1期時系列を整理するために一通り見直したので初投稿です。
ニンジャスナイパー。「JAPAN WORLD CUP」、その三作目に登場したニンジャのウマだ。
何を言っているか分からないと思うが本当にニンジャでウマだとしか言いようがないのだ。コワイ!
作中の活躍についてはなんと表現したらいいのかちょっと難しい。他のウマがゴールしたと思ったらニンジャスナイパーだった。何を言っているか分からないと思うが何をされたのか一瞬分からなかった。そういう感じなのであえてこういう走り方をするとは言いづらい。勝ち筋それしか無いし。解釈としては変わり身の術か変化の術かのどっちかだけど、どっちにしてもウマが忍術を使うなという話である。
ちなみに所属は日本ではなくロシアである。
そしてニンジャスレイヤーではない。
今の彼女は、シンプルな構造の黒い
……するのかもしれない。ニンジャスナイパーだし……JWCでもウマなのに忍者服着てたし……。
(そもそもこのひと一体何者なんだ?)
サバンナストライプの例から考えて、彼女も転生者的なサムシング? いや、それにしては
……それはそもそもウマ娘について知らなかったり、JWCについて知らなかったという可能性もあるけど。それはそれとして何か違う気もする。シマウマという異質な存在に対する反応が淡泊すぎる。
そんなニンジャスナイパー……先輩? 同級生? に連れてこられたのは、各チームに与えられた部屋が並び立つ部室棟、その一室だった。
「入れ」
「アッハイ」
思考を打ち切るような鋭い言葉に促され、扉を開けて中に入る。見ると、そこにいたのは見覚えのないハンチング帽を被った女性だった。
ウマ娘なら、ある程度リアルにはなってもそれなりに見分けはつく。となれば知らないトレーナーの人か……と思い少し視線を横にやると、すぐに異常が目についた。
髪、水色。
否応なく、ぼくはその裏に誰がいるかを想像することとなってしまった。そして、給湯室からやってきたウマ娘の姿によってその想像は現実のものと証明される。
「待っていたよぉ!」
「やはり黒幕はあなたか」
――アグネスタキオン。
前の世界では男女問わず
実験好きで偏屈という印象が強い彼女だが、どうやらこの世界線ではチームに所属することができているようだ。多分、あの
「ふぅン? やはりときたか。ここのところ活動は控えていたはずだが、一年生にも私のことは知れ渡っているのかな?」
「スカーレットに聞いた後で、色々調べて……」
「ああ、あの子か」
これに関しては事実だ。偶然調子が良かったので練習をしていたのか、タキオン先輩が走ってる姿がフォームが綺麗で足取りも軽くてすごかった、と興奮した様子で語っていたのを覚えている。
もっとも、ぼくの印象は前世のゲームのそれに偏っているのは否めないが。
「しかし待っていたのは事実だが、黒幕とは心外だ。モルモット君、スナイパーに頼んで彼女を連れてきてもらったのはキミだろう?」
「ええ、そうですね」
「えっ、そうなんですか……?」
穏やかに微笑むと、女性――トレーナーさん?――はこちらに小さく会釈をした。
「はじめまして。チームベテルギウスのサブトレーナーを務めております、
「は、はじめまして。サバンナストライプです……スカウト?」
「ええ」
チーム……ベテルギウス?
知らない名前だ。オリオン座の一等星だっけ? 少なくともアニメやゲームには存在していなかっ……いや、背景に映ってたんだっけ? どっちにしてもフォーカスはされてなかったようだけど。
しかし、こんな強引な方法でスカウト……? あんたスピカか?
