魔弾の射手の習得訓練を行い数日、
射撃を当てるという事を追求した戦術、やる事が明確だったのも大きい
そして、変化はもう一つ
「(ここまでは狙い通りなのかな‥?)」
連日の襲撃をグランエプレが中心となり対応した事で秋日の狙い通り支持と人望、注目が集まっている
生徒からの注目を集める中、戦場で派手な立ち振舞いを行い心を掴めた事が大きい。過ごしている中でもそのような風潮になっていることは海漓も肌で感じでいるし、活躍も耳に入ってくる
その中でも特にアイドルリリィを志す姫歌としては絶好の機会。AZへの転向も結果として成功し、かなりの注目を集めているようだ。廊下を歩く中でもヒュージへの不安と同じぐらいグランエプレの活躍の話題で占められている
「でもなぁ‥ん?」
だが、不安な点もある。それに思いを馳せている時だった
教導官が駆け足でこちらに向かってくる
「天野さん!ここにいたのね」
「どうしました?」
「とうとう‥見つかったわ。」
「‥!?‥そうですか‥このタイミングで‥」
落とし物が見つかったという話では無い。ついに神庭ネストが見つかったのだ。疑惑が出てからリリィ以上にガーデンとしてあの手この手を使い調査を行い続けた結果、当たって欲しくなかった予感が的中してしまったのだ
無論、彼女も覚悟していた、その為に隊が結成され、嬉しい誤算である魔弾の射手と言う力を手に入れる事が出来た。だがガーデンとしてはどうか?リリィの実力、初めであろうネストとの戦い。不安要素は沢山有る。
「説明してきますね。」
この知らせも直ぐに神庭中に伝えられる。今の彼女に出来る事はまず、隊の皆に伝える事だ
直ぐ様会議室に集められた面々の前に海漓が立つ
「ちょっと、どういう事!?」
「私達、なんの為に集められたの!?」
海漓以外は何も知らない面々ばかり。どう言うことかと言う話に当然なる。言ってくるのは主に同級生だ。その中でも佐鳥と寧々が彼女に問う。他の同級生や上級生は何処か納得したような表情をする者が大半を占める
「神庭を守る為のレギオン。それ以上でもそれ以下でもないけど?」
「知ってたの、この事?」
「まぁね。ネストは疑惑の時点知らされてた‥だけどレギオンの結成はあの日に初めて知ったんだ。事前に言われたのはネストとグランエプレの再編成だけ
隊長就任だって結成する前の日に初めて言われたんだよ」
楊美からの疑問にも淡々と答える。
知らされたのはネストの件とグランエプレの再編成だけ。新たにレギオンを結成する事や集められた者。自身が隊長になる事は
「どうして話してくれなかったの?ネストがあるよって」
「ガーデンからの指示もあったし、私個人としてもそこをゴールにして欲しくなかったから‥かな?」
「どういう事?」
「レギオンが結成された目的はヒュージの脅威から神庭を守る事。
ネストに限らず。神庭に迫りくる脅威から人々を守る為に集めらたのが私達」
自分達が結成されたのはネスト対策だけでは無い。今回の再編成に伴い秋日達がグランエプレに編入する事で空白となった
目先の脅威はネストだが、仮にネストを破壊したとしてもヒュージの脅威は続く。そうなった時に対応するのが自分達だ
「それは、ね」
「教導官達にもそうやって言われてたし‥(私達はサポートも言われてたけど)」
無論、この場にいる海漓以外の面々もそれは承知している。選定に関わったのはガーデンの教導官と生徒会。グランエプレの再編成やそれに伴う防衛隊の解散は伏せられていたが、新たなレギオンへの参加の要請や面談は行われていたのだ
受けた説明は海漓が話した内容とほぼ同じ。東京の情勢悪化に伴う戦力強化の一端、だ
だが上級生に限っていえば少しだけ異っており、隊長が一年生である事。そして上級生としてサポートして欲しい事が事前に伝えられていた。
「今回はたまたまグランエプレがいたけど次もいてくれるか分からない。連中が居なくても神庭を守っていかなきゃ駄目で‥極端な話さ、今回のネストだって神庭を守る任務の一つに過ぎないんだ。」
