住民の避難が始まって5日目の朝
この日も早朝から住民の避難が行われる筈‥だったのだが。海漓と祥枝は突然秋日から生徒会室に来るように告げられる。ちなみに他の防衛隊は避難活動と校内での待機に分かれている
「えっと、どう言う事でしょうか?」
「どうもこうも、増援として来たんだけど?」
訳も分からず生徒会室へ向かい中に入るとそこには相模女子の遊糸と葵がいるのだ。現在、遊糸と秋日が話し合い、葵は静観する形だ。
1年生も皆、訳が分からず混乱している状況
「あれ?遊糸さんと、葵さん?どうしたんですか?」
「‥助けに来てやったわよ。ホイ、来たメンツ」
そう言いながら彼女は海漓にも1枚の紙を手渡す。
「どーも‥へぇ、成る程成る程。」
「知り合い来てるの?」
「ほぼ全員知り合いですね‥」
そこには今回、派遣されてきたリリィの名前が記されている。派遣されたのは彼女達だけではない。舞弓や魅夢を筆頭に選抜されたリリィが駆けつけ、現在は軍や私設レギオンと共に市民の避難誘導及びガーデンの警護に当たっている
「ヒヒイロカネ社の私設レギオンといい最近の神庭に対する行動。何が目的でしょうか?」
「さぁ?私設レギオンは政府か都がヒヒイロカネ本社への依頼したから。文句はそっちに言って頂戴私達の管轄じゃないわ。魔弾だって企業の営業活動‥私達の管轄じゃないわ」
秋日が不審に思うのも無理はない。魔弾の射手の教導として派遣されたヒヒイロカネ社の私設レギオンがそのまま戦力として萩窪に残り、住民の避難誘導を軍や自治体のスタッフと共に行ってくれているのだ。更には相模女子のリリィの派遣だ、何を考えているか?と遊糸に尋ねるが知らないと言い切る
彼女達はヒヒイロカネ社からの依頼で動く身であり独断行動は許されていない。動くと言う事はヒヒイロカネ社の命令、もしくは国や都の依頼を受けた上で命令したかのどちらか。それをリリィの遊糸に言ってもどうにもならない。文句があるならヒヒイロカネ本社もしくは都や国に言うしか無いのだ
「それなら貴方達はどうして来たんですか?
姫歌達は来て欲しいって頼んで居ませんよ」
「私達はルド女の生徒会から頼まれたの
防衛構想会議が開かれるまでで良いから神庭の支援に入って欲しいって」
大人同士の話は確かに
「何でルドビコが‥?」
「そうか隊長、その辺りの事情分からないよね」
「萩窪のある杉並区もそうだし東京都の大半はルド女の管轄なんだ
自分達が管轄する区の出来事だからこうして増援の手配なんかも簡単に出来るんだよ」
だが遊糸は表情一つ崩さず淡々と告げる。そして、祥枝と葵が説明するように、この増援そのものが杉並区を管轄するルドビコ女学院から正式に依頼されたもの
「秋日様、増援の話知ってました?」
「いいえ‥いま初めて聞かされたわ」
秋日だけではない、生徒会やグランエプレも初めて聞かされた話。神庭抜き、2校での話し合いで決まったのだから当然の事なのではあるが
「それじゃあ私達に話も無く勝手に決めて送りつけてきたって事ですか!?」
「どうしてー?神庭の守りは僕達だけで十分だよ!」
東京都の役割に沿って行っている為非難するのは見当違いではあるが神庭は自分達で守ると意気込んでいる所に当事者抜きで話を進められ、増援を送りつけられては疑問や多少の怒りは覚えてしまう『なぜ、自分達に任せてくれないのか』と
「(十分じゃ無いって‥分かってないもん。そりゃ抜きで話進められるわ)」
今まで勝ち続けてきた弊害か何か思い違いをしているのか、姫歌達は状況が見えていない。レギオン単独でどうにか出来る事態ではない‥例えば百合ヶ丘や御台場ならば単独で対応する事も出来るが神庭では無理と言うのが彼女の見解。
勿論、グランエプレが強い事は認めるが文字通り自分達で全て出来る筈がなく、それは2校も同じ認識を持っており神庭を話し合いに加えると拒否の一点張りで話が進まないと判断されたというのが海漓の予想だ
「(叶星さんや高嶺さんならともかく秋日さんでそう言う判断されるってどういう事‥?集まりで何かやらかしてる?)」
「隊長、どうしたの?」
祥枝は突然溜め息を吐いた海漓に声をかける。今の何処にあきれながら溜め息を吐く要素が分からなかったから
「いや、警戒するのも分かりますけどリスク承知で来てくれてるのに随分な事を言うなーって
私なら2つ返事で受け入れるのに‥鎌倉5大ガーデンですよ?」
生徒の長として慎重になる秋日も間違いではない。エレンスゲとガーデンとして提携をしている事で余計な警戒もあるだろう。だが明らかに邪険にしている姫歌達は違う。彼女達は遊びに来ている訳ではない。怪我や命を落とす事も覚悟の上で来てくれたのだ。古巣であるという事を抜きにしても酷い事を言うと思うのは当然の事
更に言うなら確かに警戒は必要では有るが今は迫りくる危機を乗り越える為に使えるものは何でも使うという姿勢も必要になってくる
「グランエプレは相模女子のリリィと縁が無いし仕方無いんじゃない?
