Assault Lily〜御使いの妹   作:ラッファ

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第68話

 

 ギガント級の討伐を終え帰還してきた一柳隊とグランエプレの面々

 

「海漓ちゃん!」 

 

叶星がこちらに向かって歩いてくる

ヒュージの襲撃を受けているとの連絡があったのだ。無事を確かめたかったのだろう

 

「ヒュージの攻撃を受けてるって聞いたけど、大丈夫だった?」

 

「えぇ、まぁ。一人なら無理ゲーでしたけど、幸運な事に心強いリリィが二人も居ましたから」

 

 舞弓や魅夢が来ていたことを知らなければ一人で大群相手に向かっていったと勘違いされても仕方が無い

流石に単独で大群相手に戦っていたら無事では済まなかった。

死ぬつもりは全く無いが長期離脱レベルの大怪我は免れなかっただろう

 

「あの子達が来る事は…」

 

「知りませんよ。私も驚きました」

 

 高嶺も確認するが、答えは変わらない

知ってたら助っ人が来るから大丈夫の一言は告げていた。

 

 現場で再度パトロールを終えた後、ルドビコ女学院へと帰還

 

「おかえりー!!」

 

「良かった、無事だったんだね」

 

 ガーデン残留組も自分達を出迎えてくれる

その後は互いに健闘を称え合い、解散

メディカルチェック等々、必要な事を済ます

 本来ならば自室に戻るのだが、彼女は一人外のベンチに腰掛けていた

外から見ると灯りの消えている部屋の方が多い

戦闘後と言う事もあり早めに休んだ者も多いのだろう

 

「いたいた」

 

「なんや、まだ出る気かいな?」

 

「まさか」

 

 舞弓、魅夢がこちらに寄ってくる

流石にこの後出撃などする訳もない

いくら何でもそれは無謀だ

 

「町田の本隊には明日?」

 

「明日の朝一で帰還ッスね」

 

 流石に戦闘後にすぐ帰ってこいとはならないらしい

相模女子にしては珍しい事だ

 

「で、思いつめてどうしたんや?

今回の襲撃か?」

 

「うん…今回に限らず何か、ね

ヒュージの知能が作戦を立てるレベルまで進歩してないかって感じてさ」

 

「あー、それ遊糸はんも言っとったわ」

 

「『最近のヒュージ、小賢しいわね!けど、そのレベルでこの私の作戦を破ろうなんて100年早いわ!』って言ってたッス」

 

 どうやら遊糸も同じ事を感じているらしい

素行はともかく頭脳、采配に関しては間違いなくトップクラス

自分でも感じる事を遊糸が感じない訳がない。恐らくヒュージの立てる作戦を読み切ったような采配もしているだろう

 

「遊糸さん、未だに出撃してるんだ…もう三年なのに」

 

「後釜候補がおらんからなぁ」

 

「その一人が神庭に行くからッスよ」

 

 そう、遊糸は三年生

学年を考えても戦力として引退、もしくは出撃を控え後釜探しや後輩指導に専念しなければならない時期に差し掛かっている

 しかし彼女程の優秀なリリィだ、後釜など簡単には見つからない

特に戦闘力ではなく頭脳面で力のあるリリィとなると尚更だ

戦闘力ならば遊糸よりも強力な下級生は多くいるが、頭脳、采配面では不安のあるリリィが多い

勿論、葵という優秀なリリィがおり遊糸が指導に当たっているが彼女は非常に転校の多いリリィ

仮に葵を遊糸の後釜として隊長にしたとして、直ぐに転校されてしまっては元も子もない

遊糸の卒業後に百合ヶ丘を含めた名門校に転校するのでは?と噂もある

そこを踏まえると葵を後釜にする事への不安がガーデンにはある

 

 海漓は彼女と学年が2つ離れているとはいえ頭脳、采配面を評価され一部では後釜候補の一人とも噂されていた

 教導官は彼女に「体動かないんだからその分頭動かせ」なんてよく言われてきたがその結果とも言えよう

マギや身体能力での才能で大きく劣る以上頭を動かして立ち回らなければ死んでしまう

その結果、以前槿に指摘された通り考えすぎて動きが鈍くなってしまう所もあるのだが…

 勿論リリィとしても司令塔としてもまだまだ未熟で高等部で活躍するに辺り覚えなければならない事も多いため今後の成長次第という条件付きではあった

隊長に戦闘力を求めるのか戦闘力よりも頭脳、采配を求めるのか

大きな議論を呼びそうな所ではある

 

「まぁ、ヒュージに関しては分からない事が多いッス

常識として公開されてる情報を踏まえるならあり得なくも無いッスね」

 

 今更だがヒュージに関しては様々な考察や見解が有りどれが正解なのかすら分からない

 世間一般的な話をすると

ヒュージ細胞という巨大化細胞の暴走により生み出された生き物と言う見解やマギにより地球上の生物が変質、そのDNAには人間含め地球上の全ての生物の遺伝子情報が保存されている…と言う見解が一般的

 ヒュージ出現時には異星人やロボット、生物兵器の暴走等も言われていたそうだ

 

「知能を持つ個体もいるんや…人類を学習し作戦を建てられる程に頭のエエ個体が出てきてもおかしくはないな」

 

「でも何で他は気づかないッスかね?

