RISE OF NEW LEGENDS   作:ベリアロク

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だいぶお待たせいたしました。少し見ずらい部分もあるかもしれませんがご了承ください。


第3話 絶望、そして希望

「はぁ…はぁ…お!」

 

 

円堂があかね色に染まる空の下、鉄塔へと向かう階段を登りきるとそこには見慣れた逆立った髪の男、豪炎寺が夕日を見つめ立っていた。

豪炎寺に気付いた円堂は豪炎寺の下へと駆け寄っていく。

 

 

「豪炎寺!」

 

「……」

 

「ここ良いとこだよな。小さい頃からの俺のお気に入りの場所なんだ」

 

 

明るく話しかける円堂に対し豪炎寺は夕日を見つめたまま相変わらず口を開こうとしない。

そんな様子を見ても円堂は変わらず話を続ける。

 

 

「お前も聞いてるだろ? 帝国学園との練習試合」

 

「……」

 

「でも部員が足らなくてさ……考え直してくれないかな? まさかサッカー嫌いになった……とかじゃないよな?」

 

「…お前良く喋るな」

 

 

豪炎寺はしゃべり続ける円堂の方を向き嫌味らしく伝える。

円堂にはそれが伝わっていないらしくこちらを向いてくれた嬉しさから笑みを浮かべさらに話を続けようとする。

 

 

「俺お前とサッカーしたいんだよ! お前がいれば「もう関わらないでくれ」……え?」

 

 

突然の言葉に円堂はきょとんとする中、豪炎寺は一人階段を降り去っていく。

その哀愁漂う背中に円堂は何も言えずただ立ち去るのを見守るしかなかった。

 

 

「でも……サッカーが好きじゃなきゃあんな凄いボールは蹴れないはずだ。とにかく今は俺が出来ることをやらないと! まずは『特訓ノート』のここからだ!」

 

 

いつか豪炎寺とサッカー出来る日が来る……そう信じて円堂はたった一人の放課後練習を始めようとする。そんな時だった。

草影が突然ガサガサと音を立てる。周りは暗く人気もない。不審者か何かかと円堂が警戒する中、飛び出してきたのは壁山に栗松といった雷門中の仲間だった。

 

 

「いっててて……」

 

「壁山! それに栗松!」

 

「おいおい大丈夫かよ……」

 

「染岡に風丸まで……どうしたんだ一体?」

 

「円堂が他の運動部に声をかけてるのを見て……な?」

 

 

染岡が顔をうっすら赤らめながら呟いた言葉に周囲の皆も頷く。

 

 

「オイラ…キャプテンが特訓してるのを見て感動したでやんす!」

 

「俺たちも一緒に特訓させてください!」

 

「お前ら……!! 勿論だ! 皆で強くなろうぜ!」

 

「「「おおォーー!!」」」

 

 

円堂の言葉に皆気合を入れ叫ぶ。

その声は木霊し鉄塔のある山のふもとまで聞こえるのほどの大きさだったとか。

こうして雷門中サッカー部は結束力を少しずつ強め、確実にレベルアップしていったのだった。

 

 

 

 

 

 

「あの、僕サッカー部に「「「翼くーーん!!」」」

 

「くそっ、円堂君とサッカーしたいのに…」

 

その裏で翼はひたすら多くの生徒に追われていた。

まるで神様が二人を会わせないよういたずらをしていると思えるほどに。

 

 

 

 

 

 

 

 

時間は流れ、帝国学園との練習試合当日。

部員にどこか抜けてそうな男であるマックスと影が薄い影野、そしてメガネを加えた雷門イレブンは多くの生徒らが見守る中グラウンドで試合の時を刻一刻と待っていた。

 

「何とかギリギリ人は集まったけど…」

 

「結局豪炎寺たちは無理だったな」

 

「しょうがないさ。豪炎寺には面と向かって断られたし、翼には話すら出来なかったからなぁ」

 

「なんでも翼さんに関してはファンクラブまで出来てるとか…」

 

「ケッ!そんな奴らいたって変わらねぇよ。何せ相手はあの帝国だからな」

 