唯一のパイプ持ちが抜けちゃったんだから」
「縁の有無で対応決めるのも如何なものかと思いますけどね‥」
結局の所グランエプレは相模女子のリリィと繋がりが薄いからとなってしまう。接点と成りえる人物も結果的にグランエプレから去ってしまったのだ。勿論戦力では無く縁の有無で対応を変える等論外ではあるのだが
「さっきから気になってたんだけど元御台場の2人はどうしたのよ?
怪我?」
話を切るように遊糸は叶星と高嶺の2人が居ないことを不審に思い、尋ねる。到着してから一向に姿を見せない以上、何かあったのかと思ったのだ
「怪我じゃないです。御台場行きました」
「は?」
「‥えっ?」
怪我ではないことを海漓は伝える。当然聞いた2人は目が点になり、気の抜けた返事をしてしまう
ネストが発生し住民の避難を行っている状況にも関わらずトップレギオンの隊長にして精神的支柱でもある者が居ない事に理解が追いつかなかった
「はぁぁ!?海漓、とっとと呼び戻しなさいよ‥状況分かってんの!?」
「私に言わないで下さいよ‥そんな権限無いんですから」
当然、遊糸は呼び戻せと海漓に言うが彼女にそんな権限は無い‥それは秋日や教導官の役目だが出来るならばとっくに行っている。
「あの‥叶星様と高嶺様はこの件について‥」
「可能性の時点で伝えたわ。その後色々あったけど御台場への遠征を許可をする事にしたの」
「そうですか‥(仕方無いかな?)」
対応に思う所は有るが、これに関しては仕方の無いことと言うのが葵の見解
彼女も過去に東京のガーデンに所属していた事があり御台場のリリィの愛校心、地元愛も認識している。神庭を離れ御台場の危機に戻る‥という判断自体も理解は出来る納得できるかと言われると回答に困ってしまうが
「脱線しちゃいましたけど、どうします?
私個人の意見として、来てくれた増援を追い返すのは無礼にあたりますし、神庭としても不味いと思いますよ?」
少々脱線したが遊糸達をどうするつもりかのか海漓は再度問う。当たり前だが個人的な理由で追い返してしまえば相模女子や提案したルドビコ女学院に対して失礼であり、神庭の評判を落とす事に繋がりかねない
「遊糸様、確認なのですが
防衛構想会議終了後は相模原もしくは町田地区まで撤退するのでしょうか?」
「防衛構想会議で私らも残って戦えってなれば話は変わってくるけど‥基本的には会議が終われば帰るつもり。」
相模女子としても長居をする理由は無い。当面の目的である防衛構想会議の開催を終えれば自分達の守備範囲に戻るだけ。無論会議の中で正式に相模女子もネスト討滅作戦への参加が決まればそれに従うだけだ
「それなら‥遊糸様達はガーデン近隣の防衛をお願いします。」
「ガーデン近隣の防衛‥まぁ、良いわ
なら担当するレギオンとの共闘は認めて欲しいのだけれど?」
「(随分あっさりしてる‥遊糸さんと言えどここまで言われたら文句の一つは出ると‥)‥ん?」
このまま話が終わり遊糸達は退出‥なんて風に彼女は思ったが遊糸は突然自分達の事に触れる。
「‥防衛隊との共闘‥ですか?」
「結成して日が浅いんでしょう?
最低限のサポートは必要じゃない?」
海漓達は結成して日が浅く本格的な戦闘を行った回数も少ない。そんなレギオンだ。この後の活動で様々なサポートが必要になってくるのは言うまでもない。
「ちなみに、遊糸さん、何処までやってくれます?」
突然話題を振られるが取り残される前に海漓は声を掛ける
彼女が気になるのは遊糸達が何を何処までやってくれるのかということ。認識に差があっては支障が出てしまう
「作戦案の相談と‥人員の提供はしてあげる‥後は‥そうね‥何処かに向かえって言えばその指示にも従うわよ。
要はこっちから出張って何かしないって言うだけ。」
遊糸が出したのは案が有るのならばそれに対しての相談と連れてきた人員に貸して欲しい人物が居るならば合流させる。何処かに向かって欲しいならばそれに従う‥実質海漓達の指揮下に入るという事
但し自分達から勝手に動く事は無いし動くつもりも無いためちゃんと指示を出せと暗に告げる
「それなら是非とも協力して欲しいですね
でも‥葵さん含め他は大丈夫です?」
「連れてきたメンツ見たでしょう‥言う事聞かないと思ってる?」
「その答えは卑怯ですよ‥全く」
今の自分は神庭のリリィだ。余所者の言う事を聞くことへの抵抗の有無を確認するのは当たり前なのだが、その心配は不要だと言わんばかりの回答だ
「率いる隊長はこう言ってるけど‥構わないわよね?
