レギオンが結成され数日が経過。この日も朝からヒュージの出現はあったが海漓達は出撃せず授業と訓練に時間を費やす。
学業と訓練を優先。学年事に時間割は異なっているが与えられた時間を有効に活用している。全員揃っての訓練は放課後に行う
全ての授業が終わり、放課後になるとレギオン全員での訓練を行う。
「今日も昨日の続きといきましょう。」
「ノインヴェルトの訓練はやらないの?」
「弾がまだ配備されてないです。それもあるのでラージまではノイン抜きの戦術を完成させておきたいんです」
「マジか‥随分と掛かるね」
祥枝にはそう伝えるしか無い。海漓がノインヴェルトを使わない連携技を行う事を決め、レギオンのチームワークを重視する理由でもたる。ガーデン側も急いでくれているとは思うがまだノインヴェルト戦術用の弾丸が配備されていない。配備されたとしても数は限られると予想しており、そのような中でも戦わなければならないのだラージ級まではノインヴェルト戦術を使わずとも倒すだけの力をつける必要があるのだ
「配備されたとして1発‥多く見積もっても2発だと考えています」
「それだけ?少ないよね?」
「実績の無いレギオンって考えるとね‥」
紗鳥を始め多くの者は少ないと思うかもしれないが仕方の無いこと。実力者は多いがレギオンとしての実績はまだ無い。そんな中で高価なノインヴェルト戦術弾を大量に配備考えるのは当たり前の事。
「連携技の精度向上と個の技術の向上を両立させる良い機会だと思って‥ね」
「前向きだねー」
「今いる人員、与えられた装備で戦うしか無いからね。
さっ、訓練しますか」
相模女子で染み込んだ思想。今のレギオンだって何も出来ない訳では無い。ただノインヴェルトを他所のレギオンみたく連打する事が出来ないだけだ。
雑談もそこそこに、訓練開始
今回の想定はスモール級とミドル級の群れを迎え撃つ、だ
「人数多いけど、立ち位置が決まってるから動き安いしやりやすい‥よね?」
「だよねー、もっと動かされるって思ってたけど‥楽?その分覚える事や連携は大変だけど」
寧々、紗鳥は訓練しながら素直な感想を言う。
ポジションを固定する事で各々の役割が明確になっているのが大きい
一年生の初心者がやりやすいと言うのだ。経験者や上級生はそれが顕著に出る
「基本的な動きは分かりましたわ‥やはり肝は昨日の連携技ですわね」
「連携技=ノインヴェルト、もしくはあの二人みたいに仲の良い者同士のコンビネーションみたいになってるからねー」
林乎と祥枝はまだまだ余裕と言った表情を見せる。陣形は違えど慣れ親しんだ固定式での立ち回りだ。感覚さえ掴めば余裕なのだろう
連携技と言えばノインヴェルト戦術のようは必殺技、もしくは仲良し同士で行うと言うのがリリィ一般の認識。海漓の提案する連携技必殺技を使わない連携と言う試みは初だ
「わ、私はついていくので精一杯です‥」
AZ組唯一の一年生である楊美は肩で息をしながら他の上級生に感心する。確かに対応だけならば彼女も出来るが周りは皆上級生。対応よりも上級生について行く事に体力を持っていかれている
「その2人と初見で組む割によくやってるよー。いやー、心強いね」
同期として、2人の強さを知っている結弦からすれば喰らいついていく楊美も実力者という認識だ
その後も何度か繰り返した後に解散となる‥が
「そろそろ‥出てみようと思うんですけど‥どうでしょう?」
彼女が皆に提案する。出る、つまり出撃と言うことだ。
ノインヴェルト戦術を用いない戦闘であれば問題無くこなせると言うのはあくまでも彼女の考え。
「まだ厳しい、無理って思ってる人は素直に言ってほしいです‥じゃないと全員出来るって判断しちゃうんで」
