Assault Lily〜御使いの妹   作:ラッファ

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第77話

 

小雨の中の戦闘。自身と悠夏は先陣を切る‥その中でも悠夏の戦い方は目を見張るものがある

 

「うおりゃぁぁぁぁ!!!」

 

叫びながら機体を地面に叩きつけその衝撃で地中から出てきたヒュージを斬撃で仕留める。典型的なパワータイプの戦い方だ。

 

「(力技だなぁ‥勿論技術もあるけど)」

 

何も考えていない‥という訳では無い、己の持つ技量で出来る事をやっているのだろう。見ている海漓はあのような力押しの戦いは出来ない。

 

「まっ、力が無いからって何も出来ない訳じゃないけど‥!」

 

ヒュージが地中から出現すると同時に自身に飛びかかってくるが彼女はそれを素早く回避、側面に周りこむとそのまま親機で切断し撃破

 

「後は‥っと!」

 

左手に持った子機は射撃モードのまま。得意の射撃で迫りくる3体のヒュージを同時に撃破。

新型だろうが、雨が降っていようが全く関係ないと言わんばかりの精度を見せつける

距離があるならば射撃、距離を詰められ近接戦に移行する必要があるならば回避、防御で相手の体制を崩しそこからのカウンターで素早く仕留める

本当ならばこんな事をする必要など無い。リリィの戦いは基本的には防御、回避を軽視し積極的に攻めるのが一般的。それこそ叶星や高嶺、悠夏がセオリーだ。積極的に攻めてこそリリィなんて言葉も有るぐらいだ。

だが海漓の場合、レアスキルやサブスキルの特性を考えるとこのやり方が一番ハマるのも事実。

動きの予測や撹乱で相手を翻弄し鋭い一撃を叩き込む‥これの繰り返し

派手に振る舞うよりも地味だが確実に仕留める。それこそ彼女の性格が戦闘に出る形だ。普段から敵陣に突っ込み一人で複数相手にしてるから派手という風に捉えられるかもしれないがそれはあくまでも結果的にそうなっただけで目的ではない。普段と違い明確に攻めの役割を担う悠夏がいるのも大きい。それこそ相模時代は魅夢を筆頭とした典型的なAZ軍団が大立ち回りをしてくれるため自身は徹底的に地味に徹していた

 

「後は‥コイツ結構自由に動くのか」

 

親機側の刃を射出、機体と射出された刃はワイヤーで繋がっており自由に動かせる‥がその動きは自由度が高い。直線的な軌道だけでなく変則的な軌道を描きながらヒュージを追尾し切り刻む事も可能なのだ。しかもその軌道は自身のイメージした通りになっている。

それを応用すると、

 

「悠夏ちゃん!ティルフィングを射撃モードに」

 

「えっ?」

 

「ヒュージ集めるから纏めてふっとばしちゃって」

 

「いや‥集めるって‥」

 

戸惑いながらも指示に従う。悪天候の為、いつも以上に狙いは慎重になる。

その間に海漓は射出した刃と子機の射撃で付近のヒュージを上手い具合に射線上に集めていく。

 

「もう!これで外したら悠夏が戦犯じゃん!!」

 

ここまでお膳立てしてもらい外すようなリリィではない

放たれた砲撃は集まったヒュージを跡形も無く吹き飛ばす

 

「うわ、すっご。跡形もないじゃん」

 

「まぁねー‥でもまだまだいるよ!?」

 

それでもヒュージはまだまだいる

ここからは手分けして対処に当たる

 

連携しなければ海漓の戦い方はとにかく地味、分かれた後も力強く積極的に攻める悠夏の方が目立っている。この悪天候の中で力強く戦いう様はCHARMを地面に叩きつける事によって生じる衝撃によって生じる水しぶきすら彼女を引き立てる形となりより一層の注目となる

銃声とCHARMによって切り裂かれる際に生じるヒュージの声のみが響く戦闘とは大違いだ

 

「(あっちは悠夏ちゃんが担当してくれてるしここも問題無い‥問題は‥)」

 

