Assault Lily〜御使いの妹   作:ラッファ

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第93話

 

襲撃のあった翌日、この日も朝からヒュージの襲撃に備え防衛隊や相模女子、そして神庭のやる気の有るものが中心となり警戒態勢を敷いている

 

「外征して海ちゃんと組めるなんて日頃の行いがいい証拠ッスね」

 

「せやせや」

 

昨日の戦闘もあり防衛隊を休ませる為に海漓が早朝から今に至るまでパトロールを兼ねて舞弓、魅夢の3人で行動していた。現時点でヒュージの襲撃は無し

気になるとすれば藤乃達が数名のリリィを連れて何処かに向かったことだろう

 

「それが噂の専用機かいな?」

 

「ん、まあね。」

 

今回彼女が使うのはグラーシーザ。付き合いの長い2人から見て上手く使いこなせているか見てもらうためだ‥本当ならば遊糸や私設レギオンに同行している相模の教官にも見てもらいたかったが、また別の機会だ

 

「でも来てくれて本当に助かるよ‥マジで」

 

藤乃達の出撃について詳細な事は知らされていない。

だが助っ人が来た事には感謝している。彼女達だけでない。ヒヒイロカネや私設レギオン、遊糸達が神庭に来てくれた事は間違いなく海漓にとっては心強い

魔弾の射手を与えられず、遊糸達が来なければどうなっていたか‥考えたくもない

 

「おお‥っと!?」

 

警報が鳴り響くと同時、突如地面が大きく揺れたかと思うと地中から見慣れない個体が突然現れる

 

「ほぅ、早速お出まし‥って何やヒュージ」

 

「‥ヒュージサーチャーに反応が‥無いッスけど」

 

目の前に現れたのは確かにヒュージ。にも関わらずCHARMに搭載されているヒュージサーチャーには反応がない。先程の警報はおそらく防衛軍が衛星もしくは偵察型ドローンのような機器で発見しガーデンに通報したことで判明したのだろう

 

「これ、もしかしてアレ?‥去年御台場で出て来た」

 

「‥こんな肥えたフォルムやったか?映像だともっと細身やったやん」

 

似た姿のヒュージならば彼女達は見覚えがある。昨年に起きた御台場迎撃戦、そこに現れた個体であるグンタイアリと非常に酷似しているのだ。

だが姿形が異なっている。御台場迎撃戦ではもう少し細身の姿だったはずだ。相模女子のリリィは参加していない為、直接姿を見た者はいないが迎撃戦後に提携先やルドビコ女学院からデータが渡され、東京とは地続きということも有り万が一現れた際の対策も練っていた。

 

当然、ガーデンからも出撃命令が出されリリィが校舎から出てくると思ったのだが

 

「‥祥枝さん?どうし‥えっ!?」

 

祥枝から心配と相談の通信

どうやらグンタイアリの出現と少しのトラブルで在校生が混乱、一部のリリィは出撃したが大半がどうして良いか分からない状況だと言う

 

「どうしたん?」

 

「2人で少しの間ヒュージ抑えてて

こっちにも何人かリリィは来るらしいけど」

 

「分かったッス」

 

「まかしとき!!」

 

距離を取り、建物の陰に隠れた所で通信を入れる。以前も感じた事だが通信障害が起きていない事は非常に有り難い

 

『祥枝さん、一つ失礼な事聞きますが‥人望有ります?』

 

上級生に対し失礼極まりないがどうしても確認しなければならない事。

校舎内に残っている生え抜きかつ上級生という括りでは防衛隊しか頼れる人物が居ない

 

『ん‥んー、有るとは思うけどグランエプレには劣るよ

どうしたのさ?』

 

この後の作業は本来なら教導官や秋日の役目。だが双方ともに現場(リリィ)任せ。肝心の現場もどうすれば良いか分からず混乱状態で好き勝手に動かれては余計な被害が出る。防ぐ為にも指示の下に動いて貰う必要がある

 

『なら校内に残ってる鷹の目持ちを屋上に配置。敵の位置と数を確認させて下さい』

 

『鷹の目持ちを?』

 

