3000石溶かしてSSR0枚SR4枚だったので初投稿です。
ピーピードーナッツとハリウッドリムジン。
ピーピードーナッツは、「JAPAN WORLD CUP」の二作目に登場したポニーだ。
こちらはウマやウマ以外の動物の上を八艘飛びして実況のテンションを破壊したり、他の競争相手の技をその場でラーニングして突然同じようなことをし始めるという……まあ、割合まとも寄りなウマではある。他が度を超えてカッ飛んだことをしているだけとも言うけど。
ピーピードーナッツに関して特筆すべきはむしろ騎手のカルキンJr.の方で、3歳児であるにも関わらず「世界で最も恐れられる100人」のうちの一人で本業海賊。オマケにスキージャンプペアにも出演しており、スポーツ万能であることがうかがえる。
対して、ハリウッドリムジン。こちらも「JAPAN WORLD CUP」の一、二作目に継続して登場したウマ…………多分、ウマだ。
なぜ言葉を濁したかと言うと、ハリウッドリムジンは胴が伸びるのだ。4~5mくらい。
しかもこの胴は伸縮が可能だ。数度往復すると何らかのエネルギーがチャージされ、ロケット噴射を行い凄まじい勢いでカッ飛んでいく。
ロボットかロケットと言われた方が多分まだ納得はいくが、何やかんやウマの形は保っているのでギリギリでウマかな……ウマかも……という、ちょっと悩ましい存在に仕上がっている。
あと騎手が双子で二人乗ってる。明らかに重量的不利が生じてる。もう何考えてんのか分からない。
さて。
そんなJWC出場者のソウルを継承したウマ娘を目にしたぼくの心は、思いの外凪いでいた。
心がオーバーフロー起こしてるだけじゃないかという自覚はあるが、内心「ウマの範疇で良かった」と考えている自分もいる。
同じ奇蹄目で出場していたのはシマウマのサバンナストライプだけだったけど、有蹄類という項目で見れば
更に下手をすると
いや安心できねえわ。
どうしよう。意識すると不安がムンムン湧いて……あ、いやこの表現はやめておこう。
意識すると不安が急激に湧き上がってきた。
「サバンナストライプさん?」
「あ、はい」
サブトレさんに声をかけられて意識が戻る。
いけない。一瞬トリップしてた。元から異世界トリップしてる? やかましいわ。
「トレーニングについて軽く説明をさせていただこうかと思ったのですが……何かありましたか?」
可及的速やかに解決したい問題が視界の中に山程あるけどあえて視線を逸らすこととする。
「大丈夫です」
「やけに顔が横を向いていますが」
「大丈夫です」
物理的に視線を逸らすこととする。
「全体トレーニングは火・木・土。それ以外の日も自主トレーニングはしていただくことになりますが、内容については基本的にこちらの方で指定させていただいています」
「自主トレもですか?」
「はい。あくまでこれくらいまでやってほしい、これ以上は避けてほしい、という目安程度ですが」
「やりすぎはむしろ損。古事記にもそう書かれている」
「過ぎたるは猶及ばざるが如しと言いたいのですね?」
「
ニンジャスナイパーの頬と耳がほんのり赤くなっていた。
素で間違えたんだ、そこ……。
「そうですね、トレーニングは、すればするほど良いというものではありません。過度なトレーニングはむしろ逆効果です」
「疲労骨折なんかもありますからね」
ウマでもヒトでもよくある骨折原因だ。ちょっとずつ強い負荷がかかることで、軽微なヒビが生じ続けて慢性的な痛みを訴える。最悪はそのまま完全骨折に至る。オーバーワークの典型的な悪影響だろう。
だから指導にあたる人は痛みがないか、という点を強く気にかける。自覚症状があったらもう既にヒビが入っている可能性があるからだ。
「それだけではなく、横紋筋融解症という、筋肉が壊死して
「えっ、なんですかそれ」
急に現実的な方向で横から殴りつけるような衝撃を加えてくるのはやめてほしい。コワイ!
