Assault Lily〜御使いの妹   作:ラッファ

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第57話

ヒュージの出現と同時に海漓も当然出撃

レギオンは先の班を継続するという形だ

折角組んだのだからと言う流れもある、彼女が隊長と司令塔を兼任する形になる

訓練とはいえ半ば嫌がらせの策で梅と二水と言う百合ヶ丘のリリィを撃破した事が大きいだろう

 

「さて、じゃあ確認。…全員ラージ級までは戦え…ますよね」

 

彼女は班員に改めて確認

当たり前の話だが鬼ごっこと実戦は違う。遊びのノリで戦闘に参加すれば命を落とすだけ

この場にいるリリィは力のあるリリィ

最低限ラージ級までは戦闘経験があると思っているがそれは彼女の考え

それも踏まえての確認だ

 

「全員ある。よし、とりあえず4人の班を2つ作ります。

陣形なんですけど…

配置は…あ、いや、説明したほうが早いか

手を広げてください」

 

 

言われるがまま4人の班を2つ作り、手を広げる

彼女は確認すると

 

「親指から薬指の所にリリィを配置します。説明終わり。

8人居るんで2つ出来ますよね。簡単でしょ?」

 

その言葉に混乱する

レギオンのフォーメーションといえばAZ、TZ、BZの3つに分け人員を配置し連携をするのが一般的

手を広げた形の配置など聞いたことがない

 

「そんなフォーメーション何処にも…」

 

「即席メンツで陣形組むには時間が足りないですし、皆さんの普段の陣形なんて分かりません

説明も複雑ですし…非常時は簡単な陣形を組んだ方が説明する時間省けます。

戦う時は手を内側に捻る動きをすると誤射に繋がるので捻るなら外側に。

移動の時は外側に手を捻る容量でお願いします」

 

疑問もも来るが、それも論破

説明事態は分かりやすく誰もが納得するためそれに関しては異論はない

 

「後は単独行動はしないようにお願いします

説明は以上。質問は?」

 

全員特に無いようだ

それを確認すると、戦う際の注意点、コツを伝える

その直後にヒュージと接敵、戦闘開始となる

 

「特型のスモールも出て来たか…

でも、あの時よりも遅い…!挟み込んで撃破!」

 

普通のスモールだけでなく特型のスモールもかなりの数が出現

だが、こちらはあの時に比べて動きが遅い

挟み込めば十分に倒せる

レアスキルを使う必要もなく、射撃でヒュージを的確に撃ち抜く

他の面々も射撃で撃ち抜き、近接戦で切り伏せる

それの繰り返しだ

 

この戦闘に関してはこちらが有利

 

「スモールだけっていうのも有るけど…」

 

「この陣形…意外と使える?」

 

「そこの二人油断しないの!!戦闘中だよ!」

 

海漓のグループのメンバーはそんな事を漏らす

一人は注意もしてくれる。有り難いことだ。

恐らくはもう一つの班も同じ感想を持っているだろう

相手がスモールだけという事もあるが、それにしても普段よりも素早く倒せているというのは実感している

 

普段ならまだしも即席メンバーで戦ってこの速さはやはり不思議なのだ

間違いなく陣形と海漓から言われたコツが活きている

 

そんな時だった

 

「な、あれは!!」

 

一人の班員が声を上げる

それは本当に唐突だった

 

突然ギガント級が2体現れる

一体は恐らくは地下から

もう一体は上空から

 

こちらに攻撃は来なかったものの付近からは火の手が上がっている

 

「ギガント級!?

小規模ヒュージの群れって言う報告でしょう!?」

 

「ど、どうするの!?」

 

ギガント級が現れた事に驚愕と同様

ラージまでは確認したがギガントの確認はしていない

とは言え動揺してはいられない

今の自分は司令塔、冷静に判断を下さなければならない

 

「(増援の必要が…あ、叶星さんいる

って事はあのグループか)」

 

彼女のトリグラフのマギクリスタルコアにはグランエプレ全員の位置情報が表示されるようになっている

新宿事変後にはぐれてしまった反省を踏まえ登録しておいたのだ

それに加え訓練前に仲間の位置情報も登録している為、次の動きの為の指示は出しやすい

 

「このままヒュージの群れの相手を継続!

