【本編完結】ロバ娘:ファンディングストライプ   作:桐型枠

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URA賞

 

 

 激闘のジャパンカップからしばらく経った。

 前走や戦績のおかげか、有記念ファン投票は1位になったりしたが、先約があるため東京大賞典に出ることにしたらURA職員に泣きつかれたり、いざ東京大賞典に出たら大井レース場が入場規制をかけられるほどの騒ぎになったり、砂のサイレンススズカに覚醒したファル子先輩にわからされて半バ身離されて負けたり……(多分捻挫の影響もあったと思う)*1

 ――ともかく色々とあって今年のシーズンは終わりを迎えたのだった。

 

 前年と比べて出走数こそ多くないながらも、6戦4勝(1引き分け)。内、日本でG1を2勝、イギリスとフランスでそれぞれG1を1勝。これは世間の評判を上げるのに大きな効果があった。

 縞毛の評価もこれで鰻登り――とはならなかった。

 曰く、「あいつがおかしいだけ」。

 つまり突然変異扱いである。

 そもそもスピードに欠けるからレースに向いてないと言われているのに、根本的な部分でそこが改善されない限りレース向きではないというのは覆しようがない。

 まあ、それでも「中長距離以上の距離に向く」という長所を見つけて「全然レースに向いてない」じゃなく「特定の状況なら活かせる特徴がある」という、ある意味で正確な評価に至ってもいるのだけど。

 ある意味ぼくが外れ値だからこそだろう。

 

 ファンレター、は、元々多かったけど、ここ数ヶ月でまた激増した。

 ただこれまでとは少し種類が異なり、「勇気付けられた」「自分もトレセン学園に入ろうと思った」というような内容が増えた。

 だいたい「あなたのようなことはできないが」と注釈が入れられているのは誇るべきか嘆くべきか。

 皆もやってみようよ。意外な才能が見つかるかもしれないしさ……。

 

 さて。ともあれ1月上旬。今年のURA賞の発表の場になんと、ぼくはやってきていた。

 マックイーンと一緒に。

 

「何でさ」

「お……おかしいですわね……なぜシニア級がふたりも……?」

 

 URA賞は基本、クラスと路線でそれぞれひとりずつ表彰されることになる。シニア級・クラシック路線のぼくとマックイーンが同時に表彰されるということはまずありえないのだ。

 会場にはファル子先輩もいるので、何かまかり間違って最優秀ダートウマ娘にノミネートされたということは無さそうだ。シニア・ティアラ路線はヴィクトリアマイルを勝ち抜き凱旋門賞2着を手にしたミーク。短距離はカレンだ。*2だから路線違いでのノミネートも無い、と思う。

 

「同時受賞ということはあるんですか?」

「いや……流石に聞いたこと無いかな……」

 

 フラワーの疑問ももっともだが、二年連続での選出ということはあってもふたり同時ということはまず無い。

 例えばフラワーが翌年、ティアラ路線で活躍しつつスプリンターズステークスに出て勝つ、とかしたらクラシック級・ティアラ路線の最優秀ウマ娘と最優秀短距離ウマ娘を同時に取ることはあるだろうけど……。

 

「……それにしても豪華なメンバーだよね。ぼく場違いじゃない?」

 

 テイオーにマックイーンは元より、ファル子先輩にカレンにミークにフラワー、それに期待の新星ミホノブルボン。

 友達だから会話できてるウマ娘は多いけど、関係者じゃなかったらちょっと圧倒されそうなくらい華やかなメンバーだ。

 

「ストライプちゃん、嫌味に聞こえちゃうよ」

「一番豪華な成績してるじゃんストライプ……」

「……そうかも。ごめん」

 

 正直、天皇賞春秋連覇とか三冠とかのわかりやすい大記録を引っ提げ、メディアにも大々的に取り上げられているテイオーやマックイーンと一緒に行動しすぎてて、感覚が麻痺してる部分はある。

