「海漓さんにはさっき自己紹介したけど…改めて自己紹介
あたしは横田悠夏
一年生、生徒会防衛隊所属よ」
ガーデンに帰還し、グランエプレ控室に戻って少し休憩した後に悠夏は自己紹介する
「高嶺ちゃんの従姉妹でもあるの」
「へー、親戚なんだ」
彼女の自己紹介の後に叶星は情報を追加。海漓の予想通り高嶺の親戚であった
「暫く会えていなかったけどね」
高嶺も懐かしむように言うが仕方の無い事。流石に国を跨いでしまうと簡単に合う事は出来ないし時差も考慮すると中々連絡も取れないだろう。ましてや互いにリリィ。日々の訓練や戦闘もあれば尚更連絡や合う事は困難だ
「あれ?生徒会に横田さんなんて方は…」
「つい最近神庭に編入してきたし貴方達が知らないのも無理ないわ
貴方達がルドビコに派遣された位にボストンから編入してきたし」
「そ、そうだったんですね…
ボストンって事はアメリカのボストンブレイヴァーズガーデンから!?」
「うわー、インターナショナル!」
経歴に紅巴や灯莉も驚く。そして暫く雑談をすると
「でも凄いわね。転校早々生徒会なんて」
「本当はグランエプレに入りたかったんですよ?今年は枠を増やしてるって事は事前に聞いてたんで悠夏もーって思ったんですけど」
「許可されなかった?」
「えぇ。流石に二枠は増やせないって…」
やはりというか彼女はグランエプレへの加入を希望していたようだ。身内と戦いたい事やグランエプレは例年と違って枠を増やしての運用を行っている。自分も特例で加入出来ると思っていたがガーデンは許可しなかったようだ
「(身内采配する懸念だろうなぁ…)」
レギオンの人数が増える事は良い事だ。強いリリィなら尚更。人が増える事で作戦の幅も広がるし運用が楽になる場面も有るだろう。だが今の状態で人を増やす。ましてやそれが高嶺の身内で叶星とも交流がある者となると話が別だ。更に拗らせた事をやるという可能性をガーデン側は懸念したのだろう。
「でも秋日様と戦えるならそれはそれで嬉しいなって思ったんで、生徒会に決めました
それに生徒会なら間接的にサポートも出来るって思ったんで!」
「ねぇ、秋日様って誰?」
「神庭の生徒会長…自分達のトップの名前位は覚えようね…」
流石に生徒会長の名前すら知らない灯莉に呆れるしかない…神庭の顔という意味なら叶星かもしれないがガーデンの長という意味だと秋日だ。話した事は無くとも名前位は知っていなければおかしい。海漓は呆れながらに告げる
「流石に正規メンバー3人じゃ苦しかっただろうし秋日さんも大助かりじゃない?テストとかあったの」
「まあねー。生徒会入りの時に校長先生と秋日様相手に面談して合格って感じだったよ。テストは無かったかな」
「(実力だけじゃ無いって事か…当たり前だけど)」
そこらのレギオンではなくガーデンに所属するリリィの取りまとめを行う生徒会に入るのだ。藤乃が見せるような奇行的な問題であれば笑い話や秋日の頭痛で済むことだが、他者や他校を見下したりそのような発言でトラブルを引き起こしたり生徒会に近寄れないような空気を作り出すような者なら当たり前だが入れる訳には行かない。名門からの編入と言う事でその辺りは警戒して当然。人格、素行面に問題がない事で生徒会への加入を認めたのだろう
悲しい事に名門ガーデンの人間には必ずと言っていいほど格下を見下すような発言を当たり前に行う者が多く、強ければ許される理論でまかり通ってしまっているのが現状だ。悠夏にその手の価値観が無い事を確かめたかったのだろう
「どうして海漓ちゃんと一緒に?
