Assault Lily〜御使いの妹   作:ラッファ

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第66話

イビルアイに敗れた翌日

梨璃の回復待ちということも有り、各々自由行動…なのだが空気は重い

 

それもそうだ、まだ何も解決していない

グランエプレも同じいや、一人だけ違った

 

「(異常なし…まだ仕掛けてこないか)」

 

海漓は一人早朝から休憩を挟みつつ何度もパトロールに出ている

何度も言うか敵は特型ギガント級だけではない

ケイブから出てくるスモール級も立派な敵だ

 

昨日のあのミーティング後だ

海漓は叶星に二人で話がしたいと声をかける

 

「で、私はどうすれば良いです?

ギガント級に出ますか?」

 

改めて問う

リリィの自主性を尊重しガーデンの制度を利用しての行動でスパイ疑惑をかけられたのだ

勿論真意を伝えなかった事は悪いが、自分で考えて行動して責められたならば隊長の命令で動くしかない

 

「このレギオンの隊長は貴方です。

ギガント級に出るでも引き続きルドビコ女学院の手助けを続けるでも私は貴方の命令に従います

どうすれば良いですか?」

 

グランエプレの隊長は叶星

海漓からすれば叶星の命令は絶対だ

どちらでも大人しく従うだけ

先程のミーティングで黙って謝り引き下がったのだって所詮夢結は部外者だからだ

神庭に通い、グランエプレに所属してる彼女からすれば一柳隊に口を挟まれる筋合いは無い

いくら自身の判断とはいえ作戦中にその場を放り投げたりしたのならば責められても仕方がないが、彼女の場合その場にすらいなかったのだ

疑うなんてお門違いだし、同盟先ではあるが、他校のリリィを自分達の戦力として当たり前に計算されても困る

 

話を戻すが、

ルドビコの戦力はパンク寸前と言う先程の彼女の言葉を信じるのか

それともルドビコ女学院の力を信じるのか

 

「海漓ちゃんに任せるっていうのが私からの命令じゃ駄目かしら?」

 

「(決めたくないのか、決められないのかどっちだよ…)なら私はルドビコ女学院のサポートを継続させてもらいます。」

 

どちらでも指示に従うと言ったにも関わらず任せると言う事を言うのは流石にどうかと思う

 

「(考えさせる事と何もしない事は違うって分かってるよね、この人?)」

 

叶星の指示が無ければ何も出来ないというのも問題かもしれないが、何度も説明するが彼女はグランエプレの隊長だ

自身の発言や行動には責任がついて来る。戦闘に限ったことでは無い

考えて行動するのが駄目ならば命令という形で行動する理由を周囲に示する必要がある

それが海漓の行動の正当性を説明する理由になるからだ

真意は、「自分はどうすれば良い?ガーデンに認められた権利を行使した私の判断は正当性に欠けるっていう百合ヶ丘に解釈されたんですけど?」だ

流石にこれぐらいは読み取って貰わなければ困る。

それへの回答が「任せる」は余りにも酷い

指示に従うとまで言ったのに、だ

高嶺の事や勉強目的とは言えかなりの確率で自分達を他校のリリィに任せる事もあり、高嶺の事で精一杯、他なんて気にしたくないと言う風に捉えられてもおかしくはない

…高嶺の件に関しては自分達のエゴで事情を隠し、結果苦しんでいるのだから自業自得と言う見方も出来るのだが

 

どっちにせよ、任せるというのならば当初の予定通りルドビコ女学院のサポートを行うだけだ

一度やると決めた仕事は最後までやり通す…彼女のポリシーの一つだ

 

そして、その選択は悪くなかったと思う

なぜなら

 

「うぃーお疲れーッス」

 

「乙やでー」

 

「なんで外征先で我が物顔で過ごしてんですかね…」

 

相模時代の友人である舞弓が一人のリリィを引き連れ相模女子から外征して来ていたのだ

その名は九條 魅夢(くじょう みゆ)

海漓と同じく一年生、ポジションはAZだ

 

「こっちも長旅だったんや

許してーな」

 

「この距離なんで陸路で来たッスよ」

 

外征にはガンシップと言うイメージが強いが普通に陸路も使う

近隣ならば基本的に陸路だ

ちなみに相模原から新宿までは長旅と言えるほど遠くない

大げさに言っているだけだ

 