 ぼくはメジロ家みたいな後ろ盾も無いので「悲願の○○制覇」とかのネームバリューは無い。三冠やグランプリ連覇みたいな一般にも分かりやすい華やかさみたいなものも無い。自分自身忘れがちだけど、外国人だからかメディアが及び腰な部分もある。

 合同トレーニングしてる時にマスコミがきて「おっ、これはジャパンカップ勝者のぼくに取材かな?」なんて思ってドヤってたらテイオーたちの方に行かれてズッコケたし……。

 いや、まあ、その後取材は来たんだけど、やっぱり今のトゥインクルシリーズを牽引する「主役」はテイオーたちの方だと思わされた一幕だった。

 

 客観的な話をしよう。G1レース6勝はすごい。海外レースで勝ったのもすごい。そこは事実だ。

 しかし、同じシニア1年目で会長さんは七冠達成しているし、海外レースはうちのチームに成功者がいる。決して地味ではないけど、もっと分かりやすくセンセーショナルな方がいるので世間への訴求力に乏しいぼくの優先度は低い。……そんな感じ。レコードこそ取ったけど、チャンピオンステークスとか一般の人知らないもの。

 表紙を飾るのはテイオーたちで、トップ記事での特集が終わった後に誌面を埋めるために挙がる第一候補、くらいの扱いだろうか。「とりあえずあいつを出しておけば間違いない」という安牌な位置づけなのは別に嫌いではないのだけど。この方が細々とでも長く語られやすいし。

 ともあれ、このあたりにぼくは若干のコンプレックスがあるのだろうと思う。今現在のトゥインクルシリーズにおけるぼくの扱い完全にラスボスだもんよ。ネイチャじゃないけど、もっとまっとうな方向でキラキラしてぇ~とはちょっと思うよ。

 

「大変長らくお待たせいたしました。本年度、URA賞授賞式の司会を務めさせていただきます赤坂です」

 

 と。裏でわちゃわちゃやっている間に準備が終わったらしい。呼ばれるのを待ちながら実際何でシニア級クラシック路線がふたりもいるのか考える。

 もしかしてあれかな、URA特別賞。年間の最優秀ウマ娘などとは別枠で組まれた賞で、知り合いだとスズカ先輩とスペ先輩、グラス先輩、それからオグリ先輩の受賞歴がある。

 前年、前々年と受賞があったが毎年同じように受賞者がいるわけではなく、あくまで「特別にその必要が認められる功績を上げたウマ娘がいる場合」にのみURA特別賞が授与される。

 それこそ前年はエル先輩が最優秀シニアを受賞したのと同時にスペ先輩たちが並んで受賞したわけで……なるほど。これだ*3

 URA賞は記者投票。よってより()()()()をする戦績をしたウマ娘の方が選出されやすい。

 それでもぼくは上げた結果が結果だ。無視するわけにもいかないし、無視したら大使館の方面から抗議が入ったりするかもしれないし。実績の伴う外国人というのは厄介だろうフハハハ。

 

「――シニア級・クラシック路線最優秀ウマ娘はサバンナストライプに決定しました!」

「Kweli?」*4

 

 えっ。

 えっ?

 は?

 

「マックイーン呼ばれた?」

「あなたですわよ」

「マジか」

 

 一歩前に出ると、盛大な拍手で迎えられた。

 やっべ、実感湧かない。いや、え。えぇー……?

 顔の方は営業スマイル維持してるけど、混乱がどこかで漏れてはないだろうか。

 嬉しい、は、もちろん嬉しいけど、いいのか貰っちゃって。いいのか!?

