Assault Lily〜御使いの妹   作:ラッファ

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第70話

 

 訓練場の一つを借りて行う海漓と一葉の模擬戦。

やる事はお互いにCHARMを使っての対決だ

勿論CHARMを模擬戦モードに切り替えて、だ

 

 相模やエレンスゲ、噂ではあるが百合ヶ丘や御台場でもこの手の訓練は定期的に行っている

神庭だとグランエプレをはじめとする多くのレギオンでは滅多に行われない。自身のサブスキル覚醒時にデータ収集を兼ねて軽く叶星と打ち合ったぐらいだ。

後は藤乃や秋日がたまにやっていると聞く

 

 目的としてはやはりお互いの技術向上

ヒュージとは違うが互いの技術を直接目で見て、体で体験して学ぶ為。機体は違えど学べる事はあるし、レアスキルや立ち回りも参考になる部分は多く有る

 後は何も知らぬ調子に乗った連中に戦場に立つリリィとはどう事かを体に叩き込むためか

弱くて下手くそなのは仕方がない(ココに来る者は皆そう、初めは皆弱くて下手くそだったから)、だがやる気の無いやつ、ふざける奴は許さん…そんな風潮はあった

 

「分かってると思うけど、レアスキル無しな!!」

 

「分かってる!」

 

 そんな事は分かりきってることでは有るが、念には念を、だ

相手もよく知る一葉と言う事で猫を被る必要もない

 

「それじゃ、行くよ!!」

 

 一葉の掛け声と共に戦闘開始

海漓もパルチザンモードへと変形させる正面で攻撃を受け止める

 

互いに衝突、拮抗状態となる

 

「正面から受けるんだ…ね!」

 

「模擬戦で射撃ばっかしても意味無い…!」

 

 そう、これは模擬戦。好きな事、得意な事ばっかして戦っても意味がない。苦手な事を改善、克服するための機会でもあるのだ

実戦では戦果を上げ、生き残る為にも得意な事、出来る事しか行えない

 

 訓練や模擬戦はある種の縛りで戦うのがセオリーでもある

 

 正面から数度打ち合い、拮抗した後距離を取る

 

「(この動き…)」

 

 打ち合う中で海漓は多少の違和感を覚える

 

「(聞いた話だと今のエレンスゲの校長は元御台場の人間…動きに御台場らしさがあったっておかしくない)」

 

 相模女子時代に聞いてはいた。今のエレンスゲの校長は御台場女学校の卒業生。つまり叶星達の大先輩になる。校長赴任後にカリキュラムが変わっていても不思議ではない

 自分達だって元イルマの人間から教えを受けていた、影響は出る。それだけならば良い、だが問題は

 

「流石に簡単には勝てない…!!」

 

「…当たり前(ステップとタイミング…これは…叶星さんに似てる?)」

 

 息遣い、踏み込むタイミング

所々に叶星と似たものを感じる

推測に過ぎないが動きを真似をした…というよりも叶星の助言や手解きを受けながら己の中にに落とし込んで行ったのだろう

それも一度二度ではない…いつ知り合ったかは分からないがその時からの積み重ねだ

 一葉も身体能力は高いが姉のように一度見たものを完璧にコピーしたり即興で完璧に動けるタイプの天才ではない

努力を積み重ね力をつけるタイプだ

 

「(何で火種ばっか抱えてんだグランエプレ(ウチ)?)」

 

 別に他校の後輩にアドバイスする事は悪い事ではない…レギオンが違えど隊長として、同じレアスキル持ちとして通じるものがあったのだろう

 大切な人と仲良くしてたっていい。プライベートに口を出すものではない

 

 だがそれらは全てレギオンの隊長としてふさわしい行動を行えていたらの話だ。

 

 経験者の自分は後回しになったとしても、初心者の3人に対してリリィとしての心構え、戦い方をしっかりと教えているのなら

高嶺と仲良くしたっていい。

 公私をキチンと分け、レギオンでは上級生として手本を示しているのなら。

 実際は何も出来ていない。神庭を代表するトップレギオンとしては余りにも問題だらけで改善の傾向が全く見られないからガーデンや秋日が動くし自分も協力しているのだ。

 

 上級生(叶星と高嶺)の事を余り悪くも思いたくは無いのだが…なぜこうも話題が尽きないのだろうか

 

 しかも一葉の事など秋日達は知る由もない。海漓も模擬戦して初めて気づいたのだ

 

 何度目かの衝突と拮抗

 

「流石に厳しい…!」 

 

 模擬戦だからと真っ向勝負で行っているが、厳しいものがある。

不意打ち抜きで押し切るとなると流石に辛い…

 

「そんな事言って…全く押しきれないんだけど!?」

 

 だが厳しいだけで負ける訳ではない。攻撃を防ぎ、受け流す。互いに拮抗するが耐え、押し切らせない

 一葉も先に進めない…つまり決定打を与える機会を得られていないのだ

 力と力の真っ向勝負では海漓は勝てない。が、勝てないだけで簡単には負けないのだ。削られている事には変わらないが焦りはない

 

