Assault Lily〜御使いの妹   作:ラッファ

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第73話

 

 ルドビコ女学院の駐留任務を終え神庭に帰還してきたグランエプレの面々。全員がそれぞれの部屋に戻る

 

「ただいまー」

 

「…おかえり…無事でよかった…」

 

 ルームメイトの薫もこの時ばかりは読んでる本から顔を上げこちらを出迎える。激戦だった事が彼女の耳にも入っており、ルームメイトが無事に帰ってきた事に安堵しているのだろう。それは海漓も同じ。帰ってきたらルームメイトが居なくなっていた…なんて事になっていなかったのだから。そうして荷物の片付けをしていると、校内にヒュージが出現した事を知らせる警報が鳴り響く

 

「そっちの出迎えはいらないんだけど…仕方ない」

 

片付けを途中で切り上げ出撃準備をする。そうしていると薫が

 

「…最近多い…」

 

「本当に?」

 

「うん。多分この後も何回か来る…気をつけて」

 

 神庭に残っていた薫が言うのだ。嘘ではないのだろう。連戦も覚悟しておいた方が良いのだろう。マギの保有量に不安がある海漓としては対策を練るに越した事は無い

 実弾を多めに用意し出撃する。

 

 その時だった

 

「ねぇ、貴方があの天野海漓さんでいいんだよね?」

 

「そうだけど…誰?」

 

 一人のリリィに呼び止められる

神庭の制服を着ては居るが見慣れない…というより初めて見る人物だ

 

「あ、ごめん!先に名乗るべきだったね。私、横田悠夏。

ボストンブレイヴァーズガーデンから編入してきて今は生徒会防衛隊に所属してるんだ」

 

「(ボストンブレイヴァーズ…穏健の立ち位置を取る親ゲヘナガーデン)」

 

 彼女の前の所属先はアメリカの名門ガーデンでイルマと同じ立ち位置と中等部時代の教導官が言っていた事を思い出す。そしてかなりの強豪ガーデンとも。神庭は中立である以上元の所属先の派閥に関わらず試験で条件を満たせば入学出来るし実力があればこうしてガーデンの中枢にだって入れる。海外の強豪ガーデンからの編入と言う事で戦力の補強という面でも問題無しだ。生徒会防衛隊もようやく基準に達するリリィが来て大助かりだろう

 

「私もグランエプレに用があるの

良かったら一緒に行かない?」

 

「それは…構わないけど

防衛隊は?」

 

「秋日様の許可は取ったから大丈夫!!ほら、早く!!」

 

 彼女はそう急かし、海漓を連れて出撃する

校舎を後にし現場に向かうが道中、大量のヒュージが彼女達の前に現れる

 

「萩窪にしては多くない?」

 

「だよねー!悠夏もビックリ!萩窪ってそんな激戦区じゃないって秋日様から聞いてたのに」

 

 スモール級ではあるが萩窪ではありえないような数が出現、相模女子を経験した海漓からすれば大した数ではないが、萩窪しか知らないリリィから見れば異常に見えるかもしれない

 

そう、萩窪しか知らないリリィからしてみれば、の話だ

 

「先行くね!!」

 

 悠夏はそう言うと一目散にヒュージの群れに突っ込んでいく

 

「あ、ちょっと!…仕方無い。後ろから援護するか…」

 

 自分も、と行きたいがお互いにどういう動きをするのか分からない以上、自分も前に出て連射すれば悠夏への誤射に繋がりかねない、リスクを抱えるよりは自分が後方から彼女の支援を行った方が効率よく倒せると判断する

 

 力強くヒュージを薙ぎ倒す悠夏を射撃でサポートする海漓

彼女の進む道を作る、倒し漏らしを仕留め、逆にダメージを与え怯ませた個体は彼女に最後の一撃を叩き込ませる

 後は見落としているであろう個体を先に撃破し彼女へのダメージを抑えてもいる

 

 彼女の動きを観察し何をして欲しいのかを予想し、適切な支援を行う

先へ先へと進む悠夏との適切な距離を保ちつつ、だ。

動きや癖を初見で見抜くことは出来なくても、相模女子にはあの手のタイプのリリィは多かった。人は違えどやる事や求められる事は大体同じ…それを助かると受け取るか余計な事と受け取るかは彼女次第だ

 

「(何処が落ちこぼれ!?聞いてた話と全然違う!!)」

 

 海漓の支援を受けている悠夏としては内心穏やかではない。仕方の無いことではあるが彼女の認識では相模女子など鎌倉の落ちこぼれ集団、穴が空いた事とヒヒイロカネのおかげで5大ガーデンになれただけ。アメリカでの生活が長く昨年に一度帰国した際に巻き込まれたとある戦いにも相模女子のリリィはいなかったのだから無理もない。どうしてもマイナスなイメージが先行してしまう。伝統と格式のある他の5大ガーデンと比較しても新進気鋭で異質であるのも影響しているだろう

 国内ならいざ知らず海外のガーデン事情まで詳細に把握するのは厳しい為、仮に口に出しても海漓は怒らなかっただろう

そして訓練や戦闘も当たり前にあるのだ、偏った知識でも仕方がない

 秋日や藤乃、クラスメイトからは海漓を甘く見るなとは言われていたが半信半疑だった

神庭で指導を受け成長している事を考慮しても大したことはない。経験者では最弱程度の認識をしていた

 

 戦闘になってからも自身についてくるので精一杯なんてことは無く自身の背後に付き、適切なポジションを保ちながら正確な援護射撃を行ってくる。

 

「(あの天葉様とも違って前に出てくるタイプでもないんだ…)」

 