『グンタイアリはあくまでもヒュージサーチャーによる索敵を妨害です。人力で見つけることは可能です(力技だけど神庭には軍が使うような装備は無いだろうし‥)』

 

そう、グンタイアリが妨害しているのはヒュージサーチャーによる索敵のみレアスキルへの干渉や軍の装備に対しての干渉では無い。

 

『数の多い所にリリィを回しつつ、戦う時は複数人で相手するように伝えて下さい』

 

鷹の目持ちを屋上に配置しグンタイアリを見つけ、リリィを送り込むのがこの場での最適解だろう

 

『回すって言っても誰が指示を?』

 

『遊糸さんの力を借りて下さい

あの人、そっち方面はガチなんで』

 

そして、リリィの配置に関しては校舎内に残っている遊糸の力を借りながら行なってもらう。彼女は頭脳が強みのリリィだ。こういう状況での判断はこの場にいる誰よりも優れている。

 

「海ちゃん、そっち行ったッス!!」

 

「マジ‥!?」

 

2人で抑え込むにも限度はある、倒しきれないヒュージが数体彼女が潜んでいる付近へと向かってしまう

伝えるべき事は伝えた。校舎内の事は祥枝達に任せるしか無い

建物から飛び出し、左手に持つ親機、刃を振り下ろし切断する‥が

 

「一体じゃ済まないよね‥!」

 

グンタイアリは数の多さも特徴的な固体。一体倒して終わりでは無い。ひと息つくまもなくヒュージが波のように迫ってくる‥まともに相手をしてはマギとCHARMが持たない

 

「(折角だし試してみるか‥上手く行けば儲けもん)」

 

彼女は後退し、ある程度距離を取る

無論ヒュージは彼女を追撃する‥のだが

 

突如彼女とヒュージの間に割ってはいる形で地中から巨大な水柱が上がる。

普通ならば水柱などお構い無しなのだが今回は状況が違う

 

「へぇ、通るんだ‥それ」

 

グンタイアリは突如動きを止め、彼女に向かわず寧ろ逆。後ずさり離れていくではないか

 

「他は知らないけど私相手にそれは舐めてるんだわ」

 

そう言い彼女は逃げるヒュージを追いかける。地面から湧き上がる水柱と雨のように降り注ぐ大粒の水滴。地面を駆けるその瞬間も水たまりを踏んでいるような音と共に彼女は向かっていく

 

グンタイアリは確かに強力な固体だ。物量攻めやヒュージサーチャーの無効化、体が大きくなったことで攻撃の威力も高まっていることだろう。だが無敵ではないし倒す術も有る‥そして資料の片隅に書いてあったことだがグンタイアリは水を避ける習性を備えており、改善したような素振りは無い。

先の水柱は本物ではなく海漓がユーバーザインにより作り上げた精巧な偽物。偽物を見抜けず、恐れ、逃げ出しているのだ

 

動きが鈍り、動揺したヒュージなど彼女にとってはただの的。インビジブルワンで一気に距離を詰め、乱舞するように数多のグンタイアリを切り裂く

 

「(本当は射撃の方が良いんだけど‥弾も、マギも限られてるから‥)」

 

彼女は本来射撃を軸に戦うリリィ。だがマギ、実弾共に限りが有り無闇矢鱈に撃つことは出来ない。実弾が尽きたならマギを使えば良いが彼女のマギ保有量は平均よりも下。そこにレアスキルやサブスキルの使用も考慮するならばマギでの射撃など滅多に出来ない

数で押してくるグンタイアリへの射撃は尚更慎重な姿勢になってしまう

一体、一体。最短、最速を意識しながら確実に仕留める。攻撃を避け、懐に飛び込み、時折親機の刃を飛ばし有線式の誘導兵器のように操り確実に数を減らす

 

幻覚により生み出された雨とヒュージの血しぶきが飛び交う戦場で彼女は一人立ち続ける。その姿には人々を魅了振る華麗さや美しさなど無い。只の戦闘マシーンのように眼の前のヒュージを倒し続ける

 

「(これ捨てるしか無いなー‥予備の制服もあるけど‥それにお風呂も入りたいな‥)」

 