突撃した悠夏も問題無い。問題なのはこの悪天候と言う事もあり普段以上にミスの目立つ姫歌達

 

「あっ、倒し損ねました‥!!」

 

「任せて‥止め‥ってあー、滑る!!」

 

悪天候の中での影響など考慮せずに戦うのだ。攻撃は外れるしミスも増える。何よりも

 

「(3人いるんだからちゃんと陣形組むなり呼吸合わせたりしなよ‥)」

 

最大の原因はちゃんとした連携をしない事。悪天候とはいえ相手はスモール級だ。声掛けや合図などできちんと連携すればミスも少なく倒せる

灯莉も出鱈目ではあるが持ち前の転生の勘で二人と比較したら比較的ミスは無くヒュージを倒しているが負担が少なく暇を持て余している状態だ

 

「(もう少し全体見た采配してくれないかなぁ‥)」

 

高嶺につきっきりでこの状態を立て直す事をせず傍観している叶星。自分達に任せるつもりかもしれないが、彼女からすればここまで来ると職務怠慢レベルだ

自分達の仕事が終わったらとっとと下がり前線は自分と悠夏に任せっきり、支援の方針や増員もない‥勿論高嶺にいい所を見せたい悠夏としてはこれ以上のない機会だが何度もこの手の放任をされている海漓としては面白くない。

 

「これで‥ラスト!!」

 

最後のヒュージも斬り伏せて戦闘終了。付近にヒュージの面影もない‥雨脚は強いままだ。ガーデンに帰還し着替えたいと思っている

付近の安全を確認し、ガーデンに帰還する時だった

 

「うーん‥やっぱり戦い方も役割もあってない気がする

窮屈っていうか‥そもそも相性が悪いとか向いてないって感じ?」

 

戦闘が終わり、後は帰るだけ。ヒュージの全滅とともに雨も上がる。道中で悠夏はそんな事を姫歌に告げる

彼女にしたら今の姫歌の立ち回りは相当気になるようだ

 

「はぁ!?」

 

2日連続で言われた姫歌としてはやはり面白くない、自然と反発する

 

「ポジションの変更と、役割をちゃんと出来る子に譲った方が良いんじゃない?」

 

「本当にすぐ喧嘩を売ってくるわね!!何なの一体!?」

 

彼女にしてみれば2日続けての発言でプライドを傷つけられ自身を否定されたのだ、喧嘩を売られた‥と思ってしまっても不思議ではない‥が

 

「いや、別に喧嘩を売ってるつもりないんだけど」

 

「昨日からずっとズケズケ言ってきてなんで喧嘩を売ってないって言えるのよ!?」

 

悠夏に悪気は一切ない。口調や言い方を聞いても明らかだ。だが姫歌からすれば自身を否定する言い方が気に障ったのだろう‥良くも悪くも叶星や高嶺。一柳隊やヘルヴォル、房総半島では主に椛や楪と関わり自身の周りにはそういった優しく肯定的なリリィが多かった事もあるだろう。精々被弾から庇われた時に純からチクッと言われた位だ。

彼女に限った話ではないが自身に肯定的な事を言う者と物凄く優しい言い方をしたとしても否定的な事を言う者ならば前者のほうが印象がいいし受け入れるに決まっている。それが同学年ならば尚更。

 

「そ、そんなに怒る?」

 

戸惑いの方が大きい‥誤解された事への疑問もあるのかもしれない

風邪を引かないためにも着替えをする為に早く帰りたいと思いながら海漓は呆れたように息を吐き出す

 

「とりあえず落ち着きなよ‥戦闘終わりで気分が高ぶってる所に気に障る事言われて腹立ったんだろうけどさ」

 

この状態ならば先ずは落ち着かせることが一番だと判断し、宥める。注意や否定は火に油を注ぐ事になるのは分かりきっている。

 

「姫歌は冷静よ!!何?海漓はそっちの肩を持つつもり?」

 

「肩を持つって‥いや、そう思いたいならそれで良いけどさ。自分の立ち位置とかやった事の影響力とか‥そういうの全部分かった上で喧嘩したいならご自由に。殴り合いでも言い合いでも好きにしな」