穏やかそうな顔と物腰してブッ飛んでるな。中央のトレーナーだけある。
「あの、こんなやり方でスカウトと言われても、ぼくはこのチームのことを何も知らないんです。すぐに『はい』と頷くわけにはいきません」
「おや、思ったより理性的だねぇ」
「
「はあ」
そうは言っても、スペ先輩にとってのスズカさんのような即決に値するだけの要素はぼくには無い。あくまで金銭目的であるぼくだし、アニメのマックイーンのように泣き落としはそう通用しない。
チームに対する思いもぼんやりしてるから、悪印象というのはその分お断りを伝えるだけの理由になりうるものだ。
部屋の壁際で黙って立ってるニンジャスナイパーも怖いし。
「あたたかいものどうぞ」
「あたたかいものどうも」
タキオン先輩がカップを机の上に置く。匂いからするに多分紅茶だと思うんだけど、明言していないから分からない。
……あ、サブトレさんが飲んだ。
瞳が光り始めた。
かっこよ。
道理で何の飲み物か濁すわけだよ。
「先の選抜レース、拝見させていただきました」
「あ、はい」
いけない。気が散る。
「単刀直入にお聞きしますが、あなたはあのレース展開をどこまでコントロールされていましたか?」
「ふぅン?」
何やらこちらに興味を持ったように、タキオン先輩が目を細めた。
ニンジャスナイパーも視線を向けてくる。コワイ。
「……ターボが大逃げすることと、ぼくが逃げを打たれるのが苦手だということをマヤノに読まれる、というところまでは読んでました。なので後ろからつついてペースを強引に上げて、スタミナを削る。そうすればあとは体力勝負に持ち込める……はずだったんですけど、結局テイオーに差し切られました。何もコントロールできてません」
「だそうだよモルモット君」
「小学校を卒業したばかりの一年生の思考ではないですね」
中身は小学校を卒業したばかりの一年生というわけでもないし。
しかし、それが何の言い訳になるというのか。レース勘が無い。まだ二回目。そんなものは皆同じだ。
「――私達が評価をしたいのは、その思考力です」
「けど、負けましたよ」
「その原因は作戦が悪かったのではなく、単純なフィジカル差ですよ」
「マジですか」
「はい。マジです。聞きますが、あなたはこれまでどういう食生活を送ってきましたか? ケニアでです」
「…………」
「推測ですが、普通の人と同程度にしか食べていなかったのではないでしょうか?」
「……そうです」
ぼくの住んでる地域はそれほど富裕層がいない。
ウマ娘も生まれるけど多くは農作業に出されている。お金稼ぎのためにレースに目を向ける子も少なくはなかったけど、家をどうにか守るために諦めた子もいる。
ぼくの家族もわりかし大家族だ。母がサバンナパーティーというぼくと同じシマウマタイプのウマ娘なだけあってまあ兄弟姉妹の中でウマ娘の割合は少なくない。エンゲル係数がヤバい。同時にウマ娘パワーのおかげで農業の手際もヤバい。
その中で生活していくために切り詰めるべきは何かと言えば――まあ、食費になる。
普通の人と同程度の食事でだって別に死にやしない。活動を抑えさえすれば。
当然、お金は無いので今のぼくは基本、奨学金で学費を賄っている。お小遣いは以前言及した通り月2000円あれば良い方。
なるほど、栄養の問題もあったか……と軽くがっくりきていると、不意に脚に触れるものがあった。
「ひょああぁぁ!?」
「ははぁ、なるほどなるほど。確かにこれはしなやかな
いつの間にこちらに回っていたのか、タキオン先輩がぼくの太ももを揉み回していた。
「とはいえあちらの国は人間もウマ娘も基本として筋肉の質が違うからねぇ。栄養不足でもモルモット君が太鼓判を押すほどの走りはできるわけだ」
「急に触らないでくださいよ」
「痛みや傷を伴うようなことでもない。許可を取る時間と躊躇される間が無駄だよ」
そういえばこういうひとだった。
注射打たれるというわけでもなければ今は放っておこう……。
「話を戻しましょう。確かに結果こそ二着でしたが、私はあのトウカイテイオー相手に二着に持ち込んだ作戦を評価して、あなたをスカウトしたいと思いました」
「……そ、そうですか」
「当チームが特に重んじているのは、データです。栄養管理は勿論のこと、効率的なトレーニングやスポーツ医学についても研究を進めています。きっとあなたの力になれるはずです」
これは……事実だろうか。いや、事実だろう。タキオン先輩が所属していることがそれを物語っている。
他のメンバーの姿が見えないのは、今トレーニング中だということだろうか。ニンジャスナイパーはともかく、タキオン先輩の脚はあまり無理をさせられないはずだからここにいることにも不自然なところは無い。
……あと何でニンジャスナイパーはまだここにいて訳知り顔でうんうん頷いてるんだろう?
