Assault Lily〜御使いの妹   作:ラッファ

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第96話

 

海漓達の呼びかけに神庭にいる大勢の者が応え、後は高揚の一言をかけて戦いに備える

 

 

 

 

なんて事にはならなかった

 

「全学年あわせても80ちょい‥私達含めても100人程度か」

 

「明日の朝もう一回呼びかける?」

 

あの後、彼女達(防衛隊)に呼びかけ応え戦う意志、協力の姿勢を見せたのは全学年あわせても80人程度

数を見れば多いかもしれないがクラスで例えるならば2クラス。神庭の全校生徒で占める割合としては1割にも満たない

怪我で戦闘に出られない者や整備専門で戦闘を行えない、行う必要の無い者を差し引いても非常に少ない

 

「心折れたか秋日様や叶星様、高嶺様じゃないとって子が大半を占めてて」

 

「絵画科‥が‥凄い‥」

 

正当な理由で応えなかった者の言い分は【勝ち目が無いのに戦いたくない】【グランエプレじゃないレギオンとの共闘なんて嫌】が大半

やはり今のグランエプレは今まで以上にガーデンの精神的支柱であり彼女達が動かないなら‥となってしまう

 

例外だったのは海漓達の所属する絵画科。協力を求るとありがたい事にクラス総出で協力すると言ってくれたのだ

1年生の他学科は大半が辞退した事を考えれば絵画科の全面協力には感謝するしか無い

 

「来てくれる子でやりましょう‥一旦解散で。あ、皆さんちゃんとご飯食べて休んでくださいね」

 

朝に呼びかけるとは言っても早朝から襲撃があったならば呼びかける時間はほぼ無い。協力してくれる人物でやるだけ。徹夜で明日を迎える訳には行かないし食事だって取る必要がある。一度解散し、必要な休息を取るように指示をだす

 

「さて‥どう組むか」

 

「海漓?何してるのよ?」

 

集まった人員でどのように挑むべきか、考えていると近くを通りがかった悠夏が彼女に声をかける

 

「悠夏ちゃんこそどうしたのさ、1人?」

 

「姫歌達ならもう寝たわよ。悠夏は外の空気を吸いたくなったの。

で、海漓達は何してたの?」

 

姫歌達は明日以降に備えて部屋に戻り休んでいる。自身も生徒会の仕事を終え後は部屋に戻るだけだったのだが不意に外の空気を吸いたくなり、校舎の外にでて散歩をしていた時に海漓と出会ったのだ

 

「明日以降の襲撃に備えて人と設備かき集めてた所。一旦解散したけど」

 

「えっ!?何してるのよ!」

 

自分達(グランエプレ)の知らない所で何をしているのかと言うが、海漓は気にもとめず告げる

 

「このまま何もしないと堕ちるよココ(荻窪)。分かってるでしょ?」

 

「それは‥そうだけど‥」

 

何もしなければ陥落する。それは悠夏も良く分かっている

暫し沈黙し、近くにあるベンチに並んで座る

 

「それで、何人集まったの?」

 

「私達除いたら80ちょい」

 

「え?それ神庭の全学年合わせて?」

 

「そう。」

 

「そんな‥少ないよ

防衛隊と相模入れても100人程度って‥」

 

悠夏も少ないと断言する。神庭を守ろうとの呼びかけに応えた人数であり他の者は戦う意志すら見せていない事になるからだ

 

「少ないって言えるんだ」

 

「ブレヴァ‥悠夏がココに来る前に居た所でネストを沈めた時はガーデン皆で協力して倒したからね」

 

告げた数を聞き少ないと嘆く悠夏。それもそのはず。彼女は神庭に来る前に所属していたボストンブレイヴァーズガーデンにてネストを沈めた後に神庭に来たのだ。その時は文字通りガーデン全員が団結し危機に立ち向かい乗り越えた。彼女からすれば呼びかけに応えない事自体あり得ない事なのだ

 

「おっ、ネスト戦経験有るんだ

‥じゃあ聞くけど、ぶっちゃけ勝てると思う?」

 

「正直言って無理だと思う‥海漓の声かけで神庭の全戦力が応えたならって感じかな‥たった100人で乗り切れるの?」

 

ネストとの戦いを経験したのならば現状をどう思うか、勝てるのかとの問いに対し悠夏は無理だと言い切る

神庭の質以前に守ろうと言う呼びかけに対し応えたのが80人しか居ないのでは到底無理。動ける者全てが応えてよう戦いになるレベル

だからこそ悠夏は心配するのだ。悠夏自身、海漓の事は正直好きでは無く、どちらかと言うと嫌いな部類だがそれでも100人程度で乗り切ると本気で言っているのかと言う心配はする