染岡の言葉に皆の表情が暗くなる。

帝国戦までの期間で雷門は著しい成長を遂げたといえよう。けれどそれはあくまで以前の雷門との比較、今まで大会に出場してきた他校との比較ではないのだ。

 

「確かに帝国は強いだろうさ。けど俺たちだって頑張ったはずだ!」

 

「円堂…」

 

「勝利の女神は最後までどっちに微笑むかわからないんだ。最後まで全力でやって…勝ちに行こう!」

 

暗い顔をする皆を励まそうと円堂が明るく声をかける。

その姿は雷門メンバーの心を大きく奮い立たせるものだった。

気合を高めた彼らは一先ずベンチへと戻ろうとする…その時だった。

ギラギラと輝く太陽が分厚い雲に覆われ、火に照らされていた地は薄暗くなり突如不気味な風がびゅうびゅうと吹き始める。

そして示し合わせたかのように道路がここは山の中だったかと錯覚させてしまうほど濃い霧に覆われ、トラックのような大型車の駆動音が静かな路地に鳴り響いた。

 

 

「なんだこの音…!」

 

「トラックか何かでやんすかね? あ、校門で止まったでやんす」

 

 

栗松が校門の方へ指を指し示す。

そこには濃い霧に包まれながらも大型トレイラーかと思えるほどに巨大なシルエットがぼんやりと浮かんでいた。

その場にいる皆がその車と思しきものを黙って見守っていると霧の中で煙が吹き出すような音が鳴り、それと同時にドタドタと地を小走りする足音が円堂たちの耳元には届いていた。

円堂らと同じくらいの背をしたその足音の主らは校外と校内を繋ぐように敷かれた赤いカーペットの横に軍隊のように並び立ち、その間に広げられた赤い絨毯の上を様々な背丈の者が歩いて雷門中の中へと入ってくる。

彼らはほぼ黒と言っていいほどの濃い緑色のユニフォームを身に纏い、胸には『帝国』の2文字があった。

その様子には古代の帝国における戦士の帰還、或いは登場のような厳かさ・威圧感があった。

 

 

「鬼道さん、なんでこんなチームと試合を? うちのスキルが見れるとは思いませんが」

 

「面白いものが見れるかも……と思ってな」

 

「面白いもの?」

 

「まぁ……楽しみにしておけ。」

 

 

チームの一員が発した問いにゴーグルをかけ赤いマントを羽織る男、鬼道がニヤリと笑みを浮かべ答える。

その答えにいまいち納得がいかないのか再び声をかけようとした時、その場に円堂が駆け寄ってきた。

 

 

「雷門中サッカー部のキャプテン円堂守です。今日は練習試合を受けてくれてどうもあり「初めてのグラウンドでな。ウォーミングアップをしてもいいか?」――え?あ、ああどうぞ」

 

 

円堂が感謝の言葉とともに握手の手を差し出すも鬼道はその手に視線を向けることなくチームメンバーとともにウォーミングアップへと移っていく。

態度に一瞬戸惑う円堂だったが今回が初めての試合ということもあり、練習試合ならこんなものかと一人納得すると皆がいるベンチへと戻っていった。

皆と一緒に帝国の動きを観察し、試合の展開に生かそう……円堂はそう考えており他のメンバーも考えはほぼ同じだった。だがそんな考えはすぐさま打ち砕かれることとなる。

 

 

「なんだあのスピードは!? 動きが見えない!?」

 

「あんな動き出来るのかよ……」

 

「強烈な蹴りまで……こんな奴らと戦わなきゃいけないのかよ……」

 

「あ、あれぐらい僕でもできますよ!」

 

「本当でやんすかぁ?」

 

 

そこで見せつけられたのはレベルの違い。スピード、テクニック、キック力……すべてにおいて段違い。初めての試合、強豪との対決に心躍らせる円堂を除いてその光景に萎縮する他なかった。

 

 

 

「さぁ……雷門中。そろそろ試合を始めようか」

 

「ああ! よし皆、精一杯勝ちにいこうぜ!」

 

「「「「「お、おう!!」」」」」

 

 