 

肩を持ったつもりなど無い。ただ落ち着けと、そう言ってるだけだ。それすらも理解できないことに最早呆れるしかない。

悠夏に味方するのならば敵とでも言いたげな反応。自分を敵扱いするのは勝手だが彼女は転入生とはいえ同じガーデンに通う同期で生徒会役員、敵認定する理由も敵対するメリットも無い。

戦闘が終わった後ならば喧嘩になろうが別に構わないが悠夏は生徒会所属。

そんな人物にレギオンのNo2が喧嘩をふっかけるという彼女からすれば非常識な行為のオンパレード。それが意味する事と影響を正しく理解し、それでもするならご自由にという結論だ。

生徒会が動くのは決定事項。それをバラすつもりも妨害するつもりもない。ありのままの姿を見た上でなければ意味がない。

 

「な、殴り合いなんて‥そんなのいけません!!」

 

「そうだよ!喧嘩は駄目だよ!!」

 

だが喧嘩するなら好きにしろはあくまでも海漓のスタンス。相模女子では日常茶飯事なだけで他では非常識。まさかの発言に紅巴や灯莉は驚く。

 

「そう?まぁ、いいや。‥さっさと着替えたいから先行くね」

 

最低限伝えるべき事は伝えた。後は姫歌達次第だろう。一足先にガーデンへと帰還する

すれ違いざまに

 

「あらあら。ヒュージとの戦いが終わったと思ったら別な戦いが勃発しそうね」

 

「あはは‥悠夏ちゃんも悪気が有るわけじゃないんだけどね」

 

「(悪気云々の話じゃねぇ‥本当ならアンタらがやらなきゃ駄目なことでしょうが‥)」

 

叶星と高嶺の会話が耳に入るが、検討違い甚だしい内容に呆れるしかない。

昨日の件があった以上、二人も戦闘中の姫歌の動きを見て、その上で戦闘後に助言なり今後の提案を行い、必要なら指導を行う。そのぐらいはやるべきなのだ。手を出さず考えさせる‥とは言うが考え方の分からない人間に対してそれは逆効果。正真正銘何もしないで勝手に育つのは姉のような凄まじい才能を持つ者だけだ。

 

ガーデンに帰還した後は着替えとシャワーを済ませ気になる事があった為、生徒会室に向かう

軽くドアをノックすると

 

「どうぞー」

 

「入りまーす」

 

中から秋日の声が聞こえた為そのまま入る

 

「あれ?他の皆は?」

 

「会議と打ち合わせが終って解散したから後は自由に‥悠夏は高嶺の所で藤乃と鈴夢は自室に戻ったわ」

 

「秋日さんは?」

 

「私も片付けて部屋に戻るところ」

 

「聞きたいことやら何やらあったんですけど‥後日にします?」

 

「‥構わないわ。せっかく来てくれたんだし」

 

座るように進められソファに腰掛ける

いつもは他の面々もいる為、レギオンの異なる秋日と生徒会室で二人と言うは珍しい形となる。

 

「それで、何の用かしら?防音対策もされてるから、何でもいいわよ」

 

生徒会室は会議の内容の盗み聞き防止の為それなりの物が用意されている。

どんな事でも話せるし相談も自由ということだ。

 

「あー、そのグランエプレの事なんですけど‥どうするつもりです?」

 

「どうする‥って言うのは?」

 

「春先ならともかく時期も時期です。積み重ねた実績も人脈もあります‥介入のやり方次第ではグランエプレ内外からの反発と秋日さん達生徒会の立場にも影響が出るのでは?」

 

これが結成直後なら何も問題は無かった。だが半年以上も経ち多くの戦いで積み上げた実績と同盟レギオンや防衛構想会議後の共闘や叶星と高嶺の二人のおかげもあり築けた多くの人脈。校内の支持者に加え校外でも有力なガーデンやリリィが味方にいる中での介入。神庭の中の問題とはいえ仲間が不利益な事になった時、守る為と言い秋日達に牙を向く可能性は十分にあると考えている

 

「私達の心配をしてくれるの?」

 