グランエプレが嫌いだから言っているのではない。自身もグランエプレに所属していたからこそ断言出来る。もうグランエプレは神庭のレギオンという括りには収まらない。ヘルヴォル、一柳隊とのレギオン同盟、これまでの外征による戦果、得られた知名度を踏まえるならば合同作戦として神庭を留守にする事は多くなる。
そんな中でも神庭を守り戦わなくてはならない。その為の自分達だ。
「だから‥黙ってた‥?焦らず確実に力をつけてもらう為?」
「まぁね。勿論いつ来る?ってずっと思ってたけど‥結構時間あって助かったかな」
結成翌日や一週間以内にネストが発見されていたら海漓達は何も出来ず詰んでいたが、幸運な事に訓練と戦闘を経験する時間そして魔弾の射手を得る機会も与えられた。
「まぁ、黙ってた事に変わりは無いよね‥申し訳ない」
幾ら良い事を言ってもネストが発見されるまでの間黙っていた事に変わりない。彼女自身、一つのケジメとして隊の皆に頭を下げる
「ガーデンからの指示だったんでしょう?なら仕方ないって」
「あぁ。許可なく話したらガーデンから得ていた信頼を裏切る事になる‥判断は正しかったと思う」
話しても良いならば既に周知されていた。だがこのタイミングまで明かされなかったということはガーデン側も取り扱いには慎重だったが故。許可なく話す事は秘密を守ってくれると言うガーデンからの信頼を裏切るという事になる。隊を率いる者として、一人の人間として信頼を裏切るような事をするべきではないと言うのは誰もが思う事。3年生の春音、玲菜が中心に海漓を擁護する
「ネストは驚いたけど‥神庭がなんとなーくヤバそうってのは薄々感じてはいたけどね」
「えっ?」
その中でも祥枝は動揺することも無く淡々と告げる。寧ろネストがあった事に納得するような感じすら伺える
「私は初等科から神庭に居たんだよ?‥ここ数年の東京の荒れ方とか今年に入ってもルド女崩壊から新宿事変諸々に続いての襲撃増加‥神庭にも順番が回ってきたのかなーって、さ」
「古株組は多かれ少なかれ感じてるでしょ‥まぁ、危機感無いのも結構いるけどさ」
祥枝は初等科から。他にも
「それで、私達はこの後何やるの?」
「こうなった以上、真っ先にやるのは住民の避難ですのでその為の支援作業だと思いますが‥」
ネストが発見された事で今までに無い規模の戦闘になる事は確実。本格的な襲撃が起きる前に住民を安全な所まで避難させる必要があるが、この規模になると自治体や軍の協力が必要不可欠。自分達は避難作業の支援を行う必要がある
後はガーデンが軍や自治体と何処まで情報を共有していたか、だ。何も伝えていない等という事は無いと信じたいのが彼女の本音
「ですが?」
「いや、作戦とか既に練ってるのかなって
疑惑の時点である程度は草案を作って、後は詰めるだけって段階にしないと‥間に合いませんよ」
あくまでも海漓の考えではあるが、ネストの情報については既に上層部や生徒会は掴んでいた。仮に発生しなかったとしても万が一に備え住民の避難計画の草案や使う道の選定、必要に応じて自治体や軍との打ち合わせだって行っている必要がある。
普段の避難とは比較できない規模での避難計画だ。双方で準備が必要となる。
ヒュージの大規模な襲撃が起こる前に避難を完了させなければ市民が巻き込まれ相当な被害が出てしまう以上当たり前の事だ
「理想は‥ヒュージが攻めてきた時にはリリィ以外はもぬけの殻にしたいって事?」
「当然。」
理想は大規模襲撃よりも早く全ての住民を避難させ、神庭には戦える者以外は誰も居ないという状況にするのがベスト
「とりあえず一時解散。何か分かったら再度集まってもらえれば」
何の指示もない以上、今の自分達に出来る事は何も無い。各々解散し教室に戻る。とは言え海漓の場合は楊美、寧々、紗鳥はクラスメイトの為一緒となる