生徒会の防衛エリアと違うわよね」
「高嶺姉様の後を追おうとしてたら出遅れた海漓さんを見かけたんでついでに声かけて…と言いたいことろなんですけど」
「けど?」
「今回、生徒会役員として【神庭
「(そういえばクラスでも話題になったりポスターも貼られてたっけ)」
神庭
参加も自由でやる事も自由。とはいえこのイベントを目的に外部から大勢の人が来校し優秀なリリィをスカウトする場でもある。在校生も卒業後の進路に影響することもあり参加するリリィは非常に張り切っている
リリィとして卒業したが行き先もなく途方に暮れました…と言う訳には行かない。
卒業後もリリィに関われる職につけるのは極僅かな優秀な人物のみ。だからこそ卒業後の進路に関わる行事はとても大切だ。
「グランエプレにもスカウトに行く途中だったんですけど」
「途中でヒュージ出現警報がなった…と」
「はい!後はグランエプレの戦いを見ておきたいなーってのもあったんで」
「それで、見た感想は?」
姫歌は評価が気になるようだ
「叶星様と高嶺姉さまは元船田予備隊出身だけあって流石の実力だし、海漓さんも新進気鋭の鎌倉5大ガーデン出身だけあって流石の実力だわ!」
「(私にも触れるか…てっきり二人だけだと思ってたけど)」
先の感想など知る由もない海漓からすればここで自分も挙げられるのは予想外だった。二人はともかく、高い評価をするような行動をした自覚はない。
秋日や藤乃からなにか言ってくれたのかと思ってしまう
「隊長が叶星様って事を考えたらサブリーダーは高嶺姉様よね!!
それとも高嶺姉様と海漓さんの二人体制?」
現状を知らない者からすれば至極当然の予想だ。中等部からの経験者でレギオンの重役を固めるというのは何処のガーデンでも共通の認識らしい。
「グランエプレのサブリーダーは私や海漓さんじゃなくてそこにいる定盛姫歌さんよ」
「え?ええぇ!?
うそ!?なんでですか!?」
「(そんな反応するよね)」
高嶺が告げる事実に悠夏は驚くし海漓は同情する。経験者がいるのにわざわざ初心者をレギオンの重役に配置する理由が無いのだ。一柳隊の場合初心者の梨璃の隊長が成立するのは隊内に隊長業務の知識と経験のある者を複数抱え大半を実力者で固めているから出来ることだ
レギオンの半分の3名が経験者ではあるが、一人は事情持ちのグランエプレで同じ事をするにはリスクが高すぎる
「定盛はよくやってるよ!!」
「はい。姫歌ちゃんは凄いリリィです」
「私や叶星も姫歌さんが相応しいと思ったから任せているのよ」
灯莉や紅巴は姫歌の事を肯定するし高嶺もフォローを入れる
頑張りを見たり同じ学年の姫歌の努力を見ているからだろう
「え?いや…でも…まぁ、そっちはレギオンから支持されてるならいっか」
「(私の方を見た?)」
何故か海漓の方をみる悠夏
すると
「姫歌さん…だっけ?
今の戦い方、やりにくくない?窮屈そうに見えるけど…
戦闘スタイル、見直した方が良いと思うの」
「な、何ですって!?」
「(あれ?定盛ちゃん、その段階に来た?…訓練よりも他校との合同作戦や大規模戦闘、別行動が多かったからよく見れてなかったけど)」
悠夏の言葉に海漓は意図に気づく
本来ならばレギオン内で気づかなければならない事だが、今までの経緯を考えたら合同レギオン結成以降、自分や仲間と向き合い訓練する時間が無く、海漓に至っては別行動も多くその手の傾向に気づけなかった。彼女の場合レギオンでは叶星の方針もありAZを継続し、背中を預ける事が多くそもそも戦闘時の姫歌を見れないと言うのも大きい
海漓や高嶺はともかく姫歌と立ち位置の近い叶星は何を見てんだと突っ込みたいのは我慢だ
「いきなり現れて私の戦い方に文句つけるなんて失礼じゃない!!」
「定盛、落ち着いてー」
「良いわ!私の戦い方の何処が悪いか教えて頂戴よ!!