ギガント級以外のヒュージを全滅させる!!」

 

増援に向かう…では無く今の持ち場を離れない

それが彼女の判断だ

 

「ギガント級は!?」

 

「叶星さん達の班が相手をするから私達が向かっても邪魔になるだけ

それに、高嶺さんが現場に向かってるって事は多分御台場の面々も連れて来るからギガント級はそっちに任せる!」

 

叶星がいるという事は紅巴もいる

更に言うなら先の班でそのまま戦っているだろう

故にギガント級に複数方向から攻撃しているような音も聞こえてくる

あの班はグランエプレ以外に一葉と瑤、梨璃と夢結、そして船田姉妹と実力者が大半を占める

更に高嶺も画面上では高速で叶星達の所に向かっており、彼女の班には御台場のリリィがいたはずだ

実力も連携も問題ない

 

 

一方の自分達は全員、叶星達と比べると実力は劣る

そんな所に増援に向かったって足手まといだと言われるに決まっている

何よりもギガント級相手に即席レギオン、即席フォーメーションで挑み勝てる程の力は残念ながら無い

 

ギガント級というのは下手なリリィや不安を抱えたレギオンが挑めば全滅するほどの力を持った個体だ

そんな所に連携面で不安要素を抱える自分達が向かい、味方を危険に晒す事など出来ないし、そのような判断を下す事は出来ない

 

 

それに、自分達が増援の為に持ち場を離れてしまえばそこが穴となる事でヒュージの侵入に繋がり避難した市民に被害が出ても大変だ

 

それらを踏まえると増援に行かないのが最適な答え

あくまでも自分達の役割を果たすのだ

 

「私達はラージまでのヒュージの相手に専念してここを死守

ギガント級から放たれる攻撃や流れ弾には注意して」

 

通信でも仲間にそのように伝える

その後も戦闘は行う。ギガント級はこちらに攻撃してくる気配はなく、叶星達が上手く立ち回っている事が分かる

 

全員が自身の話を聞き入れてくれたのは不幸中の幸い

勝ち気で闘志溢れるリリィならばギガント級に行く事を望むのは目に見えている

それを納得させ止めるのも司令塔の役目…ではあるのだがそう言う余計な事に力はつかいたくない

戦闘中なら尚更

 

その後も戦闘が続き自分達は役目を果たす

そうしていると、

 

「ギガント級が…」

 

「逃げた?」

 

暫くするとギガント級が撤退していく

叶星と紅巴の反応はある為、最悪の事態は起きていない事は分かる

 

この辺りのヒュージも全滅させた為、後は撃ち漏らしが無いかを再度確認すればこちらも任務完了だ

 

「ギガント級ってこんなあっさり撤退するっけ?

すっごい大暴れする印象有るけど」

 

「個体差ある。すっごい暴れるのもいるし被害の程度に関わらず飽きたらどっか行く個体もいる」

 

一人の疑問に海漓は答える

ギガント級といえど個体差がある

基本的には先の通りリリィに倒されるまで暴れ尽くし全てを破壊していくが、ごく稀に何処に行く個体も存在する

鎌倉だと基本的に多いのは前者

後者はレアケースだ

 

その後は撃ち漏らしの確認を終え、一度ルドビコ女学院へと戻る

 

各々が無事に市民を守れた事に安堵

防衛構想会議中の襲撃であり今回は戦力が足りていた事も大きいだろう

 

「そっちも無事だったみたいね」

 

遊糸はそう言いながら海漓の方に向かってくる

 

「結構ギリギリでしたよ」

 

「司令塔として即席レギオンをブン回して自軍と市民の被害0やってギリギリ…まぁ、妥当な自己評価って所かしら

私が指揮したらヒュージを全滅させてギガント級まで倒したケドね」

 

遊糸はそんな風に言う

指揮や判断に関しては彼女は妥協しない

正当な評価だろう

 

「陣形と出した指揮は?」

 

F(フィンガー)を2班に分けて各個撃破

単独行動はしない事も付け加えて」

 

「他は選択肢に無かったの?」

 