「先程サバンナストライプさんも仰っていた通り、今日すぐに決めるというのは難しいでしょう。今、チームメンバーが外でトレーニングをしていますので、そちらの見学をされた上でご検討されてはいかがでしょうか?」
「いいんですか?」
「はい。判断材料としては必要でしょうから」
サブトレーナーを置いているということは、チームとしてはそれなりに大きな規模ということだ。
チームに入るにしろ入らないにしろ、そういうところで行われているトレーニングというのは参考になるはずだ。
「それでは行きましょ……スナイパー? あなた何でまだ練習に行ってないんですか?」
「しまった」
そこは予想外の事態なのかよ。
・・・≠・・・
あわあわするニンジャスナイパーを引きずりながら「こちらです」とごく穏やかに、かつ冷静に告げて先導するサブトレさんについてレース場の客席に向かうと、声を上げて練習をしている数名のウマ娘と、コースのやや外めからその様子を見守る引き締まった体格の中年男性の姿が見えた。
あのひとたちがベテルギウスの……。
「これが……」
「当チームの練習風景です。あちらチーム所属のウマ娘と、メイントレーナーですね」
メイントレーナーさんは練習風景とタブレットを見比べながら、時折指示や檄を飛ばしている。どうやらあれで練習内容を管理しているらしい。
……よく見ると端末多いな。何台あるんだあれ。常時入れ替えながら操作してるようだけど、手元の操作がまるで淀みないのがすごい。データに重きを置いているというのも頷ける。
「タキオンとスナイパーは紹介しましたね。あちらで今走っているのが、エアシャカール、セイウンスカイ、エイシンフラッシュ、アグネスデジタル」
「ヒェッ」
今変態が混ざってたぞ。
しかし、言われてみるとすごい面々だ。タキオン先輩は元より、一名を除き全員がクラシック三冠に手をかける可能性を秘めた実力者。除かれた方の一名にしてもとんだ変態ローテでGIを勝ち抜いて勇者と謳われた極まった
これだけのメンバーを揃えて面倒を見ているあたり、指導力は申し分無いのかもしれない。なるほど、これならスカウトを受けることも一考に値するのかも……。
そう考えていると、遅れてやってくる二人のウマ娘の姿が目に入った。
ひとりは……小さい。ちょっと信じられないくらい小さい。あれは、もしかしてぼくどころかニシノフラワーさんよりまだ小さいんじゃないか? 120cmあるかどうか……ポニーちゃんと言われても仕方ないくらい小さい栗毛の少女。
もうひとりは、反対にデカすぎる。ヒシアケボノ先輩よりデカいんじゃないか? 黒鹿毛で、顔立ちは日本人離れしている。どうやら外国のウマ娘のようだ。身長は2m近いようで、隣にいる小さい方の子と比べると親子くらいの差がある。
あんな子たちの指導もしているのか……と感心していると、サブトレさんは続けて彼女たちの名前を告げた。
「あちらにいるのがピーピードーナッツとハリウッドリムジンです」
この世界は狂っている……!*1
胴は伸びません。
あとウマ娘の範疇に落とし込んでおりますので、原作JWCほど物理法則を無視したことはしません。
期待していた方はすみません。