そこまでの戦いならば心も捨てている‥なんて思われるかもしれないがそんな事はない。これだけ汚してしまえば今着ている制服は廃棄になるしヒュージを殲滅したら帰ってお風呂に入って綺麗になりたいし‥そんな事を思い浮かべながら戦っている。その為にも生きて帰らなければならない。

 

「(応援‥?いや、殺気!?)」

 

ヒュージの死体が散乱する中、CHARMから味方の接近知らせる‥それは真っ直ぐ此方に向かってきており当初は増援だと思っていた‥が反応が近づくにつれその気配には殺気が込められていることに彼女は気づく‥機器では殺気を捉えることは出来ない‥捉えられるのは敵か味方か‥それだけだ

 

「さて‥誰が‥はっ!?」

 

反応は直ぐ此方に向かってくる‥理由は分からずとも最初に接敵するのは海漓だ‥一体何者なのか、ガーデンへの通信、舞弓と魅夢を呼び戻す‥色んな手を考えている中、住宅の屋根から飛び降りてきた人物に彼女は驚く

 

「‥ッ!!」

 

「す、鈴夢ちゃん!?」

 

白銀の髪に紅い瞳、全身に禍々しいマギを纏わせながら現れたのは鈴夢、彼女の視界に海漓とグラーシーザが入るや否や殺意を増幅させ愛機であるブリューナクを手に切りかかってくる

 

「重っ‥え?コレ結構ガチなやつ??‥ってか他の皆は!?」

 

「貴方が‥貴方さえ居なければ‥!!」

 

刃を交差させ振り下ろされる一撃を受け止める‥体重、マギが乗っており手を抜けばそのまま斬り伏せられる威力だ

 

「(くっそ‥面倒くさい‥!)」

 

このままでは押しつぶされるだけ。そう判断した彼女は彼女の刃を右方向に受け流し、すぐさまインビジブルワンを使い素早く後退する

 

「私が居なきゃ何?」

 

「東京は平和だった!!

私は神庭で平穏に暮らせた!!

ソレだって私が秋日様から貰えた!!

もっと秋日様のお側に居ることが出来た!!

なのに!なのに!!貴方のせいで‥相模女子のせいで!!」

 

彼女からすれば鈴夢のソレは聞くに堪えない雑音だ。嫉妬や逆恨みに等しい言葉の数々‥本来ならば相手にする事すらアホらしい

 

「(負の感情によるレアスキルの暴走‥教官が言ってたのはこの事か)」

 

が、状況は大体把握した。中等部時代に教導官が言っていた事だ

数あるレアスキルの中でもルナティックトランサーは特に使用者の精神状態が鍵である事。何らかの負の感情を抱えた状態で使えばレアスキルに飲まれ暴走するリスクが非常に高いと言っていた

今の鈴夢は間違いなくソレ。心の奥底に存在したほんの僅かな黒いシミがレアスキルにより増幅、暴走してしまった形だ

 

「(さーて、どうしようかな‥)」

 

「お前!海ちゃんに何してるッスか!!」

 

この後どうしようか、そんな事を考えている最中海漓の元に向かってしまったヒュージを舞弓が追撃してきた事で事態が発覚する‥水柱や散乱する死体に驚きはしなくとも、リリィが切りかかっている光景には唖然とする。

 

「‥相模、女子‥!!」

 

声のした方向にいる相模女子の征服を着たリリィを見つけると今度は彼女に飛びかかろうとする‥が

 

「馬鹿‥!!」

 

海漓から目線を切ったことで攻撃の機会が生まれる。インビジブルワンを用いて素早く鈴夢の前に立つとCHARMを振りかざすよりも早く鳩尾に蹴りを叩き込む

 

「2つの意味で何してるッスか!?」

 

「とりあえず曾根ちゃんは離れて‥あとなるべくグンタイアリと他のリリィもここには近づけさせないように!!」

 

自身に憎悪を、殺気を、武器を向けるのは全然構わない。彼女の言い分を全て認めるならば海漓は加害者。だが舞弓や神庭のリリィに向けさせる訳には行かない‥なぜなら彼女には生徒会役員、トップレギオンの肩書があり、暴走しているとは言え他校の舞弓や自校のリリィに斬りかかれば大問題になってしまう