「で、どうしたの急に?相模の任務は?」

 

「…まぁ、本題入った方がええわな

話しましょ」

 

海漓の問に素直に答える

はぐらかすだけ時間の無駄である事はお互いに分かっているからだ

 

「ルドビコ女学院の現状確認と負担軽減の為の支援

これが目的や…まぁ町田方面をこっちで引き受けるっちゅー事やね」

 

「町田方面から相模原にヒュージが流れ込んできて結構笑えない事になってるッス

ルドビコ女学院も中途半端な戦力しか回して来ないから正直な事言うと邪魔ッス」

 

東京都町田市、ここは本来ルドビコ女学院の守備範囲なのだが相模原とも接しており相模女子も準守備範囲と言う形で対応している

その為、ルドビコ女学院ともエレンスゲ程ではないが関係は良好

外征の際も便宜を図ってもらっている

 

とは言え御三家の守備範囲だ

そこへの外征は高等部が担当し中等部は担当から外されている

中等部は自分達の守備範囲の防衛の他に外征してくるエレンスゲ中等部の対応が主だ

…高等部は高等部で対応する。当たり前の話だ

一葉や瑤、恋花と知り合ったのもその関連だ

 

ルドビコと良好な関係を築きエレンスゲと姉妹校提携

イルマから人員を迎え入れる

相模女子は中立と言えどゲヘナ寄りと言われてる背景だ

見分け方のノウハウも手に入る

 

「町田方面を相模で引き受け、ルドビコからの出撃をやめさせれば少しは回復と近隣の守備に人員を割ける、か。」

 

ルドビコから町田までは距離がある

町田方面の負担を相模女子で引き受ければその分近隣に人員を割ける

回復にだって回せる

パンクしかけている現状では使える戦力は一人でも多い方がいいし備えるべきだ

 

ここで気になる事がある

 

「それ、ルドビコ女学院からの依頼…じゃないよね

私ら(相模女子)は依頼があれば受けるとは思うけど…」

 

そう、それはルドビコ女学院が依頼したとは思えない

こんな状況になったとはいえ御三家

海漓が知る名門ならば出来ませんなんて言わない筈だ

まぁ、相模女子は正式な依頼(と欲を言うなら見返り(撃破報酬))が有れば間違いなく(と言うか確実に)動く

勿論依頼内容を生徒会や特務レギオン、教導官が綿密に精査した上での判断にはなる

相模女子…というよりヒヒイロカネの設立の背景を考えればそうではないかと言う彼女の勝手な思い込みだ。

これが国や都からの依頼ならば確実に動く事はつけ加えておこう

 

「当然。

今までのデータを全部送りつけて『お前らが万全じゃないリリィばっかり派遣するから被害が増えてる

万全になるまで相模が町田守ってやる』って」

 

「キャパオーバーだって気づかへんのやろうなぁ」

 

「こんな状況でもプライド捨てられないか…」

 

機能を失っても名門としてもプライドは持ってるらしい

本当ならば増援の受け入れだけでなく、守備範囲の縮小

それこそ相模女子のような形で近隣校と打ち合わせを行い、自分達では出来ない所を任せるのが1番なのだが、他校

それも自分達より格下相手に頭を下げる事を嫌がるのはもう分かりきっている

 

「あの鬼教官の話だとイルマってルドビコに何度も助けられた言うてたし恩を返しに来るぐらいの事せーへんのかいな?」

 

「今日はたまたまいないだけ、って訳じゃ無いッスよね?」

 

中等部時代の事を思い出す

イルマとルドビコはライバル関係であると同時に危機を助けてもらった間柄だったと聞いていた

かつてのライバルの危機

恩を返す事も加わればイルマが率先して駆けつけてきてもおかしくはないと思っていたが

 

「ずっとだね

勿論、派閥の違いやイルマの任務もあるから厳しいのは分かってるけど」

 

今日に至るまでイルマのリリィはルドビコ女学院に顔を出してすらいない

ルドビコは過激派

イルマは穏健派

派閥の違い、向かわせるリスク

自分達の本来の任務だってある。

簡単な事ではないのは分かりきっている

そして時間が過ぎれば人も変わる。

彼女が相模女子に赴任してきたのは今の高2世代が中等部に入学するのと同時期

教えを受けているのはイルマの中等部を経験した生え抜きかつ高3世代が最後になる

例の教導官が情に厚く義理堅い人物で相模時代は日頃から「戦果を上げる事は大切だが、それと同じ位人との縁や繋がりを大切にしろ」と言っていたし、イルマ時代も同じ事を教えていたと仮定しても当時を知る者は数少ない

