Assault Lily〜御使いの妹   作:ラッファ

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第60話

ガンシップにて房総半島へと向かうグランエプレの面々

房総半島の上空に差し掛かった時だった

 

「色んな所で煙が上がってるよ!?」

 

灯莉が真っ先に声を上げる

その理由は一つしかない

 

「現れたヒュージの群れとリリィ達が戦ってるんだわ」

 

「あっちにも…こっちにも戦場だらけですよ!?」

 

姫歌と紅巴の言うとおり現れたヒュージの群れとリリィが戦っている…それだけの事

逆に煙が上がっていなければリリィが全滅、もしくは戦わずに逃げた言う事なので大問題だ

騒ぐような事ではない、溜め息の一つも出る

 

「ギガント級は…いないか

近隣に住む住民の避難は終わってると思うけど」

 

ギガント級程の大きさならば上空からでも見つけられる

見える範囲では確認出来ない

それでこの戦闘だ、住民の避難は完了していると考えて良い

クエレブレのようなやり方を非難しておきながら自分達は大規模戦闘をやるほど愚かでは無い…と思いたい

 

そんな事を思っている内に臨時の拠点へと着陸する

 

「ここが臨時の防衛拠点ですか?」

 

「ガーデンの方が設備が整ってると思うんですけど…」

 

姫歌と紅巴はガーデンから離れた所にある臨時の防衛拠点近郊に着陸した事に疑問を持つ

 

「地理的にここが一番状況を把握しやすいのね…きっと」

 

「(状況把握以前にガンシップの離着陸絡み!…言わないけど)」

 

叶星の考えも間違ってはいない

しかし、それ以上の理由があると海漓は考える

ガーデンによってはガンシップの離着陸が可能な程の土地を持たない所があり、離着陸時に流れ弾の影響で住宅地にガンシップを墜落させようものならば大問題

操縦者の安全を確保し、離着陸可能な場所を考えた際にこの場が最適と判断されたと考えている

 

一番最適な放送は上空からリリィが降下しガンシップを速やかに退避させること

だが、神庭だとその訓練を一切行っていない為、選択肢にすらない

補足すると鎌倉五大ガーデンは全員その手の訓練を行っている…恐らくは東京御三家も行っている…筈だ

ちなみにエレンスゲも相模と姉妹校提携をしている為、相模の土地を借りる形ではあるが全員経験をしている

 

海漓は出来るにしても一年生3人は不可能、二年生二人は分からない

いつものふざけたノリで降下すると事故や怪我に繋がるためぶっつけ本番は出来ない

高度、行うタイミング、降下時の姿勢、一つでもズレてしまえば大事故だ

 

そんな事を考えていると一人こちらに向かって手を降りながら歩いてくる

 

「叶星に高嶺

そして姫歌、海漓、灯莉、紅巴

来てくれて有り難う

丁度人手が足りなかった所なの」

 

「ぜ、全員の名前を…!!」

 

「共闘するレギオンのメンバーよ

把握して当たり前じゃない

防衛構想会議で名乗ったと思うけど

私は御台場女学校2年 ロネスネスの藤田槿」

 

「(紅巴ちゃん、それはマナーの話だよ…)」

 

グランエプレの全員の名前を把握している事に紅巴は驚くが槿としては普通の…いや、リリィとしては当たり前だと言い放つ

この辺は海漓も同意

形はどうあれ自分達の共闘相手、全員の名前を把握するのは最低限のマナーである

リリィオタク云々の話ではない

 

「メイルストロム討伐の為にココに来たけど戦況が悪化して市街地の防衛に戦力を割くしかなかった?」

 

「例の特型スモールの群れが思った以上に厄介でね

今ちょっと困った事になってるのよ」

 

「現状十分に困ったことになってるじゃない」

 

「(困った事も何も御台場はセインツも派遣してるんだし、生徒会長の椛さんがいれば後は)」

 

「それに、輪をかけて…ね

あ、そうだ。海漓は相模女子出身なのよね?」

 

「え?あ、はい。」

 

「相模出身からしたら、非常識な光景になってるから覚悟して頂戴

…叶星や高嶺から御台場の事を聞いてると思うから分かってるとは思うけど」

 

「覚悟しておきます」

 

槿に連れられ、グランエプレの6名は臨時の防衛拠点へと向かう

 

そこでは

 

「じゃあここで戦ってるリリィを見捨てろっていうの!?」

 

「そうは言っておりません

優先順位を見誤らないように、と言っておりますの」

 