 

「手元にある戦力使ってやるしか無いでしょ‥応えてくれたのはゼロじゃないんだから」

 

乗り切れるも何も彼女からしたら応えてくれたリリィで戦うしか無い。集まった人数がゼロではないならやりようは幾らでもある

 

「指揮はどうするの?秋日様と揉めたのに、遊糸様に頼むの?」

 

肝心の指揮はどうするつもりなのか。鈴夢の件でトラブルを起こした以上、グランエプレの協力を得るのは不可。遊糸に任せるつもりなのだろうかと悠夏は思ったのだが

 

「私がやる」

 

「えっ?」

 

海漓がやると言い切る。何かの聞き間違いかと思い彼女の方を向く

 

「集まった全リリィ私の指揮で動いて貰う」

 

「そんな事出来るの?」

 

そんな思いとは裏腹に海漓は自身が指揮を取り戦うと言い切る。そもそもだ

 

「この非常時に出来ない事をやろうなんて思わないよ」

 

陥落がかかっている状況で強がりや無理を言う海漓ではない。自分の出来ることをちゃんとやる。それだけの事なのだ

 

「そこまで言うなら任せるしかないかな‥纏まらなきゃダメっていうのは悠夏も思ってた事だから」

 

海漓がそこまでの決意を秘めているのならば悠夏には止められない。ガーデンが一つに纏まって戦う必要があると言うのは悠夏も思っていたことなのだから

 

「なら悠夏ちゃんや生徒会が音頭とれば良いじゃん。散々注目集めたんだからさ‥実際、そう言う理由で来ない子だってかなり居るんだからね」

 

分かってるならば悠夏が音頭を取れば良いと告げる海漓。これだけならば嫌々やっている風に思えるかもしれないが、悠夏だってグランエプレの一員であり生徒会役員だ。音頭をとる権利は当然ある。

 

「あれ?海漓聞いたんじゃないの?

秋日様の方針」

 

「聞いてるけど‥ん?悠夏ちゃんか誰か突っ込んだの?」

 

今回の件における秋日の方針。無論海漓は聞いているが、どうして問うのかと。もしかして生徒会だけで集まっている時に尋ねたのかと再度問う

 

「生徒会だけで集まってる時にね

そしたら『天野さんにも話したけど私は神庭の皆ならこの危機を乗り越えられるって信じてるから生徒会として音頭は取らない』って言われたの」

 

海漓の知らぬ所ではあるが対応に関しては生徒会でも話題にはなった。特に悠夏はネストとの戦いを経験した者。自身の経験を基にガーデンとしての団結の重要性と音頭を取るべきと言う提案に対し秋日は海漓の時と同様にそれを拒否。リリィに任せるという決断をしたのだ

 

「秋日様がそうおっしゃるならって引き下がったけど‥何ていうか

御台場迎撃戦とは別人って言う感じがしてる」

 

「御台場迎撃戦?あれ?ボストンじゃないの?時期的にの叶星さんと高嶺さんだって御台場離れてるよね?」

 

悠夏も秋日がそう言うならと受け入れるしか無いが自身の知っている秋日とはまるで別人。今だって混乱している

しかし、違和感を感じる。彼女は今年になるまで海外に居たと言っていた。無のに何故昨年、起きた御台場迎撃戦に参加したいたのか。

叶星や高嶺だって昨年には御台場を離れ神庭に在籍しているのだ。会いに行くなら御台場では無く荻窪だ

 

「実家が御台場にあるの。用事で一時帰国してる時に巻き込まれたの

色々あって秋日様と出会って一緒に闘ったの‥心が折れそうになってた悠夏を励ましてくれたり、戦いについてのアドバイスをくれたりしてね」

 

これに関しては悠夏のプライベートな話。一時帰国していた際に巻き込まれてしまったのだ。当時の悠夏は中等部。知り合いが誰も居ない中でも自分にできる事をした中で秋日に出会ったのだ。その時の秋日は彼女を支えながら戦ってくれた事を今でもおボテている

 

「そんな秋日様を知ってる悠夏からしたら別人過ぎてちょっと混乱してる」

 

「‥2人で戦うのとガーデンを率いるのは別だけど、確かに混乱するよね」

 

だからこそ、今の秋日の姿には戸惑うしかない。もしも出会った時に今の神庭のリリィに対するような対応をされたならば間違いなく命を落としていた事を悠夏自身が分かっているから