神庭は所属するリリィの意思を、尊重するガーデンでしょう?」
止めと言わんばかりの遊糸の一言。何も知らされていない海漓が自分の意思で協力を求め、問題無いと言い切ったのだ
神庭はリリィの意思を尊重するガーデン、生徒会とガーデンによって結成され選出した隊長の意思は尊重されるべきと言い切ったのだ
「えっ、あっ‥そ、そうですね
防衛隊が必要と言うなら‥そちらへの構いません」
「良いんですか!?
相模女子のリリィと戦いたいだけですよ!!」
「海漓ちゃんが決めた事に口は出せませんし‥神庭の方針を言われてしまっては否定出来ません」
防衛隊を率いる海漓が必要と言う以上、止める理由はない。神庭の方針を出された以上秋日、藤乃としても止めることは不可能だ
「(あーぁ、優秀な司令官とファンタズム持ちを逃してら‥勿体ない)」
決して彼女は狙って何かをしたのでは無い。本来なら生徒会と共闘する事が大前提で人数的にも優先してまわすべきと思っていたのだ
抵抗や拒否さえしなければグランエプレとの共闘になっていたのは明白
「遊糸さん達とこの後の事打ち合わや挨拶したいんでそろそろ失礼しますね」
決まったのならば善は急げ、隊の皆への説明と2人以外への挨拶を行わなければならない為彼女は生徒会室を後にする。祥枝も2人の背中を押すようにしながらその場を後にする。生徒会室を出て海漓と遊糸、その後ろで祥枝と葵がそれぞれ話をする
「挨拶言ってもこの後の打ち合わせとかどうするのよ、作戦とか有るんじゃないの?」
挨拶をすると言ったがそもそも肝心の今後についての話は何も行っていない。長引いてしまうが必要な話し合いを行っていない事を指摘するが
「無いですよ、そんなの。」
「どう言うことよ?」
「全てリリィの判断に任せて生徒会からその手の指示命令は出さないそうです。」
以前の打ち合わせで言われた事だが、今回の件で秋日は何も指示を出さない。普段通りの対応をすると言ったのだ。だからあの場にいても何も言われず、ガーデン近隣と防衛とは言うが具体的な事を言わなかったのもそれが理由だ
「‥そんな事したら沈むわよ、
分かってるのかしら?」
「どうですかね?」
神庭は名門では無い。リリィが統率も無しに好き勝手動けば萩窪が堕ちる事は明白だがその事を秋日達が正しく理解しているかどうかは分からない
そんな時だった
「‥警報!?」
校内にヒュージ出現の警報が鳴り響く
現在も住民の避難は行われており、その最中での出現だ
当然海漓にもその連絡が入る
【はい‥分かりました‥はい
相模女子は?‥分かりました。】
秋日は指示を出さないと言ったが海漓達はガーデンの管轄でもある。ガーデン側から何らかの指示が出れば従わなければならない。
「私達は待機メンバー含め全員出撃になりそうです」
ガーデンから防衛隊13名全員での出撃を命じられる。
運用にも口は出さないが今回は規模が規模。全員で対応すべきとガーデンは判断したのだ
「私達は?」
「隊長である私の判断に任せるらしいので‥今回は校舎で待機で
万が一抜かれた時は迎え撃って下さい」
「分かったわ。出てる連中はこっちで呼び戻す」
秋日経由で遊糸達が防衛隊と共闘する形になった事を知ったのだろう。彼女達の扱いは海漓に任せるとの事。
本当ならば遊糸達も出撃させるべきなのだろうが、万が一の事を考えて待機させる
「(移動疲れもあるだろうし‥ね」
彼女達は移動してきて直ぐに避難誘導を行っていたのだ。余計な心配かもしれないが疲れ等も考慮した上での判断でもある。口には出さないが
そのような事を考えつつ、待機しているメンバーにも連絡を入れ準備が終わった者から出撃
ヒュージの対処に向かうのだ。
Q私設レギオンどゆこと?
A都「荻窪やべーからヒヒイロカネさん可能なら私設レギオン派遣してくんね?」
ヒヒイロカネ「おk」
Qなんで神庭抜きで話進めたん?
ルド女「あそこの生徒会とグランエプレ、多分御台場根性入ってるから提案したら拒否る
万が一荻窪落とされたら私達にも飛び火するし今回は管轄してる私達の許可って事にするから構わず向かってくれー
中立の相模なら何も言われん」
後者は本編で補足するけどこういう事