「この後どうなるんだろう‥」
「ネストなんて初めてだよ」
初心者である寧々、紗鳥の動揺は大きい。授業やニュースで聞いた事は有るが、あくまでも聞いた話。自分達が当事者になるなど思っても見なかった
「まぁ、不幸中の幸いなのはまだ見つかっただけ。初手で襲撃が無いだけマシだよ」
「んー、と言うと?」
「ネストによって差があるけど今回の場合だとまだ出来たてホヤホヤ、ぶっ叩くチャンスは十分にあるって事(甲州よりかはマシ)」
今回のネストはまだ、発見されただけ。そして襲撃もまだ無い。つまり自分達には少しだけ猶予があるという事。それは住民の避難であったり対ネストに向けた作戦を練る時間が与えられた事になる。かつての甲州のようにヒュージの大規模襲撃とネストの生成が同時に行われるという状況では無い。
彼女からすればあの時よりは全然マシなのだ。
「ここに居ましたか」
話をしながら廊下を歩いていると藤乃がこちらに向かって歩いてくる
「その様子だと情報は伝えたのですね?」
「はい。今は解散してそれぞれのクラスに戻るところです」
「‥海漓ちゃんには申し訳ないのですが、会議があるので生徒会室に来て貰って良いですか?」
隊長である以上有事の際には会議にも出なければならない。それは十分に分かっている
「あー、はい。分かりました
ゴメン、皆。なんか分かったら直ぐに伝えるから」
「いってらっしゃーい。」
藤乃に連れられその場を後に生徒会室へと向かう。廊下を歩いていく中で、前代未聞の事態に皆が動揺、浮足立っている事が感じられる。授業も中止、ネストに備えた訓練があるのかCHARMを持ったリリィが訓練場へと向かう姿も多く見かける
彼女達を片目に生徒会室へと入ると中には秋日、鈴夢、悠夏。
そして副隊長の祥枝がソファに座っていた
「揃ったわね。それじゃあ会議を始めましょうか」
時間が惜しいのか秋日は直ぐに会議を始めようとする‥が
「待って下さい。どうして海漓と祥枝様がいるんですか?生徒会の会議ですよね?」
悠夏は異議を唱える。何故、生徒会では無い海漓と祥枝と言う部外者を参加させたのか、と言う思いがあるのだろう。そこには高嶺に悪態をついたという個人的な恨みがあるのかもしれない
「人員の選定には生徒会も関わったじゃない。そして理由は私達に変わる新たな防衛隊。
少し強引になるけれどその辺りの引き継ぎを終えていない現状においては生徒会管轄のレギオン。その隊長、副隊長である2人も参加する義務が有るわ」
「それは‥そうですけど‥!」
秋日は淡々と事実を告げる。彼女達は生徒会やガーデンによって集られたレギオン。ならば生徒会の会議にだって参加する権利、場合によっては義務が生じる
「とりあえず、今後の方針だけれど
先ずは東京圏防衛構想会議を開催するわ」
「(‥は?)」
今は秋日が話している以上、余計な事は言わない。だが彼女は今何と言ったか。ネストが発見されたにも関わらず会議を行うと言った。遅すぎないかと言うのが率直な感想
前回とは状況が全くと言っていい程異なっている
「ネストの討滅は複数ガーデンとの合同作戦で行う事を念頭に話し合いを行う予定よ。」
「(いやいや‥遅いって。奇襲されたんじゃ無いんだけど??)」
これが今日突然現れました、ならば分かる。だが今回に関しては少なくとも一ヶ月、それよりも早い段階で疑惑はあったのだ。この言い方では突然発生したかのような言い方。海漓からすれば遅すぎるのだ。無論、都内の事情を考慮したとしても、だ。極秘と言ってもそれは下に対しての話。上層部での極秘会談の一つは行っていて欲しかった
「当事者は神庭、そして作戦の中核はグランエプレが務める事になる
防衛隊には支援に回って貰う形になるわ」
幾ら会議を行い戦力を集めた所で当事者は神庭。当然神庭のリリィが中心となり戦わなければならないし、核となるのはトップレギオンであるグランエプレだ。自分達は後方支援と言うことになってしまう
