途中、紆余曲折ありながらも自分達は最後の苦戦している防衛線の立て直しに取り掛かる
「…」
海漓は相変わらずの勢いでヒュージを撃破する
無言で、だ
敵の攻撃を回避し切り伏せる
これの繰り返し
姫歌達も戦っている…が
「姫歌ちゃんと灯莉ちゃんの信頼関係
これはもう愛ですね!!」
姫歌と灯莉への連携攻撃に対する的外れな感動
「そ、そんなんじゃ…」
「照れるなって定盛☆」
「照れてないし!!」
彼女達三人の場合戦場に慣れてくるとすぐこれだ
「(愛とかそんなんじゃなくて味方の背中を守れない狙撃手とか解雇レベル!!)」
そもそもの話、信頼関係や連携を愛と解釈すること事態が論外だ
確かに愛と言えるかもしれないし、そういう捉え方をされる事もリリィとしては少なくないし、そう考えると紅巴の言う事も間違いでは無いと言えるのが悲しいところだが
「な、なんか緊張感のない子達の集まりだけど…」
「でも強いよ、きっとかなりの戦いをくぐり抜けてる」
そんな光景を見ればグランエプレを初めて見た現地のリリィからすれば緩くても強いリリィの集まりとして見られても不思議ではない
「(バックがアホみたいに強いから!!
…トップレギオンが戦場で緊張感もたないって認識されるとかアウトだし)」
多くの戦いをくぐり抜け、生還したことは認めるが、それだって叶星や高嶺、合同レギオンになってからはヘルヴォルや一柳隊という強力な仲間がいたのが大きい。
合同レギオンになってからはヘルヴォルや一柳隊という強力な仲間がいたのが大きい
今回だって椛や楪というトップリリィがついている
初心者3名からしたら恵まれすぎてるほどに強力なリリィに囲まれ、好きに立ち振る舞えるという贅沢すぎる環境だ。
自分への認識は分からない
初心者よりは強いけど他から見たら弱い程度の認識だろうか?
だがこれだけ緩いということは別な見方だって出来る
「(緩くやっても生き残れる程の才能があるって事にもなるんだよな…)」
幾ら味方が強くても自分達が弱かったら意味がないのは当たり前の話だ。
それだけではない。
戦場で緊張感を持たずに立ち振る舞ってもここまで生き残れる運の良さも持っている
姫歌達は死にものぐるいで訓練しなくてもここまでの戦いを乗り越えられるだけの才能に加えて、運を持っている。
持っている人物だと認めるしかない
「(本当、才能の差を見せつけてくれちゃって…腹立つ!!)」
絶対にあり得ないが、もしも海漓が相模時代に似たような事をしてたらどうなっただろう
答えは簡単だ。目撃した上級生や話を聞いた教導官からの
大抵の場合ヒュージの餌になるか攻撃を受けて死ぬだけだ
仮に生き残れたとしても五体満足とは行かないだろう
戦場に出れば死にものぐるいで戦い、生き残ってきたのが相模女子のリリィだ
戦場の過酷さを知るからこそ荒くなったリリィだって多くいる
…元々荒い人物もいるが、それはそれだ
腹は立つが戦う時は冷静に
仮にも経験者が怒りに飲まれ、冷静さを失って戦うようではいけない
すぐに切り替える
ヒュージから放たれる攻撃を回避、接近し、そのまま斬り伏せる
「少し撃っておくか」
ここまで弾薬を温存出来たのは嬉しい誤算だ。
トリグラフを射撃モードに変形させ、左右同時に攻撃、放たれた弾丸はヒュージを容易く撃ち抜く
それを何度か行う
「ヒュージの動きを予測してる!?」
「しかも全弾あたってる…」
周りのリリィの感想が全てである
ヒュージだって動き回る普通に撃てば数発は外れるだろう。しかし、彼女の放った弾丸はまるで移動先を呼んでいたかのような軌道で放たれ、回避される事なく直撃する。
それが1発も外れる事なく、だ。
灯莉や雨嘉の様なタイプのリリィにはいらない技術かもしれないが、海漓のように前衛で射撃主体で戦うリリィには必須な技術である。
