Assault Lily〜御使いの妹   作:ラッファ

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第67話

 

 現れたヒュージを撃破する為に出撃した三人

 

「先ずは数を減らす!!

頼んだよ二人共」

 

「「了解」」

 

 先ずはヒュージの数を減さなければない

陣形や配置など細かい事を決めている間にもヒュージはこちらに向かってきている

この際、手段は選んでいられない

故意に壊すつもりは無いがある程度の建物への被害は覚悟だ

戦闘状況に比例して近隣の建物の被害に差が出るがその位は許してほしい

ヒュージの攻撃から全ての建物を無傷で守りましたなどこの状況では不可能

 

「うちらを舐めた事、後悔させたるわ!!」

 

魅夢はそう言いながら切り込んでいく

彼女の使用するCHARMはグングニル・カービンだ

ヒュージが視界に現れると同時に切り込んでいく

 

「挨拶代わりに切り刻んだる!!」

 

 シンプルにかつ力強い動きでヒュージを切り裂き撃破する

ヒュージからの攻撃も難なく回避する

海漓と舞弓も後方から援護射撃を行う

隙となっている所や倒しそこねたヒュージ、死角から現れるヒュージへの対処

やる事は様々だ

 

「ペース配分考えなよ!第二、第三波が来るかもしれないんだからね!!」

 

「わかっとる!!」

 

 これで終わりならば良いが、ヒュージの増援が現れることを考えるなら後先考えずに全力で戦い途中でマギが尽きましたなど笑い話にすらならない

 

「曽根ちゃんも前に出て魅夢ちゃんのカバー」

 

「了解ッス」

 

あぁは言ったが念には念を入れ舞弓を前に出しフォローに回す

二人のフォローならば一人でも十分だ

 

「ソーレっ!!」

 

「その機体そういう事想定されてないって!!」

 

 そう言いながらモンドラゴンをヒュージに投げつける

高速で放たれたソレは一体のヒュージを貫く

その間、舞弓は素手だ

モンドラゴンも周辺のヒュージからの攻撃で破壊されるリスクもあるが彼女は高速で移動し自身の機体を回収

その間もヒュージは現れるが海漓の支援も有り無事に機体を回収

 

その直後、新たに現れたヒュージが攻撃を放つが

 

「モンドラゴンはこう使うッス!!」

 

側面で攻撃を防ぐ

CHARMを盾のように使ったのだ

 

「盾代わりに使っても良いけど投げるのは違う気が…まぁ、良いけど…」

 

モンドラゴン、設計上は盾としても使える為、この使い方は間違いではない

が、投擲は想定されていないはずだ

 勿論投擲する事を想定された機体も存在するがそう言うのは大体超がつくほどの高性能CHARMだ

身近な例だと姉の使う機体や秋日の使用する機体が該当する

 

「海漓、そっちに落とすで!!」

 

「はいよ!!」

 

建物に張り付いたヒュージを魅夢は壁を駆け上りながら接近、ヒュージの足のみを切り裂きそのまま海漓のいる方向に蹴っ飛ばす

成すすべも無く落ちてくる個体を自慢の射撃で撃ち抜くだけだ

 

「司令部、主力部隊は?…通信障害

またぁ…!!」

 

海漓は戦闘を行いながら司令部と通信を行う

こんな状況だ、主力メンバーが早めに戻ってきてくれれば良いのだがいつも通りの通信障害で主力や一柳隊、グランエプレと通信は繋がらないという

 戦闘の影響か、はたまた通信障害を引き起こす個体が向こうに居るのか

それは分からない

 

 だが絶望はしない

他校や出撃していった面々の増援は来てくれたらラッキーレベル

 今ある戦力で戦い抜けばいい…それだけの事だ

そんな風に考えていたのだが

 自分達が戦闘を行っているこの場だけでなくガーデンを取り囲むように残り3方面、同時にヒュージの群れが出現したと伝えられる

こちらもスモール級がメインのようだ

 

「(攻め方を変えてきた?)」

 

 戦いの中でヒュージがリリィやレギオンを包囲することは有れ拠点を襲撃する際に包囲して攻める事は無かったはずだ

 基本的には正面から大群で押し寄せ、飲み込むように制圧する。もくしくは定期的に襲撃を繰り返し相手を弱らせ、最終的に制圧するがヒュージの襲撃パターンだ

 

 ヒュージは量と質で人類に戦いを挑んでくる

これが世間一般的な常識となっている

 

