Assault Lily〜御使いの妹   作:ラッファ

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第6話

海漓や灯莉が所属する美術科の授業は造園科の上級生が育てた植物のデッサンなのだが授業開始前から灯莉の様子がおかしい

 

「灯莉ちゃん、どうしたの?何か急いでない?」

 

「べ、別に急いで無いよ。うん。」

 

そうは言うが先程から周りを伺い、誰かを待っている風にも見える

とは言え上級生二人は造園科とはいえ今は校内で授業を受けているはずだし仲の良い姫歌は声楽科の授業があるからこの場には居ない

特別講師が来るとも聞いていないので誰を待っているのか想像もつかない

 

そうしていると担当の美術教員が現れて生徒に対し

 

「皆さん。本日の授業は上級生が育てた植物のスケッチです。好きな物を選んでくださいね」

 

そう告げ、皆が絵を書き始めるのだが、数分後に灯莉が動く

 

「はーい!できた☆

って言う訳で1抜け、あーちゃんお先〜」

 

言い終わったとほぼ同時に彼女は担当教員に絵を提出し、すぐさま校内へと戻る

これには全員が啞然とするが、海漓と担当教員は

 

「早っ!?え?本当に??おーい、灯莉ちゃーん!?」

 

「丹波さん!…描けて…ますね。

えぇ、とても上手なのですが…

神庭の校内にはサボテンやヤシの木は生えていませんよ!?」

 

そう言い担当教員は絵を手に持ち灯莉を呼び戻そうとするが一人の生徒があることに気づく

 

「先生、それ裏に一枚くっついてます」

 

「え?あら本当ですね…こっちは…上級生が育てたネモフィラですね。上手に描けてます」

 

そうサボテンやヤシの木が描かれた紙とは別にもう一枚、上級生が育てたネモフィラが描かれた物を提出していたのだ

条件を満たしているため担当教員は何も言えなくなるのも当然である

そしてそれを見た海漓は

 

「(なるほどサボテンやヤシの木はこれのブラフか…多分ネモフィラは事前に描いてたな…)」

 

そう担当教員は上級生が描いた植物をスケッチしろと入ったが事前に描いてはダメと言ってはいない

そして、2枚とも適当に描いているのであれば問題なのだがどちらも丁寧に描かれており文句を言えないレベルで仕上げているのだ

 

とはいえ性格を考えれば灯莉が大人しく教室に戻るとも思えないが、他人に迷惑をかけるような事をする人物でもないと言うのも日が浅いが分かっているため皆は己の課題に集中する

 

とはいえこの授業の課題に苦戦する生徒はあまりいないのも事実

灯莉が特別早すぎただけで、その数分後には仕上げる生徒が出てくる

ちなみに海漓も比較的早かった部類だ

描いた植物はというと

 

「えーっと、天野さん、これは…ネペンテスですか?」

 

「はい。そこのハウスの中にありました。三年生の方が育てているので条件的にセーフだと思ったんですが」

 

神庭の造園科は様々な植物を育てており、少し離れたハウスの中の一部が食虫植物専門エリアとなっていたため彼女はその中の一つ、ネペンテスを描いたのだ

食虫植物があるのだから真面目に探せばサボテンやヤシの木もあるんじゃないかと思ったのはここだけの話

 

ちなみに彼女の絵を見た教員は

 

「条件も満たしてますし、丁寧に描かれていますね。教室に戻っても良いですよ。」

 

「わっかりました〜」

 

そう言い彼女も教室へと戻る

すると中には先に課題を仕上げたクラスメイトが机に座り

自主的に絵を描いたり教本を読んだり机に付して寝ていたりとそれぞれが好きなように過ごしていた

 

が、肝心の生徒がいない事にこの時初めて気がつく

 

「…あれ!?皆、灯莉ちゃんは?」

 

「さぁ?私が来た時にはもう居なかったけど、あの声楽科の子の所かな?」

 