「(そろそろかな…)」

 

 自身の攻撃を何度も防がれ続けていれば一葉と言えど流石に焦りも出てくる

 海漓からは仕掛けないのだから一度引き、呼吸を整えたり、攻めさせたりすれば良いだけの話なのだが…どういう訳か自分から攻めたがる。攻める時はとにかく攻める。

 

 そうなると、攻撃のパターンも徐々に単調化、雑になってくる落ち着き、呼吸と体制を立て直し、力技で攻め落とすのでは無く消耗させるように仕掛け直せば充分に勝機はあるし、落ち着いて攻めれば押し切れる

 

「(少しはまともになってるけど…)」

 

 中等部時代からあった事だが、一葉の場合焦りだすと落ち着きを失い行動が投げやりになる傾向があった。高等部になり、ヘルヴォルの隊長を努め多くの戦いを乗り越えた事で多少改善されているが…それでも化けの皮は剥がれる

 

 パルチザンモードを解除

右手に親機、左手に子機をそれぞれブレイドモードの状態で構える

 

「(パルチザンモードを解いた?)」

 

 自身の使う機体と打ち合うならばパルチザンモードでなければ厳しい

流石に片手でブルトガングと真っ向から打ち合うなど正気の沙汰ではない

何かの罠か?そう思いつつも一葉としては仕掛けるしかない

パルチザンモードを解除した今がチャンス

 

「(なーんて考えてるんだろ?)」

 

 言葉には出さずとも彼女には一葉の考えている事がなんとなくだが分かる。良くも悪くも純粋。染み付いた思考は中々抜けないものだ

 

 一葉が突撃し、海漓は迎え討つ

振りかざされるブルトガングに対し

 

「それっ!!」

 

 左手に持った子機で薙ぎ払う

普通ならば拮抗するだけ、もしくは一葉にねじ伏せられる

しかし、そうはならない

彼女の一撃はブルトガングを横に弾き、一葉もそれに流され体制を崩す

 

普通に薙ぎ払うのではなく機体同士が衝突する一瞬にマギと己の力を込める。そして動作も小さく、鋭く振り払うイメージ

 一点に特化すればブルトガングと言えど押し切れるし使用者の体制も崩せる

 

 体制さえ崩せれば後は簡単だ

そのまま、懐に入り込み右手に持った親機をシューティングモードに切り替え、一葉の顔に銃口を突きつける

 

「これでゲームセット、私の勝ち」

 

「私の…負け…だね」

 

 自分に勝ち目はない

体制を立て直すよりも先に海漓の攻撃を受けるのが早い。それが分からない彼女ではない

負けを認め、模擬戦終わり

 

 その後は片付けをした後に約束を果たしてもらう

負けたらジュースを奢るという例のアレだ

 

「はい。相模時代からよく飲んでたジュースでいいんでしょ?」

 

「サンキュー」

 

 一葉は呆れながらもオレンジジュースを彼女に手渡す

軽く口をつけて飲む

体を動かした後と言う事もあり体に染みる

 

「他人に奢らせた飲食すると普段よりも美味いって言うの…本当かもしれない」

 

「ちょっと!?遊糸様のそんな所なんて似ないでよ!?」

 

 合同訓練終わりに自身に奢らせた遊糸がよく言っていた

『他人に奢らせた時の味は格別』だと。その後に話を聞きつけた他の面々からお仕置きされるまでがテンプレなのだが

 特別味が変わったりしている訳ではないが、確かに美味しいかも知れない

 これが俗に言う勝利の美酒と言うものなのだろうか?

教導官も現役時代は戦い終わりに当時のイルマの生徒会室でジュースやお菓子を飲み食いしてたと言っていた

 

「最後のあれ、どうやったの?」

 

「振り抜く一瞬に力とマギを込めただけ…片手で持てる機体限定だけどね」

 

 一葉としてはやり方が気になったようだ

別に難しい事は何もしていない。欠点としては片手で持てる機体限定という所だろう

両手だとモーションそのものが変わってくるし、大きめの機体では力の入れ方も変わってくる

 近いやり方としてはアステリオンの乱舞システムだ。形状は違うが応用出来る部分はある

 

「この後もう少し自主練するけど…海漓はどうするの?」

 

 一息つくと一葉はそんな事を言う

打ち上げはまだ時間がある、恐らくギリギリまで自主練するつもりだろう。

自分も暇ではある…一葉程長くやるつもりはないが途中まで付き合うのもいいだろうと思い共に訓練を行う

 

「訓練終わりに直でパーティー出るつもり!?シャワー浴びて身なりを整えて来る事!!」

 

 お説教を受け早めに切り上げる

勿論その手の時間は考慮していたが、恋花の基準では短かったらしい

 

 その後は特に何もおこらず簡単な打ち上げの時間となる

 

 司会を務めるとはルドビコ女学院のリリィ

名は福山(ふくやま)・ジャンヌ・幸恵(さちえ)…だった筈

防衛構想会議後の模擬ヒュージ戦にて俗に言う華麗で美しい戦いを行っていた者だ

 