集団を複数に分け、最終的に拠点を包囲するやり方は今回が初めてのはずだ

これが常套手段ならば人類はここまで戦えていない

 ルドビコ女学院は都会のど真ん中に建てられており、建物に囲まれている

 陽動で主力を引き離し手薄になったところを攻めるなら一方面ではなく多方面から包囲し倒すのだって立派な作戦

このタイミングは恐らくヒュージ側が痺れを切らしたか、自分達が最後だと思い次こそはガラ空きと舐めてかかっているかのどちらかだ

 包囲されてしまった以上こちらも動ける戦力を全て出撃させる必要がある

出し惜しみしてしまえばヒュージが自分達の拠点まで何の妨害も受けずに辿り着き、大きな被害をもたらす事は明白

 

ここ最近の襲撃と今回の行動

思うところは多々あるがそれは後だ

 

 ヒュージ出現と対処の為の配置を行う為、残念な事に自分達への増援は送れないと伝えられるが仕方の無いことだ

 

「(とにかく守りに徹して生き残る事を最優先とした立ち回りさえしてくれれば)」

 

 こういう危機的な状況や追い詰められた状況に直面した際、耐性のない者、戦闘経験の薄い者は緊張感や極度のストレスから無謀な特攻じみた行動をする者が多い傾向がある 

 相模女子では対策としてその手の耐性をつける訓練はかなり重視して行う

中等部、高等部問わず、だ

 

 春先に発生したガーデン崩壊の時と違い今回は精神的支柱となるリリィが軒並み不在。彼女達の不在がどのような影響をもたらすかも分からない

 

 殲滅が出来ればそれがベスト、無理ならば主力が戻ってくるまでの間とにかく耐え忍ぶしかないのだ

 

 こちらも戦闘が続いてる為、一度通信を切る

ヒュージから少し離れた所で物陰に隠れ現状の確認

 魅夢と舞弓の2名も一度後退してきた

 

「3人だけ出撃して他は温存の方針でよかったッスね

総動員かけてたら配置が間に合わずにガーデンがドカーン!!ッスよ」

 

「…投げやりになって特攻とかしないよね?」

 

「…状況判断出来ない死にたがり3流リリィならともかく御三家やぞ?

流石に大丈夫やろ」

 

 特攻したってヒュージは止まらないしむしろ被害を増やすだけ

その位の判断と理性、立ち回りは出来ると思っている

 それこそ一葉も特攻癖があったが高等部で隊長を努めているのだ

 改善されたと信じたい

 

「まだ行ける?」

 

「問題無し!」

 

「同じく」

 

 マギ保有量は自分よりも上、CHARMにも大きな消耗は見られない

 

「こっちも耐久戦、マギとCHARMの消耗には注意してよ」

 

 二人は頷くと同時に建物から飛び出し、なるべく気づかれないように移動していく

彼女も攻勢に出る

 

 移動し、ヒュージの群れを見つけると先制攻撃を行い、直ぐに建物の影に隠れる

当然、ヒュージからの反撃が来るが遮蔽物に阻まれ当たることはない

 そこからはカウンター

身を隠しヒュージの攻撃をやり過ごし攻撃が止む一瞬の隙を逃さぬように弾丸を叩き込み確実に全滅させる

 その他にもユーバーザインで姿を消しヒュージを待ち伏せ、自身を通過した後、CHARMを近接モードに切り替え背後から切り伏せる

それか幻覚を生み出し混乱している所を射撃で撃ち抜くか

 

 やる事は単純かもしれないが、正面からの戦闘を避け奇襲に専念するならば仕方のないことかもしれない

余計なマギと体力を使わない為と言うのも理由だが

正々堂々、力と力の真っ向勝負など体力の無駄

耐久戦でやることでは無い

 

 魅夢と舞弓も最初こそ時折派手な事をする者の基本的には奇襲に特化した動きを行っている

 モンドラゴンはともかくグングニルカービンはCHARMとして見るならば小型の部類で単純な動作で敵を倒し、離脱も簡単にできる

 

 ちなみに舞弓のレアスキルはブレイブ

魅夢はゼノンパラドキサだ

高嶺と同じレアスキルなのだがスピードだけで比較すると高嶺の方が上

本人曰く配分7:3だそうだ

7がこの世の理で3が縮地

 

「ん?」 

 

 戦闘を行っている途中、数名のリリィの気配を察知し、辺りを見渡すと

 

「いた!!」

 

そんな事を言いながらこちらに向かってくるリリィ

一葉である

 

「ずっと三人で戦ってたの!?