円堂の声に遅れながらも皆声を張る。それは恐怖に怯える己を鼓舞するが如きものだった。

この時はまだ良かったのだ。皆の心の灯がわずかだが燃えている……この時までは。

 

 

「さていよいよ始まります雷門対帝国! 実況は私、将棋部所属角馬圭太がお送り致します!」

 

「いつも元気ね角馬君は。どこでも生き生きとしてるし」

 

「ええ秋さん! 実況は私の命ですから!」

 

 

 

「行くぞメガネ。ちゃんとやれるんだろうな?」

 

「も、勿論! 君の方こそ足を引っ張らないでくれよ」

 

 

<ピィーーーー!!>

 

 

「よっしゃいくぜ!」

 

 

両チームがポジションについたことを確認し審判がホイッスルを鳴らし、同時にメガネからボールを受け取り染岡が一気に駆け出す。

前半は雷門ボール、豪快ながらも繊細さもある染岡のドリブルは帝国の壁を次々と突破していく。

 

 

「いいぞ染岡ー!!」

 

「抜かせてもらうぜ!!」

 

『染岡どんどん突き進んでいく! さすがの帝国もこれは止められないかー!?』

 

「なわけ……あるかァ!」

 

 

染岡が最後のディフェンスを突破しゴールへとシュートを叩き込もうと足を振り上げたその時、抜いたはずの山の如きディフェンスが一瞬にして染岡の前に現れボールを奪い去る。

その圧倒的対格差に染岡はトラックにはねられたかのように大きく吹き飛ばされた。

 

 

「ぐわァッ!?」

 

「染岡ー!」

 

『染岡大きく弾き飛ばされた! 帝国のディフェンスはやはり硬い! そのままドリブルで攻めあがる!』

 

「おい、メガネ! 取られたボール取り返しにいくぞ!」

 

「い、いや僕は……「邪魔だ!」」

 

 

半田の言葉にあたふたするメガネが相手ゴールの方へ振り向くとそこには先ほどまでペナルティエリアにいたハズのディフェンスが目と鼻の先まで近づいてきており、その巨体にメガネと半田は染岡以上に大きく弾き飛ばされた。

 

 

「佐久間!」

 

『帝国学園次々と雷門中をなぎ倒していく! ボールを受け取った佐久間は既にペナルティエリア付近。雷門成す術無しか!?』

 

「「と、とめるっす」でやんす!」

 

「邪魔だ!!」

 

 

他のメンバーが次々と抜かされていく中壁山と栗松はおびえながらもブロックしようとするが佐久間の放つシュートに弾き飛ばされる。

その強烈なシュートを円堂はその身を使って止めようとするもボールは円堂毎ゴールへと叩き込まれた。

 

 

『ゴール!! 先制点は帝国学園!』

 

「くそッ………!」

 

「円堂君……」

 

 

ネットの下を転がるボールを同じく地に伏せる円堂は眺め拳を地面にたたきつける。

その様子を鬼道ら帝国は嘲り笑っている。

暗雲が立ち込め日の光は遮られ、雷門イレブンの心境を表したかのようなうす暗さに包まれる。

そんな状態でも試合はこれからだと円堂は勿論、見ている者らもまだいけるんじゃないか……そう考えていた。

けれどそんな考えはすぐに打ち砕かれることとなった。

 

 

「ほらほら取ってみろよ」

 

「……ッ、舐めんな!」

 

 

「ほぉらよッ!」

 

「「ぐわァ!?」」

 

 

「っらァ!!」

 

「……くそッ!」

 

「それでもゴールキーパーかよ。シュートがポンポン入るぜ」

 

 

 

 

「おいおい……大丈夫かよ、うちのサッカー部」

 

「ボコボコで見てられないぜ……」

 

 

まるで小学生の子どもと戯れるかのような光景にスコアボードには0対20の数字。

その圧倒的な実力差に最初は雷門を馬鹿にしながら観戦していた者も笑みすら浮かべられなくなっている。

 

 

 

「まだ……だ」

 

「へぇ、あれだけシュート正面から食らって立ち上がれるとはね。これが鬼道さんが言ってた”面白いもの”……ですか?」

 

