「ここに集まった皆さんが新たなレギオンとしての仲間になります。」
午前の授業前、海漓を筆頭とした美術室に集められたリリィ達を前に教導官がそう告げる
ヒュージ襲撃への対処が続いている背中での出来事。
集められる前日の放課後、この日は珍しくヒュージが現れず1日が経過。授業が終わった直後に海漓は教導官に呼び出される
場所は校長室。中に入ると秋日と藤乃、そして校長を筆頭とし数名の教導官がいた
「揃いましたね‥どうします?私から告げますか?」
「いいえ。私から」
校長は秋日と言葉を交わす
そして、海漓の方を向くと
「グランエプレについて‥なんだけど
再編成を行うことになったわ」
「成る程‥(まぁ、仕方ない‥かな?)」
以前は解散と言っていたが、再編成と言う形に変更になったようだ。その理由として大きいのはやはり、萩窪でネスト発生の可能性だ。解散した場合、新たな人員の選定や引き継ぎ、そこからレギオンとしての精度を短期間で引き上げなければならず、ネスト完成に間に合わないどころかヒュージへの対処すらままならなくなってしまうのは明白。
「叶星には伝えて了解を得られたらそのまま活動へと移るのだけれど
生徒会防衛隊を解散、グランエプレへの編入と言う形を取るつもりよ」
「は?」
秋日は今、とんでもない事を言ったのではないか?海漓はそう思ってしまった
「すいません、もう一回言ってもらって良いです?再編成、どうするつもりですって?」
「だから、生徒会防衛隊の皆がグランエプレの傘下に入る形を取るつもりよ」
聞き間違いでは無かった。海漓は頭を抱えてしまう。こればかりは秋日の考えが理解できない
「防衛隊の任務はどうするんです?」
防衛隊の任務は萩窪を守る事。言い換えるなら自分達の帰る場所を守るレギオン。市民にとっても、リリィにとっても重要なレギオンを解散する意図が分からないのだ
「それで、貴方を呼び出したのよ」
「海漓ちゃんには新たに新設するレギオンに移籍して欲しいのです」
防衛隊が解散、では神庭の守りを失ってしまう。無くす訳にはいかない。それに外征を伴うグランエプレへの加入と言うことは主力のリリィは神庭を守るのを辞めた。等と言われる可能性も高い
「そりゃ、良いですけど‥(ネストまでに間に合うかな‥)」
海漓は一介のリリィに過ぎない。生徒会からの要請ならば断る理由はない。
だが参加したとは言え直近ならばネスト発生時までに戦闘をこなせるレベルまで持っていけるか不明だ
ネスト発生が先か、戦闘をこなせるのが先か、ここは時間との勝負になる
結成して数時間で完璧に戦闘を行うなどそれこそ、一部の特別なリリィだから可能な事であって大半のリリィでは不可能だ
誰が隊長を務めるのか分からない。新設レギオンと言う事で神庭生え抜きでグランエプレ、生徒会防衛隊に匹敵する力のあるリリィが該当‥そんな風に考えた
「そうだ。隊長は海漓ちゃんですからね?しっかり頼みますよ?」
「‥はい?」
再び思考停止。移籍の話だけかと思ったらまさかの隊長就任である。驚き以上に思考が止まってしまう
「事情を把握し、生徒会、グランエプレ双方と繋がりが有るって考えると貴方しかいないのよ」
秋日の言う通り、双方と繋がりがあるのは海漓のみ。連携と言う意味でも適任なのだろう。
「急な移籍と隊長就任。負担が増えますがお願いしますね。こちらも必要なサポートは行いますから
こちらがレギオンメンバーの名簿となります」
「分かりました」
校長や教導官も頭を下げる。ヒュージ出撃の増加とネスト発生の可能性。出来ることは全てやっておきたい。そんな意志も見える。
その後は今後に向けた打ち合わせを終え、解散となる
そうして校長室を出たと同時に藤乃は海漓に
「海漓ちゃん。本当に良かったのですか?」
「良い、とは?」
「グランエプレをこんな形で離れる事になって‥」
確かに急な話だ。ガーデンの都合とは言え今まで所属したレギオンを抜け、移籍しろとの指示。1生徒として逆らえない事は分かりつつも、本音はどうなのか、それを知りたいのだろう
「情勢とかガーデンの戦力状況に合わせた入れ替わりなんてよく有る話ですし‥別に気になりませんね。」
守備範囲の状況、ガーデンの戦力を考え、人員の入れ替わりやレギオンの統合等は良くある話だ。トップレギオン制はガーデンが主導、教導官認可制ならば双方の隊長の話し合いで行われる。
相模女子も甲州撤退戦終了後は中等部、高等部問わず大規模な再編成が行われたのだ。今回、それが神庭でも起きた。それだけの話なのだ
「違うレギオンってだけで生きてりゃいつでも会えますから、移籍って言われても‥はい、そうですか。としか‥
それで終わるならそこまでだったってだけですよ」