 幸恵から今回の特型ギガント級討伐で活躍したレギオンの紹介がある

 討伐したギガント級は

自分達が撃破したマギ干渉を行うメイルストロム

 ヘルヴォルと共に撃破したのは分裂と融合を繰り返し最終的にギガント級、名はスプリットと言うらしい

新宿事変で撃破したエヴォルヴに近い個体だったのかもしれない    

 そして、一柳隊とグランエプレで討伐したイビルアイ

マギリフレクターとノインヴェルト戦術さえ己の物とし攻撃してくる個体だったという

 

「(人類の対策練ってきてる…か)」

 

 形は違えど人類、そしてヒュージから見て最大脅威であるノインヴェルト戦術への対策が進んでいる印象だ

 相模女子や天敵の桜ノ杜ならば別の手がある為なんとか出来るが他は厳しくなる事が予想される

 ノインヴェルトを主戦術にしないなんていう理由でとある行事から2校をハブった事を考えると自業自得かもしれないが

 

「それと、最後に…

私達を含めた戦力の大半が不在にしている中でのヒュージの襲撃に対応してくれた皆。

そして中心となってくれた海漓さんとこの場にいない2名の相模女子のリリィにも改めて感謝を」

 

 彼女はこちらに頭を下げる

 

「あぁ、いえ、そんな…出てきたヒュージを倒しただけですから」

 

 別に特別な事はしてない

自分達を舐めたヒュージを返り討ちにしただけ

しかも最後は戻ってきたヘルヴォルや彼女達の力もあったからだ

 

「(同じガーデンの子達はともかく他校のリリィにも気を使える人なんだ)」

 

 ガーデンに残っていた同胞はともかく神庭と相模女子というルドビコからと、幸恵個人から見ても格下の者相手に感謝と頭を下げた事には少しばかり驚かされた

 鎌倉だと格下を平然と見下し罵倒する。助けても感謝の言葉すら出ない名門やそこに所属するリリィに比べたら彼女は超が付く良識派に見える

 

 その後は紹介を終え、各々雑談等に入る

周りを見ると各々会話しているが、その中で際立つ集団がある

 

 幸恵を筆頭にヘルヴォル、一柳隊、セインツ、ロネスネスの隊長陣が集まっていたのだ

 グランエプレは、というと

 

「(なんで高嶺さんが?)」

 

 今に始まったことでは無いが、叶星の隣は自分だと言わんばかりに高嶺が陣取っている。だがおかしな話だ。何度でも言うがグランエプレのサブリーダーは姫歌だ、高嶺ではない

ヘルヴォルは恋花だった気がするが、彼女は出されるラーメンに夢中で槿に呆れられている。

 それを見て瑤が代わったのだろう。実力も知識もある代理としては十分だ。

 

 

そんな時、グランエプレの1年生が歌を披露するという突拍子もない事が伝えられる

 

「えっ?ちょ、聞いてない!」

 

「そうですよ!!」

 

「え?言ってないもん

言ったら逃げるか反対されそうだし」

 

 自分と紅巴は抗議するが姫歌は知らずと言わんばかりの対応だ

…打ち上げだ。空気読めなんてそんな事は言わない。が、どうしても聞かなければならない事はある

 

「定盛ちゃん、向こうに行かなくていいの?

レギオンの隊長陣の集まりじゃないのアレ?」

 

 出し物として歌っても良いが隊長陣の集まりがあるならばそちらを優先させなければならない。本来ならば叶星か高嶺が姫歌を呼びに来るのが筋

お飾りのサブリーダーでは困るのだ

 

「え?高嶺様いるしいいと思うけど?」

 

「えぇ…」

 

 どうしてこんな時に我の強さを見せたり、おかしい事に気づかないのか

自分達を強引にステージに上げるノリでアノ場に行き『サブリーダーは私です!』の一言を言えないのか、とも思うが姫歌にサブリーダーとしての教育をしてこなかった二人にも責任はある

本当ならば叶星が姫歌をマンツーマンで戦闘以外の所まで指導しなければならないし、集まりに連れていき、場数を踏ませなければならない。

 叶星の補佐として横に立たせ、空気になれさせる。

姫歌を一人前のサブリーダーにするなら高嶺にかまってる余裕なんて無いのだ

それが嫌なら高嶺にサブリーダーをやらせればいい

 

「ほらー、皆待ってるよ

はやく、はやく」

 

灯莉の声に引っ張られるように自分達もステージに上がる

とりあえずと言った形で数曲歌う 

 

「海漓、歌上手いのね…」

 

「だよねー」

 

槿と恋花はグランエプレの歌を聞きながらそんな感想を漏らす

 

「で、恋花、それ何杯目?」

 

「え?5杯目。食べる?美味しいよ?」

 

「…遠慮しておくわ」

 

それよりも気になるのは彼女のラーメンを食べる量だ

ラーメン、嫌いではないが流石に何杯食べても平気というタイプではない

 

 

 

打ち上げの時間は過ぎていく

ヘルヴォルへの帰還命令が出るのは終わりに差し掛かる頃だった。

 

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