被害は常に最小限度にとどめるべき‥今回は海漓以外の被害者を出すわけに行かないのだ

 

「‥ガーデン違うことがここに来て響くッスか‥!」

 

「仕方ないよ‥うん。こういう事もある」

 

同じガーデンならば協力して事態の対処ができた‥だが今は違う。対人戦。ましてやガーデンにとって重要な人物とも無れば異なる制服を着た者では簡単には関われない

 

「‥横槍は入れさせないッス‥!!」

 

「頼んだよ!」

 

流石にヒュージと鈴夢を同時に相手するのは無理がある‥ヒュージの乱入だけでも食い止めて貰う必要があるのだ

 

「(それにしたって何で今?私はともかく相模を恨む理由なんて無いはず‥)」

 

彼女のレアスキルはルナティックトランサー、狂気と紙一重のスキル等と言われており使用者の精神状態によっては簡単に暴走を引き起こしてしまうレアスキル。今まで発動する機会が多くあったにも関わらずグンタイアリが現れた今になって暴走し彼女を襲う理由が分からない

更に言うならば彼女への嫉妬や憎悪はあり得ても、相模女子へ怒りをぶつける理由など鈴夢にはない筈だ

 

『海漓、そっちにも増援向かわせる!?』

 

鈴夢と睨み合いの最中でも通信機から戦況が伝わってくる

海漓の話を受け校内に残った防衛隊が手分けして人をかき集め、遊糸が配置している形だ

形式的には遊糸の指示を防衛隊が在校生に伝えている形だが

 

『要らないです‥3人で何とかします』

 

『相手グンタイアリでしょ?行けるわけ?』

 

『ちょっとルナティックトランサー使いがトラブってまして‥下手な増援は被害でます』

 

『どういう事?』

 

どう説明しようかと悩むも状況は考える時間を与えてはくれない

鈴夢は海漓に切りかかり、彼女はその一撃をCHARMで防ぐ

その戦闘音、そして彼女達を責め立てる声は当然通信機越しに耳に入る

 

『私と相模が原因みたいで‥私はともかく相模と神庭って関わり無いはずなんですけど‥ね‥!!』

 

攻撃を回避し、受け流しながらも遊糸に状況を伝える

 

『何か暴走させるようなことしたわけ?』

 

『虐めとかはしてないですけど嫉妬がと怒りがトリガーかなって‥関係把握しきれてなかった私のミスです

契るかそれ以上の関係だった‥もしくはそれを目指す片思いとかかなーって』

 

虐めるも何も海漓は特段鈴夢と仲が良いわけではない

それ故か彼女の事を知ろうとせずに過ごした事が結果として暴走の引き金を引いた‥特に秋日周りは慎重にしなければ行けなかったと今更ながらに後悔だ

 

『あ、あー‥

いや、でもそれ海漓悪くないわよ

()()()()()()()()とかじゃないんでしょ?』

 

『手出すも何も信用出来る上級生として接しただけですよ‥仕事絡みで話す位で‥』

 

秋日への接近にした心など無い。グランエプレ絡みの仕事を筆頭とした行動位だ‥対応は上級生止まり

 

『‥グランエプレも駄目で生徒会長からの仕事も駄目とかどうなってんのよ』

 

『(あと一人(藤乃さん)居るけど‥これじゃ分からないなぁ)』

 

グランエプレ(叶星と高嶺)も駄目で生徒会長も駄目

海漓からすれば相談できる上級生が誰も居ないという事になってしまう‥1人いるが彼女もきっと人気がある

この調子じゃまた別のリリィから襲われる可能性も出てきてしまう

 

『まぁその反応見る限り海漓は()()()()()()()()()送られてきて無いようね』

 

『‥何の事です?怪文書?』

 

怪文書とは何のことなのだろう。ずっと外に出ており何の事か分からない

恐らくは舞弓や魅夢にも届いては居ない

 

