のヒュージを文字通り殲滅しなければならない…のだが

 

「(新宿の閉鎖と最悪東京の陥落。

それを良い事に将来の主力候補を育成と保護の名目で軒並み引っこ抜こうなんて考えか?あの名門は

それと、同時に相模女子を5大ガーデンから降ろす工作もしてる?)」

 

名門校筆頭である百合ヶ丘のレギオンはルドビコ女学院の崩壊後から新宿事変前までは頻繁に外征を行っていたが、騒動を機に一切やってこない。

事件の背後を考慮して中止したのか、それとも新宿とその後の東京の動向次第ではかつての甲州のような事をする準備を裏でしているのか…それは分からない

 

東京だと御台場とイルマも事態の収集に動いているがやれる事には限りがある

自分達の守備範囲の防衛に都外への外征

そこにルドビコの支援となると負担も増えるから当然だ

 

 

今度行われる防衛構想会議の参加者のリストを見るとヘルヴォルと一柳隊は当然参加

前回はいなかった御台場とイルマも参加し御三家の足並みも揃っている

 

「(相模は…遊糸さんと葵さんだ

事件の当事者を派遣する形か)」

 

「海漓さんは難しい顔をしてどうしたのかしら?」

 

資料を読み込んでいると高嶺がこちらに話しかけてくる

話に混ざらず、ずっと資料を読んでいたのを見て心配したのかもしれない

 

「いえ、笑ってられる状況じゃないよな、と

各校のエースが来るって事はそれだけ切羽詰まってるっていう事ですし

ライブやるとか、有名人が来るって騒いでる場合じゃないですよ?

新宿だけでなく首都である東京の陥落がかかってるんですから」

 

姫歌や灯莉はアイドル談義を行い、紅巴は来るリリィのリストを見て有名人に会えると興奮しているが、はっきり言ってそんなお気楽に考えられている状況では無い

仮に東京が陥落などすればその影響は東京に留まらず鎌倉にもでる

鎌倉のガーデンの中でも相模女子は他人事ではない

だからこその危機感でもある

百合ヶ丘が楽観視しているのは戦力の他に地理的な問題だろう

 

「海漓は悲観しすぎよ

ひめか達はあの新宿事変を乗り越えたのよ

今回だって大丈夫なんだから。」

 

姫歌はそれでも大丈夫だと言い切る

先の騒動で相当自信をつけたようだ

それは灯莉や紅巴も同じだろう

それを認めるかのような扱いだってされている

初心者組にしてみれば自信になる事しか起きていない

叶星と高嶺もどこか他人事な感じがする

まぁこの二人は実力があるから当然なのだろう

程度に差こそ有れ全員が乗り越えられると信じ切っている

別にグランエプレだけではない

ヘルヴォルや一柳隊、いや、東京全てのガーデンが同じだ

過去の戦いでも証明されたのだ

ならば今度も大丈夫と思うのだって当然かもしれない

 

「乗り越えても解決になってないじゃん

むしろ悪化してんだけど?

この緊急時ぐらいアイドルとか封印して真面目に話しない?状況分かってる?」

 

確かに乗り越えたかもしれない

それで状況が良くなるならば良い

たが今はどうか、良くなるどころか悪化している

その中で行われる会議なのにアイドルだのまるで芸能人に会えるようなノリで参加されるのは困る…それだけだ

 

「ひめかは真面目よ!!

何?ふざけてると思ってたの!?」

 

「真面目にやってるなら尚更問題じゃん」

 

「はぁ!?何が問題だっていうのよ

ひめか達はアイドルリリィよ。皆を笑顔にする為にどうすればいいか考えるのは当たり前じゃない。」

 

「人を笑顔にするのと笑われるのは違うからね?

空気読めずにそんな事したら笑われるだけだから

やるなとは言わないし必要なら私もやる。だけど、本当に頼むから、空気を読んで行動しよう?