「更に、壊死した細胞が血管を通ることで多臓器不全の原因にもなります」
「インガオホーというやつだ」
「それもちょっと違うんじゃ」
「どちらかと言うと、『努力は嘘をつかない』……過度なことをして負担をかけてしまえば、体はいずれ壊れます。誤った努力もまた、嘘をつかないんです」
「ほえー……」
思わず変な声出ちゃった。
強引な手段に奇抜なというかエキセントリック通り越してインサニティな髪、加えて
表情には出すことなく感心していると、そこでぼくらの来訪に気付いたのか、トレーナーさんが顔を上げた。サブトレさんとよく似たタイプのハンチング帽を上げてこちらを見て、腰を上げてくる。
「こんにちは。すみません、お邪魔しています」
「やあ、どうも。見学かな? 名前は?」
あれ、サブトレさんから聞いてないのかな。
「中等部一年のサバンナストライプです」
「サバンナ……そうか。ゆっくりしていきなさい」
「ありがとうございます」
「利紗、少し話……スナイパー!? ここで何をやっとるんだ!?」
「しまった」
ウカツ!
哀れスナイパーはメインのトレーナーさんにも見つかってしまった!
「今日はドーナッツとの併走だろう。お前いつもいつも気付いたらいなくなりおって……」
「ど……ドーナッツとの併走はオタッシャさせていただきたく……」
「却下だ。いたぞドーナッツ!」
「なァにィ!?」
と、ひとことトレーナーさんが声を上げると、ピーピードーナッツは本来可愛らしいとすら形容できるはずの顔を凶悪に歪め、凄まじい勢いでこちらに向かって跳躍してきた!
すっごい跳びっぷりだ。その小さな体格故の身軽さだろう。柵や椅子を足場にひょいひょいこちらに向かってくる。八艘飛びめいた跳躍でニンジャよりニンジャらしい海賊がエントリーだ!
「てめースナイパー!! アタシから逃げるとはいい度胸してんじゃねえかコラ! あーっ!!」
その口調はヤクザスラング同然であった。
コワイ!
ニンジャスナイパーの顔が青ざめて恐怖からか目が見開かれている。いやあんたも怖いのか。
「ヤメロー! ヤメロー!」
「じたばたするんじゃねえや! 逃げ回らなきゃこんなことしてねェんだよ降りろオルァ!」
ドーナッツはそのままドラァ!! とスナイパーのメンポを強引に剥ぎ取ってしまった!
「はわわ……」
そしてスナイパーは――今までの様子はどこへやら。完全に赤面して涙目になってしまった。
ああ、
「何がはわわだ!!
……おい新入り!」
「は、はいっ!?」
「邪魔して悪ィな!」
そう言い残すと、シュッ、と軽く指を二本立ててドーナッツは来た時と同じようにぴょんぴょん跳ねてコースに戻っていった。
怖いと思ったけど、もしかしてただ威勢がよくてちょっと荒いだけで気風のいいウマ娘なのかもしれない。
「
そして片一方、スナイパーはヘロヘロになってロシア語らしきか細い声を上げながらそれについていった。
コースでは
(……思ってたよりマトモだったな)
失礼極まりないが、三人の性格が見え隠れする一連の行動を目にしたぼくの感想はそれだった。
色眼鏡をかけて見すぎていたかもしれない。反省。
「スナイパーは元々ああいう気弱な子なのですが、自分の名前に似たタイトルの漫画に影響を受けたらしく、あのマスクを着けていると強い自分でいられるとかなんとか……」
「一種のペルソナというやつですか」
困惑顔だったぼくにサブトレさんがそう補足してくれた。
……大丈夫? 実はぼくみたく異世界のニンジャソウルと結合して生まれた存在だったりしない?
あのメンポ着けたらニンジャソウルの方に切り替わってるから性格が変貌してたりとかしない?