「はいはい、美味しい所は自分達が戴くって事ね」
「仕方ないですよ。私達は結成されて日が浅いんです‥向こうは実績も十分なんですから」
当然祥枝は面白くない。確かに危険な任務である事は理解しているし、彼女達が力のあるレギオンである事も認めている、が他校と協力し討滅の軸になるという危険では有るが美味しい所はいつも通り全て
だが海漓としては仕方がない事だと告げる
結成されて日が浅く、立ち位置も不透明。そんなレギオンが他校からの信頼を直ぐに得られる訳が無い。嫌ならば今回を含めこの後もコツコツと実績と信頼を積み重ねるしか無いのだ
「とりあえずここまでが現時点で決まっている事になるけれど‥何かあるかしら」
「(じゃあ遠慮なく)なら良いですか?」
異議が何も無いわけが無い。だがこの場で行うのは議論、質問で喧嘩では無い。叶星や姫歌ならともかく相手は生徒会長である秋日、そして生徒会の面々だ。感情のままに語るべきではない。
「話題に出なかったんですけど、住民の避難はどうするおつもりで?作戦や諸々の手配とか終わってますか?」
「それはこの後考えるつもりよ
手配もそれからになるわね」
ヒュージを倒す話ばかりで住民の避難の話が出なかったが大切なのは人々を守る事、その手筈は整っているのかと尋ねる
だが返ってきた答えは何も決まっていない事を伺わせる回答。
「(えぇ‥)あの、間に合います?」
「間に合う‥と言うと?」
「萩窪の全住民を避難させるんですよね‥手段はバスですか?」
秋日だけでは無い。この場にいる皆が言っている意味が分からないと言う表情だ。
「そうなるわね」
「今年から
海漓、そして悠夏もだが今年から
「仮に住民が1万人だとして‥全員を避難させるのに必要なバスとドライバーを直ぐに手配出来る体制を都は整えているんですか?
用意も避難も一日で出来るとは思えないんですが‥」
今回ならば住民の避難手段としてバスを用いるのだろう。だが萩窪に住んでいる人数と必要な台数、そしてドライバーの数を考えるととてもではないが1日で終える事は不可能だと告げる
「それは私達が考える事ではないわ
大掛かりな避難である以上、行政と軍に任せるしか無い」
「‥避難そのものはそうなんでしょうけど掛かる時間や避難に必要な台数を把握しなくて大丈夫ですか?」
「避難を行う日も私達に出来るのは対ヒュージ戦や非常時への備えだけ。
その為の作戦は練っていくつもりよ」
「(うっそだぁ‥何でそんな‥)」
秋日の言う事も一部正しい。ここまでの規模になってしまうとリリィやガーデンの出来ることには限りがある。専門のノウハウを持つ行政、軍に任せるべきなのだが何も気にしないというのは海漓からすればあり得ないし、ある意味他人任せな回答。
口は出せずとも大まかな日時や台数は把握しておいた方が良い。何かあった時に必要ならばリリィを動かせるから。
秋日らしくないと言えばそうなのだがそれは彼女の責任感の欠如では無く、本当に知らないかのような言い方。
だがここを延々と言い続けては先に進まない
「後は‥防衛構想会議の開催が決定と言いましたが具体的に何日後です?
近日中だとしても、都内で核となる御三家はあの2人が帰って来ない事を見るに御台場は不参加。ルドビコは不明、参加出来そうなのはイルマだけと言う事になりますが?」
「日時は決定していないわ。各ガーデンそれぞれの事情もある‥時間は掛かるでしょうね」
もう一点は防衛構想会議を行うと言う事への疑問。日が経つに連れネストが成長し手がつけられなくなる可能性を考慮するなら1日でも早く会議を行う必要があるが、現時点で会議の軸となるであろう御三家の足並みが揃わない事はほぼ確定。都外のガーデンにもそれぞれ事情がある為日時は未定、やることだけ決まったという状況になっている
「ルドビコの時とは状況が違うの分かってますよね?