「個人的な恨みや嫉妬での解散ならともかく大義はそちらにありますから‥何やかんや世話にもなってますし」

 

秋日の個人的な理由で動くならば協力などしなかった。だがそうではない。神庭の為、リリィの為に動くからこそ自身も協力した。動いた結果秋日達が不利益を被るのだけは避けたいというのが本心だ。

 

「詳細が決まったら一足先に教えるけど‥まぁ、悪いようにはしないわ。私としても、ガーデンとしても影響は最少限度に留めておきたいっていう方針で一致してるから‥」

 

その辺りはもう考えているようだ。話を聞くに数人の入れ替えで済ますつもりかもしれない‥影響を少なくということは叶星と高嶺の残留は既定路線だろう。ここを引き離すと凄まじい影響が出るのは目に見えている。二人を残すだけなら動いた意味は無いと思うが何か考えがあるのだろう

 

「そうですか‥あっ、私は情け無用でやっちゃって良いですからね?仮に外されても恨み有りませんから」

 

「‥残りたくないの?」

 

「それを決めるのは私じゃ無くて貴方達です。」

 

トップレギオン制とはそういう物だ。リリィが自由に組むのではなく、ガーデン、生徒会が何らかの意図や目的が有り集めた集団。相応しくないと判断したら外されるのは当たり前だ

下手に泣き落としてねじ込んで貰うなんて事は出来ないし、選ばれたいなら努力して認められれば良いだけ‥マギ不足とか才能不足みたいな曖昧で努力ではどうしようもない理由やレギオンメンバーや出る戦場との相性の問題で無ければ何とでもなるのだ。

 

「‥私達が決めたら切り捨てられるのすら受け入れるの?」

 

「今回外されたって生きてりゃ機会は有ります。這い上がるだけですよ。」

 

生きてさえいればまた機会は有るのだ。トップレギオンから外された事でどうなるのかの予想はつかない。見向きされなくなるのか、チャンスとばかりに他のリリィから引っ張りだこになるのか。それがきっかけで生まれる縁もあるだろう‥強くなり返り咲けばいいだけなのだから

 

「周りは知りませんけど‥たかだか1回程度トップレギオンから外された位で折れると思ってました私?」

 

「‥‥」

 

躊躇いも無く秋日に聞くが彼女は目を点にしたまま。

 

「‥えっ、マジで思ってたんです?」

 

メンタル弱いとでも思われていたのだろうか。荒くれ者が集まる落ちこぼれガーデンかつ軍隊式の校風で生き残ったのだからその程度の耐性はあると思ってて欲しかった

 

「い、いえ。そんな事無いわ‥ただ貴方みたいな事を言う子始めてみたから‥」

 

我に返ったのか一呼吸置くとそのように告げる

 

「鎌倉は分からないけど‥御三家でもそれ以外でもトップレギオンから‥いえ高い地位から落ちたり失敗したらそれがきっかけで絶望して不調に陥る‥なんてリリィが大半なのよ?あなたみたいに生きてりゃ良いし這い上がるなんて言う子‥初めて見たから」

 

「持ってる側じゃないからな私‥上手く行かない事が当たり前で失敗も多かったんで‥その度に教導官や上級生から怒られてましたし‥」

 

生憎と彼女は高い地位の人物ではないし持ってはいない。落ちた時の気持ちは分かるとはいえ絶望する意味が分からないのだ‥海漓に限らず相模のリリィもとはそういう集まりなのも大きい。

 

「と、とにかく!編成は決まったら一足先に伝えるからそれまではグランエプレとして活動する事!他は!?」

 

この話はこれで終わりと言わんばかりの言い方、ならば次へと移行する

 

「ここ最近‥そうですね‥私達がルドビコ女学院に駐留してから帰還するまでのヒュージの出現頻度とその際の気象データって有ります?」

 

「‥え、えぇ‥あるけど‥どうして?」

 

「いえ、こっちは気になることがあるんで‥憶測で物事は‥トップレギオンと言えど機密情報です?」

 

