Assault Lily〜御使いの妹   作:ラッファ

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第71話

 

 打ち上げの翌日、

ヘルヴォルが受けた帰還命令

その理由というのもエレンスゲのラボがヒュージでは無く人間に襲撃された可能性が高いと判明しヘルヴォルもガーデンに戻る必要がある為だという

 

 ヘルヴォルの見送りを終えた後、海漓には疑問に思う事があった

 

「(『どうして襲撃したのか』理由によっちゃ…)」

 

 誰が襲撃したのか、どうやってやったのか。その二つに意味はない。簡単に隠蔽出来る。だが『どうしてそこの施設を襲撃したのか』これだけは隠す事が出来ない

どれだけ嘘をついても証拠を集め突き詰めていけば必ず真実にたどり着ける

 

 彼女からすれば犯人も、方法も興味はない。気になるのは動機だけ

知識と照らし合わせて候補はいくつかあるが証拠がない。憶測で話すことだけは避けなければならないからだ

 

「(黙っておくのが利口なんだけど…)」

 

 ここは静観だ。自分達が今回の件に下手に介入した結果として生じる最悪のケースは神庭が現在の立ち位置(反ゲヘナ寄りの中立)から親ゲヘナ派への鞍替えを行ったかのような扱いを受ければどのような事が起こるか予想つかない。穏健派と呼ばれるイルマならばともかくエレンスゲは危険すぎる

 自分達は神庭を代表するトップレギオン。外征時の発言、行動は神庭の意志と受け取られる事もある。慎重な行動だって必要だ

 

 必要なのだが

 

「(警戒してるの私だけ?)」

 

 差こそあれ皆もある程度の警戒はする…と考えていたのだが一葉達を見送ったものは皆、応援や励ましの言葉をかけていた

 

「気になることでもあるの?」

 

「(気になる事しかねーよ…)まぁ、色々と」

 

 一人、考えを纏めていると叶星から声をかけられる

 

「楓さんも犯人や襲撃のタイミングについて考えていたわ」

 

 そこに高嶺も加わる

前回、叶星に噛み付いた事でまた何かするつもりかと警戒しているのかもしれない。その警戒や気配りを味方にも向けてほしいものだ、と思ってしまう

 

「(なんて言おう…)」

 

 御台場上がりの頭で少しは考えろ…なんて言える訳もなし。なるべくオブラートに包むのが最善だろう。ここには他のリリィも多くいる。下手な事を言うのも危険だ

 

「私もそんな感じですね。」

 

 言葉を濁し、切り抜けるのが最善だろう。崩壊したとは言えここは親ゲヘナ派のガーデンだ。付近には多くのリリィがいる。思う所や考えは多々有るが、自分達の所属する派閥やガーデンを悪く言われていい気持ちはしないだろう。自分だってそうだ。神庭や相模、仲間達の事を非難されたら良い気持ちはしない…がグランエプレも相模も場合によっては自分達にも落ち度は有る為それらの非難は受け入れなければならない。

 名門の場合、自分達は平然と言うくせに言われた時は怒る連中もいるが、それは別の話

 

 そう考えていたのだが

 

「何か知っている事が有るの?」

 

 叶星が珍しく食いついてくる。同盟先の心配か、一葉を心配しているのかは分からない。

 

「犯人はエレンスゲ内部かゲヘナを嫌う第三者以外にあるとは思えませんけど。そこらの建物ならともかくヒュージ研究機関の施設を襲撃なんてマギも何もない普通の民間人じゃまず無理だと思いますけど?」

 

 暗にマギを使っていると告げる。普通の建物ならばともかくエレンスゲラボと言うヒュージ研究機関の施設などそこらの民間人が何となくで襲撃できる場所では無い。

エレンスゲの内情を知る物による何らかの裏切りもしくは、ゲヘナやエレンスゲを憎む第三者しか無理だ

 

「…犯人はリリィだって言う事かしら?」

 

「さぁ?それは分かりません。少なくとも計画を立て、訓練を受け、相応の装備を与えられたプロの仕業なのは間違いないと思いますよ。単独じゃないです。何らかの組織が背後にいると思っていいでしょう」

 

 叶星は信じられないような感想を持つが、海漓としてもそこは分からない。だがリリィの有無に限らずその道のプロ、つまり相応の教育と訓練を受けた者の犯行である事だけは確かだ

作戦の計画と実行、後は襲撃に必要な装備の用意。個人の犯行ではなくそれをバックアップする何らかの組織があると考えるのは普通な事

 

「姿なんて私みたいにスキル持ちを用意するか、身に纏う装備に細工すりゃいくらでも消せますしね」

 

 仮にリリィならば彼女のようにユーバーザインやそのサブスキルであるステルスを使えば姿や気配など簡単に消せる。リリィで無いならば纏う装備に細工をすればいいだけだ。

 

「これは相当複雑だわ。犯人がわからないんじゃどうする事も…」

 

「まぁ、無理でしょうね(このままなら、の話だけど)」

 

 叶星はお手上げと言う表情。だが海漓は違う。伏せはしたが襲撃された施設に法則性が無いのかを見つけ、有るならば狙われる場所に目処をつけ対処する。仮に犯人が人ならば使える物資には限りが有る。無差別、無計画ではない。

 だからこそ知るべきは犯人では無くその施設が何を行っていたか、だ。ヒュージ研究の施設では理由が薄いしエレンスゲである必要はない。ゲヘナの研究は基本的には全て対ヒュージの為の研究に繋がる。まともな研究者や施設なら、の話だが