ネストがあるって言う状況でそんな悠長な事言ってる場合では無いんじゃないですか?下手すりゃ会議開く前に戦力ガタ落ちですよ?」
「分かっているけれど、自分達のワガママだけを通す訳には行かないでしょう?
各ガーデンの事情も考慮しないと」
ルドビコ女学院での開催と自分達の駐在が決まったがあの時は新宿事変後。ヒュージの出現は増えたがネストが無く新宿がある程度安定していたから出来た事。
今回はこの後の襲撃や市民の避難の対応でルドビコとは比較できないほどに消耗し萩窪が不安定化していくのは明白。会議を行った時には既に神庭の戦力がボロボロで戦えませんと言うことも十分にあり得る
勿論、秋日も十分に理解しているが、神庭の都合を他校に押し付ける事は出来ない事を告げる
「それは分かってますよ‥だから何日後位に出来ますか?って聞いたんじゃないですか。」
「だから言ったでしょう?日時は未定だって‥大まかな日にちすら話題にならなかったわ」
「(うわぁ)」
海漓もそれは分かっている。だからこそ日時を聞いたのだ。結果は案の定未定。やる事は決まったが後は何も決まらないと言う事だ
「提案なんですが。ネストがある所でリリィを集めて会議して後日戦力の招集をする位なら直接レギオンの派遣を依頼した方が良い気もしますよ?」
ならばと、海漓は提案する。ケチをつけるだけではない。
会議の場合、来るのは各校の代表者のみ。場所は分からないが集まって、会議して決まったから後日レギオンを派遣するなど時間の無駄。ならば秋日がレギオンの派遣を直前依頼しては?と告げる。
幸いな事に前回の防衛構想会議で外征の緩和に関しての決議もあった
「レギオンの派遣って何処に依頼するのよ‥」
「グランエプレの人脈を活かすならまずは一柳隊
ヘルヴォルは‥辞めたほうが良いかもしれないです。
今回の件をダシに御台場のセインツとロネスネス
御三家ならイルマのイルミンシャイネスとかになりますかね?
ルドビコは復興中なんで呼ぶのは酷ですし」
グランエプレを主軸とするならばやはり、今までの人脈を使うべき。真っ先に頼るのは同盟先の一柳隊とヘルヴォル‥ヘルヴォルは海漓が背後を警戒している為、彼女個人としてはお勧め出来ないが省くわけにもいかない為、名前は挙げる
苦しい中で2人を派遣した事を理由に御台場のトップレギオンや御三家であるイルマのトップレギオンも候補に入るだろう
「会議で何も決まってないのに勝手に依頼なんて出来ないわよ‥」
「そこはもう頼み込むんですよ
時間が無いからレギオンの派遣をお願いしますって。前回の決議で外征の緩和は槿さんが言ってました
風紀委員や名門だって(才能ある奴に対しては)鬼や悪魔じゃないんですし貴方程のリリィの頼みであれば無下にはしないでしょう」
何も決まっていないと言うが時間がないのだ。当事者である神庭の生徒会長が頼み込めば各校対応を考えてくれる筈だ。秋日もそれなりに名の通った力の有るリリィ。そんな彼女の頼みならば無下にはしない筈だ
これが才能の無い海漓ならばどうなるか分からないが、秋日ならば大丈夫な筈だ
「それを含めての防衛構想会議よ。とにかく私から言えるのはそれだけ
他に何かある?」
「なら、最後に一つ。
これ程の非常時ですが、秋日さんとしては防衛構想会議を含めどのように対応する事を考え生徒に指示、他校に依頼をするつもりですか?」
だが秋日も秋日で譲ろうとはしない。この話は終わりとばかりに告げる
そして、最後に今回生徒会はどう動くのかを聞く。海漓からすれば最も大事な事だ
「グランエプレとしては先ず2人の帰還、回復を待つことになるわ
