さて、海漓と梅のレアスキルを使った鬼ごっこ対決
その状況はというと
「速い…油断すると捕まるな」
海漓は逃走一択
とはいえリリィとしての力は全てにおいて梅が上
海漓が梅よりも優れている事など何一つもない
だが、それでも今尚戦えているのはこのフィールドと自身の幻覚が噛み合っている事…あとは
「これは幻覚…うわわっ!」
「(演技だったら不味いけどすり抜けないって事はS級じゃない?
見た事が無いから断定は出来ないけど)」
梅は幻覚を見破るがその先にあったのは壁
そう、縮地は凄まじいスピードでの高速移動だが障害物をすり抜ける事は出来ない
先殆海漓が言ったS級というのは海漓達が持つレアスキルを最大限まで成長させる事であり、その領域になるとレアスキル固有技と言うさらに強力な力を使うことができる
全てのレアスキルに存在するとも言われており、縮地のS級は
高速で硬い建物の壁にぶつかるのだ
当たったら痛い。当たり前の話
本能で止まるか道を変える
今は本物だが幻覚では偽物の建物も当然だが作り出している
慎重に見分けなければ激突
窓にでもぶつかろうものなら破片による怪我は免れない
もう一つの理由は
「こっちですよ」
「そこ…!
外れ…次!!」
海漓は気配を飛ばし、分身を作り出し梅をとにかく騙し、スピードを抑え込む
幻覚の気配など無視しろ…となるし梅も分かっているのだ
頭では分かるが体が反応してしまうのだ
百合ヶ丘の教育は確かに世界最高峰だ
そしてそこにいる全てのリリィは才能溢れる素晴らしい面々だ
海漓が彼女達より優れている事など何一つとして存在しない
だが、今回ばかりはその最高峰の教育と環境が仇となる
「(嫌ですよね…自分達の教わってきた事を逆手に取られるの)」
「そっち!?…いや、違う!」
気配を飛ばし、視線を向け、梅を惑わす
体が反応するのだ、中々にキツイだろう
相手の気配を、視線を、動きを、捉え読んで行動する
高度なノインヴェルト戦術を行う上で必要な事だ
百合ヶ丘に限らず名門では教わる事
叶星と高嶺の誰も寄せ付けない二人だけの世界とも言える凄まじい連携の正体はこれだ
言葉を交わさずとも通じる信頼関係
それを応用すると下手なリリィ相手なら幾らでも優位に立てる
合宿の時にノインヴェルト戦術を行う為の練習試合で梅が自分達の動きを読んだのも技術を応用しこちらの動きを読んだから
自分達も叶星と高嶺から教われと言われるかもしれないがこの二人は教えていないし、そういう技術がある事すら伏せている
海漓も相模時代は基本的なノインヴェルト戦術をやりつつガーデン独自の特殊戦法を行っていたのでその手の技術は教わっていないのだ
それを逆手に取る事もユーバーザインなら可能
百合ヶ丘のような名門でユーバーザインが嫌われるのはガーデンでの指導とレアスキルの相性が悪いから
お得意のノインヴェルト戦術に落とし込むのが難しいと言われてる理由もコレ
「幻術を見せるのは良いけど、それで良いのか?」
そうしていると不意に梅が海漓に呼びかける
「グランエプレの皆が話してたけど、マギ保有量。
平均よりも少ないんだろ?
このレベルの幻覚維持…長時間出来る訳がない」
「あれ?話しましたっけ私?
神庭やエレンスゲの顔なじみはともかく貴方達に話した記憶は無いんですけど」
梅の言葉に海漓は疑問を持つ
確かに彼女の言うとおり海漓のマギ保有量は全てのリリィの平均よりも少ない
名門ならば入学基準に達していないレベルかもしれない
しかし、その事は神庭やエレンスゲの親しい面々ならばともかく百合ヶ丘には話していないはず
故障ならばともかくマギ保有量と言う個人差のある事柄について打ち明ける者はほぼ居ない。
自身のマギ保有量を考慮しながら戦闘を行うなどリリィとしては当たり前の事だからだ
「エヴォルヴの作戦会議の時にそんなに話題になった
居なかったから知らないだろうけど」
「(定盛ちゃん達はともかく叶星さん達は自分の事は仲間にすら秘密にするのに他人の事情はバラすのかよ…)」
自身が居ない時にそんな話題になったのだろう
その時に有志連合に参加したのだから海漓が知らなくとも無理はない
姫歌達はともかく肝心な事を秘密にしている上級生が自分達の事を棚に上げ他人の事を勝手に話すのはいかがなものかとは思う
「まぁ、少ないですけど…秘密にして何か問題あるんですかね、それ?」
別にバラされた所で痛くも痒くもないので普通に対応する
名門ガーデンに通うリリィのマギ保有量がおかしいのだ
隠した所で問題は無い…と彼女は考えている
「問題あるに決まってるだろ!
何言って」
「マギも戦力も今自分の手元にある分を最大限に使って戦えばいい。それだけじゃないです?
