Assault Lily〜御使いの妹   作:ラッファ

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第58話

防衛構想会議から数日後

準備を終えたグランエプレの面々は駐在先であるルドビコ女学院に到着していた

勿論、一柳隊やヘルヴォルも到着済み

ルドビコ女学院の面々と挨拶を行い、今は校内へと案内され、簡単な交流会を行ってくれている

 

そんな中海漓は一葉と二人で話している

開始後に少し一葉を借りる、と言って呼び出したのだ

 

 

「教頭変わったんだって?」

 

「西村教頭先生の事?

うん。でも、私その話海漓にしたっけ?」

 

「遊糸さんから聞いた

相模にも挨拶きたらしい」

 

「そうなんだ。やっぱり素晴らしい人だなぁ」

 

一葉はそのように話す

海漓はあった事はないが、上手く行っているらしい

 

「(ここは焦らず…)そんなに?」

 

思う所はあるが、今は一葉のターンだ

自分は後でいい

 

「うん。私達の活動に理解を示してくれてるし、これからはサポートもしてくれるって」

 

「はぇー、しかし何だってまたそんな」

 

随分と大盤振る舞いをする人物と思う

話を続けさせる

 

「教頭先生もゲヘナを内側から変えたいって言ってて

私と同じなんだなって、お互い協力者を求めてて…それで…ね。」

 

「で、具体的にどんなサポートしてくれんの?

活動予算を多めに回してくれる手配?

名門御用達のメーカーから超高性能CHARMの購入?

それともヒヒイロカネにもっと強い機体よこせって頼む?」

 

一葉も中々だがその教頭も随分と無謀な事を言っているいがしてならない

エレンスゲを変えたいから赴任ならともかくゲヘナを変えたいからエレンスゲ赴任など意味が分からない

それこそゲヘナの総本山といわれている海漓の地元である横浜にあるガーデン、シエルリントにでも赴任した方がマシな気がする

 

とは言え具体的に何をしてくれるのかは気になる所

予算の確保、ワンオフのユニークを筆頭とした高性能CHARMの調達、もしくは提携先であるヒヒイロカネに依頼し強力なCHARMを開発するように依頼してくれるのか

 

「教頭先生を筆頭にしたチームが活動を色々な面でサポートしてくれるんだ」

 

「(ん?)」

 

その答えに違和感を覚える

今、海漓は件の教頭が具体的に何をしてくれるのかを聞いたのだ

 

「お金や装備だけじゃなくて…例えばヘルヴォル向きの任務を命じたり…とか?(任務は言いすぎたかな?)」

 

ならば、と具体的な例を出してみる

ヘルヴォル向きの任務…それこそ具体例は出しにくい

聞かれたらそれっぽい任務を提案するしかない

 

「そうそう、そんな感じ」

 

「(え?任務も入るの?)でもそれ教頭一人で良いよね?他の人は?」

 

まさかの肯定

しかし、ヘルヴォル向きの任務とは何だろうか

それこそ、一葉のやり方で多くのヒュージを倒し人を守るとかそういう事だろうか

やり方はともかくリリィとはヒュージを倒す為の存在。教頭が新たに協力する理由はないようにも見える

 

「コンディション面でのスタッフ…だったかな

戦闘後のメディカルチェックは重点的にやってくれてる。コンディション管理は大切だからって…機器も最新鋭だって言ってたかな」

 

「いくら何でもそれは…」

 

協力してくれるとはいえやり過ぎではないだろうかとも思う

専属スタッフが1レギオンをサポートなどそれこそ百合ヶ丘のトップレギオンクラスのやる事だ

エレンスゲが百合ヶ丘と同じ派閥ならばともかくエレンスゲは親ゲヘナ派のガーデンだ

美味い話には裏がある…親ゲヘナなら尚更気を付けなければならない

理解者が現れたとはいえ浮かれすぎ

そんな風にすら思えてしまう

 

そんな時だった

 

「ちょっと海漓!いつまで一葉さんと話してるの!?」

 

姫歌がそんな事を言いながらこちらへと向かってくる

 

「(タイミング悪っ!…まぁ長話しすぎたな)ゴメンゴメン。話し込んじゃって」

 

「もぅ!一葉さんもゴメンなさい。」

 

「いえ。お気になさらず」

 

姫歌に連れられ三人で皆のいる場所に戻る

 

「何の話してたのよ?」

 

「教頭の話、この間聞きそびれたから」

 

「あぁ、あの優しいって言ってた教頭先生ね」

 

そんな事を言いながら皆の居る場所へと戻ってくる

 

「姫歌ちゃん!乙女の秘密の会話を遮りに行くなど人の心があるんですか!?」

 

「あるわよ!

しかも秘密って訳でもないし」

 

紅巴は違うベクトルから抗議

まぁ、彼女達の行動は誤解を招くかもしれなかった

 

「それで、一葉は二人で何の話をしてたのかな〜」

 

恋花もひかやしながら一葉に尋ねる

 

「西村教頭先生の事ですよ

この間は海漓がいなかったので…松永遊糸様から話は聞いてたみたいですけど」

 

「何で相模の特選の隊長が出てくる訳?」

 

「赴任するからと、ご挨拶に伺っていたそうです」

 

「うへぇ…そこまでやる?