「いや、声楽科も今は授業中だし教室違うじゃん。自主練しにいった??」

 

「CHARM持ってなかったしそれはないでしょ。」

 

彼女の問にクラスメイトがそれぞれ答えるが共通しているのはこの場にはおらず行き先も分からないとの回答である

とはいえ実質自習時間の行動を他の生徒が止める理由も無いため見逃しているというのが本音であろう

 

「(んー、校内に入ってる所はみんな見てたしなー、早めに仕上げなかった私のミスかなこりゃ)」

 

こうなる事も予想できなかった訳ではないが次の授業は一年生合同の体育と言う事を考えれば確実に戻ってくるという確信があったため気を切り替えて席に付き、学園から希望者に支給された端末でインターネットを眺め情報収集を行う

集める情報もリリィ絡みというよりは近年開催された絵画コンクールの入賞作品のチェックが多い

 

「(やっぱイルマの作品は凄いな…まぁ、神庭も負けてはいないけど)」

 

開催されたコンクールは応募は自由で、リリィに限らず様々な人が応募してきているが上位入賞者はイルマ女子美術高校という都内御三家のガーデン所属のリリィで占められていた。

イルマ女子美術高校というのはガーデンとしては発展途上と言われているが美術分野では世界屈指の名門と言われてる高校である。

発展途上とはいえ東京の御三家とも言われているので実力派が揃っている事も付け足しておく。

 

世界屈指の名門との評判通り作品それぞれが素晴らしい出来となっており上位入賞にふさわしいとも言えよう

とはいえ、神庭も芸術を学ぶ所であり美術科としてもコンクールでは常にイルマが上位を独占する現状を崩したいと考えているのかここ近年、美術科も造園、声楽に負けないぐらい力を入れ始めてきている

そのおかげかここ数年はコンクールでも神庭勢が上位に食い込む事も増えてきているが中々イルマの厚い壁を壊しきれないというのが現実である

 

そもそも、力を入れると言っても芸術高校の面があるため単にリリィとしての実力だけで評価するのではなく芸術分野も評価しなくては行けないためまだまだ及ばないというのが実情だ

評価と言っても上手さだけでなく芸術を学ぶ意欲や実際に作品を作った際の独創性なども考慮している

 

そうしていると、後ろからクラスメイトが語りかけてくる

 

「何?コンクールの作品チェック?」

 

「まぁね、展示されてる作品と制作者は知っておかないと、まぁイルマがヤバいってのは理解できた」

 

「イルマの作品はね、あれは本当に凄いよ。御三家だけあってリリィとしての実力も確かだし…とはいえうちも芸術高校、造園、声楽には負けてられないっしょ」

 

芸術を学ぶ高校に通っている彼女達にとってもイルマの作品というのは意識せざるを得ない

が、それ以上に他の2つの学科に負けてもいられないのだ

 

その後もインターネットで様々な情報を入手している間にもクラスメイトが続々と教室に戻ってくるが灯莉は授業が終わるまで教室に戻ってくる事は無かった

 

授業が終わる頃には戻ってくるだろうと考えていた海漓にしては全くの予想外であり、学科が違うとはいえ同じ一年の姫歌や紅巴に連絡を取って探しに行こうかと考えていたのだが

 

「たっだいま〜」

 

そんな声と共に灯莉が戻ってくる

 

「灯莉ちゃん、心配したよ。今までどこに行ってたの??」

 

「たかにゃん先輩達の所で授業を聞いてたんだ♪色んなお話聞けて楽しかった」

 

 

「先輩達の所は予想できなかったな…」

 

彼女の行動には驚かされたがいつまでも驚いている訳には行かない

この後も授業は続くため改めて気を引き締めて行こうと考える

 

 

ちなみにこの後の授業はこれと言って問題が起きるわけでもなく、再びヒュージも現れる事も無かったため、学生としての1日を終える事が出来たのだった。 

 

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