 

「天皇賞春秋連覇の偉業を達成したメジロマックイーンには、URA特別賞が贈られます」

「ありがとうございますわ」

 

 ……いいんだろうか。いいんだろうな。マックイーンがそっちを受け取ってるんだし。

 さっきカレンにも嫌味に感じられてしまうって言われたばっかりだ。これは紛れもなくぼくの努力に対して下された評価だと思うべきだろう。

 何よりそれこそがこれまで勝ってきた相手に対する礼儀でもある。……のだと思う。

 やっぱこの辺のマイナス思考は出自とこれまでの扱いが大きいかな、やっぱり。

 

「では、続いて本年の年度代表ウマ娘の発表に移りたいと思います」

 

 さて、視聴者的には待ちに待った年度代表ウマ娘の発表だ。まあここは順当に行けばテイオーだろう。三冠が年度代表を逃すなんて滅多にない*5*6し。

 

「審査は大変難航しましたが、最終的に決定したのはこのウマ娘――トウカイテイオーです!」

 

 やっぱりな、という思いと同時に、ぼくもチャンスがあったんじゃないかなという思いが胸に湧く。

 海外レースを制したウマ娘が年度代表ウマ娘になることは割とあることで、年間に海外で2勝というのはそれだけでも選出理由にはなると考えていた。

 が……そこは人の気持ちというか、やはり「日本の三冠ウマ娘」にこそ取ってほしいという思いはあるだろう。

 負けこそしたが僅差だったというのもある。来年はどうなるか分からない、と皆が思っているとすればこの選出も納得ではある。いわば成長性込みでの代表選出ということだ。

 

(――つまり、来年はそれもねじ伏せられる実績を引っ提げてくれば年度代表になれるってワケか)

 

 ピコンと頭の中で来年のスケジュールが埋まっていく。

 ……と、なれば確実に実績を積むことができる条件は……それから確か、ぼくの記憶が確かならこっちだとあのレースシリーズが存続してるはず……。

 

「本年著しい実績を上げた三名のウマ娘には、URAより新しい勝負服が贈呈されます」

「あ、そんなのあったっけ」

「滅多にありませんけれどね」

 

 そのままマックイーンとテイオー、ぼくの三名が別室に案内される。手渡されたのは、新しくURAがデザインしたらしいぼく専用の勝負服だ。

 これまでの緑色基調のものと異なり色合いは黒。横目でちらっと見えたのは……テイオーが赤でマックイーンが白。当然と言えば当然だが、イメージが被らないようにしているのだろう。

 ミホノブルボン見ても思ったけど、このちょくちょく入るサイバーな発光ラインどういう技術使ってるんだろ。

 

「着替え終わりましたの?」

「もちょっと待って」

 

 何だろこの……暗殺者? ニンジャ?

 これまでの狩人風から一気にイメージ変えてきてるな。それ自体はまあいいけど……うーむ……。

 

「テイオー……は……」

「どしたの?」

 

 うーむ……やっぱりぼくの知ってるあの衣装*7だ。

 マックイーンの衣装*8もそうだけど、思った以上にこう、がっつりお腹出てるな……ぼくのも含め。おかげで露出度が高い印象になってる。

 URAえろか?

 

 ――ちなみに、本放送での新衣装の評判は上々だった。

 視聴者えろか?

 

 

*1
ということにしたい。

*2
史実1991年の最優秀5歳(当時の年齢表記)牝馬・最優秀スプリンターをダイイチルビーが同時受賞。

*3
脳内指パッチン。

*4
スワヒリ語で「マジ?」

*5
2023年現在クラシック三冠を取って年度代表馬を逃したのは2020年のコントレイルのみ。同年の年度代表馬は九冠を達成したアーモンドアイ。

*6
ティアラ路線の場合は年度代表馬を逃すケースが多い。メジロラモーヌ、スティルインラブ、アパパネ、デアリングタクトがこのケースに該当。

*7
ビヨンド・ザ・ホライズン

*8
エンド・オブ・スカイ






○新衣装
 狙った相手を確実に「刺す」意味での暗殺者風。
 これまでのやや古風な狩人風勝負服に対応して近未来サイバー要素を導入、という設定。お腹が出ている。



○お知らせ
 概ねやることをやりきったので次回本編完結、次々回エピローグに移ります。
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