他校への依頼は防衛構想会議の結果を待つ事になると思うわね」
「成る程。では神庭の生徒に対してはどのような指示、命令を?厳しいですけどまずは防衛構想会議までの間、耐えると言う事になりますかね?(2人が帰って来ないと日程の打ち合わせは無理って事だから‥)」
ここまでは想定内。先ずは2人の帰還を待ち、回復を優先する。グランエプレは9人揃わないと本格的な作戦を行えないのだ。
そして、2人の帰還は即ち御台場が安定したと言う事で、ここでようやく防衛構想会議の具体的な日程の打ち合わせになると海漓は予想する。
これはかなり苦しい。帰還と回復までの間神庭は増援なしで戦う事になる。襲撃の規模が未知数な為余裕とは言い切れない
「‥出すつもりは無いわ」
「はい?」
「神庭はリリィの自主制を尊重するガーデンよ
上に立つ者が指示や命令でリリィを動かすなんて事はあってはならない。あくまでも戦う事を選ぶのはリリィ自身
厳しい戦いになるけれど、神庭なら乗り越えられるって私は信じているわ」
「えーっと‥その、ご自分の立場やグランエプレの影響力‥分かってます?」
指示は出さないと言う、暴論にも近い事を秋日は何の躊躇いも無く告げる
確かに神庭はリリィの自主制を尊重するガーデン。海漓も十分に理解しているし、それが神庭の長所だ
だが、この前代未聞の非常時に何もしないというのは何事かと言うのが本音。声を荒げず冷静に、確認するが相模ならば海漓であっても掴みかかっていたレベルの発言だ
「えぇ。」
「上が何らかの方針を示し決めてくれないと下の者は動けないと思いますよ?
ここ数日の戦闘で貴方達への注目、信頼は高まった訳ですし‥何もしないと言うのはガーデンの士気に関わりかねないと思うんですが‥?」
普段は良いかも知れないが、これ程の非常時に何の指示も受けずに、平常心で動けるものがどれだけいるのだろうか?自分達の大将が何を考えているのか分からない、指示もくれないと不安、士気の低下に繋がるなど少し考えればわかる事
ましてやここ最近の戦場での大立ち回りと注目の集まり方。
それらは全て非常時に団結を訴える為の伏線であると彼女は思ったから秋日の頼みを受け入れたのだ。
「そんな事無いと思うわ。
それに海漓さんは、私が皆に死んで来い身代わりになれって言えとでも言うの?」
「いつ私がそんな事言いました?
別にそんな事一言も言ってませんよ?」
しかし、秋日は何を思ったのか海漓としても予想外な事を突然言い出す。いつそんな事を言えと言ったのか。匂わせる事すら言っていない海漓からすれば言い掛かりにも等しい言葉だ。秋日が怒り気味の為、海漓は引いた対応をする。
「命令を出すって事はそう言う事よ
私はそんな指示出したくも無いし、出された子がなんて思うか考えられないのかしら?」
「ならそういう事を言わなきゃ良いだけじゃないです?
だから何もしない。言わないは違いません?」
命を粗末に扱うような命令を平気で出すリリィが居るのも事実なのだろう。彼女は該当しないが秋日はその手の人物を知っているのだろう。だが海漓からすれば言わなきゃ良い、出さなきゃ良いで終わる話なのだ。
命令が悪だから何もしないは行き過ぎた暴論になってしまう。それでは叶星や高嶺と何も変わらないし、見方を変えれば2人よりも悪質だ
「確かに、私達注目を集めちゃいましたからね〜。どうします?演説を行うなら手配しますが?」
「藤乃まで何言ってるの?
2人は神庭を甘く見過ぎでは無いかしら‥特に藤乃は生え抜きでしょう?今まで何を見てきたの?