それこそ名門が気づけば大ニュースだし武勲にも」

 

「エリートの思考でしょ

自分達は常に上って言うアレ

だから相手が自分達の想定外の進化、成長してるなんて思いつかない

実際、持ち前の才能と超高性能CHARMで何とか出来てるんだし」

 

 別にエリートに限ったことではないのかもしれない

リリィはヒュージという下等生物には負けないという覚悟やプライド、積み上げた実績

人類が上と言う認識と名門に通っているという自信とプライドの噛み合わせ

 現に名門ガーデンは数多の強力なヒュージと戦い勝利している

負けた奴、弱い奴は罵倒する

そんな光景を嫌と言うほど見てきた

 

 名門の戦術と言うのは常に自分達が上で攻める事、勝つ事を前提とした作戦を立てるし教育される

 相模女子だと攻めつつも守りと逃げも求めるプラグマティズム思考

場合によっては撤退もしなければならないと教育されるがそれすら落ちこぼれ、弱者と言われる始末だ

 

「海漓は何で気づけたん?」

 

「私がヒュージの親玉なら陽動に対してリリィはアホみたいに引っかかるっていう知識があるならこの手の絶対に作戦やるから

手薄になった拠点なんて格好の獲物でしょ」

 

 勿論これは知能を持ち、作戦を立てられるベルまで成長した…というのが前提ではある

戦いは嫌がらせ、それを応用しただけの事だ…特別な事は何もしていない

質と量はヒュージの方が上

恐れるのはヒュージの知能が進歩し自分達の利点を生かし組織的に運用してくる事

ヒュージが作戦を立て、個体を組織的に運用してきたら人類など簡単に負けるだろう

 

「自力で学習したのか、教えてもらったのか…は分からないけどね」

 

 ここまでの話は全て彼女の妄想、憶測にすぎない

作戦を立てる、と言うのは分かった所で作戦の立て方をどうやって取得しどのように伝えたのか

知能が進歩した所で「作戦を立てる」行為を取得しなければならない

 そして、それをどのように他の個体に通達し、実行させたのか

どれだけ有効な作戦を立てようと他の個体が理解し行動しなければ意味がない

そこを見つけなければ妄想で悲観的に語る痛い奴で終わってしまう…相模以外のリリィに話した所でそう言う扱いになりかねないのが現状だ

圧倒的な格上が格下の話を素直に聞くとも思えないのもあるが

 

「海ちゃん的にはどうやってるって思うッスか?」

 

「ヒュージから見たら力のあるリリィがネストって言う自分達の拠点を攻めてくるわけだし…真似する可能性は高いけど陽動とか拠点を包囲したりするのは本当に分からない…」

 

 拠点への攻撃だけならば簡単だ

リリィのやり方を真似れば良い

集まりが拠点と分かれば攻めればいいのだから簡単、アホでもできる

だが戦力を減らすために陽動を仕掛けたりやネストをレギオン単位で包囲と言うネストを攻めるリリィがやらない方法で攻めてくる方法をどうしてヒュージが行ったかは本当に分からないのだ

 リリィも基本的には正面からの襲撃でネストを攻める

複数のレギオンでネストを包囲し倒すと言うやり方ではない

そして、陽動も行わない

文字通り正面から突撃しての真っ向勝負だ

…それで勝ち続けるのだから名門も相当な怪物だしヒュージとやってる事が変わらんと思いたくもなる

複雑なフォーメーションなどヒュージはやらないが拠点への攻め方だけ見たら全く同じだ

ヒュージの方が賢くなってる説まである

 

「海漓で分からんなら戦い専門のウチらは無理や

知れる情報も限られとる」

 

「ヒュージが作戦を立てて来るなら相模はそれこそ海ちゃんや遊糸先輩クラスを用意しないと戦闘職の集まりじゃ今後辛いッスよ」

 

 魅夢、舞弓共に今後への不安はある

名門にも頭脳に優れこの手の情報を持つリリィもいるとは思うが公開していない以上知る術は限られる

そして、才能やCHARMで敵を押し切れない以上相手の動きを見て動かなければならない

それも全体の動きを、だ

名門が行う高度な戦術はあくまでも現れたヒュージや大物を倒すためのもの。ヒュージの作戦を打ち破るものではない

 戦う力と才能のある者は多数いても頭脳面で優れたリリィの数が少ないのが相模女子の現状だ

神庭やエレンスゲも同じような状況だろう

 

「現れたヒュージは必ず殲滅する。これしかないんだけどね」

 

「まっ、ヒュージと戦うのが任務ッスからねぇ」

 

「単純やけどな」

 

 いつも通り戦うしか現状打つ手はないのだ

欲を言うならば百合ヶ丘を筆頭に行っている昨今のヒュージに対する大規模攻勢を中止し徹底的に守りを固め分析と対策にも時間を回すべきかも知れないが落ちこぼれの自分にそんな発言力はない

…恐れるのはヒュージがリリィの攻め方を学んだ上で次に攻めて来るであろう所を察知し戦力を用意、待ち伏せ等の罠を仕掛けられる事

 近郊で言うならば最大の目標は甲州と静岡だ。それを見抜かれたら終わり

 そもそも7大アルトラの中で最も凶暴と云われるファブーニルを姉達が撃破したのにヒュージの勢いが全く落ちないのも気になる所

 ヒュージにとっては大将格に等しい個体が破れたのだ

下火になってもおかしくはない

 

「(あくまでも凶暴ってだけだからなぁ…そら凡人の私は怖いけど)」

 

 単に力任せに暴れるだけの戦いから知能を活かす戦いにヒュージが切り替えていくのならば暴れるだけのファブーニルなぞヒュージからしたら捨て駒に等しい扱いだったのだろう

 残り6体…その中に人類並いやそれ以上の知能とアルトラ級に相応しい強さを持った個体がいる事を考えるべきかもしれない

 

「一難去るどころか増えとるやん…

余計に疲れたわ、流石に眠いで」

 

「そうッスね…」

 

「あ、ゴメン。」

 

 長々と話をしてしまった

同期との再会で浮かれてしまったのもある

その後は各々部屋に戻り、眠りにつく

流石に色々とありすぎたため直ぐに眠れたのだった。

 

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