命をかけて戦う以上、その日が突然来る可能性は誰にでもある。だからこそ、そうならない為、生きる為に命がけで戦うのだ。海漓からすればレギオンが違おうが生きていればいつでも会えるのだから気にならない
レギオンが分かれる事で崩壊する様な関係なら所詮そこまでの関係に過ぎなかったのだ
そんなやり取りを行ったのが前日、そして、現在に至る。
この場に集められた者が新設されたレギオンの面々だ。
「先ずは一年生から
絵画科 天野海漓さん、
造園科
二年生
建築科
声楽科
造園科
三年生
建築科
教導官が選出されたリリィ、一人一人の名前を丁寧に読み上げる。合計13名。大規模なレギオンが結成された
「学期途中でのレギオン編成にも関わらず、加入を了承してくれたことに感謝しています。
多くの困難にもひるまず、神庭の生徒の代表としての活躍を祈っています」
「「「はい!!」」」
レギオン全員が返事をする。
「隊長は天野さん、副隊長は貴方達で決めてください。私からは以上です
皆さんから何かご質問は有りますか?」
最後に隊長を告げ、質疑応答。特に反応も無いため、教導官は退出。
美術室にはリリィだけとなる
「‥ほら、隊長なんだから‥仕切らないと」
「そうそう!いっちゃえー」
急かすのは薫と楊美。話し合いを仕入れと言うことなのだろう
前に出て全員の顔を見る、観察する者が大半だ
「(敵意は無い‥良かった)」
嫉妬や憎悪の視線を向けてこないのは幸い。余所者の海漓が隊長となるのだ。生え抜きの面々から面白くないと思われても仕方がないし覚悟していたが、その手の視線は感じられない事に安堵する
「とりあえず‥副隊長決めます
‥上級生の方が良いんですが‥何方かやっていただけないでしょうか‥?」
海漓は上級生に尋ねる。学年のバランス、彼女自身の神庭歴の短さを考えると長く居る者にお願いしたいと考えたのだ
「私がやるわ。」
手を上げたのは祥枝だ。反対する者もいない為、そのまま決定
「未熟な隊長ですが、よろしくお願いします。」
「こちらこそ。」
互いに頭を下げる。完璧では無いことを自覚し、力を借りる事が多い事をわかっている故の行動だ
「隊長さん。早速なんだけど‥私達どうしようか?」
「そうですね。当面は出撃を避け訓練と休養に時間を割こうかなと思います。勿論ガーデン側からの出撃命令が出れば話は変わりますが‥」
当面の予定を話す。レギオンとして戦う為の訓練。連戦により消耗した心と体を回復させることに時間を割く。
「で、出ないの!?」
「期待されてないのかな、私達?」
紗鳥と寧々は話を聞き、驚く。彼女達は高等部からリリィになった身でありる。新設されたレギオンに招集に喜んだのも束の間、出撃せずに訓練と休養と告げられれば期待されてないから出れない、と思ってしまっても仕方がない
「期待されてるからこそ、だと思うよ。回復も立派な努め」
「訓練も何もせずバラバラな状態で出撃しても邪魔になるだけ。
幸い、実力者はまだまだいる」
結弦と穂が2人に説明。彼女達の言う通り。結成されたばかりで訓練をせず、戦術を決めずに出撃した所で連携も何も無くバラバラ。迷惑がかかってしまう。幸いな事に選出されていない実力者はまだまだいる。訓練や休養の時間は確保できる筈と考える
「御台場迎撃戦のアレはメンツ含めて色々バグってるからね?‥妹の天野さんの前で言うのはアレだけど‥」
そう言うのは八智代。訓練が必要と言ったが、行わずに連携した前列がある。最たる例が御台場迎撃戦、死者0故に奇跡と言われているが、リリィとして戦っている彼女達からすれば死者0名と同等かそれ以上に何の訓練もせずに結成された多くの即席レギオンで仲間同士の行動な連携な必須であるノインヴェルト戦術を平気で行いギガント級やアルトラ級を仕留めた事が奇跡だ
当然それらは質の高いリリィだから出来た事。
「いえ、お気になさらず。まぁ、そういう事なんで‥皆さん。ヒュージ出現頻度が高く焦る気持ちもありますが‥地に足つけて、確実にやりましょう」
焦って出撃し、負傷者多数なんて事は避けなければならない。神庭を守る為にも備えなければならないのだ。
「とりあえず、解散!レギオンとしての訓練は午後からで」
「ヒュージが出ても出撃しちゃだめだからね!」
海漓と祥枝の一言で一事解散、各々美術室を後にする
残ったのは海漓と祥枝の二人だ
「ローテーション諸々考えないといけませんね‥」
「レギオンとしての方針も、ね」
休みと言っても気分で休ませるわけではない‥順番を決めなければならず、レギオンとしての方針も決めなければならない
焦らずと、いったが余裕がある訳では無い。効率的に進めなければならない所もあるし、決めれられる物は手速く決める必要がある
他にも強いリリィ居るの?
→急に生えてきても良いように予防策
なんで防衛隊名乗らないの?
→急に防衛隊が(ry