「その間に生じるここの被害に目を瞑れ…と?」

 

御台場の中で意見が割れていた

メイルストロムを優先するか、ここを守るか…と言う話なのだが

 

「(いや、生徒会長がギガントじゃなくてリリィを守るって言ってるんだから従わなきゃ駄目だろ…何言ってんだこの人?)」

 

海漓は素直にそう感じる

先程、槿は非常識と言ったがそう言うレベルの話ではない

槿だけではない、船田 純(ふなだきいと)船田 初(ふなだ うい)もロネスネス

ちなみに隊長は純、副隊長は初だ

月岡 椛(つきおか もみじ)川村 楪(かわむら ゆずりは)はヘオロットセインツ

隊長は椛、副隊長は楪

それぞれレギオンが違うが、重要なのはそこでは無い

椛はセインツの隊長の他に御台場の生徒会長も務めている

ガーデンの生徒会長とは文字通り御台場の生徒の長。

簡単に言うと御台場のリリィの中で一番上の立場だ

生徒会長がそういう判断をしたのならば御台場のリリィは全員従うのが当たり前、自分達の意見を通すとしても生徒会の意思を尊重しつつ、行動するのが筋だ

 

たかだかレギオンの隊長レベルがガーデンの長である生徒会長に対し優先順位を見誤るな、なんて言える立場ではない。

誰が見ても間違った判断をしたのならばともかく椛の案は聞く限りで間違っていないと思う

初も純の言葉が鋭い事には指摘するが、それでも椛への態度への注意は一切ない

槿もそう、叶星、高嶺も特に気にしてはない

一年生三人も気にする所がズレている

 

途中で今後の対応意見が割れた、と楪は説明しているが割れる意味がわからない

 

生徒会長の椛の指示に従う、その上でロネスネスは自身の目的を果たす

これで全て解決なのだ

何も揉める事はない

 

「(現場の指揮系統をロネスネスが勝手に壊してるだけなんだよな…

仮にロネスネスが生徒会直轄レギオンだとしても有事の際の方針は事前の打ち合わせで一致させとけって話になるけど)」

 

ロネスネスがどのような立ち位置なのかは、分からないが仮に生徒会直轄レギオンで隊長には椛と同等の生徒会長と同等の権限を与えていたとしても有事の際の方針は予め決めて置かなければならない。

椛に従うのか、独立して行動するのか

独立して行動するにしても椛の意図は汲み取ってあげなければならないのだが

 

教導官認可制の下での自主結成レギオンといえど、自分達が好き勝手に暴れて良い訳ではない。

従うべき人物、法や規則は確実に守らなければならない

 

相模時代に例の教導官以外にも多くの教導官が言っていた言葉だ

 

相模女子は百合ヶ丘や御台場の程学年の上下関係は厳しくない

余程舐めた事を言わない限りは世間一般で通用する敬語で良い

だが、役職での上下関係は絶対遵守の方針だ…特に戦場では尚更

レギオンならば隊長、副隊長、司令塔

ガーデン単位ならば生徒会長や生徒会役員

上の立場の者の指示には余程の問題がない限りは必ず従うように教育される

海漓がレギオンの作戦や指揮で表立って叶星と姫歌に反抗しないのもこれが理由だ

叶星と姫歌は自分よりも上の立場のリリィ、指示は絶対だ

 

だからこそ上に立つ者には戦闘力以外にも様々な能力が求められる

リリィとしての戦闘能力を求めるのは当たり前だがその他を蔑ろにする者に資格は与えられない…そんな教育だ

 

高等部でも同じ事は教えているだろう

そんな事を考えている時だった

 

「こんな事をしていても時間の無駄ですわ

私と姉様、槿…せっかくですので叶星と高嶺の5名でメイルストロムの目撃現場へと向かいますわ

他の方々はご自由にどうぞ」

 

「えー、バラバラに行動するの」

 

「(もう無茶苦茶だな…有り得なさすぎる)」

 

純は痺れを切らしたのか、そんな事を提案し灯莉は驚くし海漓は呆れる

戦士のガーデンはこんな事すら許されてしまうのか、とも

 

「ですが、ギガント級は9人でのノインヴェルト戦術でないと…」

 

紅巴としてはそこも気になるところだ

5人制ではギガント級は仕留められない

 

「えぇ、勿論。ですがメイルストロムを逃さないようその場に釘付けにし、増援を待つ事は可能ですわ

我がロネスネスの増援を、ね。」

 