ここが相模女子ならばこんな事は言わない。学年よりも役職重視、隊長の命令が絶対だ。出るの一言が全て。だが、ここは相模女子ではない。リリィの自主制を尊重する神庭だ。否定的、消極的な意志を持つ者がいるならば尊重しなければならない
「行けると言えば‥行けるよね」
「大丈夫だと思う」
紗鳥と寧々の2人は顔を見合わせながらも彼女に伝える。入学直後なら無理と言っていたかもしれないが彼女達も日々の訓練と実戦を積み重ね、生き残ってきたのだ。レギオンに加入し、訓練を行った事で戦えるという感覚はついている
他の者も否定的な出ない事で明日以降、ヒュージが出現した場合は出撃も行っていく事を告げる
その後、解散。
出撃の事を秋日に伝える為、海漓は1足先に訓練場を後にする。
「私も行くよ」
その後、祥枝も彼女についていく形になる
「遠慮してる?」
「どうしてです?」
「いや、顔色伺ってる風に見えるからさ。私達、そんな怖い先輩に見えちゃってる?」
出会って数日経過したが自分達に対し何処か他人行儀に振る舞っていると思われたのだろう。
「顔色というか校風違う中で隊長やらなきゃいけないんで手探りって言うのは正直ありますね」
祥枝に限った話ではない。ルームメイドの薫であったとしても同じレギオンで戦ってはいなかった。猫を被る、顔色を伺うというよりも何が良いのかを手探りで行っているのだ。
「方針とか戦術なんかの戦闘面は私の色を出す分、立ち振舞は徐々にで良いかなと」
レギオンとしての方針や戦術、陣形は今後も海漓の色が強く出る事になる分、普段の立ち振舞は手探りになっていると言う面もある
同期と上級生で言葉遣いが変わったり敬語が多かったりするのもその一環
「そう?上級生、怖い人なんて誰もいないから‥それだけは忘れないで
皆助けてくれるよ」
「十分助けられてますよ」
方 針に従ってくれることも、短期間で適応した事も海漓にしてみれば十分に助けられているのだ。ここまでは順調。
しかし、油断せず調子にも乗らず兜の尾を引き締めるのが海漓だ
歩を進め、生徒会室へと入る。中に居るのは秋日と藤乃のみ
「秋‥うわっ!」
「海漓ちゃん!!」
のんびりと中に入る筈が秋の一文字と同時にこちらに迫る影‥
「ふ、藤乃さん!?どうしました!?」
「随分と久しぶりなので気分が高まってしまいました」
正面から力強く抱きしめられ、そんな事を言われる‥言われるだけならば良い
「あの、手をそこで止めてもらえます?‥流石に不味いです‥多分」
背中にある手が腰まで下がりさらに止まる事無く下に向かいかけているのだ。どう考えても不味いと判断した海漓は早めに静止させる
「ちょっとー、生徒会室で堂々と犯行するの止めてもらえる!?」
秋日も笑いながら告げるが目が笑っていない。明らかに怒っている
「とりあえず、報告があるので今は離して貰えます?」
「‥仕方が無いですね」
報告に下らない事で秋日を怒らせる訳にも行かない。
彼女自身の手を後ろに回し、ゆっくりと藤乃の手を引き離す
「で、どうしたの?」
「明日以降、ヒュージが出現する事が有れば私達も出るんでそのご報告に」
「‥分かったわ。」
秋日は一呼吸入れ、そう言うと海漓の目をしっかりと見据える。生徒会長として海漓と向き合うのだ
「明日以降も変わらず出撃の有無は貴方達の判断に任せるわ。
勿論、規模によっては強制出撃もある事は覚悟しておいて欲しいけど」
「分かってます」
これは当たり前の事である。判断を任せるとは言え、出現の規模によっては強制出撃しなければならない事があるのは承知の上だ
その為のレギオンでもあるのだ
「あれっ、他の2人は?」
「生徒会の仕事に関しては休んで貰ってるわ。連戦続きだから。」
周りを見渡し祥枝は秋日に問う。彼女の言う通りこの場に悠夏と鈴夢は居ない。同じ生徒会なのに居ないのは何事かと思ったのだろう
「連戦って‥休みなくずーっとフルメンバーなの?