ルド女や他の皆は?」

 

 恋花としても前線に三人しか居ないこの状況は異様に見えているようだ

彼女達が出撃していった時はまだ自分達や一柳隊の他、多くのリリィが残っていた状態なのだから仕方がない

 

「全員特型ギガント級やスモール討伐の為に出撃した」

 

「…どうして海漓は出てないの?」

 

「まぁ、色々と思う所もあったし

結果的に残って正解だったよ」

 

 自分達の内部事情に他校のリリィを巻き込むわけにもいかない。特に都内のガーデンなら尚更

言葉を濁す

 

「他のヘルヴォルの面々は?」

 

「もう少ししたら来るよ」

 

 その言葉通り、残りのヘルヴォルの面々も遅れて到着

計8人のリリィがこの場にいることになる

 

「あの時と同じだね

私と海漓でダブル司令塔やった時」

 

「言われてみれば…まぁ状況は違うけど」

 

「ちょっと、二人で司令塔やったことあるの!?」

 

「合同訓練の時に襲撃受けちゃって乗り切るためにやむを得ずッスね」

 

 自分達が中等部の時

相模女子の守備範囲内で行われたエレンスゲとの合同訓練中にヒュージの襲撃があり、自分達が対処した時のことだ

 その時はメインの司令塔を海漓、サブ司令塔を一葉が努めた

土地勘のある海漓がメインを務め一葉はサポートする形で戦った

 

「あの時と同じ体制で行くなら私がメインになるけどどうする?

一葉がメイン張る?」

 

 どちらがメインを務めるのかは確認しなければならない

しかし今の一葉は自分のレギオンを率いてこの場にいる。それを考慮するならば一葉がメインの司令塔を務めるのも一つの手である

 

「海漓がメインで良いよ

…だけど作戦が余りにも複雑すぎると藍が混乱するから」

 

「分かってるよ

一葉、藍ちゃん、曽根ちゃん、瑤さん、千香瑠さんが先陣を切って下さい

私、魅夢ちゃん、恋花さんは5人は撃ち漏らし、路地裏や建物内に逃げ込んだヒュージの掃討です」

 

 一葉の要求を踏まえた上での作戦と配置を伝える

本来ならば8人でのレギオン…だがそれは避け、二組に分けて行動させる事を選ぶ

 

「海漓、これ、なんの基準?

戦力偏ってない?」

 

「CHARMの大きさで振り分けた

私達3名は小回りが効く機体なんで狭い所へ逃げ込まれても対処出来るけど…他はデカすぎる」

 

 簡単に言うならば戦型と使う機体の大きさだ

今回のような住宅地での戦闘ならば小さめの機体を使うリリィが重要

 大半のCHARMに言えることなのだが機体が大きすぎる

更地や広い所であれば何も問題ではないが住宅地や木々の生い茂る山中など狭い所で使うには余りにも不向きな形状が多すぎる

振り回せば建物や木々に引っかかりそれこそ大半のリリィの忌み嫌う余計な破壊に直結する

 その為、基本的には逃げ込まれないように注意し広い所に誘い込んで倒すのがセオリーとされている

逆に小回りの効く機体であれば人がようやく通れるような狭い所や万が一建物に逃げ込まれた時に素早い対処が可能

 追撃し射撃、近接、好きな方でやれば良いのだ

 

「つーわけでこっからは掃討戦

ギガント級組が帰ってくる前までにケリつけるよ!!」

 

 その言葉と同時に行動再開

一葉達が先陣を切ったのを確認すると

 

「じゃ私達も行きますか」

 

「おっしゃ!!」

 

 この三人では魅夢が一番槍を務める

一葉達の攻撃からの逃れ、逃げこんだヒュージを見つけ次第追跡し撃破する

 勿論ヒュージも逃げようとはするが左右を建物に挟まれ、前に進もうにも魅夢が追い詰めるから逃げられるわけがない

 

「恋花さん、ユーバーザインで逃げ道塞ぐんで後はサクッとやっちゃってください」

 

「悪役になってない?大丈夫だよね?」

 

「別にリリィは正義の味方って訳じゃないと思いますけどね…」

 