今のイルマは没落したライバルとは関わり合いたくないとでも思ったのだろうか

だとすると随分と薄情な連中だと思ってしまう

 

だがこれも全て彼女達の根拠の薄い憶測に過ぎない

一つ気になるとすれば今のイルマには彼女のような

「何かあったときの責任は大人が取れば良いだけ。お前達はルドビコの危機を救いに行け」と背中を押す(と言うかノロノロしてたらぶっ叩く)タイプの教導官がいないのかも知れない

…もしくは彼女が異端だったかのどちらかだ。

 

そんな風に考えてると

 

「おーい!」

 

昨日供に行動したルドビコ女学院のリリィがこちらに向かって来る

 

「あれ?相模女子のリリィもいる…

まぁ、いっか。

この後こっちも警備の会議したいんだけど参加してもらっていいかな?」

 

「良いですよ。」

 

案内され、会議室に連れてこられるが気になる事がある

 

「リリィの数少ないッスね」

 

この場にいるリリィの数が明らかに少ない

すると

 

「イビルアイが引き連れてきた特型スモール級に対応するからって人員を持って行かれちゃって」

 

「この人数でルドビコ女学院近郊を守り切れ…と?」

 

「そう。」

 

イビルアイは一柳隊とグランエプレが対応する事で確定しているが、引き連れられるように現れている特型スモール級は広範囲に渡って出現

かなりの数が現れ激戦になる事が予想され、そちらへの対処に重点を向けるようだ

町田地区は相模女子がいるがルドビコ女学院守備範囲は相当広く、そちらに人員を回すことにしたらしい

…その為に近郊の守備担当の人数を減らすというのはいかがなものかと思うが

 

「ガーデンを留守にするわけにもいかないから本当に大変で…」

 

ガーデンにもリリィはいる

しかし、全員がコンディション面に不安を抱える者ばかり

そんな中でガーデンを留守にし、万が一にでもヒュージの襲撃を受ければ文字通り壊滅してしまう恐れがある

ガーデンへのヒュージの襲撃だって警戒しなければならない

 

「(ふーむ。)」

 

「あの…一つ、良いですか?」

 

「どうしたの?」

 

「初手の出撃、この近隣ならば私達三人で行きましょうか?」

 

海漓はそのように提案する

三人とは海漓、舞弓、魅夢の事だ

 

「昨日出撃したエリアなら地形は頭に叩き込んだんで…新たなギガント級やラージ級の群れでも来ない限りは…三人いれば十分です

ルドビコ女学院の皆さんはガーデンで増援や緊急時の際のバックアップとして待機…どうでしょう?」

 

「えっ、いや…でもそんな事までやってもらう訳には」

 

「…私達は外征組。いずれはガーデンに帰る身です。そうなるとココ(貴方達の守備範囲)は貴方達だけで守る事になります

まぁ、リリィの消耗が激しいと私達も帰れないんで休める時には休んどいて欲しいんですよね」

 

これは本音だ

自分も舞弓達も町田にいる相模女子の本隊もいずれは所属するガーデンに帰らなければならない。

動けるリリィが増えなければいつまでも帰れず、今度は所属先に影響が出る

戦力が整っている百合ヶ丘や相模女子…ヘルヴォル以外にもクエレブレを筆頭とした複数のトップレギオンを抱えているエレンスゲはともかく神庭は生徒会防衛隊とグランエプレの2つしかトップレギオンが無い

秋日達ならば大丈夫とはいえ負担が増しているのは事実

いつまでもルドビコにいる訳には行かないのだ

自分達が居る間は休める時はしっかり休み戦線に復帰する準備を整えてほしいのだ

勿論、急な出撃が多々ある為なかなか難しいのも分かっている

 

「こっちは外征、海ちゃん達もルドビコへの編入じゃなくてあくまでも駐在

いずれ帰る事になるのは事実ッスからねー」

 