当たり前の話だが、ヒュージは動かない的ではない。速さに差こそあれ動き回るのだ。
予測して撃たなければ攻撃が当たらない
「今ので最後…か」
気がつくと付近のヒュージは全滅
椛と楪もヒュージの群れを倒し終えたようだ
「これで私達の仕事は終わりです
純さん達と合流しましょう」
全員が無事な事を確認すると椛はそう告げる
純達と合流、つまり特型ギガント級との戦いという事だ
想定外な事はありつつも椛のプラン通りと言う事になる
暫く歩くと、叶星達が戦っている場所に到着する
一度距離をとり再度攻撃するタイミングを伺っている所だったらしい
「(場所は更地…か障害物が多い方がやりやすいんだけどな)」
冷静に付近の状況を確認する。
付近に遮蔽物は無く、一見すると戦いやすいように見えるが、幻覚を生み出すユーバーザインとの相性は良くない
以前の梅達との戦闘のように遮蔽物を活かしながら戦うのが得意な彼女にしてみれば一番イヤな状況だ
この状況では奇襲も出来ない
幻覚で障害物を生み出しても露骨すぎるためヒュージへの効果も薄いだろう
逆に叶星達にしてみれば一番得意な状況ということだ
戦士らしく力と力の真っ向勝負が出来る
攻めるのは簡単だが、ヒュージから攻められた時には回避しかダメージを防ぐ手段が無いというのが非常にやりにくい
作戦も決まる
あのメイルストロムの攻略の鍵は灯莉のマギの色が見えるという力…世間で言うところの異能が握るらしい
ちなみに異能とはレアスキルやサブスキルとは違う能力であり、ごく稀にそう言う力を持つリリィがいる
「海漓は私とよ」
「わかりました」
この後、ダメージを与える為、特型ギガント級への攻撃をする際の攻撃班のようだ
船田姉妹
叶星と高嶺
椛と楪
そして、槿と海漓の合計4ペアで波状攻撃をするようだ
「(クリューサーオール使いの上級生とは縁があるのか、私?)」
合宿の際に一時的に組んだ瑤
新宿事変の時は藤乃
今回は槿
全員がクリューサーオールを使用する上級生のリリィだ
ヒヒイロカネ製の高性能機と言う事で使用者も多いのだが、それにしてもここまでペアとなると因縁に思えてくる。
何なら相模女子の現風紀委員長も使用している…こちらもやむを得ない事態で一度だけペアを組んだ
「海漓の場合はビシビシしごくとか戦い方を教えるとかそういう段階じゃないし
…そうね、使えるか使えないかで判断するわ。好きでしょ、そういうの?
無理なら外れて貰う、良いわね!」
「はい!」
一見厳しそうにも見えるが彼女の言う事は正論だ
足手まといを抱えながら戦えるほど甘い相手では無いし、無理なら抜けるのがお互いの為だ
相模女子出身の彼女からすれば使えるか、使えないかと煽られて怯むようなタイプでもない
「全員戦闘態勢!!ケリをつけますわよ」
戦闘時間の長さから純が指揮を取るようだ
彼女の合図とともに攻撃開始となる
「先行します!!」
「分かったわ!立ち位置はこっちから適宜指示する」
海漓も槿よりも前に出る
彼女はAZ、槿はBZの立ち位置だ
「デカイから当てやすい!!」
彼女は射撃で攻撃を的確に叩き込んでいく
切り込んでくる叶星や純達の邪魔にならないようにする事も忘れない。
流れ弾が味方に当たりましたなどシャレにならない
「(この位置じゃ邪魔か、私?)」
後続との距離と同じように突撃してくる前衛との距離を確認
動きを止める事はないし、攻撃も緩めないが立ち位置をどこにすれば良いかは悩む
スペースはあるため後退も視野に入れる
「海漓は後退!TZの位置まで下がって
私も上がる!!」
察知したのか槿はすぐに彼女に後退を指示する
槿もTZの位置まで上がってくる
「複雑に考えすぎ!