「いや……だが中々楽しませてくれる。想定外のことだがここまで頑張った褒美だ……アレを使え」

 

「アレをこいつらにですか!?」

 

「そうだ。」

 

ボロボロになりながらも立ち上がろうとする円堂を見下しながら鬼道が発したその言葉に帝国イレブンの表情が驚愕の色に染まるも、鬼道の命令は絶対であるかのようにすぐに表情は戻りそれぞれのポジションへと戻っていった。

 

 

「アレって言うのは何かわからないけど……次こそ止めてみせる!」

 

 

円堂はふらつきながらも自身の頬を叩き意識をはっきりさせる。

グラウンドには地に伏せたまま動こうとしないチームメンバーの姿がある。

皆必死に帝国のプレーについていこうとして倒れてしまったのだ。

グラウンドに立つのは円堂含め数人。これはもはやサッカーとは言えないものになっていた。

 

 

「くっ……そが……」

 

「ボールパスご苦労さん。後はそこで寝てな」

 

 

染岡が疲労困憊になりながらもセンターサークルのボールに触れる。

けれどそのタッチからドリブルは続かず、コロコロと転がるボールは帝国へと渡りそれを見た染岡は遂にその場に倒れた。

 

 

「染岡ッ…」

 

「おいおい、よそ見してる暇はないぜ」

 

「くそッ……」

 

 

倒れた仲間を障害物かのように飛び越え帝国学園はディフェンスラインを突破し雷門へと攻め入る。

円堂はすぐさま駆け寄りたい気持ちを抑え、守りの姿勢を構える。

薄暗く風が吹き荒れるコートで

 

――デスゾーン開始――

 

 

その言葉が聞こえたかと思えばゴールへと近づいてくる帝国の3人が空中へと回転しながら飛び上がる。

フィギュアスケートも顔負けな回転と跳躍力……もはや浮遊といえるそれに円堂は驚き見ているとその3人の間に紫の光の筋のようなものが現れ、光は次第に濃くなっていく。

 

 

「なんなんだ……一体……」

 

 

まるで”死”を象徴しているかのようなその光の筋が紡ぐ三角の形に心臓の鼓動がどんどん早くなる。

その鼓動の速さは生存本能があれを避けなければ死ぬと円堂に告げているようだった。

 

 

「デス……ゾーン!!」

 

 

紫の光がボールに収縮し、宙に浮いた3人が収縮したボールをゴールに向け打ち出す。

そのボールは先ほどまでのシュートとは比べ物にならないほどのスピードで円堂の首を刈ろうと飛んでいく。

 

 

「円堂君!!」

 

「絶対……止めて見せる!!」

 

 

秋の声を聞き、強烈なシュートを前にしても円堂は退かない。

ここで自分が逃げてしまっては誰が雷門のゴールを守るのか、と。

紫の光に包まれたボールに対し円堂は両腕を突き出し受け止めようとする。けれどそのボールは勢いを弱めるどころか加速し円堂の顔面を大きくとらえながらゴールへと叩き込まれた。

 

 

「かはッ……」

 

「ほう……デスゾーンを受けてまだ立っていられるとはな。だが……もう諦めろ。お前に余力はないはずだ」

 

(駄目だ……意識が……)

 

「これで雷門との試合も終わりか。元帥が見たかったものは見れなかったが……ここまでサンドバックにしても出てこなかったんだ。ここらが限界だろう」

 

 

言葉通りデスゾーンをその身に受けた円堂の意識は掠れ、がくがくと身体を揺らす。

鬼道が膝から崩れ落ちようとする円堂の様子を見届けることなくその場を立ち去ろうとする。

 

 

 

その時だった。

 

 

 

 

「まだこれからさ」

 

 

 

突然の聞き覚えの無い声に帝国は皆振り返る。

そこには倒れ伏したはずの円堂が立っており、ある一人の男が肩を貸し隣に立ってこちらを見ていた。

 

 

「貴様は……」

 

「つば……さ……?」

 

「お待たせ、円堂君。一緒にサッカー……しようか。」

 

 

ボロボロになった雷門に今、救いの翼が降り立った。

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