 ユーバーザインで幻覚を作成、偽りの壁を作り出しヒュージを追い込み逃げ場のなくなった所で恋花が射撃で一方的に倒す

ヘルヴォルや一葉の信念や性格を考えるとこういう戦い方はもしかしたら反するのかもしれないが別にリリィはヒーローではない

 彼女達も嫌うであろう余計な破壊さえしなければ問題にはならないであろう

 

 余談だが神庭の文化祭でとある事件が発生し、校舎内にヒュージの侵入を許した際もこれで対処した

 その時はそこに至るまでの経緯もあり我慢ならず行動

校舎内に居たリリィに指示を出し人の居ない訓練場に追い込み八つ当たりも兼ねて追い詰められ逃げ場を無くした大量のヒュージを一人で殲滅しようと思ったのだが

「わたくしも混ぜてください」と藤乃が協力を申し出てきた為二人で殲滅した

 その結果、殲滅には成功したが制服がヒュージの体液まみれの凄い姿になりお互い笑っていたのだが遅れて駆けつけて来た鈴夢は本気でビビって気絶し秋日に怒られた事もあった

 

 ヒュージ追いつめ戦法、海漓一人でも十分可能だ

気が付かれないように建物の入口や周囲を塞ぎ、動きを止めたところを仕留めることも十分に可能

 だが見せるのはあくまでも実体がない幻覚、強引に突破されることも有るが突破した先に一葉たちがいるならば通信をいれば対処してもらうだけ

 

「あっ、コンビニに入った!!」

 

「こっちもダイナミック入店や!!」

 

「足元に気をつけて」

 

 建物(今回はコンビニ)に入られる事も有るが、すぐに追撃しこれ以上荒らされる前に最短で対処

 撃破したらそれで終わり。至極当然だ店内の物を勝手に持っていく等の法に触れる事をするリリィなど居ない。そんな事をする者は最早リリィですらない、只の犯罪者だ

 

 今回は店内での話

これが民家の場合はかなり複雑な対応になる事も多い為説明は割愛する

 

 だが撃破の最、どうしてもヒュージの体液で汚れてしまうがそればかりは見逃してほしい

 

 ヘルヴォルの合流と特性に応じた班分けによるヒュージの対応

上手くハマった事もあり早々にヒュージをすべて倒し終える

通信を聞く限り他のエリアでも大きな被害が生じる前に撃破できた事

ギガント級も倒し終え、こちらに帰還している事が告げられる

町田方面も相模女子が殲滅したそうだ

 

「何とかなってよかった…」

 

「拠点に帰るまでが出撃ですよ…まぁ無理はさせちゃいましたよね。帰ったらゆっくり休んでください」

 

 恋花は安堵し、座り込む

よくよく考えてみればヘルヴォルも連戦だ

彼女達にもかなり無理をさせた形になる

 ヒュージを倒したとはいえここは戦場。ヒュージサーチャーに反応は無いが万が一と言う事も有るため気は抜けない

 

「…」

 

「海漓?」

 

「あ、あぁ。どうかした?」

 

 気を張りながらも色々と考えた事を不審に思ったのか魅夢が声をかけてくる

 

「どうかしたん?浮かない顔して

そら疲れたのは有るけど」

 

「いや、今回の襲撃で思う事もあってね…」

 

「後で話聞いたるわ」

 

思う所がありすぎる

この場に遊糸や秋日などその手の話のできる信頼できる人物がいれば良いのだが生憎と不在

 ならばグランエプレ…とも思うが話しても抱え込み余計に現状を悪くされるか、警戒よりも好奇心で対応されるかの2択

 一葉には申し訳ないが背後のエレンスゲやゲヘナを完全に信用していない為話すなど論外

 百合ヶ丘の場合、まともに取り合わないか話をしても自分達の手柄として研究を進め情報を独占されるだけだ

もしかして情報を掴んでおり名門だけで情報独占されている可能性も大いにありえる

こちらから話す必要は無いだろう

 そもそも百合ヶ丘から見たら姉に大きく劣る落ちこぼれの自分ですら考えつくことだ

高い頭脳を持つものならば気づいても不思議ではないし、仮に誰も気づかなければ脳内お花畑軍団である

 

「とりあえず守れて良かったよ…」

 

「せやね」

 

 これは紛れもない本音だ

駐在先とはいえ自分達の拠点が陥落した、は流石に不味い

 

 暫くして一柳隊とグランエプレの面々も帰ってくるのだった

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