リリィとかそれ以前の話だから(そもそも、勝ったときこそいつも以上に気を引き締めるって当たり前なんだけどなぁ…)」

 

アイドルをやるなとは言わない

笑顔にする、その志は立派だ

だが時と場合を選ばないと只の大馬鹿者だ。

それを分かってほしいだけ。やる事を否定などしない

後は勝ったからと言って調子に乗るなと、それだけなのだ

相模では良く教わったことの一つ

勝った事に自信をつけ調子に乗ると次は必ず痛い目を見る

連戦連勝なんてやると自分達は万能だと思い上がる

才能ある者ならば調子に乗っても連戦連勝、失敗もなく勝ちっぱなしになるが大半はそうは行かない

どこかで必ず痛い目を見る

その痛い目も振り返ればいい経験だった等とふざけた事を言う連中もいるがそれは才能と力のあるリリィが五体満足で生き残ったから

大半は痛い目等と言う言葉は生ぬるく命を落とす。生き残れても5体満足とは限らない。

相模の時は戦いで大勢のリリィが命を落としたし生還しても5体満足ではなかった事など多々あったし自分も目にしてきた。

今年の神庭ではそういう事が今まで無かっただけ。

警戒するし、ありとあらゆる状況に備え、常に最悪を考え行動する。

それだけこちらが警戒をしても尚ヒュージは想像を超えてくるしその度に被害が出る

新宿事変のエヴォルヴなどその筆頭ではないか

味方を捕食し進化する個体など少なくともあの時までは知らなかった

 

「気を引き締めるのも大切だけど…あまり一人で考えすぎないのも大切よ?

今日は解散しましょう」

 

叶星がそのように締めくくりミーティングは終わる

解散となるが姫歌と灯莉はアイドル談義を行うし叶星と高嶺は二人で話し、紅巴はリストを見直して興奮している

海漓は退出し部屋へと戻る…のだが

 

 

 

「海漓ちゃん?

今日はグランエプレはミーティングと聞きましたが…もう終わったんですか」

 

途中で藤乃と出会う

すると

 

「元気が有りませんね…そうだ!」

 

そのまま彼女の手を引いて何処かへと素早く連れて行く

高速移動系のサブスキルを彼女は所持していないはずだ

辿り着いたのは藤乃の部屋…ではなく生徒会室だ

 

「石塚藤乃のお悩み相談室ー

本日のゲストは天野海漓ちゃんでーす」

 

「そんな部屋は無いわ

それに貴方に相談なんて任せられるわけ無いでしょう!!

何吹き込むか分かったもんじゃないわ」

 

生徒会室だ

当然、秋日と鈴夢がいる

藤乃の奇行を平然と受け流し秋日が相談を引き継ぐ

 

「で、何があったの?

藤乃に何かされそうになった…っていう訳ではなさそうだけど」

 

「あ、それは大丈夫です。

いや、その…緊張感にかけてんな、と」

 

「新宿の情勢を含めての話ね」

 

彼女の言葉に秋日は何があったのかを察する

そして

 

「一応フォローを入れると気楽なのはグランエプレに限った話ではないの

イルマや御台場は従来通りの立場を

鎌倉でも百合ヶ丘は御三家と同じ方針を取るつもり

相模女子は強い危機感を持っていて事態解決のための積極的な支援を提案。シエルリント、メルクリウス、桜ノ杜は必要に応じてと言う立場よ」

 

「ええっと…何で鎌倉のガーデンでそこまで違う立場に…?」

 

「守備範囲の問題です

鈴夢ちゃん。これを見て下さい」

 

そう言い藤乃は地図を用意する

そして

 

「各校の守備範囲がこちらです

さぁ問題です。新宿の閉鎖や東京が陥落しヒュージが流れ出た場合、次に攻められるのは何処の土地でしょうか?」

 

「さ、相模原…ここって」

 

藤乃の問に鈴夢は地図を見ながら答えを言う

それが分かったからこそ言葉を無くす

自分も東京の話だと思っていたが地図を見るとそんな簡単な問題では無いとすぐに分かったからだ

 

「正解よ。

相模女子もそれを分かっているからこそ、ここ数ヶ月の会議では積極的な支援を名乗り出ているわ」

 

「他4校は思惑に差こそ有れ結局は私等を緩衝地帯にして様子を見るつもりなのが見え見え

この現状だと相模が一番ヤバイから

5大ガーデンって言ってもまだ他校に比べたら層が薄いし東京でチンタラやられると困るわけ

タダでさえ陥落した甲州とも接しているしこれ以上陥落地と接した地域になる訳には行かないんだ」

 