そりゃ多いに越した事はないですけど…別に少ないからリリィ失格では無いでしょう?」
梅の言葉にも海漓は動じない
確かにマギ保有量はリリィにとって生命線
少なければ危ないと考える者も多いかもしれない…が、海漓は違う
今の自分にできる事をちゃんとやり、与えられた戦力を最大限に活かして戦い、勝つ。それだけの事だ
勿論多いに越した事はないが少ないから何も出来ないという訳ではない
名門のリリィが持つような超高性能CHARMや最新のバトルクロスは要求されるスキラー数値以上にマギ保有量の観点から彼女は使用する事が出来ない
そういう意味でもヒヒイロカネ製のCHARMというのは海漓と相性が良い
「確かにこれだけの事を一人で全部やるなら持って数分です。
時間切れと同時に全て消えるんで。」
そんなの彼女はとっくに分かっている
分かってなければ中等部の時点で死んでいたし、今もこうして生きてなどいない
状況に応じて加減をするのだってそれだ
無理な使い方をしてガス欠を起こし、動けませんなど笑い話
それに、梅は勘違いをしている
「そもそも、私はいつ一人で貴方を足止めするって言いました?」
「は?」
そう、この戦闘が始まる前に彼女は一人で梅を倒すなど言っていない
その直後だった
「隙あり!!」
「なっ!?」
梅の不意をつく形で背後から突然タグを奪い取られる
全く意識していなかったその行動に梅は呆然とする
そしてその瞬間幻覚も全て消え去る
そこで答え合わせ
梅の背後は壁となっておりそこには海漓の班のリリィが一人立っていたが肝心の海漓が居ない
そして梅が気配を感じ上を見ると建物の窓の所に海漓がいて、こちらを見下ろしていた
タグを取ったのを確認すると海漓は建物から飛び降り地面に着地
「その子、ユーバーザイン持ちです
途中から景色の幻覚を生み出すのを変わってもらったんです」
「作ったら後はここに自分の分身と気配を飛ばして梅様を誘うから…タイミング見てタグを奪えって言われたんです」
そう説明するのは海漓の班のリリィ
彼女もユーバーザイン持ちだったのだ
ユーバーザインの二重掛け
流石の梅と言えども見抜けなかったようだ
それだけではない
海漓達が梅を倒し終わったのとほぼ同時に二水を含めた残りの面々も全員捕まった事が判明する
「い、いつの間に…」
「ほぼ同時進行です
二人以外の姿が見えないのってほぼ確実にどっかに隠れてもらってるからでしょうし、隠し所に目処立てて送り込んだんですけど…大当たりです」
そう、梅の足止めと二水達の撃破は同時進行
先の打ち合わせで出した海漓の指示はすごく単純な事
海漓ともう一人で梅を撃破し残りの面々はその間に二水と隠れているであろうチームメイトの撃破
梅の強さと二水のレアスキルの組み合わせで戦っているチームだ
他の面々ならばこちらの人員で十分に対処できると考えた
すると、その案は見事にハマった
実力に差こそあれこの場に呼ばれる程の力のあるリリィの集まりだ
誰を狙うのか、何をすれば良いのか指示を与えれば行動もしやすい
こう言う初めての取り組みの時の指示は分かりやすく、簡潔に。
何もしなくても勝手に連携が出来るのはそれこそ、百合ヶ丘クラスのリリィだけだ
向こうも自分達のように作戦を練り連携していたならばこうは行かなかった
それに今回は海漓が司令塔となり指示を出すと言う今に至るまで誰も知ることのなかった役割での行動だ
その時点で奇襲となる
梅の足止めと撃破が上手く行ったのは地形の影響が大きいし、何より向こうが自分を天野天葉の妹と認識したのも大きいだろう
姉のようなキャプテンシーで皆を鼓舞し、正々堂々と正面から勝負してくる
そんな馬鹿な事を考えていたのだろう
本当に色んな事が噛み合ったからこその勝利だ
次は無いというのは分かっている
それに、もう一つ、この結果になった理由がある
「(こればかりは私の勝手な思い込みだけど…名門のリリィって奇襲とか不意打ちみたいな予想外の事に弱いイメージあるんだよな…ミスした後の切り替えとか)」
勿論、全員がそうではないのは分かっている
奇襲されたら弱いのは当たり前なのだが、奇襲される事を頭に入れていなかったりその後の立て直しも出来ないのは流石に不味い
高い教育を受け、努力を積み重ねた自分達は完璧であるという思考の弊害だろうか
エヴォルヴでもその傾向は見えた
たまたま上手く行ったが未知の敵相手に策も練らず奇跡に頼り決戦を挑むなど海漓からしたら正気の沙汰ではない
それにガーデン側は上手く揉み消したようだがマギリフレクターの対応の件もある
少なくとも相模でそんな事をやろうものなら隊長、司令塔の解任と今後の役職への就任禁止は当たり前
状況によってはレギオンの解散もあり得るレベルだ
あくまでも憶測だが百合ヶ丘よりも御台場上層部の働きもあったと考えている
叶星と高嶺は御台場出身
今のトップレギオン、ロネスネスとヘオロットセインツの前身となる予備隊で中心を担っていた
そんなリリィの醜態が広まる事による御台場への悪影響を恐れたのかもしれない
「さて、残りは一葉達だけか…このまま逃げ切りたいけど」
そんな風に呟くと同時にヒュージの出現警報がなる
「あっぶな、これ以上続けてたらマギが尽きて出られなかった
…レギオンどうするんだろう」
とはいえ考えるのは後、今は出撃しヒュージを倒すのが先
そう考えながら出撃するのだった
強い相手にどう立ち回る?
→なりふり構わず戦って奇襲と不意打ち連打で叩きのめす
噛み合った事
二川と梅しか戦わない
遮蔽物多い
勝手に天葉と同じやり方でくると思い込んだ