『戻ってきたら嫌でも聞かされるわ

確かに私達が手を出す訳にもいかないし‥暴走止められる手段があるグランエプレの到着を‥』

 

校内に残っている遊糸は何が起きているのか、原因含め理解しているようだ‥そして今の自分達の立場、相手の立場から加勢する事も出来ない為、大人しくグランエプレの到着を待つしかないと言う判断だったのだ

 

『止める手段、多分無いですよ』

 

『は?』

 

だがそれは不可能である事を他でもない、海漓は知っている。つい最近まで彼女はグランエプレに所属し転入生の悠夏以外とも交流があるのだ‥断言できる

 

『グランエプレにブレイブ持ちいませんよ』

 

『はぁぁぁ!?どんな運用してるのよ!?』

 

レアスキルの一つであるブレイブこれはルナティックトランサーと対になるレアスキルと言われており大雑把に言うならば安全装置の役割を果たす

他所は知らないが相模女子では【レギオンにルナティックトランサー持ちを入れる場合は必ずブレイブ持ちも入れる】が規定として設けられている

その理由は目の前で切りかかっている鈴夢のような暴走による他者への危害防止し安全に運用する為

ルナティックトランサーは依存する相手がいればブレイブは要らない‥なんて一部では言われているが暴走した人間にその判別出来るのかと海漓は常に思っていた

 

『知りませんよ‥っと』

 

遊糸のリアクションを聞きながらも鈴夢の攻撃を受け流し、回避する

 

『防衛隊にブレイブ持ちは?』

 

『八千代さん居ますけど‥流石に厳しいですよ‥経験無いでしょうし』

 

防衛隊にも八千代(ブレイブ持ち)が居るが彼女を筆頭に皆は良くも悪くも神庭のリリィ。暴走したリリィに限らず対人戦は間違いなく経験がない‥そんな人物を対峙させれば最悪の場合、斬り殺されてしまう

 

『でもアンタもヤバいでしょう?マギ』

 

『そうなんですよね‥』

 

彼女のマギ保有量に関しては相模女子の皆が知る事

現在進行形でレアスキルを平然と打ち続けている鈴夢とサブスキルの限定的使用に抑えざるを得ない海漓の差

 

『ガス欠狙いの耐久戦しかこっちは出来ないですし‥』

 

『‥』

 

今の彼女に出来ることは鈴夢のマギが尽きるまで延々と攻撃を防ぐ耐久戦

だがコレも何時まで続くか分からない。体力と集中力が尽きなくともマギが尽きればそこまで。

マギ保有量だけで言うならば鈴夢の方が圧倒的に上‥現在進行形でルナティックトランサーを発動し平然としているのが何よりの証拠

 

『‥ちなみに、これって超が付くほどの個人的な話なんですけど‥

()()って取っても良いと思います?』

 

『‥理由は?』

 

『頭と心臓を同時に打たない限り絶対死な無い相手なんで‥ガス欠の兆候ありませんし』

 

『あ?そういう相手なの?

なら取りなさい。

アンタ、こんな所で死にたくないでしょう』

 

彼女の言葉を聞き、遊糸はあくまでも友人、先輩としての立場で話す

事実ならばこのまま守りに徹すれば間違いなく海漓は殺される‥ならば仕掛けろと言うのだ。

 

「いい加減に‥!!」

 

「よっ‥と!」

 

振り下ろされる斬撃を回避し、一呼吸

再度通信機を起動し、ガーデンへと連絡を入れる

 

『あー、校長先生』

 

『天野さん、どうしました?』

 

『(慌ててない?)グランエプレから何かトラブル等の報告ってありました?』

 

『グンタイアリの出現以外は有りませんが‥何かありましたか?』

 

『(マジでぶん殴りてぇ‥)』

 

慌てて居ないと言う言い方に語弊は有るが一刻を争う緊急事態が起こっていると言う反応ではない。

だが海漓からすれば冗談ではない‥隊の仲間が暴走し見失ったと言うことをガーデンに報告していないのだ‥向かう相手がたまたま海漓だったから良かったが展開している相模女子のリリィや防衛軍、私設レギオンに向かっていたらどうするつもりだったのだろうか

 

『一つ確認してもいいですか?』

 