秋日が言葉を詰まらせた事に疑問を覚えつつもこちらも曖昧な答えしか返せない。あくまでも薫の言葉と自身の記憶による憶測だ。だがガーデントップレベルの機密であるならば伏せられるのも納得だ。

 

「‥明後日、校長室に来て頂戴‥話はそこで。」

 

「え?校長室‥ですか?」

 

「えぇ。申し訳ないけど貴方にはもう一仕事担ってもらうわ」

 

「(あ、厄ネタだこれ‥)」

 

秋日は覚悟を決めたのか海漓に校長室に来るように告げる。普段ならば行かないような所への呼び出しはとんでもない案件という証拠だ。余計な事を言わずに独自調査をすれば良かったかと思ってしまう

 

「で、それで終わりかしら?」

 

「あー、後最後にもう一つだけ‥すっごい個人的な思いもあるんですけど‥良いです?」

 

「時間も時間だしこれで終わりよ」

 

日もくれてきている、秋日を引き止めるのも申し訳ないためこれが最後だ

 

「その‥エレンスゲの新しくきた教頭について‥どう思います?」

 

「新しく来た?良識的な先生って評判じゃない」

 

何をと言わんばかりの回答だ。

 

「私もヘルヴォルの面々から聞いてますし‥他のウケも良いんでしょうけど‥なーんか胡散臭いなって」

 

「今のヘルヴォルが良識的なのは誰もが知ってる事よ?ガーデン内に理解者が増えるのだって良いことじゃない」

 

「いや、本当に良識なら教頭が来る前に校長が付いてるはずなんですよね‥」

 

秋日だからこそ言える話だ。ヘルヴォルや教頭を信じ切っているグランエプレや一柳隊には言えない内容

 

「校長先生?どうして?」

 

「いや、今のエレンスゲの校長って‥」

 

秋日の反応に戸惑ったのは海漓だ。自分達は教導官経由や提携先の責任者と言う事で知った話だし相模内では常識の事。東京内では更に有名な話だと思っていた‥勿論時が進むに連れ忘れられた、姉を筆頭とした数多くのリリィの出現で埋もれた‥となったとしても近隣校の校長の経歴を知らない理由にはならない。過去のエレンスゲ最大のやらかし後に新しく赴任した校長の名前と知っている限りの経歴を秋日に話す

 

「なんですって!?それは本当なの?」

 

「えぇ。まぁ、元が元なので母校から名前を抹消されてる‥もしくは伏せられてる可能性は高いですけど‥事実ですよ」

 

「名前自体は知っているけれど経歴は‥初めて知ったわ‥海漓さんは何処でそれを?」

 

「いえ、姉妹校提携してるんで普通に‥」

 

「そうだったわね‥」

 

提携先の校長の名前や経歴など簡単に知る事が出来る。まぁ、イルマ出身の教導官がいたというのも大きいが。ガーデンは違えど教導官から見て後輩の代にあたり普通に面識もあるそうだ。

 

「って事を考えると態々教頭を新しく担当させる必要ないんですよ。表立って動けないならそれこそ校長の息のかかった教導官を担当させて春先から影でサポートすりゃいいだけなんで‥」

 

「その話が本当なら校長先生が表立ってサポートは出来なくとも影でサポートすればいいだけの話‥新しく赴任してきた教頭先生に担当させる必要も無いわね‥」

 

表立っての行動が無理でもサポートの仕方などいくらでもる。新しく来た人物に担当させる必要はない。そんな露骨な事をすれば経営元から校長が怪しいとアホでも気がつく。‥良識的で優しく、頼れる大人‥だが随所に不審な点が目立つ、それが海漓から見たエレンスゲ教頭だ。ガーデン改革を口にする一葉の口から出てくるのは常に新しく来た教頭。一度も校長の名前が出てこないのも引っかかる。

 

「で、そんな怪しい教頭が背後にいるヘルヴォルと同盟関係そのままに友好的に行っていいですかね?襲撃されたラボも何の研究やってたか分からず仕舞いですし‥」

 

