【本編完結】ロバ娘:ファンディングストライプ   作:桐型枠

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こういう面では良い仕事するな

 

 

「うーむ」

 

 和メイド茶屋。ぼくは売れる! とそこそこ思ってたんだけど、チーム内の評価、というか反応はあまり芳しくなかった。

 これは売り上げ面の問題じゃなくて、「店員としてやる側」としての気持ちが作用しているのだろう。

 和、はともかくとしてメイド。男のロマンと言えば聞こえは良いものの、それをやるとなると抵抗感が出るひともいて不思議はない。自分には合わない、ヒラヒラしたものが苦手、キャラじゃない……などなど。あとは単純に客商売やサービス業が向いてないというひとも少なくない。スカイ先輩やシャカール先輩もそのようなことを言っていた。

 ……まあ、仮にいざやるとなるとふたりとも真剣にやるとは思うけどね。負けず嫌いだし。

 

(基本的には、物珍しさとか言葉から受ける印象で抵抗が生まれてるのかが問題かな)

 

 アスリートとしての意識が強いひとだと、より顕著かも。

 メイドって、言っちゃなんだけど割とマニアックだからね。自分が着て接客する、となると恥ずかしく思うのは仕方ない。

 ぼくは必要とあらば何でもやるけども、この辺は何なんだろうね。突飛なことをしても気にしないサンコンソウルの影響だろうか。こういう面では良い仕事するな。

 ……とはいえ、それはぼくの基準なので、他のひとに求めるべきものでは決して無い。

 だったらどうすればいいのか?

 

「根回しに来ましたー」

「お前のそーゆー無駄に正直なところアタシは嫌いじゃねえけど敵は作りやすいぜ」

「へへぇ」

「褒めてねえぞ?」

 

 でも半分褒められてるってことはほぼ褒めてると言って過言でないと思う*1

 というわけでやってきたのは、ドーナッツ先輩とリムジン先輩の部屋だった。

 ドーナッツ先輩が使っているらしい部屋の左側部分には、ボトルシップや船舶の模型、海賊旗らしきドクロの布などが飾られている。

 あと、机の上にある作りかけのブツは……なんだあれ……ボトルガ○プラ……? しかもご丁寧に海賊のやつだ。よっぽど海賊好き……いや、海賊が本業だったりしないよなこれ。ぶらさがり健康器も置いてあるけどやっぱり意外と身長のこと気にしてるんだろうか。

 

 右半分、リムジン先輩が使っているらしき部分にそこまで突飛なものはない。ぱかプチ*2がいくつか並んでて、他は……映画のグッズかな? パンフレットや独特なデザインのペンなどが整理されて置いてある。

 ドーナッツ先輩のスペースの境目あたりには有名な海賊映画のポスターが貼ってあった。なるほど視覚的にも境界線が分かりやすい。

 

「まァ正直に言やアタシは別に構わねえ」

「本当ですか?」

「ケド、他の人は分かりまセン。シャカールさんとか……」

「でしょうねぇ」

「つか、それそんな気合い入れてやることか?」

「というのは?」

「そのプラン結構金かかるだろ? よそで言やコレ学園祭なんだし、手間かかりすぎんのもなぁ」

 

 ――あ、そっか。先輩たちが懸念してるの準備面か。

 ドーナッツ先輩たちは海外G1を控えた身だ。そうでなくとも秋のG1戦線には誰かしらどこかで出場することになってる。

 聖蹄祭は10月のシーズン開始より前に始まるとはいえ時期が近いことに変わりはなく、トレーニングに集中したいというひとも相当多いだろう。

 だからぼくの恥ずかしいからやりたがらないんじゃないか? という予測は少し違ってて、実際のところは「レースが近いから、時間的制約が生じるほど大掛かりな準備は避けたい」という点と、「あくまで世間一般で言う学園祭なのだから、お金がかかって大掛かりなことをするのに気後れする」という2つの理由が絡んでくるだろうか。