神庭のリリィは甘くない。自分の意思で考えるリリィが多いわ」
「そうですか?いや‥なら、良いです
私は生徒会でも無ければグランエプレでも無い。何かを提案する事は出来ても最終的に決めるのは貴方です」
そんな事はない筈だ。言い切れるのは秋日の周りに優秀な者が揃っているか、神庭を高く見積もっているかのどちらか。しかし、海漓はこれ以上は何も言えない。今の彼女に出来る事は提案や疑問を投げかける事だけ。最終的に決断するのは生徒会長である秋日。
指示や命令を出さない事、神庭を信じると彼女が決めたならそれで終わり。彼女はその方針を守るしか無いのだ
「‥秋日さん、そろそろグランエプレに合流する時間では?」
「そうね。会議はこれでおしまい
後は貴方達の判断に任せるわ」
藤乃が切り上げる形で会議が終わり生徒会はグランエプレの控え室へと向かう
秋日、悠夏、鈴夢を先に向かわせ藤乃は海漓達と共に退出、ドアに鍵をかける。今回ばかりは時間が無い為、藤乃も早々に3人を追いかける。
海漓達も生徒会室を後に各々の教室へと戻る。殆ど海漓と秋日の会話で祥枝は黙っていた。
「で、祥枝さんはどう思います?」
「無理でしょ。それは藤乃も同じ。気付いてるよ」
一呼吸起き、生え抜きの祥枝に聞いてみるが彼女も動けないと断言する
そして、感ではあるが恐らく藤乃も動けない者が多い事には気付いているとも告げる
「秋日さん、生え抜き‥ですよね?
ずーっと上澄みで低い人とは付き合わないとかそう言う‥?」
生え抜きの割に価値観がズレすぎてはいないか。秋日も俗に言う弱い奴、能力の低い奴とは付き合わない価値観を持っていたのかと不安になり聞いてみる
すると彼女は躊躇う素振りを見せながらも手で頭を軽く抑えると
「秋日と、あの1年の‥名前なんだっけ
白髪の小さい」
「鈴夢ちゃんです?」
「そうそう。あの2人ほぼ同じタイミングで編入して来たから。神庭歴は浅いよ」
秋日と鈴夢、彼女達は編入組で自分達よりも神庭歴は浅いと言う
「編入?どこからです?」
「‥んぇ?隊長知らんの?」
「知りませんね」
知る筈も無い。彼女は生徒会役員ではなく秋日と特別親しい仲でもない。そしてリリィの個人情報など興味すら無い
「エレンスゲだよ、エレンスゲ」
「は?」
まさかの名前に驚きしかない。姉妹校提携先なのだ。驚くなと言う方が無理である
「秋日とその鈴夢って子はほぼ同じ時期にエレンスゲからうちに来たの‥ほら日の出町の後だったかな」
「そうですか‥(だからあの時‥)」
日の出町‥日の出町の惨劇。エレンスゲが起こした最大にして最悪の戦い。提携先である相模女子もエレンスゲ共々叩かれていたのは記憶にある。
そして、その後に校長が変わっており、その正体を以前秋日に伝えた際に驚いていたがアレはそういう事。まさか抜けた後にある意味大物が就任したなど驚きもするだろう
「そうそう。まぁ、理由は色々言われてるけど‥とにかく神庭歴は浅いね」
日の出町の後ともなれば事情の一つや2つはあって当然。深入りや根掘り葉掘りせずに普通に受け入れるのが中立派の暗黙の了解にもなっている
「命令嫌いもそう言うのが関係してるんですかね‥?」
「多分?」
「あー、あー‥」
惨劇の一つに判断ミスが上げられていた。理由は分からないがエレンスゲでの生活に始まり、日の出町の惨劇を経験もしくは現場には居ずとも経緯を知る事で命令と言う行為そのものへの忌避、嫌悪感を募らせた事が伺える
秋日からすれば神庭は自主制を尊重する理想的なガーデンだ。皆ならば乗り越えられると純粋に思っているのだろう
「とりあえず住民の避難の支援、防衛構想会議迄の間は確実に持ちこたえる方向で動いていくしか無いですね‥」
レギオンとしてやれる事は限られるしどれ程の影響を与えられるのか分からない。だが起きてしまった以上はやるしか無いのも事実
当面の目標は住民の避難と防衛構想会議迄の間持ちこたえる事が必要になるのでその為に何が出来るのか考えるのだ。
Q秋日様、そんな無能な訳ないだろ?
A.この辺りのストーリー見てみ?ビビるで?