『なんでしょう?』

 

『リリィが暴走して襲いかかってきてるんですけど、私反撃したら駄目ですかね?』

 

『な、自分が何を言っているのか分かっているんですか!?』

 

当たり前の反応だ‥要はリリィ相手にCHARMを使わせろと言い出したのだ。ガーデンの教導官として、大人として当たり前の反応をしめす。運用等の知識は無くとも倫理観は備えていた事になる。

 

『暴走してるの鈴夢ちゃんです、私現在進行形で攻められてます』

 

『‥!!』

 

『どうします?』

 

『許可は出来ません。自主性の尊重とは言えそれは駄目です。塩崎さんが相手なら尚更の事』

 

『(まるで鈴夢ちゃん以外なら変わったかのような言い方‥まぁいいや)分かりました、なら切らずに上手くやってみます』

 

『グランエプレに連絡を入れ速やかに向かわせます』

 

ガーデンとしてもグランエプレにどうにかしてもらう以外に手は無いのだろう

‥ブレイブ持ちが居ないのにどうするのかは分からないが

 

「‥もう、グンタイアリまで!」

 

相手をしなければならないのは鈴夢だけではない。舞弓達が食い止めているとは言え、撃ち漏らしたであろうグンタイアリも処理しなければならない

 

リリィは住宅を避けるため屋根を伝って移動するがグンタイアリにはそんな常識は通じない

立ち塞がる住宅を我が物顔で壊し、強引に塀を突破し現れる

 

「邪魔‥しないで‥!!」

 

「(これはこれでチャンスかも?)」

 

現れたグンタイアリも邪魔だ言わんばかりに切り捨てる鈴夢。海漓からすればヒュージも加わった乱戦になるのは大きなチャンス

ヒュージは両者を狙う

方や暴走状態、方や至極冷静な立ち振る舞い。

動きを見極め、冷静に攻撃と回避を行う海漓とがむしゃらに戦う鈴夢ではマギの消費や受けるダメージに差が生じる

 

「見殺しにはしないけど特段助ける筋合いは無いからね」

 

敵を倒しながら彼女は敢えて距離を取る。鈴夢もヒュージと戦い、怪我をするが彼女は庇わない

傷を治す力にもマギを使う。鈴夢は攻撃を避けない、海漓が庇わなければ鈴夢は戦い、ダメージを受け勝手にマギを減らしてくれる

見殺しとは言うが今の鈴夢は海漓を敵認定している。庇おうにも接近を好機と捉える攻撃されるリスクを考えると手を出さない事も正解ではある

 

「もうちょい行ってみようか」

 

ユーバーザインによる撹乱

鈴夢に向かうヒュージの数を調整するのなんて朝飯前

ヒュージを利用し適度に痛めつけマギを使わせ、ついでにヒュージの数も減らす

 

「‥(さて、これでお終い)」

 

グンタイアリは全て倒した

その直後

 

「う、嘘‥」

 

ヒュージサーチャーに大量の反応

そして現れるのは住宅を覆い隠す程の無数のヒュージ、グンタイアリから既存の種まで様々だ

 

「あ‥あぁぁぁ!!!」

 

多勢に無勢‥一人ではどうにもならない

鈴夢の全身をヒュージの殺気が貫く、マギはまだ有るが体力が限界に近い

鈴夢のレアスキルはまだ解除されていないが肩で息をし、膝も笑っている

 

「え、‥えっ‥」

 

そして彼女の目の前に現れるのは、自身の影より現れたもう1人の自分

黒で覆われた全身ではあるが紅い眼はよく映えている。

そして持つのは自身の愛機でもあるブリューナク

 

一歩また一歩、ゆっくり、ゆっくりと距離を詰めてくる

コツン、コツン、地面を歩く音は彼女の耳に恐ろしいほどに、よく響く

 

影は、歩くだけ、まだ攻めてこない

最後の力を振り絞り、距離を詰め渾身の力を込めCHARMを振り下ろす

 

「消え‥」

 

「何処見てんだ?」

 