グランエプレのサブリーダーは無理だっていうなら教えて頂戴!!」
「いや、そこまでは言ってないんだけど…」
「(しゃーないな)そういう所だよ」
悠夏は姫歌の反応に戸惑いを見せる。ここで揉めて余計な火種を生み出すわけには行かないと海漓は判断し助け舟を出すことにした
「何!?肩を持つの!?」
「気性が荒すぎる。なんでそんな言い方する訳?」
「じゃあ何よ!言われっぱなしでいろって事!?」
「言われっぱなしも何も、サブリーダー云々はともかく悠夏ちゃん、別に定盛ちゃんを悪く言ったり煽ったりしてないでしょ?
少し落ち着いた対応しない?」
「十分落ち着いてるわよ!!」
「悠夏が好きで言ったことだから…ここで海漓さんが揉める事じゃないよ」
不味いと思ったのか悠夏は海漓を止める
彼女からすれば善意の発言から、まさかの対応の連続になる。これ以上続ければ今度はグランエプレ内で衝突が置きかねない。それは悠夏としても避けたいのだろう
そんな時悠夏の端末がなる
何処かと会話しているのだろう。
「あーちゃんも酷いよー
定盛、頑張ってるんだよ」
「そ、そうですよ。火に油を注いでどうするんですか!?」
途中、灯莉と紅巴は先の行動を非難する。二人としてもまさか海漓が悠夏側に立つとは思わなかったのだろう
「頑張っては居るけど、それとこれとは話が別でしょ?今のはコミュニケーションとかそのレベルの話だからね?
転入して間もない同期にブチギレた対応する奴が何処にいるのさ」
これまでの姫歌の頑張りを否定するつもりはない。たがそれと今の対応は話が別
確かに些細な事かもしれない。しかし性格というのは戦闘時にも表れる、サブリーダーとして相応の立ち振舞は求めたいのだ。
そもそもあの言い方に対して一方的に怒った対応をすれば悠夏だって良い印象を持たないだろう。レギオンとしても同期としてもそんな対応をするのは良くないのだ。彼女の性格が比較的温厚だったから何も起きなかったが相模ならば姫歌の発言と同時に衝突になり収集がつかない可能性が大いにあった
「秋日様から戻って来いって言われたので悠夏、戻りますね
後、海漓さん借りていきまーす」
「(タイミング!!)」
この騒動を知らない秋日に否はないがそれでもこのタイミングで自分が呼び出されるのはなんとも言えない。
「じゃあ皆さん、また!!」
「…とりあえず要件済ませたら戻って来ます」
とりあえず先に秋日からの呼び出しを済ませるのが先決
手を引かれる形で二人は控室を後にする
廊下を歩いていると
「もしかして、庇ってくれた?」
「別に。」
先の対応、もしかして自分を庇ってくれたのかと思い尋ねたが海漓は否定する。彼女も思うところがあったから口を挟んだだけ
「アレが戦闘に出る兆候があるならちょっと今の戦い方はあってないかもね
元々目立ちたいって言うタイプだしそこにあの荒さが噛み合わさってくるなら…」
「ちょっとびっくりした。あんなに怒るなんて思わなかったから
でも、姫歌さん、今のままなのは良くないと思う」
リリィの性格は戦闘スタイルに反映される…と言うのは学説には無くともリリィをやっている者ならば暗黙の認識としてあるものだ。以前の空気を読めと言う発言の時の対応そうだが、姫歌は目立ちたがりに加え不意な状況で潜在的な気性の荒さが時折出てくるのだ
今のままでTZや司令塔に置くのはどう見ても不味い…それが二人の認識だ
海漓としては姫歌の立ち回りを後ろから確認したい所でもある
それに戦闘スタイル云々の下りもリリィ同士ならばなんの変哲もない話題の一つだ。合う合わないや助言など何処ででも行う事
そのやり取りで怒られるのは悠夏としても予想外だったのだろう。
「定盛ちゃんからしたらプライド傷つけられたってのもあるかもね
ぽっと出の同学年が自分のやる事にケチつけたって思ったら腹立つでしょ?」
「だって窮屈に見えたから…」
「別に悠夏ちゃんを責めてるわけじゃないよ
そもそも同等なんて考えてる時点でおかしいんだから
学年は同じかもしれないけどリリィとしてのキャリアなら圧倒的に上でしょ?