校長ならば教頭の経歴を知っていたとしてもおかしくはない。担当させるということは信頼に足る人物ということ‥もしくは自身ではなく経営元からの指示でそうせざるを得なかった等の理由はあるがどちらにせよエレンスゲの内情を知る術も無い神庭がこのままでいいのかという懸念だ。先の襲撃を受けたラボがなんの研究をしていたのか‥それさえ分かれば良いがそれも分からない

 

「現状、エレンスゲやその背後が神庭に何かしてきた訳では無いわ‥今の話も決定的な証拠がない以上こちらから動く事は出来ない」

 

「ですよね‥」

 

疑わしきは罰せずという言葉も有るぐらいだ。今の情報だけで同盟解消やエレンスゲのリリィとの接触禁止など出来るはずがない‥が

 

「でも、警戒する事なら出来る。展示会に限らず普段からの警備の見直しを含めた対策をするわ」

 

「仕事、増やしちゃいました?」

 

「いいえ。寧ろ知れて良かった‥私達は基本的に萩窪内での活動だから外の状況は報告や人聞きに頼るしか無いから‥それにこの話も海漓さんだから聞けたのよ」

 

叶星や高嶺に限らずグランエプレの面々に一柳隊、下手すればあの場にいた全員が完全に教頭を信じ切っている。御台場や百合ヶ丘、崩壊したルドビコ女学院ならばともかくガーデンの規模も立ち位置も違う神庭は一緒な事など出来ない

出来る限りの事や対策を地道にしていくしか無いのだ。本当ならば海漓よりも先に動くのは知識もある叶星と高嶺だがヘルヴォルや教頭を疑いもしない。何も知らないまま交流し、知らぬうちに道を踏み外した、なんて事を想像したら恐ろしくもなる

彼女がこの話を持ってこなければ本当に知る術が無かったのだ

 

「でも‥良いの?エレンスゲは相模の提携先だし顔見知りも多いんでしょう?」

 

「一葉含め同期、上級生に顔見知りはいますけど今の私は神庭のリリィです。‥それに相模もエレンスゲは胡散臭いって裏じゃ言ってますから」

 

知りあいがいれどそれとこれは話が別、自分達の所属先の為に動くのは当たり前‥相模女子としてもそこまでエレンスゲを信じてはいない。個人的に信じるに値する者はいるが組織としては‥というのが大半、次ふざけた事して自分達の立ち位置脅かすなら解消なんて事を言うリリィや派閥もあるぐらいだ。

 

「じゃあ私はそろそろ戻ります

色々とありがとうございました」

 

席を立ち、一礼。そのまま生徒会室を後にする

残ったのは秋日一人、

 

「私と鈴夢の事‥話すべきだったかしら‥」

 

話せばきっと彼女は力になってくれるし己の能力で出来る限り動いてくれるだろうと秋日は思う。それこそ相模女子のルートから動向だって仕入れると思ってしまうし自身が頼めばそれ以上の危ない橋も仕事と割り切り渡る。春先からの協力だって本当なら拒否をしてもいいのに受け容れ、仕事をしてくれた。そしてこの後にも大仕事を任せる事を考えたらこれ以上ガーデンにとって都合の良い駒として扱う事を秋日は望まない

本人としては上等だとしても、だ

 

「年下の信頼できる部下って彼女みたいな事を言うのかしら‥」

 

心さえ開いてくれればこれ程頼れる人物はいないのかもしれないし、それすら出来ていない叶星と高嶺に呆れもする。持つものと持たざるものの認識と意識の差を差し引いても、だ

 

そんな事を思いながら秋日も生徒会室を後にする

 




秋日→海漓に庇護感情は一切なし

やり取りの意訳

海漓「才能ゲーするなら切り捨てられても仕方なし。単なる実力不足なら這い上がるわ(意訳)」
秋日「自分の実力わかっててそんな事抜かしてんのか?
御台場や百合ヶ丘は知らんけどお前をカス判定して切り捨てたら神庭のリリィ消し飛ぶんだわ(呆、怒)(意訳)」
海漓「でもウチの2年は才能ゲーしてるよ?残すならやっぱ私無理ですよ?(意訳)」
秋日「とりあえずグランエプレでまっとけ(意訳)」
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