当然個人を導くのと集団を率いるのでは訳が違うが、何もしないわけではない。ましてや導く姿をみた彼女からすれば悪い意味で別人だと混乱してしまうのも無理はない

 

「ん?2人?」

 

「え?2人で戦ってたんじゃないの?」

 

「栄光の第4部隊。秋日様はそこのサブメンバーで、悠夏も混ぜてもらって戦ってたの」

 

だが海漓は誤解している。何も2人だ戦っていた訳では無い。御台場迎撃戦時、参加していたリリィは幾つかの部隊に分けられ秋日は第4部隊にサブメンバーとして配属、悠夏も混ぜてもらっていたのだ。

各部隊の役割は海漓も把握しており、市民の避難誘導等を担っていたと記憶している。余談ではあるが姉は第2部隊だ

 

「(それ周りがエースの集まりでアドバイスする余裕あったからなんじゃ‥言わないどこ)あー、そうだったんだ

でもさ、秋日さんあの場に居たなら尚更自分の役割分かって無きゃダメだよね」

 

決して口にはしないが激戦ではあったが周りは世代を代表するエースや相応しい素質を持つものばかり。強者がいる事での安心感から来る余裕もあったのでは無いかと思ってしまう

それを差し引いても秋日は尚更自身のやるべき事を分かってなければならない

 

「役割?」

 

「御台場迎撃戦だって集まってたリリィをいくつかの隊に分けたり配置した人いるじゃん。戦いを取り仕切った人

今度は秋日さんがこなさなきゃいけないよね。」

 

御台場迎撃戦、確かに激戦の中での勝利ではあったが皆がバラバラ、好き勝手にやって掴んだ勝利では無い。部隊の編成や配置を含め戦いを取り仕切った人物がおり、今は秋日がその役割をこなさなければならないのだ。

 

「えっ、あっ、そうだよね」

 

「勿論、自主性尊重する神庭なのは分かるけど‥放置してこの状況だからね

私はどうでもいいとして経験した悠夏ちゃんからの提案も無視してるし」

 

自主性を尊重する神庭故に難しさはあるだろう。しかし、放任を決め込んでこの有様。少なくとも共に乗り越えた悠夏の話には耳を傾けるべきなのだ

 

「(この感覚‥腹立ってくる)」

 

過去をしった今では秋日はもしかしたら御台場迎撃戦時から自主性では無くトップとなる存在によって取り仕切られた戦い方には反発し、人物にも内心反抗的な態度だったのかもしれない。

海漓への言葉を当てはめるなら『私やリリィに命令するな』辺りの思いは抱いていても不思議ではない。

だがそれ以上に話を聞いた上で感じる不快感、その正体を海漓は知っている

 

「(勝手に比較するの‥本当に勘弁してくれ‥)」

 

自身の過去から来る命令への忌避、抵抗感。それ以上に感じるのは『自分や御台場迎撃戦に参加したリリィが乗り越えたんだからお前等もやれ』と比較している可能性

そもそも御台場迎撃戦と神庭では参戦するリリィの質が違いすぎる

そこを分かっているのかと思ってしまう。姉と比較され続けてきた自身だからこそ秋日の方針や心底に有るであろう意図には怒りすら覚える

 

「あたしもそこは別に良いんだけど‥

そろそろ戻ろうかな。あっ、この話は内緒にしてよ」

 

「分かってる。でも何で私にそんな話したのさ?」

 

明日以降も考えると部屋に戻って休まなければ行けないため話を切り上げる

だが最後にどうして自身にそう言う話をしたのかと問う。最近の友好関係を考えるなら姫歌達としたほうが良いはずなのに

 

「海漓しか話せる経験者居ないから

それに‥鈴夢を怪我させたのは許せないけど、そうしないと海漓が死んじゃったってのは分かってるから」

 

自身は神庭に来て日が浅く話せる人物など限られている。更にグランエプレでは中等部から戦場に出ていたのは鈴夢、悠夏の2人だけ。少しシビアな話をするとしても相手が居ない。少しだけの関わりではあったが海漓しかいないのだ

鈴夢に対する対応だって許せないし怒りは当然ある。だが経験者からすれば無抵抗ならば海漓が殺されていた事も分かっているし。【鈴夢の方が大切だから貴方は死んでくれ】なんて事は言えないのだ、少なくとも悠夏は。

 

2人は別れ、海漓も休息を取りながらも策を練り続けているとあっという間に時間が流れ夜が明けてしまう

 