「通常ですとポジション分けや配置決めて、さて戦術教えますだと時間が足りないです

その分Fは説明楽ですし

後ろ住宅地で広範囲に敵がいたんでFを使いましたね

敵を突破するだけならΔ(デルタ)D(ダイヤモンド)A(アローヘッド)も考えましたけど守るだけでいいんで

5型(ファイブ)は…ゼロトップと被って浮足立ちかねないんで省きました」

 

遊糸の質問にも答えていく

彼女、複数の陣形を持っているがその中でも今回を選んだ理由

後ろが住宅地であり、敵が広範囲にいたためこちらも広範囲に展開し戦う手段を選ぶ

他はどちらかと言うと敵陣を突破する為に使う手法、ここでは相応しくない

最後のは別名ゼロトップ戦術とも捉えられ、それは昨年におこなわれた御台場迎撃戦の終盤にて今回の会議に参加していた月岡椛が考案した戦術とほぼ同じ

真似とかそう言う理由は全く無いがやると後々面倒くさい為、東京では封印する事になったのだ

 

「5型は東京では封印でしょ…全く

根拠もしっかりしてるわね。説明するならもう少し詳しくして欲しいけど…まぁ良いわ。結果も出てる

欲言うなら神庭で試したいでしょう?」

 

遊糸は話を聞き素直に評価

彼女としてはまだまだ詳細に語って欲しいが、海漓の事も良く分かっている為、そこは良しとしたようだ

やはり神庭でやりたい事も見抜いたようだ

 

「まぁ、でも仕方ないんで、そこは」

 

「流石にトップレギオン制だと好き勝手やれないものね…普通は

生徒会は?仮にも役員が司令塔を薦めたって事はガーデン側はアンタが司令塔を務めるべきって考えてるって事よね?

ガーデンの校風を考えたとしても生徒会が口出せば動かざるを得ないんじゃない?上級生、実は生徒会も掛け持ちしてる?」

 

遊糸の言う事はほぼ正解

実は彼女も諸事情で様々なガーデンを渡り歩いてきた過去を持つ

教導官認可制とトップレギオン制の違いも理解している

だからこそ、今の扱いには疑問しかないのだ

ガーデンの校風に差があるのは分かる

言い方も違うだろう

しかし上層部や生徒会と言うガーデンの上層部が動いているのに未だに変わらない事への疑問はあるようだ

生徒会とグランエプレでは生徒会の方が立場が上

簡単に言うと秋日や藤乃の指示に叶星と高嶺は従う必要が有る

にも関わらず何も変わらない

叶星と高嶺が皆には言ってないだけで裏で上層部と通じ人事を納得させているとしか思えないのだ

 

「どうですかねぇ?

私グランエプレではペーペーですから」

 

「名門卒のエリート様を抱えるガーデンは大変ねぇ

実績と知名度あるし、ファンも多いし

生徒会長の苦労が目に浮かぶわ」

 

「そっちだって葵さん居るじゃないですかー

苗陽さんだって事情があったとはいえ元百合ヶ丘ですよ。

エリート抱えてるのに上手く?行ってますよ?」

 

「葵はなんやかんや言う事聞くから

苗陽は…その、うん。私はともかくガーデンの指示は聞くから」

 

葵の他に彼女が言う苗陽と言うリリィ

学年は叶星や高嶺と同じ2年で今は風紀委員長の他にトップレギオンの隊長を努めている

遊糸のレギオンと苗陽のレギオン

この2つが相模女子の主力となる生徒会直属のレギオンだ

遊糸の方は生徒会特選隊

苗陽と読んだリリィの方は特命遊撃隊と呼ばれている

ちなみに海漓は順当に行けば特選隊に所属する予定であった

 

「さて、駄目出しもしたしそろそろ帰ろうかしら

あ、そうだ。」

 

「はい?」

 

「私達がいる以上相模は安泰だからアンタは安心して東京で戦いなさい

東京の陥落はウチも他人事じゃないから定期的にリリィを送る形になるだろうし、東京への支援はするつもり」

 

彼女としてもやはり海漓が自分達を気にしていると感じていた

余計な気遣い…とはならないがまぁ、考えすぎるなというメッセージだろう

 

「後は…やっぱりエレンスゲ周りが最近きな臭いから本当に気を付けなさい

特に新教頭なーんか胡散臭いのよね」

 

「なんでエレンスゲの教頭の話題になるんです?