 ならば語らなければなるまい。ここで聖蹄祭に力を入れなければならない理由を……。

 

「簡潔に説明します」

「うおっ、急に雰囲気をパリッとさせるな!」

「すみません。でもドーナッツ先輩、ぼくらは確かに学生、なんですけど、それ以上に世間からの見方は『トゥインクルシリーズの走者』、つまり一種のエンターテイナーなんです」

「アスリートでは……?」

「それは前提です。アスリート、であると同時にアイドル的存在でもあるんですよ。ですから、当然それなりの対応が求められる」

 

 ただのアスリートがウイニングライブをしますか? アナタ。

 実際のとこ、レースが全国放送までされて、例えばルドルフ会長みたく熱心なファンがつくほど有名になってるウマ娘というのは、単にアスリートというだけではいられない。

 ぶっちゃけベテルギウスの面々だって、その辺は大概だ。海外G1を制覇した経験があるリムジン先輩は言うに及ばず、宝塚を制覇したドーナッツ先輩もそう。というか全体を見てもだいたい何かしらのG1で結果を残してるとなれば、そりゃあもう。

 

「聖蹄祭は秋のファン感謝祭でもあります。だからこれはファンサービスの一環と思ってください」

「お前色々考えてんのな……」

「そりゃあもう」

「目がギラついてて怖ぇよ」

 

 よく言われます。

 

「Ah……ワタシはイイと思いマス。はっきりしたビジョンがあるなら……」

「まーそーだな……」

「本当ですか? ありがとうございます!」

「いや、アタシらがいいっつったからって他の連中も同じように言うとは限らねーぞ?」

「大丈夫です。皆さん説き伏せてみせますから」

「お前は何を目指してるんだよ……」

「最強のステイヤーですねー」

「最強の経営者と違うか?」

 

 そうかな……そうかも……。

 ……いや待ってほしい。つまり……両方目指せばいいのでは?

 なるほど、そういう手もあるか。うん。

 

 

 ・・・≠・・・

 

 

 それから翌日のこと。

 

「で、では……賛成多数でストライプの案に決定しますね……」

「……お前、一日でどう賛成票を集めたんだ」

「頑張りました」

「頑張りましたじゃねェよ手段を言え」

「地道に説得して回っただけですよぅ」

 

 いや真面目な話。

 別にぼくに大層な弁論能力があるわけでも何か変な洗脳能力があるわけでもないんだもの。ただちょっとお互いの認識を擦り合わせて、これはこうした方がいいんじゃないか、という方向でそれとなく提案をしただけだ。

 

「ですが、ストライプ。この案……あなたの負担が相当大きくなりませんか?」

「こっちが懸念してるのはそういう部分なんだがな……」

「大丈夫です、体力の配分は得意なので」

「無理が出ると思ったらすぐに言いなさい」

「了解です」

 

 よし、とりあえずこれでほぼ思った通りの状態に持ち込めた。

 あとは必要な商品の仕入れをしつつコネを構築、それから必要な小物を仕入れて……こりゃあ忙しくなるし今後の役にも立つぞぉ。うへへのへ。

 

「ストライプ君、少しいいかな?」

「はいタキオン先輩。何でしょう」

「シャカール君が言いたそうなことを代弁させてもらうけど、出店の制服は和風メイドの一種類だけなのかな? 彼女はああいう可愛らしい服を着るのが恥ずかしいだろうからねぇ」

「余計なこと言うな」

「そこに関しては二、三案があります。まず、いわゆる大正ロマン風。ブーツと着物、袴のセットです。もう一つは男装。どちらも露出度は更に低いですよ」

「……チッ、そこまで言うなら仕方ねェな」

 

 よしよし。納得してくれて助かった。

 シャカール先輩はシャカール先輩で、やっぱりヒラヒラした可愛い系の服に抵抗感があったんだろうな。やっぱり先に想定しておいてよかった。

 