もしかして私達が出れるまで待っててくれた?」
「貴方達は関係無いわ。グランエプレの行動は隊長である叶星が決めている。私も作戦への提案はするけど基本的な運用は彼女が行っているわ」
相変わらずの連戦運用。常にフルメンバーでの運用には疑問を抱かざるを得ない
無論、自分達の実戦投入を待っている可能性があったが違う
グランエプレの隊長は叶星だ。出撃の可否や作戦の決定権は彼女にある
秋日は時折提案をする位なのだ。
「私達は混ぜてもらった身ですから
まぁ、先ずは様子見ってやつですね」
「生徒会だしある程度はやっていいと思いますけどね、私は」
「そう言う訳にもいきません‥海漓ちゃんのように分かってる子は少ないんですから」
藤乃の言う通り、防衛隊は混ぜて貰った身。入って早々に好き勝手振る舞えば抵抗される可能性がある。無論、秋日達は生徒会。立場が上なのだ。ある程度と海漓は言ったがそれ相応の権限があるのだから初日から介入しても良いのだが、それは生徒会が自分達よりも上の立場の者であると認識している事で成立する理論。認識しなければ対立構造となる。だから秋日達は叶星のやり方に黙って従っているのだ
「とにかくグランエプレの事は気にしなくて良いわ
‥貴方達も明日の出撃を見て陣形を決めていく形になるのかしら?」
「いえ、陣形はもう決めて訓練してます」
「初日で隊長と相談して決めたよ」
海漓達はまだ陣形を決めていないと思っていたかもしれないが既に陣形を決め訓練を行っている。だからこそ必要な備品を発注していたのだ
「‥私達、ゆっくりやりすぎたのでは?」
「それなら時間かかるに決まってるわね」
グランエプレとして活動している2人としてはこの展開は予想外。今まで出てこなったのは個人訓練がメインだとばかり思っていた
陣形を決め、レギオンとしての訓練は先だとばかり思っており、自分達は遅れをとっていると始めて気付かされる
「まぁ、こっちは文字通りゼロからのスタートですからね。
グランエプレと比較は出来ないですよ」
一概に比較する事は出来ない。海漓達は何も無い所から始まるのだ。新しく決める、という事に関してはグランエプレよりも有利だ
「そう言えばグランエプレはどうしてるのさ陣形。全部叶星頼りなの?」
「今は叶星の指示に従っているわ。求める所に私達が入る形よ」
好きにやらせるとはそう言う事だ。思う所はあっても先ずは何も言わず叶星の指示に従う。それを見て動くつもりなのだ
「そうだ。陣形が決まったなら陣形図を提出して欲しいのだけれど‥手元にあるかしら?」
「えっ、あれ出さなきゃ駄目なんですか?」
世間的に見るリリィの配置図だ
海漓としてはまさか出せと言われるとは思ってもみなかった
「駄目って訳じゃ無いけれど‥一応参考までに、ね。
すぐに用意できるならそこにあるパソコン使っても良いけれど」
生徒会長として、リリィとして新設レギオンがどのような陣形で戦うのか興味がある。
「‥あれ、見せるのかー」
「?何か不都合が?」
「中々にぶっ飛んだ陣形だからさ。いや、やってみたらめっちゃ動きやすいから良いんだけど」
藤乃も訳が分からぬと言った表情。動きやすいのならばぶっ飛んで無いと思ってしまう。
そんな中でも海漓は淡々と操作し陣形図を作成。印刷する
ほんのり温かみのある紙を陣形図が見えないようにあえて裏返しにて秋日に渡す
「どうぞ」
「そんなに勿体ぶらなくてもいいのよ」
秋日は普通に受け取り紙を表面にする
「‥ふぅ‥疲れてるのかしら」
何かおかしな事になっていた気がする
一つ深呼吸、もう一度紙面を表面にて改めて確認
「ふざけては‥いないわよね?」
「あらあらまぁまぁ」
藤乃も秋日の背後に周りを図形を確認
「私が戦いでふざけると思いますか?」
「そりゃそうなるって‥」
相模女子出身の彼女が戦いでふざける事など無い。大真面目に考えた陣形だ
「‥明日の出撃‥見学兼ねてついて行っても良いかしら?邪魔や口出しをしない事は約束するわ」
「私も海漓ちゃんの隊長としての初陣をバッチリ見させてもらいますね」
「‥は、はぁ。特に構いませんけど」
初陣だ。色々とミスや反省点が出るのは覚悟している。それでも見たいならば拒否する理由にはならない
「祥枝さんはどう思います?」
「んー‥良いんじゃない。第三者に見て貰った方が反省点も見つかるから良いんじゃない」
外部から見てもらう事で改善点が見つかる事も有り得る。特に反対する理由もない
こうして報告が終わり、海漓と祥枝は退出。解散となるのだ
前話途中にも図形を載せています