律儀だねぇ」

 

「…提携先だし無関係では無いから」

 

「本人の意思、と言う事ですね」

 

恋花、瑤、千香瑠も例の教頭の行動には感心する

近くに居た一柳隊やルドビコ女学院の面々も感心する

 

「後は私達の支援の内容を少々…そんな所ですね」

 

「自分達の活動がようやく認められたって喜んでたものね」

 

「はい!一葉さん、とてもうれしそうに話してました」

 

叶星と梨璃もその光景を思い出す

一葉の夢を知っているし、応援もしている

夢が叶いつつあることに喜んでいるのだ

 

「(流石にそうなるか…)」

 

「どうかしたの?」

 

「あえて空気を読まずに言うならそうですね…その判断、大丈夫か?と」

 

高嶺は海漓を気にする為率直な感想を話す

 

「どういう事?」

 

「いやー悪い大人ってどんな理由つけて騙してくるか分からないですよ?

発言一つ、選択肢一つミスったら騙されますし、あんまりハイハイとついていくのもなーと(私とか下手すりゃモルモットルート一直線だったし)

勿論、その教頭がガチの善人なら全く問題無いですが…個人的に赴任早々にかなりの大盤振る舞いはちょーっと匂うかなって」

 

彼女はそう話す

選択肢一つ間違えたらモルモット行き…それは海漓もよく分かっている

いや、分かっているからこその言葉だ

 

「流石に考え過ぎよ」

 

「そうですよ!!」

 

高嶺、梨璃の二人だけではない

ルドビコ女学院以外のリリィが全員呆れたような目線を向けてくる

 

「(知ってた!!…流れもそういう方向になってるし…私は異端なんだよね…そう言う具体的な話や手口なんて百合ヶ丘や御台場なんて伏せるし

…私だって相模であの教官に出会ってなけりゃ良い人で鵜呑みにしたし)」

 

これも海漓は想定内

エレンスゲの教頭だけでない、ルドビコ女学院も表向きはゲヘナの鎖を断ち切ろうとしている

良い流れが来ている…と思い込んでいるのだ

そんな中で海漓の考え…はっきり言って異端そのものだ

 

相模時代、世話になった一人の教官がの出身がイルマであり、現役時はイルミンシャイネスに所属し活躍していたそうだ

指導は厳しくも的確であり今の海漓のリリィとしての土台を築いたと言っても過言ではない

まぁ、能力はともかく素行面に問題がありそのせいで現在はイルマではなく落ちこぼれで荒くれ者の集まりである相模女子で教導官を努めているのか、だが…

 

『何故多くのリリィに手を出す事が許され、隠れて飲酒に喫煙、ギャンブルに株取引をする事が許されないのかと再三に渡り抗議したのだが…受け入れてはもらえなかった…理不尽だろう?

それが世の中だ』

 

『いや、イルマから飛ばされた理由、はっきりしてんじゃないですか…何で許されると思ったんですか?』

 

『あの女も私もイルミンシャイネスで活躍したからだ。私だってS持ちで、更に言うなら私の方が先輩だぞ

数多のリリィに手を出す後輩のあの女に比べたら私などまともだろう?』

 

『どっちもどっちですよ…』

 

…中等部時代の海漓とのこんなやり取りからもわかる通りの素行の悪さだ

能力は確かなのが尚質が悪い

 

 

そんな彼女、自分達に対し訓練の他に補習の名目でゲヘナのその手の話を何度もしてくれたし資料も見せてくれたのだ

下手したらどう言う末路になるのかも分かっている

 

『「ここは力も権力も無い中立派、私達も努力はするが名門のメルクリウスや百合ヶ丘のような力と権力でお前達を毒牙から完璧に守ってやる事も、手遅れになる前に救える事も厳しいだろう…そこは申し訳なく思っている

まぁメルクリウスや百合ヶ丘は色々とあるが…今はいい。時が来たらまた話そう

 

だからこそ、お前たちには戦うスキルと同じぐらい、見分けるスキル叩き込むし、疑うという事を覚えていてもらいたい。

強い力を得たいのならば尚更だ。

特に甘い言葉に気をつけろ。心の隙、弱さを奴らは的確についてくる

それでも尚、力を求めるのなら…私に相談しろ。強い覚悟と信念が感じられたのならば、苦しまず…は厳しいが望みを叶えられる場所を紹介してやる」』

 

中等部に入学した頃の教導官の話だ

未だに心に残る程には印象的な言葉だと思っている

小学校卒業したすぐの子供になんて事を言うのだ、となるかも知れないが相模女子の環境を考えると必須のスキルだったと思い出せる

相模女子は名門のような夢を見れる環境では無かった、それだけだ。

 

 

その中で今の状況

まさしく教導官の言ったとおりだ

百合ヶ丘やメルクリウス、そして御台場もガーデンの力と権力で手厚く守られて来たし救われた者もいるだろう

 

救われた者がこの中に居るのならば今回の件を疑っていいのかも知れないが、今回、場合話したのが相手が同盟相手のリリィ、つまり仲間だ

百合ヶ丘も御台場も仲間を疑う事はならないと教育されている筈だしこれまでの絆もある。

 

「一葉さん達に何かあったとしても皆で力を合わせればきっと乗り越えられますよ!!」

 

梨璃はそう言うが…そんな簡単な話では無い

現実を教えてやろうにも下手な事言えば自分のクビが飛ぶ

力を合わせて乗り越える…確かに素晴らしい事ではあるが…世の中そんなに上手くはいかないものだ

 

「そう…だね。(私が幾ら警告しても最終的に決めるのは一葉だし、こうなったら半分自己責任みたいな所もあるからなぁ)」

 

海漓がどれだけ警告しようと、周りが支持しようと最終的にヘルヴォルの道を決めるのはヘルヴォルの面々だ

敢えて厳しく言うならば先にどんな光景が待ち受けていたとしてもそれは半分、自己責任となる

だからこそ、立ち止まり見直す事も必要だし、立ち止まるためにも疑う事は必要なのだ

 

価値観の違い

光景の違い

これはがりは本当にどうしようも無い事を改めて自覚するのだった

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