「後は…外征してる以上はある程度の戦果も求められるんで…今回はこの二人に花(と報酬)を持たせてやって欲しいってのもありますね

流石に外征して撃破0は不味いんで…怒られます」

 

「なら…お願いしようかな?」

 

ルドビコ女学院のリリィだ

ガーデン毎の事情はある程度認識しているらしい。

まぁ本当にヤバくなったら来てほしいと予め伝えたのも大きいだろう

スモール級相手ならばこちらは最少の出撃で敵を殲滅したい

それが本音だっただろう

提案は願ったり叶ったりだった筈だ

 

そんな中、ヒュージ出現の警報が鳴る

イビルアイが出現

更には近隣にも特型のスモール級が出現、イビルアイに合流するかのような動きを見せている為、自分達以外の戦力を総動員し対応に当たるそうだ

 

「先ずは主力を引き離す…昨日と同じか

曾根ちゃん、魅夢ちゃん。こっちも準備」

 

「私達も準備!!」

 

ルドビコ組と神庭相模の連合組で準備を進める

 

そして、会議室を後にすると

 

「本隊は町田方面に出現したヒュージと戦闘になってるらしいッス」

 

どうやら町田にもヒュージが現れたらしい

そちらは相模の本隊に任せるとしよう

誰が来ているかは分からないが、来ているのは相応の実力者ばかりの筈。余程の事がない限り負けることは無い 

 

まさか支援初日に大群の相手をする羽目になるとは思っていないだろうからそればかりは気の毒に思う…が相模のリリィだ。ここぞとばかりに戦果と報酬の為に張り切るだろう

…話を聞きつけて遊糸あたりも向かいそうな気もするが…それはそれだ

 

 

だが気になるとするならば

 

「このタイミングで町田にも?」

 

「らしいッスよ」

 

あのギガント級の影響だろうか?

ギガント級やアルトラ級ならば遠方のヒュージに影響を与える事は確認済みだ。おかしくはない

 

「出撃してった連中やギガント級は?」

 

「順調にココから離れてってるッスね

イビルアイがそんな動き見せてるッス」

 

全員、見事に誘い出されていってるようだ

ここまで見事に引っかかるとむしろ清々しい

 

出撃した面々がルドビコ女学院近隣との距離が開いた丁度その時だった

 

「警報!!

やっぱり出たヒュージは陽動ッスね」

 

再度警報、近隣に大量のケイブが発生

スモールとミドルの大群が出現したという

 

「弱った戦力ならミドルまでで十分なんて随分舐め腐った事する個体やねぇ…」

 

「何度も同じ手が通用するって考えてる時点で舐めてるだろ

こっちとしてもラージ級やギガント級の群れなんて来られても困るけど」

 

そう。ヒュージは明らかに舐めている

同じ手が通用すると思い込み何度も何度も仕掛けてくる

勿論、ヒュージは対処しなければならずそれがギガント級と言うならば尚更

しかしそれらの事情を考慮しても敵の陽動を一切疑わずに追撃し何度も引っかかっているリリィ側(特に名門と呼ばれるガーデンに通うリリィ)にも問題はある為、一概に言い切れないが

もう少し慎重にはなるべきだと思う

 

「(陽動疑って慎重な考え見せたら臆病者とか抜かすからなぁ連中…コッチからすりゃ何も考えずに突っ込むとか馬鹿かっつーの)」

 

かつての戦いでの光景を思い出し少しばかり苛立つがすぐに切り替える

 

とはいえスモールとミドルだけなのは幸運かもしれない

数は相手が多いがこれから向かう戦場は遮蔽物の多い住宅地、平地ではない

少しばかりこちらが有利だ

遮蔽物など知らんとばかりに踏み潰し高火力の攻撃を叩き込んでくるラージやギガントよりはよっぽどマシ

と言うかそんなのが来たら流石に無理である

ラージ級は頑張ればどうにか出来るがギガント級の群れをこの戦力で対応はどう頑張っても無理だ

出撃していった連中に走って帰ってきてもらうか御台場やイルマ、近隣校に救援を求めるしかない…その位の判断は出来ると信じたい所だ

 

「じゃ、こっちも行きますか」

 

「はいよー」

 

「来たからには働かんとなぁ

サボったら後で大目玉や」

 

とはいえ自分達も残ったからには役目を果たす

何も出来ずに醜態晒しました、は無様すぎるのだから

 

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