ネストの調査を行いつつ展示会の準備と出現するヒュージへの対応に追われている日々、この日も朝から展示会の準備を行っていた‥のだが
「(高嶺さん、日に日に顔色悪くなってない?)」
途中、紅巴の提案で自分達も叶星と高嶺の作品の制作を手伝う事になりレギオンとして展示会に挑む事になったが負担は減らない。それもそのはず、いくら負担を減らしてもヒュージの出現で叶星と高嶺はそれ以上の負担を進んでかけていっているのだ。回復が間に合わない影響は当然出ている。経験者ならば誰もが気づくレベルだ
本来ならば適度に休養を挟む必要があるのだがそんなの知らんと言わんばかりの根性運用だ
「(気付かないわけ無いんだけどなぁ‥本当に高嶺さんのこと大切なの?)」
今の海漓には何の権限も無いとは言えこのままの運用では死人が出ても可笑しくないレベル。無視という訳にはいかない
そして、高嶺の異変を見て見ぬふりをしている叶星にも疑惑の目が向けられる。
あくまでも天野海漓という人間の価値観の話になってしまうが、無理な起用をし、過度な負担をかけ、身と心をすり潰させる行為を大切な人に向けるという考えそのものが理解できないのだ。無論、才能あるエリート達からすれば叶星がそんな事をしているのは自分達が弱いからと言われてしまえばそこでお終い、反論も出来ない。
言えたとしても『そんな事言うなら他の強いガーデン行くか御台場残れ』位だ
「叶星さん、少しの間メンバーを順番に休ませませんか?」
「急にどうしたの?」
展示会に向けた作業中に話すことではないのも十分理解している。相模では受け入れられたが神庭で、更に言うなら御台場上がりの叶星がどう言うリアクションをするのかも分からない中で海漓は声を上げる
威圧、命令ではなく下の者が上の者に提案するように落ち着いて語りかける
「最近ずーっと出ずっぱり。ヒュージの出現が落ち着く気配も無し‥私含め皆肉体的にも、精神的にも疲れてると思うんですよ、自覚あるかは分からないですけど」
連戦で消耗するのは肉体だけでは無い。心も消耗する。戦闘で発生する緊張感や戦わなければならない事への苛立ちや不安。肉体はごまかせる事もあるが、精神面のごまかしは効かない。
トップレギオンである為、出撃しなければならない機会が多いのは彼女も十分理解している。しかし、当面の間はフルメンバーではなく本来の5名で出撃し残り2名は完全オフ。例えヒュージが現れたとしても呼ばない形にしたいのが彼女の本音だ。
「姫歌は全然戦えるわよ!!」
「僕も!!」
「わ、私もです!」
話を聞いた姫歌達は何言ってるんだと言わんばかりの非難の声。
そんな声は知らんとばかりに彼女は無視、叶星の反応を待つ
海漓も根性そのものは大切だという考えはある。この状況が体力、精神面の強化を目的とした訓練期間内での発言ならば彼女が悪い。だがこれは訓練ではなく実戦。対策が遅れたら取り返しのつかない事になる。
根性も必要ではあるが、あくまでも奥の手であり始めからそれを前提とした無茶な運用は避けるべきと教わってきた。
ちなみに相模で根性前提の運用したら『私等疲れ知らずのロボットじゃねぇ!』と批判される
「必要無いと思うわ」
「(ですよねー)」
ここまでは想定内。御台場時代に『成功は苦しみからこそ得られる』という校風の元強い戦士、優秀なリリィとして育てられた叶星と高嶺からすれば今回の件や苦しみも成功の為と解釈するだろう
「(もう苦しませる事が目的になってんじゃん‥)」
リリィとしての思考以外は比較的まとも、分野によっては年相応の海漓から見た御台場の校風の解釈は単に日頃の訓練サボるな、だ。ヒュージとの戦いに生き残るための訓練で厳しいのは当然、楽して勝てる程戦いは甘くない。だが今回のような消耗やその先に起こり得る結末と生まれるであろう悲しみと苦しみなど避けなければならない事。
「海漓ちゃんが、休みたいって言うなら止めはしないわ。でも、それを皆に強制する事は違うんじゃないかしら?」
叶星の考えとして、神庭では出撃選択性が認められているのだから以前のように理由をつけて出撃拒否をする事は可能であり止める権限は持た無い。休みたいなら一人で休め、私達を巻き込むなと言いたくなる気持ちがあるのだろう
「流石に他の子達を言い訳に使うのは良くないわ」
高嶺からも非難の声が上がる。先の海漓の言い方では休みたい言い訳として姫歌達を利用したと見られたとしても不思議ではない。まさか
「言い訳って‥いや、まぁ、そう捉えられても仕方が無い‥ですよね」
強い戦士として、妥協を許さず、なんて教育を受けてきたとしたら海漓の言ったことは悪だ。
彼女は単に現状の起用が招く損害を防ぐための策の提案のつもりだったが全く響かない。
「海漓は休まなきゃいけないぐらい疲れてるわけ?