「利紗」
「はいはい」
心配やら何やら色んな感情がまぜこぜになった微妙な表情を浮かべていたぼくだが、一方でトレーナーさんたちは先程何かを言いかけたのを思い出したのか、サブトレさんに何か耳打ちしていた。
「あの子から素質は感じるが、まだ見極める時間が欲しい。そう言ったはずだぞ」
……しかし、だ。
シマウマの耳はロバの耳。他のウマ娘よりもやや大きいぼくの耳は、そのささやき声も聞き取れてしまう。
頭の上でぺたーっとして耳を塞ぐが、それでも聞こえてしまう。
察したらしいサブトレさんの苦笑が目についた。ごめんなさいね。
「ティンとは来てもそうやってやたら慎重になるから、よそのチームに先にスカウトされるんですよ。なので、独断で申し訳ありませんが声をかけさせていただきました」
トレーナーさんは痛いところを突かれたように顔をしかめた。
さっき言ってた「先に声をかけさせてもらわないといけない理由」ってそれか。
しかし、外から見るとぼくの二着という順位やそれに伴う走り方もあまり評価されるものじゃないと思ったんだけど、それでも他に声かけてくるところあるのかな。
「しかしな……いや、そういう感覚はお前の方が鋭いか」
「ええ。本人の口からも、例の一件はちゃんと作戦だったことを聞けました。将来有望ですよ」
「そうか、ならいいが……あの尻尾回すのはいったい何なんだ」
「さぁ……?」
あ、そこは気付いてるんだ……。
「ですが些細なことです。尻尾が回ってコンディションが良くなるならいくらでも回って結構だと私は思います」
「尻尾を回してコンディションが良くなるなんてことがあるのか……?」
「体操服より遥かに動きにくいはずの勝負服を着用してる時の方が調子の良いウマ娘に言うことですか?」
「分かった。この話はヤメだ。はいヤメヤメ」
どうやら話はついたらしい。
実際、勝負服着てる時のウマ娘って明らかに邪魔なもの持ってるのに普段以上の力発揮したりするんだよね。
代表例はマチカネフクキタル先輩。あのひと一抱えもある招き猫背負ってるのに菊花賞優勝してるし。
この世界だとちょうどスズカ先輩が出走した皐月賞が終わったばかりなので、まだ先の話だけど。
「待たせてしまってすまんな」
「いえ」
トレーナーさんの後ろでサブトレさんが小さく指を立てている。黙っていてほしいということだろう。ぼくも言うつもりは無いので問題ない。
「ベテルギウスのチーフトレーナーを務めている金城だ」
「あれ、金城……」
「あ、父なんです」
「なんと」
親子でトレーナーなのか。道理で似たようなハンチング帽被ってるわけだ。
「本名は金城
「代々トレーナーとか、そういった家系なんですか?」
「いや、そういうわけじゃないんだが……少し縁があってなぁ」
「私が父に憧れてトレーナーを志したんです」
なるほど、桐生院家みたいに一族代々が、とかじゃあないと。
それでも憧れを原動力に、相当難易度が高いっていう中央のトレーナー資格の試験に合格できるのはすごい。ノウハウを蓄積してけば、もしかするとサブトレさんより更に下の世代が代々トレーナー業を受け継いでいくという下地になったりするかもしれない。そう考えるとちょっとロマンがある。
トレーナーさんは照れくさそうに、あるいは居心地悪そうに帽子の下から頭を軽く掻いた。
「……よくできた娘でね。ま、それは置いておこう。説明はどこまで済んだ?」
「これからトレーニングの見学を行うところです。即決はできないそうなので、判断材料になればと」
「分かった。これからしばらくトレーニングを続けるから、よく見学しておきなさい。チームに入るにしろ入らないにしろ、参考になるものを見せられるはずだ」
欲を言えばチームに入ってはほしいがね、と、それなりに明け透けな言葉を添えてトレーナーさんは皆の練習の監督に戻っていった。
ピーピードーナッツと書こうとしてピーピーピーナッツと書き間違えるマン。
4/12 微修正しました。