 

「外からとやかく言っても結局はエレンスゲがどうにかするしか無いですねー。」

 

「相模女子はエレンスゲと提携していて、海漓さんだってエレンスゲには知り合いが多いんでしょう?冷たくないかしら?」

 

 現状ではエレンスゲがなんとかするしかない。そんな気楽な言葉に高嶺は怪訝な表情をする。縁のあるガーデンの施設が襲撃され、友が対処に向かったにしては冷たすぎると思ったのだろう

 

「確かにエレンスゲと縁はありますけど私は神庭のリリィですし…他所(エレンスゲ)よりも自分達(神庭)の方が心配ですよ。」

 

 エレンスゲと縁はあるが今の彼女は神庭の制服に袖を通しトップレギオンであるグランエプレに所属するリリィだ、エレンスゲのリリィでは無い。

施設の襲撃よりも萩窪で戦っている生徒会防衛隊やルームメイトの薫や同じ学科のクラスメイト、中等部の後輩達の方が心配だ。実力者もいるがココ(ルドビコ女学院)同様に消耗している事は間違いない。冗談抜きでそろそろ帰りたいし帰らないとマズいのでは?と思っている。

 

「町田に来た相模女子の子達は?お友達もいるんでしょう?」

 

「仮にも鎌倉5大ガーデンですよ?心配してないですね。出来ない事をするような連中じゃないです。マズくなったら今までの支援を理由に私等を助けに来いの一言ぐらいは言って来ますから」

 

 叶星は相模女子の事を聞いてくるが、そっちは何も心配していないと告げる。本当に無理ならば無理と言うし新宿事変から時折行った支援を餌に手伝いに来い位は言いそうだと確信しているからだ。

楽観視ではない。中等部から過ごしてきたからこそ分かるのだ。

 

 なぜ相模女子の話題が出たのか彼女には分からない。今の自分は神庭のリリィだという発言から過去に在籍した相模女子だって自分には無関係だと言う解釈をしてしまったのだろうか?

 

「(叶星さんと高嶺さんだって御台場の強さは分かってるだろうし…自分達の事をちゃんとするのが先だとおもうんだけど…違うのかな?)」

 

 二人だってガーデンは違えど同じではないのかと思ってしまう

そもそも他校の心配をしてる場合ではない。レギオンの運営や高嶺のコンディション面などやるべき事は多々ある。二人は上手くやれているつもりかもしれないが、問題だらけ。だから彼女や秋日が動いているのだ

 

 そして、数日たったある日の事。エレンスゲ近郊で大規模なヒュージの襲撃が発生、それに対応する為に複数のガーデンで合同司令部を結成、作戦の立案と応急の指示が行われている

 

勿論、海漓達もその作戦の中に含まれており、配置等の話し合いが行われている…のだが

 

「えっ、ヘルヴォルの救援に?」

 

「えぇ。エレンスゲの教頭先生が私達を向かわせるように司令部に掛け合ってみてくれたみたい」

 

 グランエプレだけでない、一柳隊や御台場、ルドビコ女学院の面々、つまり今回の駐留でヘルヴォルと共闘経験のあるレギオンを軒並み救援として向かわせるようにエレンスゲの教頭が手配したというのだ

 

「あぁ、例の…」

 

 以前一葉が話していた新しく来た教頭だ。この短期間でそこまでの影響力を持っていたことにも驚く。まぁ今のヘルヴォルを支持、支援と言う事で他所からすれば良識のある人間として積極的に受け入れてくれるのだろう。校長の名前が聞こえないのが気掛かりな所だ

 

「目的は市民の避難とヒュージの撃破、ですね?」

 

「研究施設の防衛も、よ

その付近にはエレンスゲの研究施設もある。ヒュージに破壊される訳には行かないわ」

 

「そっちも…」

 

 どうやら嫌でも施設の防衛はしなければならないらしい。

住んでいる人々を守る為に戦うのがリリィの仕事だ、何も躊躇うことは無いが、施設の防衛と聞いたことで彼女の表情は暗くなる

 

「施設の防衛は嫌、理由はあるにせよギガント級(イビルアイ)は出撃拒否、一体何なの!?」

 

 ここ最近の海漓の態度に姫歌は思う所がかなりあったようで食ってかかってくる。確かに端から見たら急にやる気無くした奴として見えてしまうし、悪い印象を持たれても仕方がない。それ以外にも新宿からグランエプレと別れての行動も多かった、何を考えてるか分からないのだ。会議前のアイドルの件で空気読めと言った前科も彼女にはある

 

「嫌とは言ってないじゃん」

 

「顔に出てるわよ、そんな事やりたくありませーんって」

 

「(いや、施設の正体分からない中でやりたくないし…)」

 

 彼女とすれば実際やりたくない。特に防衛対象の施設が何をやっているのか分からない現状では尚更だ

その施設が考えうる限り最悪の可能性だった場合、神庭にも悪い意味で影響が出る。

 

「あーちゃんは心配しすぎてるんだよね、もっと楽に行こうよ」

 

「二人共、喧嘩しないで下さい…!」

 

「生憎、そう言うの苦手で、さ」

 

「最近の海漓、何考えてるかさっぱりわからないわ…」

 

楽観視出来る状況ではない。だがこれ以上揉めるのも時間の無駄

一柳隊を含め他のレギオンを待たせる訳にも行かない

 

準備を整え指定された地域に向かうのだった

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