Assault Lily〜御使いの妹   作:ラッファ

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第61話

自分達は椛、楪と共に彼女の当初の考えである防衛線の立て直しを行う

それと同時に負傷したリリィの救助だ

 

ヒュージの群れへの対処と負傷したリリィの救助は並行して行う必要がある

リリィの配置、作戦が重要だ

 

自分達の司令塔は姫歌が務める

グランエプレの司令塔は彼女なのだから当然だ

 

椛、楪は別方向への対処に向かった為この場にはいない

 

「えっと…先ずは周辺の怪我をしたリリィを救助…と、とりあえず海漓!敵陣に突っ込んでヒュージの数を削って!この手の戦い得意でしょ!」

 

「(とりあえずで敵陣に突っ込ませるとか正気?…まぁ、やるけど)はいよ!!」

 

姫歌の言う事も間違ってはいない…がそんな簡単な指示で突撃させられる身にもなって欲しい

自分がヒュージを倒している間に姫歌達で怪我人を救助するつもりなのかもしれないし、それも正解の一つだ

 

支援とかどうするのかと突っ込みたいがヒュージの群れも迫ってきている

被害を拡大させない為にも彼女はヒュージの群れへと突撃する

 

「(コイツら、新宿の個体に比べて弱体化してる…その分数は多いけど!)」

 

特型ヒュージは新宿事変の際に現れた個体と比較して大幅に弱体化している

移動速度も耐久力も劣化しあの時のような知能も感じられない

その分数は多いので面倒ではある

 

彼女はそれを射撃ではなく格闘で撃破

 

「(頭の中で何回もシュミレーションしたけどいつも通りに射撃を続けたらマギも弾薬も途中で尽きる)」

 

戦闘に入る前に何度か頭の中でシュミレーション

いつものように射撃中心で戦うつもり…だったのだが

敵の多さと自分達の役割、万が一の可能性

様々な事を考えると普段のように射撃メインで戦うとマギと弾薬が尽きる結論になる

序盤はあえて節約し、近接戦でヒュージを倒す事にする

マギの節約も考えたらレアスキルも温存

サブスキルが中心となる

 

「トリグラフでこれやると荒くなるから嫌なんだけど…仕方ないよねぇ!!」

 

ヒュージの群れに飛び込み、一体また一体と力強く確実に切り伏せていく

一人で複数を相手にする時に敵を確実に倒し数を稼ぐやり方と敵を倒しきらずに狙いを変えていくやり方の2種類があるが、海漓は主に前者だ

味方と言えど獲物を渡したく無いという相模女子ならではの思考…あとは死にかけのヒュージからの手痛い反撃を警戒して、だ。

後者の場合後続との連携が求められるが、今回の場合後続の3名は戦闘ではなく負傷者の救助に専念している為、連携どころの話ではない。

灯莉を支援に回すという手もあるが、グランエプレの戦果を求めないという方針と彼女の性格を考えるなら戦いよりも負傷者の救助やヒュージの観察を優先してしまうため連携は望めない

 

そんな理由もある為、ヒュージを早々に仕留める必要があるのだから自然と戦い方も荒くなる

一連の動作を流れるような動きで人々を魅了する、美しく華麗な動きでこなすリリィも多くいるが、彼女は違う。

 

シンプルに、かつ力強く、確実に葬る

それだけだ

 

この辺りの思考はガーデンによって異なる為、なんとも言えない

 

「海漓は大丈夫そうね…姫歌達も頑張るわよ!!」

 

彼女の戦闘を見て安心だと姫歌は判断する、が

 

「(私を信じてくれるのは良い…けど視界から完全に外すの止めてほしいんだよね…AZはそれやられるとマジでキツい)」

 

海漓に限らずAZ全体に言える事だが最前線を担うという事はそれだけ危険性が高いと言う事

その為にもAZ同士の連携や後続からの的確な指示や支援が求められる

今回もその必要があるのだが後続の3名からの指示、支援は一切ない

他にAZを担うリリィも居ない…文字通り一人で戦う羽目になっている

 

「(支援要員を寄越せぐらい言うべきだったかな)」

 

敵陣に突撃する際に後方支援を頼まなかった彼女にも責任はある

そこは反省だ。…多くの戦いを経験しているのにそんな当たり前の事を未だに言われる司令塔など駄目なのだが…

 

「(負傷者の保護は…順調か

もう少しヒュージを引き離した方がいいかなこれ)…って、何処行こうとしてんだ…よ!!」

 

姫歌からの指示が無い以上自分から彼女達の位置を確認し距離と状況を把握、場をコントロールするしかない

ヒュージから目を逸らすのは非常に危険な行為ではあるがこれをやらないと姫歌達から離れすぎて孤立したり逆に距離が近くなり姫歌達や負傷したリリィにヒュージや放たれた攻撃が向かってしまい状況が悪化する恐れがある為だ

 

 

相手が自分に合わせてもらうのと同じ位自分が相手に合わせることも重要な事

 

「…って、ヤバッ抜かれた!」

 

気を使いながら戦っていると数体が彼女を突破し奥の姫歌達の方向へと向かう

流石にこれだけの数を一人で押し止めるのは無理があった

色々な事に気を使いながら戦っているので尚更だ

 

「定盛ちゃん!そっち行った!」

 

「ちょっ、まだ作戦考えてる途中…!」

 

「何時まで考えてるの!?…って、警戒すらしてないし…!」

 

突破された事を姫歌に告げるが彼女はほぼ無警戒

何ならCHARMを構えてヒュージへの警戒すら行っていなかった

負傷者の保護に気を取られ、次の一手や万が一の事態を何も考えていなかったのだろう

 

「(完全に浮足立ってる…もう、本当にさぁ…!!)」

 