 姉のように後方から追い抜き前に出てくる素振りをみせない。良くも悪くも背中を追いかけ、押してくる立ち回りをしている。

そのおかげもあり前へ前へと順調に進んでいく

その時だった

 

「見つけた!!」

 

 その言葉と同時にグランエプレの面々のいる所へと辿り着く

 

「高嶺姉様!!」

 

「(ん?高嶺さんの身内なのか?)」

 

 悠夏は高嶺を高嶺姉様と呼んだ。そう言う関係でない限りは身内と考えるのが適切だろう。

 

「海漓!遅いわよ!!」

 

「これでも急いできたんだけど…数が多くてさ」

 

「ここに来るまでの間に戦闘を?」

 

「まぁね。とはいえスモールだけだし簡単だったよ

あの子もいたからね」

 

 そう言いながらも海漓は周りを見渡す戦闘中ではあるものの、まだまだヒュージは残っている。そして気になる事が一つ

 

「あれ?叶星さんは?」

 

「離れた所のヒュージをやっつけてる

よ」

 

「一人で?」

 

「うん」

 

「へぇ…(珍しい)」

 

 いつもなら高嶺を連れて行く所を今回は一人で向かったという。姫歌がいる事や強い事を踏まえても隊長が単独で敵の群れを倒しに行く事は大問題なのだがもうその程度の事を問題と捉えると頭が痛くなるためあえて無視する。

 

自分達の通ってきた道はそのまま退路としても使えるため、後はこの群れを殲滅すればいいだけだ

 

「ヒュージ、来ます!」

 

 そうしてヒュージは向かってくる。

海漓はすぐさま銃口をヒュージへと向ける

 

「そのヒュージ、はや…」

 

灯莉は特徴を告げようとする…が

 

「避けた所で…!!」

 

 確かにヒュージは最初の一撃を回避した…だが回避先を予測し事前に子機側から弾丸を放つ事でヒュージが自分から当たりに行った形となり撃ち抜かれる

 

「前出て削るけど…いいよね?」

 

「…」

 

 初手を決めた所で今後の動きを姫歌に確認する。姫歌の言う事は分かっているが念のためだ…だが彼女からの返答がない

何処か上の空のようにも見える

 

「駄目なの?」

 

「…えっ、あぁ、そうね。…いつも通り頼むわ」

 

「疲れてるなら下がりなよ」

 

 自分達が来るまでの間も戦っていたし、もしかしたら連戦の疲れがあるのかもしれない。灯莉や紅巴にだってその可能性はある

一言だけ言い残し彼女はいつも通り敵陣へと突っ込んでいく

 

 先とは違い今度は敵に狙いを定めとにかく撃ち抜く…弱らせた個体は後ろにいる三人がなんとかしてくれる…筈だ。

 

 横目で高嶺と悠夏を見るが向こうは上手くやっているようだ。途中悠夏はこっちを見てくるが今は無視だ

 

「(確かに上手いけど…貴方が前に出てやる必要あるの?)」

 

 そんな感想を悠夏は抱いていた

AZの役割もこなせるのは分かった…だがそれをやる必要があるのか?と思ってしまった

叶星がこの場におらず、自分が高嶺と組んでしまっている以上、前に出れるリリィが他にいないから仕方無いのかもしれないが勿体無いとも思ってしまう。

 

「(後続は窮屈そうにしてるし…指示も迷ってる…)」

 

 後続も見るが一人は何処か窮屈そうにしているし指示も迷ったりテンポがずれてしまっている。それでも上手く回っているように見えるのは海漓が彼女達にテンポを合わせ、見えないように流れをコントロールしているからだ。

彼女は「自分に合わせろ」ではなく「自分が合わせる」タイプだ

 

 そんな風に思われているとも知らず海漓はひたすらヒュージを撃破し続ける。

そうして戦闘が終わると

 

「高嶺姉様ァ!!!」

 

「…ウッ!」

 

 悠夏は高嶺に抱きつく

これだけならば見る人が見たら感動の光景だろう。付近に百合の花が咲く光景だ

 

「(鳩尾入ったな…)」

 

 だが、実際はそんな儚い光景ではない

抱きつくというよりタックルレベルの勢いで突っ込んだのだ。見事に鳩尾に入る勢いで

いくら高嶺といえどそんなのを叩き込まれれば流石にダメージを受ける

 

「(グランエプレへの用事って高嶺さんに会いたかったって事?)」

 

 じゃれ合う微笑ましい?光景を見ながら彼女はそんな風に思う

自分がもしも姉と再会したら…抱きつくよりも一発ぶん殴る方が先になるかもしれない

そんな事したら自分の首が飛ぶため絶対にやらないが

 

「(…でも身内同士仲が良いのは良い事)」

 

 グランエプレとしての高嶺に思う事は多々あるが、悠夏の行為を咎めず何やかんや受け入れるあたり身内への愛情も有るらしい

少なくとも自分と姉のような関係ではない。

間違って海漓が姉に抱きつこうとしても首が飛ぶとは思っている

両者ともに本人よりも義姉(シュッツエンゲル)義妹(シルト)周り(アールヴヘイム)が黙ってないだろう

 

 関係ない、無関心貫いていても時折思うのだ

アイツ(姉さん)、何してんだろう。と」

 

知るすべもないし容易に近づく事もままならない程の立ち位置と人間関係を姉は構築した為、現状維持が最善なのだ

 

 その後、叶星も合流

やはりというか彼女も悠夏を知っておりこの後紹介するという事を告げる

 

 その後は周辺を確認しガーデンへと引き上げるのだった




Qあの温泉イベあるならどっちにしろ再会出来たのでは?

A多分予定ありまーす。だいぶ前から申請だしてましたー(大嘘)で逃げる
生徒会と留守番するか相模の面々と過ごすパターン

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