 

朝日が昇り始め、空も徐々に明るくなっていく中、敷地前には防衛隊と相模女子、そして呼びかけに応えた神庭のリリィ。

合わせて115名が集まっていた。

 

「えー、改めて作戦と配置の説明を」

 

祥枝は一言と言ったがその前に改めて集まった者に対し今回の策を伝える

 

「事前のお話通り、今回は私の指揮下に入り動いて貰います」

 

ここまでは伝えている。そして射撃戦がメインになる事も、だ

 

「陣形ですが‥校舎を背に背水の陣で行きます。どの道私達には逃げ場が有りません‥現れたヒュージは殲滅です」

 

その言葉に驚くのは事前に聞かされた防衛隊と相模女子以外のリリィ。

自分達には逃げ場が無いという事を実感させられる布陣なのだから当然

 

「ラージ以上は全て防衛隊と相模女子が相手します。皆さんのメインはスモールとミドルになります」

 

「(流石に御台場みたいには行かない以上それしか無いわね)」

 

ラージ級以上の個体に関しては防衛隊と相模女子で対応。連携技を行おうにも時間が足りずぶっつけ本番では危険すぎるのが理由。集まった神庭のリリィはレギオンでは無く全員が有志。一夜漬けで練習させコンディション不良を起こすぐらいならば倒せる個体を確実に倒してもらうことに専念させる

本来ならば高度な連携が必要となるノインヴェルト戦術を即席のチームで何度も乱れ撃ち等普通は出来ない。御台場迎撃戦とは何もかもが違うのだ

それは話を聞いている遊糸も良く分かっている

 

「早速、人数と配置場所を伝えますね」

 

集まったリリィをそれぞれ割振る

前線に立つ者から、鷹の目、ドローン等の機器を用いての索敵、放水車への護衛。与えられた役割は様々だ

 

「隊長ー、演説は??」

 

「終わってから、です」

 

防衛隊に限らず相模女子も期待する視線を送るが、やるのはすべて終わってからだ

 

総員、出撃し配置を終える

今回の戦いで使用するのはトリグラフ

マギクリスタルコアには味方の位置が表示される。

運が良いのか、悪いのか配置を終えるとほぼ同時にヒュージ出現の警報が鳴り響く

 

「‥分かりました。

さて、」

 

ガーデンに配置したリリィよりかなりの数のグンタイアリが現れた事が告げられる。だが今のところはグンタイアリのみ。ラージ級以上の個体は見受けられない

 

「(さて、やるか)」

 

「来たよー隊長!!ほら、鼓舞してして」

 

「はーやーく、やりなさーい!!待ってるわよ」

 

通信機を入れ、全てのリリィに伝えられるように準備

副隊長や遊糸からも早くしろと急かされる‥2人とも半ば面白がってる気がしないでもない

 

『では、一言だけ、無礼講覚悟です』

 

簡潔にと言われたので一言で

 

 

生意気、調子に乗ってる。

 

 

大いに結構。

 

 

少し臭い言い方かもしれないが海漓だって年相応の少女だ。

 

 

これぐらいは許して欲しい

 

 

 

 

 

 

 

 

『 私の言葉を聞いて、手足の如く動け!

 

 

 

 

 

 

この地を守る為に集った守人共!!』

 

 

動けないのなら動く為の指示は全て私が出す。だから貴方達はその通り動いて欲しい

 

 

守人‥東京を、荻窪を、人々を、守る為に意志を持ち集まった全てのリリィにそう告げる

 

 

 

「「「おおおおおぉ!!!」」」

 

 

 

「(あっぶな滑らなくてよかったー!!!)」

 

 

 

同期が、後輩が、ここまで言うのならば従おう。考えられない自分達は海漓に従うしか無い。

任せろと言わんばかりの言わんばかりの回答だ

 

応えてくれて良かった。微妙な空気になれば赤っ恥だと思っていたのはココだけの話

 

 

 

 

 

「射撃隊‥」

 

先ずは迫りくるヒュージの気勢を削ぐ為の指示を出そうとしたのだが‥

 

「皆さん、頑張りましょうねー」

 

「‥ん?藤乃さん?なんでここに?」

 

「来ちゃいました」

 

いつの間にか海漓のそばに立っていた藤乃

目が点になる玲菜

 

戦いは始まるのだ

 

何とも締まらないが、始まってしまうのだ

 




あと一つ、上げ忘れていた為投稿

姉は勇者とか平然と言っているから多少の臭さは‥ね?
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