なら無理に止めはしないけど、戦えるなら戦いなさいよ!」
言い訳に使われたと思っている姫歌としては面白くないだろう。
海漓には姫歌達の体の事など分からない。本当に疲れていないのかもしれないし無理しているのかもしれない。
「私が休んだら定盛ちゃん達も順番に休む?」
「だからなんで姫歌達を引き合いに出すの!?
姫歌はまだ戦えるの!!」
「それは分かったって‥」
一人が休みコンディションを整えても他が休まずに消耗すればその分の穴埋めは海漓が、一人でやる羽目になるのだ。他も順番に休んでくれなければ意味がないのだ
「(平行線だな‥)だったら先に私休んで良い?」
話は平行線、どちらかが折れないと終わらない話だが姫歌が折れない以上、海漓が折れるしか無い。妥協点を見出そうにも根性論全開の相手に対し落とし所が見当たらないのだ。
方やレギオンのNo.2で方や下っ端、どちらの方針を優先するかなど馬鹿でもわかる事であり、立場の差を理解できない海漓ではない。
叶星か高嶺が間に入り妥協点を提案するのが最善ではあるがこの二人も根性論者なのだからそれも不可能。妥協という言葉自体が強い戦士として育てられた叶星達とすれば海漓の価値観は受け入れられないのもある
「そもそも海漓さん、そんなに疲れていたの?」
「疲れは有りますよ今すぐぶっ倒れる事は無いでしょうし、出ろ言うなら出ますけど?」
連戦と極秘の調査続きの日々だ。疲れないわけがない。中等部から鍛えられた為、今にも倒れそうなんて事はない。
「だったら、出るべきだと思うわ
神庭が今どんな状況か分からない訳じゃ無いでしょう?少しつかれたからって休んでられる状況じゃ無い事ぐらい分かるわよね?」
「(何を焦ってるんだこの人?)」
高嶺の言う事も分かっている‥だがおかしな点もある。今のグランエプレは特例だが御三家以外は基本的にレギオンは5名で運用し、ラージ級までのヒュージに対応するのが任務だ。ギガント級以上では9人ないし8人でのノインヴェルト戦術やそれに準ずる連携技でしか倒す事が出来ず仮に出撃したら神庭や御三家からの増援を待つしか無い
悠夏の助っ人がある現状を踏まえると2人までなら休ませる事が可能だ。
皆が言うように数多の戦いを乗り越え強くなったと言いながら5人編成に変えたらラージ級までのヒュージを余裕で倒せないなど海漓からすれば笑い話。
叶星と高嶺がこの程度で取り乱したり慌てる意味が彼女には分からない。
「強くなったって言いながら御三家以外の基準である5人編成に戻したら満足にヒュージ倒せないとか思ってるんます?
疲れが溜まって普段通りの動きや判断が出来ないリリィなんて邪魔でしか無いですよ?
AZで突っ込んでく高嶺さんならこの位の事は分かりますよね?」
「そんな事は分かってるわ。
でも苦しい今だからこそ頑張るべきよ。ここで音を上げる様なリリィやレギオンに成長や未来なんて無いわ」
「(待って、これ私がおかしいの?