姫歌をサブリーダーと司令塔に任命し、新宿事変後も続投させると宣言した割に叶星がこの辺りを徹底して教えないのも問題ではあるのだが…

戦闘が始まっているにも関わらず案を出して来ない司令塔など論外だ

AZは前衛であり、確かに時間稼ぎをすると言う役目もあるが、それは司令塔が作戦を考える為の時間稼ぎではない。

作戦は到着時の段階である程度は決めなければならないし、遅くても負傷者の保護をしながらでも策を練っていなければならない。

叶星達と別行動というイレギュラーが発生したというのが言い分かもしれないが程度に差こそあれ戦場ではイレギュラーなどつきものだ

完璧は求めないが最低限の対応はして欲しい

 

「後ろは気にしないで、そのまま前だけ見て!!」

 

その声と同時に突破されたヒュージが撃破される

 

「アレだけの数を抑え込めるなんて流石だね!

でも君、叶星と高嶺から聞いた限りだと戦う時は射撃がメインなんじゃなかった?」

 

「弾を多めに持ってきたとは言え序盤からバカスカ撃ったらすぐに尽きるんで…ここは温存です」

 

楪が自身に加勢してくれるようだ

戦闘スタイルの違いに違和感を持ったようなので理由も説明する

 

「そっか。こっからは私達も加わるよ!

後ろには優秀なスナイパーもいるから安心して戦って」

 

「(姿が見えない椛さんが支援。豪華と言うかそれ本当なら灯莉ちゃんのやる事なんだけどなぁ)助かります」

 

攻撃の飛んできた方向を確認

ここからは見えないが姫歌達の近くに椛が居ない事から攻撃を行ったのは彼女だという事が分かる

欲を言うのならばその役目は既に灯莉が行っていなければならない事

自身のレアスキル、普段の戦法と役割を理解していないのだろうか?

 

後ろからは椛の支援に加え姫歌達も加勢してくる

これなら先程よりは楽に戦えそうだ

 

自分と楪が前衛

残りは後衛の形で戦う事になる

 

「(他人と連携したり引っ張るんだこの人…叶星さんと高嶺さんみたいに『私と椛の二人でー』とか平気でやるって思ってたけど)」

 

意外に感じたのは楪は自分と

椛は姫歌、灯莉、紅巴との連携を重視した戦いを行うこと

自分達でやるとばかり思っていた

 

「右側任せます!」

 

「分かったよ!!」

 

背中を預けるような形にもなるが、海漓と楪で分担してヒュージの掃討

そうかと思いきや

 

「よし!スペース作るよ!

突っ込んじゃって」

 

「了解!!」

 

楪の合図と共に海漓が突撃しヒュージを撃破

百合ヶ丘や御台場のリリィが使う技術を彼女は持っていない為、楪の動作の予測は出来ないが合図さえくれれば連携は完璧にこなせる

楪もそれを分かっているからこその行動だろう

…ヒュージの動きの予測にはサブスキルを使っている為攻撃が当たる心配もない

 

「(やりやすい…これがトップリリィの力)」

 

初めて組むにも関わらず非常にやりやすい…楪がこちらに合わせてくれている事を考慮しても、だ

彼女の技量の高さが伺える

 

余談になるが楪や椛も御台場時代に同じ予備隊で戦ってた以上、叶星と高嶺みたいな事をやると思っていた

 

 

楪達の加勢と連携でこの場での戦いが終わるのに時間はかからなかった

当たり前の話だがチームとして戦った方が効率は良いに決まっている

 

戦闘が終わり一度全員が集まる

すると

 

「海漓、楪様と何か打ち合わせしたの?

滅茶苦茶息合ってたじゃない」

 

「いや、何もしてないよ」

 

「何もしないであそこまでの連携を!?」

 

姫歌の問への答えは決まっている

さっきのは即席の連携

打ち合わせも何もない。そんな事をする時間がない以上当たり前だ

 

「即席の連携だったから不安はあったけど決まってよかったなーって」

 

「私も。

事前に打ち合わせしてなかったから上手くやれるかなーって少し心配だったけれど…決まってよかった」

 

楪も似たような事を口にする

手の内も何も知らない中で即席で連携する事への不安はあったのだろう

叶星と高嶺の後輩とはいえ、海漓の場合は中等部で既にリリィとしての型が出来てしまっている

百合ヶ丘やメルクリウスの出身ならともかく相模女子と言う御台場にしてみれば未知のリリィである事を考慮するならば楪としても不安はあったようだ

 

「天葉の妹って聞いたから少し不安だったけど…それもいらなかったね」

 

「不安…ですか?」

 

「すっごいきかん坊だったり戦闘中にテンション上がって性格変わるレベルで豹変したりしないじゃん?

もしかして、豹変するまでもなかった?」

 

「私はそういうの無いですね…はい

大丈夫な…はず、です。」

 

不安と言う言葉から能力面かと思ったが、全く別方向の回答だった為、気が抜けてしまう。

 

豹変するリリィなどそこら中に居る

ルナティックトランサー持ちでもないのに、だ

特段珍しい事ではない

自分も戦い方は荒いかもしれないが豹変はしていない筈だ…もしかしたらしてるかもしれないが、相模女子の他のリリィの濃さに比べたら薄いとは思っている

 

「楪様が海漓ちゃんに合わせてくださったんでしょうけど…即席の連携であそこまで上手く行くんですね…」

 

「御台場のリリィってすごいねー」

 

楪と海漓の雑談を見ながら紅巴と灯莉は即席で連携をこなせる楪の技量、即ち御台場のリリィの力を目の当たりにし、感激する

 

「では次に参りましょう

ヒュージに押されている防衛線がまだありますから」

 

椛は気を引き締め自分達は次の戦場へと向うのだった

 

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