「…これ以上話し合っても時間の無駄って事はよく分かった

こっちはこっちで行動するよ」

 

楪もその提案を飲む

ヒュージも現れている以上これ以上揉めるのは確かに時間の無駄だろう

 

御台場はそれでいいかも知れないが、自分達は良くない

純は連れて行く気だが叶星は何も了承してない。高嶺も、だ

出発前の時点で二人が御台場側に合流する事は覚悟していた。

しかしセインツ、ロネスネス共にフルメンバーで有ることが前提である

今回のような形で抜けるとは思っても

みなかった

椛と楪への負担も考えた上で慎重な判断が求められる

戦力を分ける事はもう必然、これには逆らえない

 

 

「こうなった以上、私達も別れて行動するべきだわ

貴方達は椛さんについていって」

 

「3人で特型ギガント級を相手にするのは流石に難しいもの

仕方が無いわ。」

 

叶星と高嶺は抜ける事が前提で話を進めてくる

自分達は椛に預ける事は確定路線らしい

まだ了承していないにも関わらず、だ。

 

「で、ですが…!」

 

「姫歌ちゃんの言いたい事は分かるわ

でも今回は別れて行動しましょう」

 

「(今回も、だろ。

何いつもは6人で行動してる雰囲気だしてんだ?)」

 

お互いに思う所はあるのかも知れないが、それでも考えを曲げはしない

今回に限らず自分達は戦場でレギオンとして連携した事など一度もない

大体は上級生が突撃する形

合同レギオンになってからは一柳隊やヘルヴォルの実力者に自分達を押し付ける形

連携するとしても学年別

 

そもそもの話

 

「(流石にコレはヤバすぎる

統制とか規律とかどうなってんだ御台場…周りも怒る所がズレてるし…異世界に放り込まれた気分なんだけど…)」

 

あり得ないことが多すぎる

自分達の長である椛に対する態度や現場の指揮系統を破壊する行為

時折出る言葉や思想の強さは咎めるが、椛への態度は咎めない

御台場組の全員、だ。

相模女子で考えればあり得ない態度

 

『何でトップレギオンの隊長如きが生徒会長の椛に歯向かってるわけ?』

 

『生徒会がその気になればロネスネス程度、簡単に叩き潰す事が出来るの分かってる?』

 

相模ならばこのレベルの言葉は当たり前に飛んできた

 

椛への態度はこの位のことは言っても許されるレベルだ

仕方ない、いつもの事で済ませていい話ではない。

 

「(いや…仮にウチの生徒会長があそこまで舐めた事を言われたら黙ってる訳ないけど…その場でリアルファイト確実案件)」

 

…荒くれ集団のトップに立つ者があそこまでの事を言われた場合、言葉で済ます訳がないと言われればそれまでだが、それはまた別の話

 

いくら戦士のガーデンといえど弁えるべき所は弁えなければならない

その他にも規律や集団行動の重要性

…これは入学時から座学で教え込む筈なのだが…御台場と相模では何もかもが違うだろう

 

力を付ける為の訓練はスパルタだが他は激甘なのだろう

 

「(…よし!今回は黙ってよう!

只のモブの一人として足を引っ張らないように己の役割に徹するべし

そうしよう。それがいい。)」

 

御台場のリリィとコミュニケーションを取るべきなのだろうがここまで価値観が違いすぎるとそもそも会話になるのかすら怪しい

天敵である桜ノ杜のリリィ以上に厄介だ

お互いに宇宙人と話しているのかと錯覚するぐらいに噛み合わなくなる可能性が高い

 

槿は非常識といったがそれ以上、例えるなら一人だけ異世界転生したレベルの話

 

ならば自分は黙っておくのが最善の策

流石に価値観の違いで御三家とトラブルを起こす訳には行かない

今の自分は神庭のリリィ

 

今回の主役は御台場

自分は彼女達の足を引っ張らないように動けばいい

やる事がはっきりしているのが不幸中の幸い

勿論、姫歌達のフォローも忘れずに

 

「(最悪の事も想定して…対ギガント級戦、私は戦力外。…経験不足の定盛ちゃん達へさり気なくフォロー…私が椛さん、楪さんの負担になるのは論外だし…

あれ、マギと弾薬持つかな…これ…?)」

 

黙るなんて言っても何もしないわけではない

頭の中で今後をシュミレーションするがやる事が非常に多すぎる

ペース配分を考えて戦ってもかなりギリギリだ

 

不安を抱えながら、自分達も行動を開始する。

 

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