「問題がないなら提供する食品について話し合いたいと思うが、誰か案はあるか? ……まずストライプ以外でだ」

 

 なして……。

 

「はーい。お茶屋なんだからまずドリンクですよねー。メインは抹茶類になるんじゃないですか?」

「あとほうじ茶だろ。他に何かあったかぁ?」

「柚子やきな粉、豆乳なども時には挙げられているね」

「Ah……あまり種類が多くても、それはそれでコントロール、難しくなると……思いマス」

「論理的に考えりゃ、やるとしても材料の組み合わせだけで済むようなものにするべきだろうな」

 

 困った。特に何も言うことがない。概ね思った通りのことを全部話されてしまった。

 トレーナーさんがこちらに視線を寄越してくる。何も無いです、とばかりに肩をすくめると、納得したように頷きを返された。

 

「食品の方はどうしますか?」

「フラッシュのケーキは入れておきてーな。ありゃ相当美味ぇぞ」

「ありがとうございます。ですがそれだけではメニューとして寂しい限りですので、他に何か入れておかなければいけないかと思いますが……」

「オハギを所望する」

「スナイパーが食べたいだけだよねそれ? いや、いいとは思うけど」

「ウマ娘ちゃんの手作りオハギというだけでお客さんは集められると思います!!」

「そういう話じゃないんだがね?」

「すぐに思い浮かぶのは、お団子、どら焼き……和洋折衷と考えると、抹茶スイーツも適しているかと思います」

「ですが……トレーニングがあるので、作る練習をする時間が無いデスね……」

「…………」

「……ストライプ」

「はいっ」

 

 大きく挙手をしてアピールすると、そこでようやく発言が許可された。

 流石にこういう、トレーニングで時間が上手く使えない……という状況になるとぼくの出番だ。

 

「仕入れが終わらないと試作もできませんし、ついでにぼくの方でやります。時間はありますから」

「お前な……」

「トレーナーさん、分かってますけどここで少し頑張っておけば、来年以降も同じ手を使えるので多少楽になります」

 

 ぼくも来年以降のどこかでデビューすることになるだろうから、同じように時間を費やして……というわけにもいかないだろうしね。

 言わば今は資産を積み立てるべき時期。レシピも衣装もコネも、全部まとめてチームとしての、あるいは個人としての資産だ。後々になってこれが効いてくる。はず。

 トレーナーさんは大きなため息をついた。

 

「……やりたいようにやりなさい」

「はいよー」

「最近お前のにへらって感じの笑い方がスゲェ胡散臭く感じてきた」

「言い方ひどくないです?」

 

 ――で、まあその後。

 仕入れた品物はチームの部室に保管するとしても、試作を重ねる必要があるので一部はぼくの自室に置くことになった。

 試作、とひとくちに言っても提供しなければならない商品はそれなりに多い。スイーツというものはかなり厳密に分量が決まっているため、目分量というわけにもいかずレシピを構築するには毎回きっちり計量する必要がある。

 更にその上、定められた分量で作らなければならない以上、「少しだけ作って味見する」というわけにもいかないため、一度作るとそれなりに処理の手間がかかる。

 同じ寮だからということでオグリ先輩やマックイーンに味見をお願いしたりもしたのだけど、これがまた試作を重ねていくと同じ手を何度も使うわけにはいかず……。

 ……結論から言うと数日後、ミークがちょっと太り気味*3になってしまったりして、桐生院トレーナーにぼくも含めて注意されたりなどしたのだった。

 

 

*1
過言

*2
ウマ娘をモデルにしたぬいぐるみ。主にクレーンゲームで取れる。

*3
スピードが上がらなくなる






 いつもご感想ありがとうございます。励みになっております。
 前回投稿後、アイネスフウジンがチームベテルギウスに加入しているという旨の感想を何度か拝見させていただいておりますが、設定上、ベテルギウスの方には加入しておりません。
 もしそれに類する描写を見たということがございましたら、こっそり教えていただけると助かります……。

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