海漓の話は全て事実

鎌倉は東京と違い府内であっても外征宣言が必要であり自由に移動が出来ない

そんな中で東京が陥落し相模女子の守備範囲である相模原にまで東京の特型が流れてきたら凄まじい被害になる

既に甲州と言う陥落地と接しているのだ

これ以上陥落地と接するような事があれば相模原の陥落も見えて来る

東京の問題は早めに解決してもらわないと困るのだ

本当ならば他のガーデンも強い危機感を感じて欲しいが

東京程ガーデン間の繋がりが無い以上有事の際の援軍なんて期待出来ないし、自分達が苦戦している事など無視されるのも覚悟している

 

「そ、そんな…」

 

「話を聞くと本当に深刻なんだけれど大丈夫なの?」

 

鈴夢は思っていた以上に深刻な状況である事を理解したのか言葉を失い、秋日も心配する

彼女の場合、当然都内への危機感はあったがそれ以上の事態が起きる事を理解したからだ

 

「現状なら問題ありません。

強いリリィ揃ってますから。だからこそ東京が本当に鍵になってるんです」

 

「ミーティングでも真剣に話し合ってほしかった…そういう事ですね」

 

「はい。都外の心配をしろとは言いませんが都内位は真剣に考えて欲しいと思っちゃいまして…陥落や大規模な撤退戦になったら御三家のエース以外だと果たして何人生き残れるか…」

 

藤乃の問に海漓はそう答える

自分の住んでいる所の危機の時ぐらいは真剣に話し合って欲しい

ただそれだけである

東京からの撤退戦にでもなろうものなら甲州の比ではない被害が出るのは確実だからだ

他所の土地の事まで考えることを要求するのは酷だ

 

「…1年生3人はまだまだそこまで頭が回らないのは分かるわ

叶星と高嶺は後輩の出身地の状況位は考えてフォローしてあげなさいよ」

 

秋日も一年生をフォローをしつつもやはり上級生には厳し目の意見だ

仲の良し悪しでは無い

仮にも後輩の出身地の状況位は把握して欲しいと思ったのだろう

百合ヶ丘が危機感を持っていないから鎌倉は大丈夫とでも思ったのだろうか

 

「私、特別な事を要求したつもり無いんだけどなぁ…

空気読めっていうだけなのに…」

 

「どう読んで良いのか分からないのではないでしょうか?

そういう意味でも次の防衛構想会議の参加はいい経験になると思いますよ

自分の目で見て肌で感じて、そこで初めて気を抜いたら駄目だと感じてもらうのが一番でしょう」

 

「こればかりは藤乃に同意するわ

経験に関してはやっぱり差があるし、陥落への危機感に関しては相模女子出身の貴方が一番強いと思うから

それでも変わらないなら、うん。仕方がないわ」

 

海漓の言葉に藤乃と秋日がフォローする

言って分からないなら自分の目で見て感じてもらうしかない

それで駄目ならもう諦めろと言わんばかりだ

優しいが甘くは無いのがこのガーデンである

 

話を聞いてもらい少し気が楽になった気もするので海漓はお礼を良い、生徒会室を出ようとする

すると

 

「私達は話を聞く事しか出来ないけど何かあったらまた来なさい

今度は藤乃に拉致される前に、よ。

レギオンは違えど貴方は神庭の生徒で私は生徒会長だから

あ、藤乃に変な事されそうになったらすぐに呼んでいいからね」

 

「変な事をするつもりないんですけどね

わたくしや鈴夢ちゃんもいますから、また遊びに来てください」

 

「…」

 

そんな声をかけられ部屋を後にする

それを見届けた秋日は

 

「少しは元気になったかしら?」

 

「えぇ。流石秋日さんです

…そうだ、例の転校生、来週中にはこちらにいらっしゃるんですよね?」

 

「えぇ。その為の準備もしないと

忙しい日が続くけど二人共頼むわよ」

 

そんな会話をしていた

そして次の週、ついに防衛構想会議が開かれるのだ。

 

 




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