単に疲れ溜まってるから休ませようって話だよね?)」
ヒュージ相手に負けを認めたかのような言いぶりだが海漓は間を開けようと提案しただけだ。ヒュージとの戦いを諦める、音を上げたつもりなど微塵もない。ここまで否定されたり、非難され叱責されると自分がすべて間違っていると錯覚して、彼女達への怒りよりも先に自身への疑念が湧いてくる
神庭は疲労を考慮し休ませるような運用をしたら成長と未来が消える恐ろしいガーデンなんて思ってしまう
結局の所、この衝突の根本的な原因は価値観の違いに加え才能と実績の有無だ。それこそ海漓がアールヴヘイムに所属し通用するような才能と実績があれば聞き入れたかもしれないがそんな才能はない。自分達に劣る雑魚が何偉そうにしてんだと思われても仕方がないのだ。姫歌達からしても中等部経験者の中では最弱と見られている可能性すらある。エリート出身とエリートに囲まれて育てばそうなっても仕方が無い。
「分かりました。そこまで言うならば仕方がありません。成長や未来が消えてほしく無いですし前言撤回。出ます出ます」
「苦しくて逃げ出したくなる気持ちも分かるけど、得られるものも沢山有る‥だから皆と一緒に乗り越えましょう?」
「そうですね、そうします。(私逃げたいって言ってないんだけど!?)」
叶星は海漓がこんな事を言ったのは先の見えない戦いに心が折れそうになってるような判断をしたのだろうが、彼女の心は折れていない。疲れが溜まってるから順番に休ませようと言っただけ。
「‥皆、少し休憩しましょうか。」
一旦仕切り直したい狙いも有るのだろう。叶星の提案に異議を唱える者はおらず、作業を中断する
中断と同時に海漓は控室を後にする。この場にいてもまた再燃する可能性が十分にあり、距離を取り頭を冷やす目的も彼女にはある
「(こりゃどうにもならないな‥)」
先の会話で十分に分からされた事だ。価値観の違い。生きる為に策を練り、リスク管理を行い、リリィを正しく運用する必要性を分かっている海漓とそれら全てを必要ないと切り捨て、才能と根性で乗り越えられると考えている叶星達。
共に戦うチームとして考えるならば価値観の違う人間など不穏分子でしかない。彼女自身裏で生徒会と仲良くしている為、不穏分子というのも叶星達の視線で考えるならば強ち嘘でもないのも辛いところだ
リリィに限った話ではないが初心者と言うのは何も知らない雛鳥と同じで良くも悪くも影響を受けやすい。それは海漓も良く分かっている。彼女だって相模女子でリリィになり様々な事を経験した結果として今現在に至ったのであって、他のガーデンに通っていたならまた違う価値観を持っていたに違いない
姫歌達にしてみれば何も知らない状態で神庭に入学しトップレギオンに選ばれ叶星と高嶺と出会い、一柳隊、ヘルヴォルとの同盟結成から新宿事変を経てルドビコ女学院への駐留、御台場との共闘で多くの出会いと戦いを経験し培われた価値観と言うのはどうしても名門寄りになってしまう。彼女達の才能は海漓とは比べ物にならない程に恵まれ、経験者ならば実力と実績も十分にある。姫歌達に思うことは多く有れど責める気にはならないのだ。
「(無いのは‥私だけ‥なんだよな)」
才能無い奴が才能あるエリートのような立ち振る舞いしたら死ぬだけだと伝えようにもエリートの立ち振舞で成功している現状では意味がない。失敗と言っても戦場での失敗は良くて負傷、悪ければ命を落とすのだから海漓は一人になったとしても最悪を避ける為の行動をしなければならないのも事実。
憧れの先輩から諭されない限り聞かないタイプというのも何となくだが分かる。問題なのは肝心の先輩が世代を代表する正真正銘のエリートで、そのやり方が正しいと思っている事。
だが、そんな悩みなど関係なしに起こる事もある
「ん?」
突然窓ガラスが音を鳴らしながら揺れ始める。何事かと思い視線を向けると、外は暗く、外では様々なものが宙を待っていることから突風が吹き荒れている事が分かる。先程までは快晴だったにも関わらず‥だ
そしてこの後に起きる事などここ最近の傾向からしてと一つしか無い
「ヒュージ出現‥!」
ヒュージの出現情報。当然自分達も出撃する事になる。
途中雨が降ることを想定し雨衣を来て出撃、靴も雨天用に履き替える。
現場に向かう途中、悠夏も合流。7名で対処に当たる
「スモールばっか?」
「ガーデンからの情報だとね。‥数はかなり多いみたいだけど」
「どの位?1万とかじゃないでしょ?」
万を超すような数が突然出てきたらそれこそネストが完成したレベル。現時点ではありてない事は調査している彼女が良く分かっている。
「そんな数出てくる訳無いでしょ!?ガーデンからの情報だと50位かな?」
「どうせケイブもある事考えたら多く見積もっても70は覚悟しておかなきゃ駄目‥か。」
数だけなら多いがこちらは7名。1人10体倒す事をノルマにすればすぐに終わる。実際は体力やマギ、CHARMの消耗やヒュージの強さもあるため簡単な事ではない。ヒュージ側の増援や想定外の事態にも備えなければならないため10体をゴールと決めつけフルパワーで戦えないのは言うまでもない。
「あー、そうだケイブも有るんだよね‥早めに潰さないと厄介かも‥」
「スモールしか居ない内に潰しておかないとね」
ケイブから追加のミドル級やラージ級が出現したらかなり厄介な事になるのは理解している。理想としてはヒュージ発生源のケイブを早々に潰したい所だ。
こちらは疲労も溜まっている。今まで以上に厳しい戦いになると思いながらも戦場へと向かうのだった。
ラスバレ初期設定のままだと姫歌達も十分に才能ある化け物な件
姫歌→初心者なのにデュランダル引っ提げてくる
灯莉→異能持ち
紅巴→御台場訓練でリリィ未満から成り上がりテスタメント覚醒