が、切り裂いたと思った影は突如消失

それと同時に背後から声が聞こえたかと思ったのとほぼ同時、後頭部に激痛が走り目の前が真っ暗になる

 

「暴れてようと力持ってようとCHARMは使わ無いよ、CHARMは、ね」

 

彼女の後頭部に一撃を叩き込み意識を奪ったのは海漓、その手に持つのは戦闘により折れてしまった道路標識の鉄柱

幻覚で釣り出し背後から殴りつけたのだ

ちなみに最後のグンタイアリ以外のヒュージも反応も全て彼女のユーバーザインで生み出した幻覚

 

「人にCHARMを向けた報いッスね」

 

「回復する事考えたら温いやろ」

 

舞弓、魅夢も戦闘を終え経緯を見守っていた

本来なら後頭部に鉄柱で殴りつければ命を落とす。そんな事は誰もが分かっている‥が鈴夢のような力を持つ者は別

後頭部を殴ろうが、命を落とす事は無い

マギが完璧に尽きたならば普通の人間と同様に命を落とすがレアスキルが発動していたことからまだマギが残っており、死なない事は確認済みだ

 

「大丈夫だった?」

 

「もちのロン、ッス」

 

「ちと面倒臭かったけどな」

 

屋上から見下ろす2人と軽口を叩きつつ無事を確認

それから数分後、グランエプレの面々が到着した‥が

 

「鈴夢に何をしたの!?」

 

傷は塞がっているものの後頭部には出血の痕跡がある

そして近くにいる海漓、地面には血痕のついた鉄柱

秋日は怒りのままに海漓の胸倉を掴む

 

「答えなさい!!」

 

「危険なんで黙らせました」

 

「ふざけないで!!」

 

塀に彼女を叩きつけ、拳に力を込め彼女の頬を殴ろうとする、が

 

「秋日さん待って下さい」

 

藤乃がそれを制止する。

背後では1年生が鈴夢に駆け寄り声をかけている

姫歌や紅巴は海漓を睨見つけ、今にも飛びかかりそうになっているが叶星と高嶺が彼女達を制止している

 

「‥ガーデンに戻ってからお話を聞かせて下さい

海漓ちゃんも知りたい事が有るでしょう?」

 

「怒らないんですね、同じ生徒会でしょう?」

 

「海漓ちゃんにも言い分と知りたい事はあるでしょうし、一方的に責めるのはフェアじゃありませんから」

 

海漓にも言い分、知りたい事はある

だからこそ話は聞くと言うのだ‥怒るのはその後でも良いというのが藤乃の言い分

鈴夢が暴走した瞬間はグランエプレ全員が目撃している‥海漓の話次第では有るが藤乃としては怒らないつもりでいる

秋日や他の者の反応は分からないが

 

「‥会長ヤバないか?

海漓のキレ気味対応なんてやられた事考えたら十分予測出来るやん」

 

「‥そうッスよ‥流石におかしいッス

あんなの他所で言う妹やパートナーを傷つけられた時の反応ッスよ‥」

 

「‥ソレなんちゃうんか?」

 

一連のやりとりを少し離れた所で見てた魅夢と舞弓は小声でやりとりをしている

秋日の対応は明らかにおかしい‥海漓の言い方にも問題はあったが、訳もわからずいきなり仕掛けられたら不機嫌になって当たり前、対応だってキツくなる

にも関わらず激昂し暴力未遂だ

他校で言う姉妹の契りやパートナー関係を結んだ相手を傷つけられた反応をしたのだ

神庭の事は知らずとも2人はそんな関係なのかと疑ってしまう

 

その後、海漓は藤乃に

舞弓と魅夢は迎えにきた相模のリリィに連れられガーデンへ戻る

 




Q秋日さん、こんなヤバい人じゃないでしよ
A鈴夢からんだらヤバい(新章参考)

Qルナトラいたらブレイブ持ち加入って必須?
A作中だとルナトラ持ちにはブレイブもしくはカリスマ持ちは基本装備
両方居ないのはガチでグランエプレ位(抜けてたら申し訳ない)
中等部遡ったら船田予備隊もブレイブ居ないけど共感あるからノーカン

2つはこの後に補足するかも
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