何も考えないのも困るけど、それ程の技術と中等部からの経験、視野の広さがあるなら自分の感性で動いても問題ない」
「わかりました!」
好き勝手に動かれるのも困るが、空いたところに入るならばポジション変更も有りということらしい
開いているということは入っていいと解釈するのもありという事…もしくはそこに入って欲しいから意図的に開けたかの二択だ
その後も槿や他のペアとの連携は続く
TZの位置まで下がったお陰か特型だけでなく槿や他の味方の立ち位置も把握できる為、自分のリズムで攻撃が可能
望む、望まないは別として自身の射撃が前衛で戦う純や初、叶星、高嶺への援護射撃にもなっている
「(敵には嫌がらせ、味方には心遣い)」
敵の嫌がる事をするのが戦いならば味方へは助かる事、心遣いをするのもまた戦いだ
純と初へのタイミングが手探りだが、これで良いらしい
特に何も言われないという事は続けても良いという事だろう
最初に出会った際の椛への対応を見る限り純は不要な事ははっきりと口に出す印象がある
槿も時折切り込んでは下がるの繰り返し
もしくは
「槿、少し借りるよ!」
「分かったわ!
海漓!続きなさい!!」
「了解です!」
楪から誘われれば楪との連携攻撃だ
「私は右から回り込むから海漓は左から
挟むよ!」
左右に分かれ近接での同時攻撃
純達もタイミングを見て加勢してくる
波状攻撃でメイルストロムも徐々にだが弱っていくのが分かる
好機とばかりにそれぞれが攻撃のペースを上げていく
「私が前に出て切り込むから後方から援護!
ご自慢の射撃を思う存分叩き込みなさい!!」
海漓からの支援に合わせ槿がメイルストロムに接近、流れるような動作で攻撃を叩き込んでいく
「(反撃なんてさせるわけないじゃん!
!)」
勿論、メイルストロムも槿に反撃を試みるが海漓は触手や胴体に射撃を叩き込み反撃の隙など与えない
序盤に弾薬とマギを温存したおかげで思う存分に射撃が可能な事も大きい
攻撃を終え、槿も下ってくる
「いい加減沈めっての…!!」
弱りはするが、倒れないメイルストロムに悪態をつく
「流石にノインヴェルトじゃないとギガント級は倒れないわよ
これだけ打ち込んだし弱ってるとは思うけど」
槿もその言葉には同意する
ギガント級はノインヴェルト戦術じゃないと倒せない。
しかし、弱らせるだけならばノインヴェルト戦術じゃなくても可能
これだけ弱らせれば、と言うのは誰もが思っている
そんな時だった
ギガント級が再度攻撃の意思を見せる
「来るか…!!」
「かかってきなさいよ!!」
全員、身構えるがギガント級の狙いは自分達では無かった
「…下がれ!!狙われてる!!」
「えっ!?」
気配の先に居たのは紅巴と姫歌
海漓も急いで教える
自分達の攻撃に見とれ警戒を解いていたらしい
ヒュージは自分達ではなく二人を狙うつもりだ
あそこまで警戒を解いていては動作に遅れが出る
攻撃を逸す、もしくは中止させようと彼女は射撃を叩き込むが、びくともせず、メイルストロムは攻撃を放つ
しかし放たれた攻撃は二人に当たる事はなかった
直撃する直前に純が二人の前に盾となるように立ち、攻撃を受けたのだ
マギの障壁なのか、制服の機能か、はたまた防御系のサブスキルを発動したのか
理由は定かではないが、幸いな事に大きな怪我には繋がらなかったようだ
「何で戦闘中に警戒解く!?
バカじゃねーの、特型ギガントだぞ!?」
「警戒を解かないなんて基本中の基本よ、全く…」
やはりというか何というか、不安視していた事が当たる
しかも今回は他校のリリィのフォローがなければやられていたレベルの失態だ
海漓は怒るし、槿も呆れている
「トラブルはあったけど戦闘中
切り替えるわよ!!」
「はい!!」
いつまでも引きずる訳には行かない
切り替えて再度、攻撃を行う準備をする
戦いはまだ終わらない