ウチの卒業生が赴任したんですか?」

 

唐突な話題

流石に海漓も混乱する

なぜエレンスゲの新教頭が話題になる意味が分からない

そもそも、気にする理由もないはずだ

 

「違うわ

姉妹校提携先だし無関係とはならないからって言って少し前に挨拶に来たのよ…

なーんかわざとらしくて嫌だったけど…まぁ、上層部もいつも道理の定型文で対応したわ」

 

「はぁ。」

 

姉妹校提携先に挨拶に来るなど随分と律儀な人物なのだろう

そんな感想しか持たない

 

「で、こっからが本番

その教頭、やたらとヘルヴォルについて聞いてきたわ」

 

「一葉達?だってヘルヴォルの担当って教頭じゃないですよね?

確か元マディックの…」

 

だが、ヘルヴォルについて聞くのは以外

そとそも聞く理由も無い筈だ

ガーデンに反抗してるのに既に教導官がついているし変わったという話は神庭までは聞こえてこない

新しく来た教頭がその位置に付く必要が無いのだ

 

「知らないわよ

私は今のヘルヴォルとは合同訓練してないから知らんってあしらった

大半もアンタじゃないけど好きにすればって答えてたわ

葵は塩対応しすぎって言ってたけど

気になるなら聞けば良いじゃない」

 

「そうしてみます」

 

相模は良くも悪くもドライ

それにガラの悪さも有る

同盟もあり合同訓練もしていない以上気にする必要が無いのだ

塩対応した事は容易に想像できる

あの荒くれ者が大人への最低限の対応は出来るとはいえ丁寧な説明や対応などする訳がない

 

「じゃあね。

ヘマしてくたばるんじゃ無いわよ!」

 

最後にそう激励し彼女は葵を連れてルド女を後にする

こちらも長話をしてしまった為、急いで皆と合流する

そこでは大半が一葉を労っていたし、一葉も笑みを浮かべていた

ヘルヴォルの面々も同じだ

 

「何かあったの?」

 

近くにいた楓にそう話しかける

 

「一葉さんの活動がようやくガーデンに認められて上層部には理解者も現れた…と言う話ですわ

これからは支援もしてくれるそうで…努力が報われつつあるっていう話をしてた所です」

 

なる程、自分を待っている間そうでなくとも現状報告の中でそんな話題になったのかもしれない

一葉からしてみれば活動が認められ教頭と言う教導官の中でも立場が上の者が味方になってくれたのだ

喜ぶし周りも祝福するだろう

共に戦う仲間の活動が認められ、良い流れが来ている

そう感じてもおかしくはない

 

「ま、浮かれすぎて足元救われなきゃいいけどね

上手く行ってる時こそ気を緩めてはならない…リリィの鉄則だよ?

百合ヶ丘は違うかい?」

 

「そうですが…今だけは甘く見ても良いのではなくて?

貴方個人として考えても仲間であり友でしょう?

友の成功を祝えない程に普段から気を張り詰めてしまっては倒れてしまいますわ」

 

「祝えないって事は無いよ

努力が報われるならそれに越したことは無い(でも…クエレブレ筆頭とした意見の合わない連中どうする気だ?)」

 

楓の言う事にも一理あるし、海漓もそこは肯定する

一葉の夢も分かっている

否定するつもりもない。成功するならばそれは素晴らしい事だ

これがガーデンが団結してるならば話は変わるが今はヘルヴォルの背後に教頭がついただけ

例えば意見が合わないクエレブレも賛同したと言うなら話は分かるが、先の新宿事変の対応を見るかぎり優珂達とは壁がある

性格考えれば合わないのは当然

 

今後どうするのか、分からない

教頭が背後についたのをいい事に排除しようとするものならば向こうの反発は必須。大人しく従う訳がない

そもそも、気に入らない連中を排除するような人物について行こうなどと考えるリリィはいないだろう

少なくとも海漓は嫌だ

 

「(一葉と一回話してみるか…浮かれてなきゃ良いけど)」

 

そんな事を思う

この日は一度解散となり準備を整えた上で数日後に再集合となる事が伝えられるのだった。

 

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