私にも言えるけど」
あくまでも彼女の仮設だ。証拠はない。たが姫歌の反応を見る限りほぼ当たりだと思っている
入学早々にトップレギオンに指名され、サブリーダーに就任。多くの戦いを乗り越え強くなった矢先、転入生に戦闘スタイルに否定的な意見を言われたのだ。
自信とプライドを傷つけられたと思っても不思議ではない。
海漓のように中等部からリリィとなり教導官や先輩からドヤされる事なく自由に過ごしてきたのだ…悠夏に悪意が無くともあの発言に怒ったとしても不思議ではない
「別にキャリアの上下とかは考えた事なかったかな…海漓、結構気にする?」
「キャリアにしろ年齢にしろ上の者の言葉には耳を傾けるべき…とは思ってるよ。考えなしに依存して何でもかんでも受け入れるのも問題だけど全く聞かないっていうのもどうかと思うよ」
別にリリィに限った話ではないだろう
他人の言葉に耳を傾けずに我が道を突き進み成功する人物など極わずか、そちら側ならばともかく、そうでないならば取捨選択をしつつも傾けるぐらいの事はするべきだ
「使えるものは使う」を実現する為にも必要な事でもあるのだから
「このタイミングで呼び出しなんて何かやらかしたかな私?」
「悪い話じゃないと思うよ
寧ろ適任っていうか…神庭を代表するリリィって判断されないと任せられないかも…」
秋日との話を知っていての発言と捉えると白々しいが、ここは敢えて、だ
だが返答を考えるに違う方面での呼び出しのようだ
「神庭を代表って…それこそ叶星さんや高嶺さん。防衛隊の面々や他のリリィで良くない?なんで私?」
「海漓か藤乃様しか候補になってなかったの
こればかりは悠夏筆頭に無理な案件だから。」
「何それ?」
益々意味が分からなくなる
その二択になる意味も他では無理だと言う事も、だ。
そんな事を話していると生徒会室に到着する
「遅いわよ…全く何してたの?」
「すいません、遅くなっちゃいました」
中に入ると秋日を筆頭とした生徒会の面々が出迎える
「海漓ちゃんも、おかえりなさい
駐留任務、お疲れ様でした。」
藤乃もそう言い彼女を出迎える
「いえ、任務なので」
「硬い返事ですねー
半年ぶりの再会ですよ?」
「いや、そんなにたって無いですって」
半年なんて経過して無い。それだけ不在にしていたら大問題だ。何の事を言っているのかと思ってしまう
「誰かを抱きしめないと寂しくて死んじゃう病が蔓延しかけたり大変だったんですからねー」
「誰がそうしたと思ってるの!?」
色々とあったようだ
鈴夢の方を見ると目をそらされた
どうやら色んな意味で大変だったらしい
「その件は、ごめんなさい…」
悠夏も申し訳なさそうにしている
本当に何があったのか、海漓は純粋に気になってしまう
「とりあえず座って。席は…藤乃の横でいいわ。鈴夢は正面に」
「海漓ちゃん、どうぞー」
秋日に勧められ藤乃の右隣に用意された席につく
鈴夢と悠夏は海漓、藤乃の正面に位置する席に座る
「先ずは呼び出した用件なんだけれど
海漓さん。貴方、他社のCHARMを使ってみない?」
秋日から告げられたのは海漓からしても全く予想外の言葉だった